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『具のないピザあるいは具だけのピザもしくはピザみたいなもの』のこと。





「具のないピザみたいなことやってるな」

 ニヌウルタスが言うから、わたしは首をひねった結果、エメラルドを詰みそこねて連鎖を逃してしまった。落ち物パズルゲーム『ジュエルボックス』において、いちどの連鎖失敗はゲームオーバーに直結する。

「具をのせない前提では、それはピッツァクラストではなくてパンです。具体的名称をさがすならば、ピタパンかナンと呼ぶべきではないかと」

 しかたがないのであきらめ、ひとつずつ宝石を消して高さを減らすことに専念する。言い返されたニヌウルタスは、ため息をついて、背後から首に抱きついてきた。

「食えねえよ、こんなもん、のせる具がなけりゃ、ただの壁だ。のせない前提であろうとなかろうと、ピザなんだよ」
「トマトは当時、食用とはされていませんでした」
「当時?」

 左耳に舌を挿入してきたが、それはむしろ加味された克服すべき要素となって、集中力を増す。むろん、ニヌウルタスの遠慮のなさすぎる接吻へのではなく、彼が壁と呼んだマシンが、わたしの前頭葉を直接に刺激しているルッキンググラス上での『ジュエルボックス』の展開に。

「ピッツァが生まれた当時」
「そんな時期が特定されているのか」
「毒リンゴに似た赤い実を、潰してパンのうえにのせたとき、ピッツァは生まれました」
「パンにトマトをのせたのがピザの発明だった?」
「あなたの想像しているピッツァに限定すれば。ナポリという町で生まれ、町の名物になったのが起源と断定できます」
「観光客に食わせたわけだ」
「ええ。採掘をしたことのないわたしが、いまこの壁を使って『ジュエルボックス』をプレイするように」
「……それは、なんか違わねえか」

 この壁はかつて、仮想通貨というシステムのために構築された滑稽なまでに巨大な機械。仮想通貨の流通は、世界中の個人が所有するネットワーク上のマシンによって監視されていた。おのおのの瞬間に、健全な流通が成されたことを証明しただれかに、いくばくかの仮想通貨そのものがあたえられる。その行為は、なにもないところから価値ある物を掘り当てる行為と見立て「採掘」と呼称された。

「パンもトマトもすでにあったけれど、それを組みあわせようとは考えなかったのです」
「よくそんなものを客に出したよ」
「むろん、まずは自分たちで食べたのでしょう」
「宇宙の歴史を発掘できそうなマシンで、ドットビットバイトなテレビゲームをプレイするのが、それに似ているという話のキモがわからない」

 だがしかし、個人が所有するマシンでは競争が困難になるまで採掘の速度が上昇すると、採掘者たちは協力しあい、膨大な土地に建造した膨大な電力を消費して膨大な熱を発するマシンを組み上げ、それらのコストを回収して余るだけの仮想通貨を手に入れようとしたが、もちろんネットワーク上のあらゆる場所で同時進行的に同じことがおこなわれ、採掘の速度は加速度的に上昇し、群れた採掘者たちも、さらなる加速度で膨大な×3なマシンを組み上げ続けなくてはならなくなった。

「ネットワーク上に新たな計算式が出現して、わたしたちの解答を待っています」

 ニヌウルタスが、徐々に荒い息になるので、耳がくすぐったい。

「ネットが消滅しているのに」
「そのはずです」
「だったら、どこから」
「そと。でしょう」
「……観光客か?」

 背後にいて見えないニヌウルタスの、左頬とおぼしきあたりに手をのばす。ふれたのがほっぺたかどうかは自信がなかったが、温度は間違いなくそこにあった。

「あなたなら、こう応えるかと」

 ルッキンググラスの映像を、彼の前頭葉にも、つなぐ。無限に落ちてくる宝石が、色を合わせては消えゆく。わたしの操作は見事なものだった。

「観光客に、わけのわからんものを食わすな」

 涙声。
 それが返事だろうと、想う。

「電源を落としてもいいでしょうか」

 だれであれ観光客は、パンもトマトも『ジュエルボックス』も知らない。そういう相手にはピッツァの例えよりも、わかりやすかったはずだ。かつて過度な採掘レースの熱に焼かれて滅んだ者たちの生き残りが、いまではそのマシンの片隅を使って無益な数メガバイトの落ち物パズルゲームに興じている。

「かろうじてゲームができるサルか」
「自由意志の有無は示しました」

 言い切って、電源を落とす。
 二度と入ることはない。
 それが可能な生物は、ここを捨てて去る。

「消滅したネットに接続できるすげえやつなら、小麦のない星で、もういちどピザが焼けたりしねえかな。ついでにトマトものったやつをさ」

 ニヌウルタスのほっぺたと想われる肉をつまんでひねると、痛え、と声をあげ、彼は、わたしを頭だけで振り返らせた。音を立ててむさぼられる。わたしが求めたものを惜しみなく、すべて与えてくれる。具ののったピッツァに、いくらかの未練はあるにしても。

 これ以上の世界はなく。
 そのことだけを知っている。
 得た教訓を、わたしたちは忘れないために、くり返す。
 ──サルであれ──
 よりもっと、そうであれ。

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Yoshinogi Takumi
 Shonen-ai Cooking Elegy
 Song 25
 『Power off meaningless pizza...』

(吉秒匠
 BL料理哀歌
 25曲目
 『具のないピッツァの電源を切り……』)

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○材料

ピザの具。

○作り方

焼く。

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 ピザを週一のペースで焼く。
 という話を以前にしました。

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『ピザ六景』の話。

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 レシピは、こう。

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『ピザ生地とソースのレシピ』のこと。

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 ピザ生地レシピ再掲。
 分量を少し多めに変更。
 この星にはまだ小麦があるので。

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○材料

強力粉 500グラム
ぬるま湯 370cc
砂糖 大さじ1
オリーブオイル 大さじ1
ドライイースト 大さじ1
塩 ひとつまみ

○作り方

1. ぬるま湯をボウルに入れます。
2. ドライイースト、砂糖、オリーブオイルを加え、泡立て器でまぜます。
3. イーストが溶けたら、強力粉の半量と、塩を加え泡立て器でまぜます。
4. 強力粉の残りを入れ、片手でまぜます。
5. 生地がまとまったら台に移し、こねます。
6. ボウルにオリーブオイル(分量外)を塗り、まとめた生地を入れ、乾燥防止のためにサイズ違いのボウルやアルミホイルでフタをします。春夏は常温。秋冬はオーブンの発酵機能、もしくは暖房器具を使用。一時間半から二時間ほどで、もとの三倍程度まで膨らめば完成です。三等分した生地を、手や麺棒で丸くのばし、お好きな具をのせ、200度以上(設定できるならば250度くらいあればなお良い)のオーブンで15~20分、焦げ目がつくまで焼きます。

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 第六工程に。
 お好きな具をのせ。
 と、書いてある。
 当たり前だけれど、ピザを焼くのって、食べる前。できれば直前がいいという固定観念のいしずえは、チーズかかっているんだし、熱々がおいしいでしょうというところ。

 私も、そうやってきた。

 だがしかし!!
 駄菓子菓子。
 暑い。夏が、夏すぎる。今年ってば。

 オーブンどころか電子レンジ加熱さえもが暑い。

 我が家の独自な要因も重なる。

 私、長年にわたって家電担当者だったこともあり、電化製品を見ると、もにょもにょっと仕様書が頭に浮かんで、消費電力もイメージできる。それがなんの役に立つかというと、自宅でブレーカーを落としたことがない。常時可動する巨大なマシンや、常時録画するテレビシステムなどを愛しているせいもある。暑くなると倒れてしまう恋人を持てば、自分は暑くなくても部屋の温度は絶えず気になるものです。それが愛。意識して生まれるものではない。

 そういう意味で、私の家族は私のマイニングにも私のプロレス生中継録画にも愛が薄いので、容赦なくピザを焼きながら掃除機とか、ドライヤーとか。

 私が昼間、家にいる日にピザを焼く。
 私は二階でエアコンを効かせて物を書いている。

 家族がいる夜は、この夏だから一階もエアコンが入るし、汗かいたねえ、お風呂だねえ、などとやっている。

 その横でピザを焼くのが怖い。

 エアコンごと、メインブレーカーが落ちて家中真っ暗とか。イヤだ。クーラー止まって風呂の湯気が充満するなか、配電盤を懐中電灯で照らす……想像するだけで逃げたい。電気を使いたくない。私のマシンたちを止めるな。我が家には電気沸騰ポットがない。あれはスゴく電気を食う。自動保温型だと、どのタイミングで再沸騰させるかも予測がつかない。そんなものは家のなかに置かないのがハードディスクを止めないための一番の方策であると私が思うので。

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 とにかく暑い。
 冷やしピザでよくね?
 冷えたチーズはそれはそれでビールのアテになるだろう。焦がしたチーズのおやつだってあるじゃない。私はそう思う。私が思うのでそうする。

 上で作ったピザクラストは、フライパンで両面を焼く。
 ナンのように。

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『カレーが添うナンのカロリー』の話。

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 いちおう写真を撮ったが、生地の糖分が蜂蜜か砂糖かという違いだけで、見た目はまったくのナン。撮る意味なかった。

 そのうえで、具は別に焼く。
 オーブンの角皿にすべてをブッ込む。
 例のアレを敷いて、くっつかないようにして。

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『フッ素樹脂加工を再生する代替案としてのシリコン樹脂加工アルミホイル』の話。

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 玉ねぎ、小鳥の肉、キノコにパプリカにんにくコーン、にんにくの芽、アンチョビ。子供のためにジャガイモなども入れる、そういうものは電子レンジで先に火を通す。余っていたキャベツの切れ端とか、レトルトのミートボールとか。生卵も割り入れる。勝手に焼けろ。

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 チーズはスライスチーズでよし。トマトソースは焦げそうなので入れない。塩コショウ少々。あとの味は勝手におのおのつければいいじゃないか私に言ってくるな。

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 いつものピザ的に250度20分くらい。

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 サラミが焦げたし卵も火が通りすぎの感があるが、火は通っている。食べられる。数枚分が二十分で終了。これでもうオーブンは使わなくていいのだ。ブレーカーの心配をしなくていい。夏は暑ければ暑いほどに瞬間消費電力の心配ばかりして、おちおちビールを飲みながら昼間録画したプロレス会場の風景を眺めたりもできやしない。でもそこ、せっかく使わないでいいようにしたのに電子レンジでコーヒー煎れようとしないっ。鍋があるだろう。ガス使えよ。ガスはブレーカーが落ちない。コスト的にどうであろうと、環境的にどうであろうと、結果的にその行為が温暖化を進めて来年がさらに暑くなるのだとしても好きだ。好きは止められない。クリティカルロマンティカルな響きにうっとりする。好きは止められない。ああ止められない。

 さあこれでなんの心配もなくなった。
 ガンガンにクーラーの効いた部屋で、回るハードディスクから吐き出される真夏に汗だらけな男たち女たちの傷つけあう映像に興じながら、ピザらしき物を食う。

 クラストはハサミで鋭角に切ってみると、ピッツァっぽい。

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 冷えている。暑いのだからちょうどいい。
 ソースがかかっていない?
 そこにピザソースもケチャップもマヨネーズもしょうゆまで置いた。チリソ-スとかマスタードでもいい。デスソースでも。好きにつければいい。

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 厳密な意味でそれがピッツァであるかどうか。ナポリピザではまったくないことは確かだが、ならばヨシノギピザと私が銘打ってしまえばそれで済む話だ。

 優先順位をつける。
 それが生き抜くすべである。
 ブレーカーの心配をしないために具のないピザを焼く。
 私の夏のありかた。
 しあわせなので、これでいいと思う。
 問題が起きたら、また考える。

(ありうる問題として、具だけのピザ方面は、あまりに早く焼き上げすぎると、この気温で雑菌の繁殖が、という懸念はある。夏場の鍋放置食中毒はくり返される悲劇。食べる直前でなくてもいいけれど、朝や昼では早すぎる。ピッツァの概念は破壊してもいいが、そのくらいの常識は持ちあわせましょう、と心がけてはいるつもりです)

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Yoshinogi Takumi
 Shonen-ai Cooking Elegy

24曲目『姫始め葷縛り』
23曲目『また逢ってタコス』
22曲目『彼は彼のそれを彼と呼ぶべきではなかった。』
21曲目『形状と呼応』
20曲目『轢かれ鉄のサイジ』
19曲目『黒い彼が焼いたぼくのための白いパン』
18曲目『となりの部屋』
17曲目『ヴィアール遭遇』
16曲目『アネ化けロースカツ』
15曲目『逆想アドミタンス』
14曲目『恋なすび寿司』
13曲目『バーベキュー厳峻鋼』
12曲目『茄子はダシの夢をみるか?』
11曲目『すっぱくても、平気。』
10曲目『踏み絵ムルギティッカ』
9曲目『ひとくちだけカトルカール』
8曲目『春節の静かな賞品』
7曲目『ナンを焼くと両手がつかえない。』
6曲目『タマレってなに?』
5曲目『あらいぐまのすきなもの。』
4曲目『ピッツァみたいにぼくを食べてよ!!』
3曲目『クリスピー・プロ・フライドチキン』
2曲目『青くてカタいアボカドのパスタ』
1曲目『春餅/チュンピン』


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