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『鮫サプリ』のこと。




テレビの威力をみせてあげるわ。

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映画『ロボシャーク vs. ネイビーシールズ』

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 と息巻いた母は、次の瞬間には娘に、この動画どうやったらネットに上げられるかと問うてしまう──

 『ロボシャーク vs. ネイビーシールズ』は、サメと海軍との戦いを描いているようでありながら、ネットとテレビの関係性を必ずしもネット賛美ではない視点も保ちつつ皮肉った名作。

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『ヒロシマノワニノニク』のこと。

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 先日、ここで広島県三次市の鮫の刺身の話をした。カタカナで書くとヒロシマミヨシノワニノニク、の話。

 と、そのすぐ直後。NHKの『鶴瓶の家族に乾杯』なる番組で三次を訪れ、常盤貴子がワニを食うという放送がありまして。現地のかたも鮫の刺身についてはそんなウマイもんじゃねえと、のたまっておられましたが。

 ええ、ときおりこういう偶然はあるのですが、時系列的にうちのが直近のニュース記事として扱われまして(ちなみにそこからまた時間の経った現在では「三次 鮫 とかげ」で検索していただくと一発で出ます。いろんな語句に「とかげ」を足せばココへたどりつく。ありがたい)。

 すごいよテレビの威力。びっくりする。ネット全盛の、いまでもこれほどかという。おばあちゃんがウマイものじゃないと言っている三次に行かないと食べられない肉のことをテレビを観たあとで検索するひとがそれほどまでにいるということを、電脳空間に棲んでいるからこそ感じてしまう、これもロボシャーク的な皮肉。

 というわけで。
 まだちらほらと影響力の残っているうちに、サメネタを追加しておこうかとロボシャークから導入してみたのですが……

 サメネタが、ぱっと出ない。

 なにかひねり出そう。
 うーん。

 と絞ってみたところ、頭に浮かんだのはアレ。医薬品を売っていたりもするもので、自然な連想といえばそうなのですが。

 鮫サプリメント。

 特定のサプリについて語るのはネット上では色々問題があるため(倫理的にではなく、ネットで個別の医薬品をレビューしてはいけないという法的な決まりがあるのです。鮫サプリは医薬品ではなく食品に分類はされるのですが、安全運転)、代表的な製品の成分を書き出してみましょう。

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1日6粒当たり
深海鮫肝油 1800mg
ジアシルグリセリルエーテル 500mg
スクワレン 800mg
オメガ3脂肪酸 40mg
DHA 25mg
EPA 5mg

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 鮫には鰾(ひょう、うきぶくろ、Swim bladder)がない。

 鰾は、ヒトでは肺に当たる。多くの魚では、肺呼吸のための器官ではなく、そこにガスを溜めたり抜いたりして浮き沈みをコントロールする器官。もとは肺だったものを、改良して水中での便利機能を持つ内臓に進化させたらしい。

 その鰾が鮫にはない。
 それは推察するに、鮫が地上から水中に逃げた「陸の負け組」ではないからである。鮫は海に生まれた、海に生きるハンター。最初から、水中で活動することに特化してこの世に生を受けた、神の傑作。陸や空に逃げようなどといちども思ったことさえないので、空気呼吸するための肺なんて必要ない。

 もう、そのあたりの魚ごときとはデキが違う。鰾を持つ魚どもが浮き袋で浮かんでバタ足で進んでいるのに対し、鮫は、ある意味ヒト同様に、クロールし続けている。鮫の全身骨格は軟骨だ。獲物に噛みつくための歯以外の骨をすべてやわらかくすることで、ヒトには不可能なクロールというかバタフライ泳法を可能にした。腕なんて回さない。全身がムチのようにしなる。鮫は浮いているのではない。絶えず泳いでいる。そのためだけの特注な肉体を授けられている。

 逆説的に、泳がないと沈む。

 ヒトも真水のなかでは泳がないと沈む。ただ、肺があるので、空気を溜めれば、じっと浮いていることもできなくはない(技術的な問題なので、できないひともいる)。そう考えると、鮫は、ハンター業に従事している泳ぎ続けるスイマーでもあるわけで、そりゃもうマッチョ。筋肉のかたまり。筋肉は重い。そのうえ浮き袋もない。

 さすがに、なにかあるでしょう。

 鮫は、肝臓に比重の軽いアブラを貯めている。

 アブラは水に浮く。ヒトだって脂肪太りのひとは浮きやすいはずだが、鮫のように二十四時間泳ぎ続けていてアンコ型を維持するのは食費がかかりすぎる。そこで海に生まれた海の主、鮫さまは、運動したら消費されるような脂肪ではなく、油そのものを内臓に溜めておくという美しい生まれかたをした。

 そのアブラが、肝油として商品化された。

 言ってしまえば、液体レバーだ。他の動物のレバーを食しても栄養満点ではあるが、鮫の場合、みずからの進化によって肝臓の中身が肝油という液体になっている。とろみをつけて飴にでもすればいい。

 そのむかし、ビタミンA欠乏症というのは国民病だった。脚気(かっけ)の検査(膝の下を叩いて反射で脚がぴくんとなる)実験を中学校でやるはずだが、その昔の子供たちはそれがぴくんとならずに死んだりした。ぴくんとならないから死んだという直接因果ではなく、ビタミンAが欠乏すると免疫力が低下するので、あらゆる病気にかかりやすくなる。

 肝油ドロップは、大げさでなくこの国を救った。
 いまでもさらなるビタミンを加えたりして、サプリメントの古株重鎮として不動の地位を築き販売されている。

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 栄養状態がむしろ行きすぎた現代日本においては、肝油はマイナスを引き上げるサプリとしてではなく、健常者をさらに頑強にするミラクルアイテムとして販売されている。アッパー系だ。

 鮫の肝油を食せば、精力アップでお肌ツヤツヤ、みたいな。よく使われる宣伝文句として、深海鮫が例にあげられる。

 深海一キロで生活する深海鮫の肝臓は、な、な、なんと全体重の約四分の一。そこに詰まった肝油が高い水圧にも耐える浮き袋の役割を果たし、太陽光が届かず、酸素も充分に得られない状況ながら、すさまじい水圧さえもものともせずに深海鮫を泳ぎ回らせているのです!!!

 だから買え。
 飲め。

 それであなたも暗闇で目が見えるようになる……という宣伝意図はないだろうが、ビタミンA欠乏症の代表的な疾患である夜盲症や失明の逆を張るイメージを売りたいのだということは伝わってくる。あなたも高水圧のなかで生きられるほど元気になれます、とは言っていないが、深海を泳ぎ回る鮫と消費者を並列でイメージさせる戦略ではあるだろう。

 まあぶっちゃけ、レバー食えば元気になる。
 鮫の肝油でも、効果はあるだろう。

 ところで、さきほど書き写した某社の鮫肝油成分表のうち、そういうスーパーマンになれるよ成分として代表的なのが上のふたつ。ジアシルグリセリルエーテル500mgと、スクワレン800mg。ジアシルグリセリルエーテルは免疫機能を強化して白血球数を増加させる。スクワレンは新陳代謝を活性化。超防御と超回復こそヒーローの必須パワー!!

 さて、ここまでの話を流さず読んでいたかたは、そろそろ笑い出していらっしゃるかもしれない。

 鮫肝油は、基本、濃縮工程を経ない。鮫の肝臓をそのまま搾っただけ、をいっそ売りにする商品が多い。レバーを食べると元気になる。鮫の肝油でも効果はあるだろう。さっき書いたこと。

 が。上の成分表ではスクワレン800mgのところ、1000mg配合!! を叫んでいる鮫サプリもあるのだけれど、その大増量された1000mg。書きなおすと、1gである。

 よくドリンク剤で、タウリン3000mg配合!! というような商品があって、となりにはどこのメーカーだかよくわからないタウリン2000mg配合の商品が、ずっと安い値段で売られていたりする。タウリンがなんであるかの説明ははぶくが、それもまた肝臓に作用してヒトを元気にするとされている成分。安いのと高いのの差が1000mg=1g。

 タウリン3000mg配合の薬用ドリンクは、それだけで医薬品になることはない。鮫サプリ同様、別に薬屋でなくても売れる。ということは基本、副作用はない。多量に飲んだとき、問題になるのはドリンク剤においては糖分であって、実のところ、あれを飲んで元気になるのは、ほぼ糖分とカフェインのおかげ。タウリンは?

 タウリンがなんであるにせよ、だ。
 冷静に考えてみよう。小さじ一杯が5gである。

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 3000mgは3g。小さじ半分ちょっとの量。それを摂取して、劇的に瞬時にヒトをアゲアゲにするほどアッパーな成分であるとすれば、医薬品として管理されるか、むしろ危険薬物として指定されなければおかしい。大さじ一杯飲んでしまうひとだっているはず。アゲアゲになりすぎて鼻血でも噴いたらどうする。

 そういう意味では、日本以外でエナジードリンクといえばの『レッドブル』あたりは、誠実。

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 カフェインと糖分で元気になるとはっきり言っているし、飲みすぎたら鼻血噴くよというのも注意喚起はしている。

(余談だが、最近、薬屋で手軽に買えるカフェイン剤で自殺を図るひとが多発して、カフェインを管理しようというような話が、この国では持ち上がっている。ロープは首を吊れるし、ビニール袋は窒息できるから管理しようというような話に聞こえる。議論すべきは、カフェイン剤くらいしか手に入れられない層にまで自殺という文化が華咲いていることだと偉いひとたちは気づかないのだろうか)

 そういう意味では、鮫サプリ。

 レバー絞った生汁、小さじ五分の一。

 メーカーさん主催の勉強会でサプリに関してはいつも言われることだが「プラセボ効果」を消すようなことはやめてくれと。ビタミン剤でもガンが治ることはあるんだと。そりゃあるだろうが、あるから治りますと言っちゃいけない。

 ……だれの得にもならないから、この話はやめようか。

 鮫が鮫という独自の海の生物であることで、だからもっとも得をしたのは、やっぱりサメをワニと呼び、その刺身を愛したひとたちなのだ。

 ヒトは体内で生まれてしまうアンモニアという毒を、肝臓で無毒化することによって生き長らえている。アンモニアを肝臓で尿素に変えて排泄するが、昨今では、排泄しきれない尿酸結晶による若年性痛風が多発しているように、けっして上手い仕組みとはいえない。

 それに比べれば海に住むたいていの生物は、アンモニアをそのまま排泄する方法をとっている。まわりが水だから、体内に置いておくよりもさっさと外に出してしまうのが利口なやりかただった。しかしそれも、陸から海へ逃げた者どもの弱者の知恵だ。

 鮫は尿素浸透圧性動物である。ヒトと同じようにアンモニアを肝臓で尿素に変え、しかしそれを体内に溜めている。そのことによって、海水と同じ浸透圧に体液を保ち、海に毒されない。体内で生成した毒をもって、外の毒と拮抗し、そのバランスの狭間を泳いでいる。

 泳ぎをやめれば逝く。

 逝くと、体内に溜めた尿素が、細菌の働きによってふたたびアンモニア化し、その作用によってこんどは細菌が繁殖できなくなる。結果、肉が腐らず、山奥へ運んでも刺身で食える。

 泳ぎ続け狩り続ける。

 それだけに特化して創られし、神の子。全身が軟骨であるために、浜に打ち上げられた死骸が原形留めず未確認生物としてたびたびニュースになる。化石にもならない。硬い歯だけが残って、考古学者にも太古の鮫の姿は正体不明。死してなお腐らず。

 周囲を海に囲まれた、この国で、海の王たるその生物にあこがれを抱くのは、やむをえないことなのであろう。その身から流れ落ちる体液をワインと崇め、うやうやしくいただくのも、しかたがない。

 信仰で病は癒える。元気なひとがより元気にもなる。それはまぎれもないことだ。薬屋風情がなんのかのと口を挟むところではない。信じる者は救われる。自分自身によって。

 鮫サプリは……

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