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『ブシロード/スターダム』のこと。


 日の本の国のプロレスリング観測者として、そのニュースに触れないで通りすぎるわけにはいかない。後々、あそこが結節点だったね世界が変わったよね、というようなことを書くことになったとき、振り返る地点として検索できるようにしておかねば。

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スターダムがブシロードグループ「キックスロード」と事業譲渡契約記者会見 – 株式会社スターダム

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 プロレスを観ないかたでも、ご存じであろう。

 ブシロード。

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 『ミルキィホームズ ライブ in 武道館』のジャケットはアニメキャラだ。だがしかし、それを買ったひとが観る、武道館公演とはつまり、なかのひとが歌う様子。だったら声優四人の写真をジャケットにしないとクレームになる、という発想を根底から覆した商法で、コレはコレでアリにした。キャラクターを売るブシロードという企業の、強引なところもある商売の間口の広げかたは、とどまるところを知らなかった。

 思えば、プロレスとはそういうモノである。

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 見て見ぬ振り、云わぬが花の約束ごと。それを解さぬは──愚か者。そう云うことでございますよ。ないものはない。ないと識って尚、あるように振る舞う──この国にはそうした文化があったのです。それは、この国の良きところ、残すべき在り方だと私は思いまする。

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京極夏彦『書楼弔堂 破暁』

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 西洋相撲と銘打って興行をはじめた力道山が碧眼巨躯のガイジンをカラテチョップで打ち倒す。そのさま観たさにガイジンに負けた国の人々はテレビを造りまくって科学の国として復興したけれど、その、日本の救世主とも呼べる民衆のヒーローたるプロレスラー力道山は、現北朝鮮生まれの本名キム・シルラク。

 今年のラグビーワールドカップでの多国籍風味日本代表の躍進に、テレビのコメンテーターは「日本の未来の姿を見せてくれましたね」と笑顔でコメントしていたが、言っちゃあなんだが、小さな小さな日本という島国でガラパゴス的に進化した西洋相撲の在りかたは、昔から世界のお手本だった。それはひとえに、日本人という観客の良質さにある。

 UFCという世界最大の歴史ある格闘技団体が、ファイトナイトと名付けている、地域密着型の興行がある。世界中を回って、その土地にフォーカスしたカードを組むというサービス精神満載な大会を、私もテレビを通して観ている。そして気づくことがある。

 土地の英雄たる格闘家と、ガイジン。そのふたりが闘うのに、入場シーンでガイジンに向かってブーイングしないのは日本大会だけだ。逆に言えば、日本以外の土地で、身内でない者は、人間性関係なく初見で敵視されるのみならず、それを真っ向から表明される。

 勝負のあとでも、そう。メインカードで、地元の英雄がガイジンに敗れたりすると、静まりかえる。そこでも、日本大会だけが違う。敵が勝とうが、試合が良ければ拍手が起きるのである。もしかするとその反応は、ファイトナイトと名付けたくらいなのだから、煽って熱狂させるつもりのUFC陣営が狙ったところではないのかもしれない。だがしかし、その特異性は、世界にテレビ中継されていることが誇らしくなる、この国の間違いなく良いところだ。

 あいまって。この国は妖怪の国でもある。妖怪がいると信じている者はいないが、現代においても、ガタリと音がすれば、猫かと疑う前に、怪異を視る。知らぬ間の傷はカマイタチのせいで、夜の営みを拒否られるのは枕返しのせいである。

 わけのわからないできごとを、物の怪がやったとか、なにかに憑かれたから今日のあいつはああなのねとか、納得できる国民性。西洋の、ベッドの下から出てくる怖いだけのブギーマンとは違って、ここでのモンスターは有益だ。ものごとに説得力が出る。だから、あえて信じる。信じるなどと意識さえせず、川を見れば河童も視える。河童がいるから浅くても気をつけなさいと子に言う。こんなところで溺れるわけがないよと笑う子には、いかに河童が怖ろしいか語らなくてはならない。子供には、肛門に手首までツッコまれて尻子玉を抜かれるという話がよく通じるだろう。アナルの奥の本人もあずかり知らぬ玉が好物なので引っこ抜きに来る水棲生物など、大人でも怖い。説得力である。

 日本人は、ファイトナイトに熱狂していないから、敵の入場にブーイングしないのではない。する必要がないのだ。煽られたらノる。敵でないと知っていても、対ガイジンだよ盛り上がれという興行主の意向は理解していて、それにちゃんと酔ってもいる。日本大会は、毎回、超満員だ。ただ他の国と違うのは、信じていないことを信じているという矛盾を、矛盾ではないとまた信じたほうが有益であるという生きかたが、身に染みている。だから、ブーイングしないでも心は熱くなれるし、呼吸困難になるほど国の英雄を応援した直後でも、勝ったガイジンを讃えられる。河童が本当にはいないことを先刻承知の地球でも希有な人々。

 歌って踊るのが、笑うと唇の端に小皺の出る声優でも、脳内ではアニメキャラにできる。というか、そうでないことを解しながらそうであると思えてしまうのだから、無敵だ。有益に過ぎる。世界からロリータコンプレックスの大国と蔑視されるこの国でもあるが、その理由はおもにHENTAIと英語の辞書にも掲載されるようになった、日本の誇るべき文化に根ざす。大量に作られるコスプレポルノやアニメポルノ。コスプレなのだから本物ではない。アニメなのだから絵である。そんなモノでヌケるのかよ、あの国イッちまってんな、と世界に笑われるくらいに大量生産されているわけだが、実のところ、ほかの国では真似のできない、そのイッちまっているポルノ群が、世界で消費されているからこそ、広まったHENTAI。

 昭和という戦後の時代、日本人レスラーも、世界のプロレスに参戦した。自爆カミカゼ、ゲイシャ忍者にカブキ。軍服サーベルコスプレの日本人レスラーを、シュッとした金髪がやっつける。やられ役コスプレが似合いすぎて、いつしかコミカルに描かれていくようになる日本人。でも奇襲は忘れない。土下座して、油断させて、口から毒の霧を吐く。

 いっぽうそのころ、日本国内で独自進化を遂げていった昭和プロレスは、逃げ場のない巌流島で一騎打ちをしたり、ボクシングの世界チャンピオンにガチで挑むといった方向性で客を沸かせたあげく、ハイブリッドレスリングなることを標榜する団体まで現れた。自動車でHVといえば、電気とガソリンの両方の良いとこ取りをしたものだけれど。レスリングでは……

 プロレスと格闘技。

 くだんの、ハイブリッドレスリングを謳って旗揚げされた団体は、現在では完全なる格闘技団体になった。しかしその流れのなかで、そういう興行も隆盛を極めた。

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 格闘技の選手がプロレスをして、プロレスラーも格闘技をして、グラビアアイドルも狂言師の母息もリングに上がる。

 見て見ぬ振りをするには、イキすぎた感は確かにあった。しかし間違いなく、妖怪を粋と視るこの国で、それは一瞬にせよハマったし、またひとつのプロレス独自進化ぶりの果てを見せた。

 そこで、である。
 話は戻る。

 巌流島でありモハメド・アリである、日本のストロングスタイルと呼ばれるプロレス団体、新日本プロレスの祖、アントニオ猪木が、UFCのテレビゲームで名高いゲーム屋に株を売り、それを今度はブシロードが買った。

 ブシロードは、集客に陰りの見えていた新日本プロレスを立て直し、世界進出をはかる。

 同時進行で『KNOCK OUT(ノックアウト)』旗揚げ。

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・ new blog posted. < 〔妹麗〕mairei - virgin sister beauty. > : http://yoshinogi.blog42.fc2.com/blog-entry-683.html

・ キックのイベント「KNOCK OUT vol.1」での青山ひかる、を詠んだ。 単純に妹キャラというのでもない、得体の知れない周囲への無関心オーラが孤高さと紙一重で、デコピンすべきか狂おしく抱き守るべきか悩ましいところが妹麗でした。 http://www.knockout.co.jp

twitter / Yoshinogi

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 ラウンドガールに目が行ってはいるけれど、旗揚げ戦から私も観た。いや、その前身である、キックボクシングの選手が主宰していた興行のときから観ていたから、そこに新日本プロレスのブシロードが噛んでくると聞いて、期待と不安あいなかばだった。ショーアップしてくるのだろうな、儲かるから噛んでくるんだよな、という観点で観たために、どうしてもショーアップのかなめ、ラウンドガールを凝視してしまったきらいはある。

 そこまで平成の話。

 そして令和。
 冒頭のニュース。

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 グラビアアイドルから女子プロレスラーに転向した選手の活躍によって集客した女子プロレス団体が、ブシロードの傘下に入った。

 単純な話、この国で、ガチの格闘技と、男子プロレス、女子プロレスの、それぞれに規模のある団体をワントップが動かせる状態になったのは、ハッスル以来のこと。集客数をV字回復させた新日本プロレスのファンは特に、今後の展開が、時代のあだ花となったそれに重なって見えるニュースである。

 現に『KNOCK OUT』のリング上で某選手がさかんに新日本プロレスへの参戦を希望すると発言しはじめた。唐突な感は否めず、年明けの東京ドーム大会という具体的な日時まで出したことから、実現するのではないかと観る格闘技観測者は多い。

 そのなかで女子プロレスという駒を得たブシロード。

 逆説的な話になるが、世界でも女子プロレス団体というものがかくも乱立して、しかも成り立っているというのは、日本だけである。昭和において、リング上で歌謡曲を歌う女子レスラーに女性ファンが群がるという、なにかが視えているにしても特異すぎるだろうという過渡期を経て、令和では女子レスラーが男性向けイメージビデオを出すというようなことになっている。

 会見のなかで、ブシロード取締役は、国内で女子レスラーの新日本プロレス参戦は当面ないと明言しながら、海外の新日本プロレス興行で「なぜ女子の試合が一試合も入っていないのか」と言われたことが起点だったとも語っている。

 クールジャパンの代表格たる企業として世界を見ると、独自すぎる日本のプロレス、格闘技の在りかたがリスクと映ったのかもしれない。世界最大のプロレス団体はアメリカにあるが、その団体は二十世紀からディーヴァ(女神)と呼んできた女子レスラーを、男子と同様に呼ぶことにした。世界最大の格闘技団体では、昨今、女子選手の試合がメインに組まれることが多い。

 世界にクールだと見られてきた、この国の独特であるがゆえに良いところは多い。しかし、インターネットの世紀。プロレス団体も、格闘技団体も、ぴっちり男子と女子を分離させているこの国のふつうが、世界からはあまり好ましくない特異さとして見られはじめている。

 そういうことを感じさせる、ブシロード側の言葉だった。日本のなかでは当面はない。けれどいつでも変革はできるようにしておく。国外の興行ではすぐにでも女子の試合も入れるということなので、この先は完全に、日本に棲む民の意識がどちらに転ぶか。

 私個人は、なんでもありな嗜好だから、どうなっても愉しむ自信はある。ただ思う。この国の良きところ、残すべき在りかたは、ブーイングがない会場の寛容な雰囲気。望遠レンズを装備したプ女子やプ男子は、ヒト対ヒトを観ていながらも、見えないものを視るHENTAI。リング上の百鬼夜行は微笑んで観ても、客席の妖怪と妖怪は傷つけあったりするかもしれない。混ぜるな危険。この国では特に危険。見えないものを視る人々の国で、棲みわけてきたものが垣根を取り払われて、たとえば新日本プロレスの地上波テレビ番組で、観るつもりはなかったひとに見えなくてもいいものを視せてしまうことだって在りうる。というところを世界を見て動くブシロードさんには、よろしく気をつけていただきながら回していってもらいたいものだなあ、と考えるニュースでした。



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