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三次人形(みよしにんぎょう)。
広島県三次市に伝わる泥人形。
手前の二体だ。
うしろのはどこのか知らぬ。

父には、そういうところがある。
けして人形収集家などではないのだが、妻の生まれ故郷にそういうものがあると聞けば、行って手に入れずにいられない。

うしろのもきっと、祖父母のゆかりの土地だとか、恩師の知りあいの窯だとか、そういうなにかの縁で購入したものだろう。特にそういうものが好きなわけでもないのに、縁で飾り物を買ってくるため、古びた土人形から前衛美術作品までもが壁や棚に並ぶ。

私にはそういう気質がまるでない。
旅行に行っても土産を買わない。
まして土着のなにかを買いに、それ目的で出かけることはない。

実家に帰ったとき、三次人形を見て、女人形の左目が擦れている。それを確認するたびに、幼いときの感覚がよみがえる。

わざわざ三次人形を買いに行った。帰りの車のなかだった。家にもまだ帰らないうちにだ。

私は、その白い女の人形の顔に、触れずにいられなかった。

触れた瞬間、黒は滲んだ。
できたてを買ったのだ。
定着していない塗料が霞んだ。
そしてそのまま定着してしまった。

怒られた。

家に帰ってから父は、補修を考えたようだ。実際、少し、手も入れた様子がある。けれどいまでも、はっきり彼女の目は滲んでいる。

私の指先は記憶し続けている。

あまりにもあっけなく、紙のうえの粉が吹き飛ぶように、人形の左目は台無しになったのだ。

あのころの父の年齢になって、けれどやはり私は、たとえば妻の故郷で、なにか名産品を買ってみたりはしない。そういうのは、よくわからない。

私に幼い日の後悔を幾度となく、見るたびに伝えてくる三次人形は、モノに宿る記憶はあると語る。意味あって在るモノだと思う。だからなのかもと、考える。

想い出の品なんてモノが、家にあふれかえっていたら、こんな想いのパレードになる。

それはしんどい。
よくも彼は平気なものだ。
わざわざ重たい品を増やすなんて。
私には信じがたい。
軽くいたいわけではない。
身のまわりに執着は溢れ、
それらで、じゅうぶん重い。
生きているだけでそういうものではないか。

欠けた器は捨てる性分だ。
そう、逆に、この三次人形が、私に、捨てられないものは買うなと、教育した、たまものだったりする。

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 三次人形の購入できる通販サイトがあったらば、ご紹介いたそうかと考えたのだが、発見できなかった。

 広島県が直接に三次人形を推していて、

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三次人形(みよしにんぎょう) - 広島県ホームページ

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 そこから『BUYひろしま』という広島製のものを買ってみるといいよというサイトにまでリンクが巡らされているのだけれど、そのサイトから、直接買えるわけでもなく、また窯元の公式サイトに行っても、写真はあるが価格の明示はなく、通販もしていない。

 来い、そして買え、ということだ。

 私は大阪在住だが、広島県三次市在住の祖母に、二歳になる息子の顔をまだ見せたことがない。それくらい遠い。なかなかに味わい深い製品であることは認めるけれども、三次人形を買いにという動機だけでいらっしゃいませというのは、強気な勧誘であるのことよのうと感じたりするので、みなさんにはもっと取っつきやすいところからご紹介させていただこう。

 なんといっても、乳団子である。

乳団子    25個入



 正確には三次市に隣接する庄原市が元祖ということらしいが、西日本旅客鉄道のすべての路線の終着点であり、高速バスの到着するのも三次駅で、着いた途端に乳団子しか選択肢がないほどにそれがそこかしこに積まれているので、もはや三次にとっても名物以外のなにものでもない。

 乳である。
 私の幼いころには、祖父母も乳牛を飼っていた。採算がとれなくなって肉牛へシフトしてからの、祖父の私への命の教育はそれはもう熱心なものだった。読書家で、ある種の思想家でもあったひとだから、その転身は、同じ牛をあつかうにしても、心もちが大きく変わったのだろう。子供ながらに、なんだかおじいちゃんはぼくに説明することで自分を納得させているみたいなふうだなあ、と感じたのをおぼえている。

 前にもここで書いたことがあるが、長期の休みのときくらいにしか訪れることのできない遠い広島県三次市だったにもかかわらず、私の根幹は、どうもその祖父母の家で育まれたもののように、いまになれば感じている。

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『とかげではなく』の話。

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 あと、これも前に書いた気がするが、かなり歴史もできてきて、これこそ三次名物というものになった、三次ワイン。

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『広島三次ワイナリー』公式サイト

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 と書いてみて、はっ、と、想い出した。

 乳だ。否、父だ。
 あの、妻の実家に行ったらなにか買わずにいられない父が、もちろん三次ワイナリーにも行ってワインを買って帰って、うちにも一本持ってきたような……

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 あった。
 そう高いものでもないのだが、私はワインも常飲しているので三リッターのボックスが冷蔵庫にあって、ほらこれも想い入れのあれやそれで、三次の名を冠したコルク栓のワインを開けるなら、なにか祝いでもあったときにと思いつつ、開けることはなく、たぶん……十年経ったかな、常温で。平気なものかな。ワインは寝かすものだろうが、千円そこらのコルク栓のワインでも大丈夫なものだろうか。

 賞味期限は書いていないが、ロットナンバーはあった。

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 ラベルに書いてある「http://www.miyoshi-wine.co.jp/」は現在リンク切れだ。なぜだか、いまは「http://www.miyoshi-winery.co.jp/」である。広島県公式からのリンクも切れている(2017/06/22現在)くらいなので、この変更は最近のことであろう。

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株式会社広島三次ワイナリー - 広島県ホームページ

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 とはいえ、リンク切れのアドレスが印刷されたワインだ。非常に人には勧めにくい。自分で飲むか。期限を書いていないということは飲んでもいいのだろうか。いよいよ開けにくくなってしまった。

 うん。またそっと棚にもどしておこう。


 今年もたのしいE3!!!!
 Electronic Entertainment Expo!!!!
 えれくとりっくえんたーていんめんとえきすぴょ……舌噛んだからやっぱり略してE3!!!!

 そして……
 命名されたよ!

 XboxOneX !!
 えっくすぼっくすわんえっくす!!
 長っ、言い憎っ。

 そこで略してXOX !!
 もしくはXxX !!
 ちょっと長めでXoxoX !!

 どう発音していいのかよくわからないから、別の略称を検討しようか。四角いボディの中心にXが刻まれていることから「凶箱」と呼ばれた初代、私のは安野モヨコだった。

Xbox360

 二代目。Xbox360は、箱○と書いてハコマルと呼ばれた。だいたいにして、冒頭のエックスというのがもう発音するには長いので、エックスなになにという略称が定着しない。初代からの継承で、箱だ。箱ありきでなにかつけるパターン。私のハコマルは、ギアーズだった。

gow

 三代目。XboxOne。箱1と書いてハコワン。私の箱1も、ノーマル仕様だ。というか、初代や二代目に標準装備されていた、ゲーム機本体をデコるという思想がXboxOneにはない。硬派なのだ。XboxOneユーザーはゲーム機にシールを貼ったりしないのである。タキシードを着てゲームをする。私だってそうだ。特に気合いを入れてプレイするときには、紋付袴や全裸という正装なことさえもある。

 そうこう言っているうちに、XboxOneの小型化が為され、その商品名はXboxOneS(えっくすぼっくすわんえす)になった。あたりまえのように皆、箱1Sと書き、ハコワンエスと略した。

 そうして、プロジェクトスコーピオ。

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『2016年のE3とXboxとProject Scorpio』の話。

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 いやあ、昨年の私のE3話は長いな。自分で読むのも嫌になる。でも、それくらい熱くなっていたということで。なにせ、ここまで書いてきたように、この国では数少ないと書いてもはばかりない、初代凶箱からのXboxフリークなのですから。

 あれです。よく事情を知らぬあなたに端的に説明いたしますと。

 ニッポンセガがゲーム機戦争に敗れて撤退し、ニッポンソニーのゲーム機プレイステーション2が独占するようになった世界の構図に、コンピュータの国の覇王、マイクロソフトとドン・フライ……もとい、ビル・ゲイツ様が、殴ったらひとも殺せそうな黒くて角張った箱Xboxでゲーム機乱世を再びと乗り込んできた。迎え撃つソニーがPS3なる次世代機を世に放つや、ドン・フライ……ああまた間違えた……様は、Xbox360という奇跡の子をアメリカから放ち、もはやだれも逆転などないだろうと思っていた世界のゲーム機戦争で、ソニーに互角以上の戦いをしてみせる。

 そうして、さらにその次の代。

 ソニーのPS4。
 マイクロソフトのXboxOne。

 ほぼ同時に世に出た。
 ほぼ同じ価格だった。
 しかしあろうことか……たぶんニッポンのニンジャが有能だったということだ……ハード的な性能差があったのである。同じソフトが両機種に出る。マニアなひとが比べてみる。どこをとっても、XboxOneのほうが、若干だが、描画性能において劣る。

 私のようなマイクロソフト製のゲームがプレイしたいためにXboxを所有している者にとっては、マイクロソフト製のゲームはソニーのゲーム機では遊べないのだから問題外だし、多くのゆるいゲーマーたちにとっても、若干の描画能力の差など、本当は大きな問題になるところではないはずだった。

 しかしネットの世紀である。同等価格で同じ年に発売した新型ゲーム機に、若干であれ性能差があるというのは、差がない両雄だったからこそ、ネタにされやすかった。新しいゲームが出る、だれもが両雄のゲーム画面を並べて検証する。ほらここにちょっと暗いところが生まれてしまうよねえ、といった程度のことだが、毎度だ。風向きが、ソニーに向いた。

 だれよりも、うちのニンジャはなにをやっていたんだ、性能差があるもの並べて売ってしまうって、我らはコンピュータの国の王ではなかったのか!! と叫んだのはドン・フライである。いやドン・フライと間違えやすい、すでに現場からは引いているはずの、あのひとだ。コンピュータの国の王であり、ヲタクの王である。彼の資金力は無尽のゲイツマネーとまで呼ばれ、どう見ても採算のあいそうにない高性能なマシンを、お手頃価格で数を売る戦略でソニーを倒しかけたのだ。それが、同じ価格の劣化マシンを世に出してしまった。

 そうして昨年、発表されたのがProject Scorpioである。

 一年が経ち、その子の名は、XboxOneXであると発表された。マイクロソフトが「だれもに向けての製品ではなくマニア向けだ」と公言する、歴史上、類を見ない高性能なゲーム機。

 どれくらい類を見ないかが、今回のE3であきらかになった。もっともわかりやすいのは、ゲーム機で史上初めて「液冷」を採用したところだろう。

 パソコンや、バイクでも「水冷」という方式がある。エンジンが大きすぎて、発火する危険性さえあるので扇風機で風を送るだけでは足らず、周囲にパイプを密着させて、なかに冷水を循環させるという方式である。

 XboxOneXは、だがしかし「水」ではなく「液」だという。なんらかの液状のなにかを本体に内蔵し、それを本体内部で移動させて、熱をあっちやこっちに逃がすのだそうだ。正気の沙汰ではない。高性能だから本体サイズが大きいというのは、格好悪いという技術屋の意地であろう。Project Scorpioは、意地だけのプロジェクトなのだから、方向性は合っているが。

 XboxOneXは、なんとXboxOneを小型化したXboxOneSとほぼ変わらぬ大きさである。コンピュータの国では、性能アップで小型化は禁忌だ。というかマイクロソフトはXbox360で、熱暴走による故障を多発させて全世界で回収した(私のもされたのは過去の記事を読んでいただきたい)経歴の持ち主なのである。それが小型化にもこだわった。もうどうしようもないから「液冷」だ。

 単純な話、小型化には成功したけれど、XboxOneXの内部にはなんらかの液が詰まっているわけで、初代凶箱を見たとき「鈍器だ」と評したあのころ以上に、XboxOneXは凶器に近い。伝統の黒い鋭利な角を持つフォルムのまま、持ち運べるサイズに小型化され、重量増。鉄アレイをひとを殺しやすいように尖らせたものだと表現できる。

 逆に言えば、スマホゲームに圧され気味なゲーム業界や、ポケットに入る大きさの某マリオの国の新作ゲーム機などをガン無視してコンピュータの国の流儀を突き進めた、据え置きハードでしかできないスタイルではある。持ち上げるのなんて買って帰るときだけだが、どうせネットの世紀、買うのだって通販サイトだろう。だったら液を詰めて重くなって、なにが困る。

 いさぎよい。
 格好良い。
 そういうマイクロソフトは、私の好きなマイクロソフトだ。

 今後、Xboxは、箱1Sと箱1Xを併売していくという。公式が、XboxOneXが発売される今年も来年も、実際に売れる数はXboxOneSが多いはずだと言っている。安価で必要充分なスタンダード機は、マニア向けのモンスターが登場したからといって立ち位置が変わるわけではない。

 彼らが意地で出す、意地の塊。公道を走れないレース用の車に、莫大な費用をかけるのも、巡り巡って普通の車が普通に売れるためである。だから別に、XboxOneXの発売に合わせて、マイクロソフトが売る気であるのならば同時発売しなければならないはずのゲームソフト『Halo』や『Gears of War』の新作のアナウンスはなにもない。

 XboxOneXは、それで完結したXboxOneX。
 具現化された彼らの意地。

 良いものを見た。
 今年も滴るほどに興奮した。
 しかしまあ、レースを見てレースカーを買いたいなあ、とはならないように、頭は冷静に、あんなすごいことをやってしまうメーカーの製品を応援しようかしらん、というくらいでいいのだと思う。だってXboxOneXがいくらお手頃価格でも、4KやHDRに対応したディスプレイも買ってこないと、宝の持ち腐れだ。昨年のE3では、私も「VR元年にヴァーチャルリアリティに対応した新型Xboxを発表」したのがProject Scorpioだと書いているが、今年のE3では、だれもゴーグルをつけていなかった。驚くことに、公式にVR関連の発表はなにもなく、マイクロソフトの偉いひともインタビューで時期尚早だ、と言っている。去年のアレはナンだったのか。ナンタラ元年というのは、まったくいつもアテにならない。その面でも、XboxOneXを本当に必要するのは、けっこうな未来な気がする。

 ゲーム機戦争は、風で動く。
 ショーケースに飾る、ものすごい子が生めたのは悦ばしい。そこに張りついて、かっけー、とヨダレをたらす人間の子がいてこそ未来がある。スマホいじってんのをゲーマーと呼ぶような未来を破壊するんだXboxOneX!! ゲームの国のあこがれのスーパーカーとなれ。

 Xと命名した理由は「No power greater than X」だと表現されていた。つまり「Xに勝る力はこの世になし」ということだが、どういうことだ。Xboxと名付けた原点にかえってプレイステーションをパワーで圧倒するということか。
 細かいことはいい。叫んでおこう。
 Xな箱の二十一世紀で一番新しいX!!
 なんらかの液で冷える未来仕様!!

 いや、実際の話、ピコピコいっていたファミコンが高性能になりすぎて、超計算能力で物理的に発火しかねないから冷却のためになんらかの液を詰めたゲーム機が生まれましたって。それを私は一生のうちに体験していて、まだ続くのである。どこへ行ってしまうのか。

 長生きしたい。ミサイル飛んできて欲しくない。あしたも遊びたいよドン・フライ!!
 すごいのちょうだい。



 そういや、XboxOne買ってきたときに遊び倒した、あれの続編も発表だったE3。

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『XboxOneを買ってきた』の話。

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 『サイコブレイク2』



 『鉄拳7』で遊んでいるプロレスラーたちもついでに眺めておこうか。



 毎年、春は、たのしい季節だ。

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(追陳。『とかげの月』はニュースサイトではなく、吉秒匠妄想サイトなので、記事に正確性はない。なんらかのヌルヌルした液が詰まっていたらおもしろいなということでそのように匂わせて書いたが、厳密に技術的な観点でお伝えすると、それは密閉された金属の箱のなかに気化しやすいさらさらの液体を少量詰めたシステムである。気化と液化を延々と繰りかえすことで、周囲の熱を移動させるという仕組みだ。なので、XboxOneXを殴打用の凶器として使うと、振り上げたときに「ちゃぽん」と音がする。なんらかの液の量にもよるとは思うが、たぶんする。私の書いたことを真に受けてXboxOneXを使って背後からの暗殺を企てたのに失敗したじゃないかと言われても困るので、念のため書いておく)



 初めての図鑑、というようなものを読んでいて、二歳の息子に。

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「ひこうきだよ、見たことあるだろ」

 と口にして、ふと思う。

 ……見上げたことは確かにあるが、大阪の都会のほうに住んでいるので、頭上を通過する飛行機は、アリくらいに小さい。ごー、と音が聞こえるたびに見上げて、ほら飛行機だと指さしはするが、実際のところ息子が、ちゃんと目で追っているかは怪しく、プレーンズのミニカーを持っていて『プレーンズ』も何回も観ているが、そこに出てくる飛行機と、空を飛んでいるそれとが、同じものだと認識できているかといえば、まず間違いなくできていない。

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 よし、真夏になる前に、飛行機を見に行くか。

 電車に乗って、大阪を出て、兵庫県の伊丹へ。大阪には関西国際空港というものもあるのだけれど、使ったことのあるひとならばご存じの通り、あれは島である。蒼穹のファフナーを連想させる、人口要塞島だ。エスカレーターに乗ったら、前に拳銃がぶら下がっていたりもする。

 もちろん、伊丹空港だって大阪国際空港という名なのだから、拳銃を持った空港警察官が、やいテロリストと身構えて待機はしているのだろう。だが、あれは、見事なまでに街中だ。そのせいで騒音問題から国際便が消えていったのだが、逆に言えば、いまでも、兵庫の伊丹、大阪の豊中にまたがって鎮座する、地上に開かれた空港なのである。

 おかげで、最寄り駅から歩いて行ける。伊丹空港に近いのは、阪急電鉄の蛍池駅。蛍池駅を通ると、あたりまえに「空港へはモノレールを」とアナウンスされているが、実のところ、歩いても十分そこらである。空港ビルには、機内食が食べられるレストランがあったり、シミュレーターで遊べたり、なにより、展望台で恋人たちが肩を寄せあったり。

 しかし、今回の目的は、二歳児に生まれて初めての間近で見るでっかい飛行機の爆音を聴かせることだ。

 となると、兵庫県のJR伊丹駅まで行くといい。ちょうど、大阪から行く大阪空港の、裏手に当たる。つまり、空港ビルの反対側だ。それはつまり、滑走路だ。そして、滑走路のすぐ横に、公園がしつらえてあるのだった。空港に行くよりも、飛行機が近くで見られる公園なのである。

 伊丹には公園が多くて、大阪からもちょうどよい距離なので、バイクでうろつくことが多い。だから私は知っている。伊丹市のホームページでは、スカイパークまでの道のりを、公共交通機関で行く、として三例を示し、所要時間はいずれも約10~20分、と書かれているのだが。

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伊丹スカイパーク・アクセス/伊丹市ホームページ

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 蛍池駅からあたりまえにモノレールに乗りなさいというアナウンス同様、この「スカイパークへはバスで行きなさい」というのも、多分に断定的である。まあ、道路が見事に整備されているとは言いがたく、ベビーカーなどでは、なんどもガッタン、となりかねない感はある。この時期になれば、歩いて行けるというから行ったのに、途中で熱中症というケースもあろう。市としては、ぜひとも市バスを使ってくれというのは理解できる。ので。

 伊丹スカイパークへの道のりを検索した、あなたに、私が代わりに断定的に言ってさしあげる。

 JR伊丹駅から、伊丹スカイパークまでは、歩いても約10~20分だ。
 日傘を持って、飲み物も持って、長袖を着て、行ってみよう。

 駅を出て、見落とすことができるはずもなき、イオンモ-ルへ向かう。

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 陸橋をわたり、イオンモールに侵入、直進すると見つかるモール中央のエスカレーターで一階へ。花屋とイオン銀行のあいだから、イオンモールを出る。

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 駐車場横の通路をホテルイタミを凝視しながら進み、猪名川へ。

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 橋をわたる。

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(余談ですが、写っている見たことのないカラーリングのゴミ収集車に息子は大興奮でした。ふだんと違う街に行くと、そんなことが面白い。この街のひとには、この色のゴミ収集車があたりまえなのだろうか。奇怪な)

 このあとは、なにも考えずに直進。迷うところはいっさいない。さわやか親父ジャパンを横切る。

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 横切るところで気づく。お弁当を持ってきたのに、おかずが炒め物なのに、箸もフォークも忘れてきた。さわやか親父から購入。プラスチックフォークセット100円。バスでなく徒歩だったからこその瞬間であった。

 ドラッグストア・サーバも横切る。このほかにローソンもあるし、手ぶらで来ても、お弁当からおやつに日焼け止めまでそろう道すがらだ。

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(余談ですが、写真が小さくて判別できないかもしれませんが、赤い消火栓に広告が下がっている。黄色い看板。「ウコンの力」。伊丹にはその大工場がある。県道沿いに。バイクで前を走り抜けると、あの独特な甘ーい香りが空気に満ち満ち満ちていて、そこを時速40キロで走り抜けるだけでもヘルメットのなかで息を止めずにはいられないくらいなのに、あの工場のなかでいちにち働いているひとたちがいるのだコレに慣れられるものなのか人間の適応力というのはスゴいなイヤもしかしたら工場で働くひとはみんな鼻栓をしているのかもしれないデモこの甘ったるさはカラダに染みつくだろう家族のひともムセやしないのだろうかむしろそれにも慣れてウコンの力が夫の匂いになってうっとりしたりする妻ができあがったりするものだろうか、などということを考えずにはいられず、いつも事故りそうになる。季節の風を感じられるのがバイクの良いところだけれど、ウコンの力も感じてしまうのは困ったことだ。けっこう私のなかで、伊丹といえばあの匂いというくらいに強烈な印象である)

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県道13号線 - Google マップ

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 着いた。

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 噴水で水浴びをする子供たちの向こうに、ジャンボジェット離着陸。

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 最初こそ息子も興奮していたが、小一時間もいるうちに間近で見る飛行機群があたりまえのものになり、公園の遊具のほうに興味が移る。

 なんにせよ、これで飛行機を飛行機と知ったはずだ。

 が、帰りに、イオンモールのトイザらスに寄ったところ、彼がこんな素敵なもの見たことがないこれを買えとねだってきたのは、ほらこれ今日いっぱい見たやんと私が勧める飛行機のオモチャではなく、プラレールの新幹線はやぶさであった。

 認識と理解のうえで、やっぱり飛行機よりも電車だというのならば、それは別にかまわないのですが。一時間、延々と通勤電車が行進するDVDに夢中なくせに、いっしょにオートバイレースをテレビで観ても、まるで興奮してくれないのと同様、スカイパークまで徒歩で飛行機を見に行ったのに、帰り道ですでにそれには興味が失せているという。

 なにかあるのでしょうね、電車というやつには。私は、あまり強く興味を持ったことが人生においてないので理解しがたいところがあるのですけれども。



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