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『トミカ博を緩歩する』のこと。




 今年の初めにプラレール博を攻略した。

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『プラレール博を攻略する』のこと。

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 その数ヶ月後に、同じようなイベントを攻略してもクリアしがいがないので、今回は「攻略」しない。わびさびである。引き算の美学だ。時間は大切だがその価値は主観による。トミカ博のチケットを買いながら、トミカ博を休日の一部に落とし込んで緩々と歩きまわるすべについて書く。

TomicaExpo201805

 咲洲(さきしま)は、大阪府大阪市住之江区にある人工島。未来構想テクノポート大阪プロジェクトにもとづき大阪市みずからの手によって税金を投入、巨大施設を建てまくったが二十世紀の終わりには完全に破綻したという、まさに夢の跡。そのはしっこにあるOsakaMetro南港ポートタウン線無人機ニュートラムに乗って「トレードセンター前」まで行くのが規定コース。なのですが。

 私、都会に住んで、郊外へ仕事に出るという毎日で、満員電車に乗ることがない。たまに会議や勉強会でやむなく大阪から神戸へ向かう満員電車に乗ったりした日には、着いた駅のトイレでえづきながら帰りたい帰りたいと大粒の涙をこぼすような状態になる。休日もほぼ平日なのでどこ行っても空いている。それがほら、ゴールデンウィークだから。トミカ博に行ける期間のなかで、私に与えられた休日は、一般的に見ても祝日だった……コスモスクエアまではまだいい。しかし、破綻した孤島のオモチャみたいなモノレール。そこにわめく子供たちを含んだ人々が詰めこまれる満員状態……イヤだ、まずそれがイヤだ。詰めこまれたくない。モノレールのなかで泣いて吐く。

 というわけで、いつも通りにゆっくり昼まで寝た。できれば行きたくないが、息子は前日から「トミカワールド行くねえ!」と眠ることさえ拒否して真っ暗な外へいまから行くのだと靴下を探すような有様だった。寝て起きたらと言った手前、起きたのに行かないわけにはいかない。でもまあ大阪在住の強み。行くならすぐそこ。ぎりぎりまで粘って出かけ、コスモスクエア駅で降りた。ニュートラムには乗らない。

 ちょうどお昼。

 コスモスクエア駅の前には大阪入国管理局のビルがある。そのさらに前は海。海沿いはシーサイドコスモという公園が整備されている。人の姿はない。人工的に造られ発展を約束されていたはずが破綻した孤島ならでは。とにかく建物がことごとくムダにでかく、そのことごとくがいまは活用されていない。

 シーサイドコスモに設置された立派なテーブルで、お弁当を食べた。

TomicaExpo201807

 プラレール博のときも午後から行ったが、その時間帯でさえ、レストラン街は、どの店も行列ができていた。行列は私がこの世でもっとも嫌いなものだ。わかっているなら弁当を作って行けばいい。なにせ咲洲。廃墟にはこと欠かないので、雨でも屋根のあるところはいくらでもある。

 その日は晴れていたので、海を眺めながら食う。いまごろ朝からトミカ博に並んだ者どもは無駄に行列を作っておるのだろうなという意味不明な優越感を抱きながら、おにぎりをいただく。巨大なコンテナを詰んだ船が目の前を行く。後ろに小さい船も引っぱっている。シーサイドコスモでの魚釣りは禁止だという看板がそこかしこにあるが、釣り竿を持ったひとたちが普通に歩いているのがいかにもリアル世紀末都市治外法権風。

 食べ終わり、海をあとにする。
 もちろんせっかく回避したニュートラムに乗ったりしない。

 トミカ博の催されているATCホールまでは、二歳児を連れて歩いても十五分ほどで着く。ニュートラムが大人片道180円である。ふたりで行けば、往復の切符代で新品のトミカが一台買える。プラレール博ならば、モノレールもアトラクションのひとつと考えられなくもないが、トミカ博に行くならば、天気のいい日に道路沿いのちょっとした散歩のほうが私好みだ。

 とはいえ、車はあまり走っていない。途中には、地図には「さきしまコスモタワー」と書いてある本当は「大阪府咲洲庁舎」という実は日本四位の高さを誇るタワーがある。もとの名はなんとなく不吉な「大阪ワールドトレードセンタービルディング」。

 写真を撮るには素晴らしい被写体だ。

TomicaExpo201803

 二歳児は「すごいねえ」と見上げて言わなかった。その口から出たのは「こわいねえ」。外観からはわからないはずだけれど、幼子は大人の視えないものを視るというし、なにか滲み出すものがあるのかもしれない。大阪府咲洲庁舎は、日本第四位の高さではあるが、現在の空きフロア率では世界の名だたる超高層建築群のなかでもぶっちぎりの一位に違いない。働いているひとも観光客もいないのに、警備員は多数配置されている。前回のプラレール博の記事のなかで危惧した、テロリストの基地になることを真剣に恐れているのではなかろうか。なにせほぼ無人の250メートル55階建てなどという建造物は、ここにしかない。現状、世界一のっとりやすいシンボルタワーだ(近々、多くのフロアがホテルになる予定。大阪湾岸へのカジノの誘致が決まったら、そこには世界の有象無象が宿泊するわけで、無人高層ビルよりもある意味近寄りがたいものをその身に纏うことになるのか……超高層ホテルとして開業したあげくカジノ誘致失敗で、廃墟ぶりをさらに加速させるというシナリオもあるかもしれない)。

 ちなみに、大阪府咲洲庁舎の一階フロアはアート作品も展示されたテーブルチェア完備の広場になっている。

TomicaExpo201806

 トミカ博の終わった帰り道、この像を見ながらコーヒーブレイクをいただいたが、あれだけ会場が混んでいたにもかかわらず、目の前の超高層タワーの一階には、がらんとした空間に二歳児の齧るポテトチップスの音だけが響くという、本当に世界の大阪いまここでしか味わえない高級廃墟感であった。しかも、ポテトチップスを齧る二歳児のことを、二名の制服警備員がずっと見つめていた。すごいところだ。

 さて、さすがにトミカ博会場に着いてしまった。

TomicaExpo201802

 会場の外には、トミカのペイントをした実車が飾ってあった。tomicacarである。禅問答のような響き。

 プラレール博のときに悟ったが、あの立てボードから顔を出して記念撮影するというのを何枚も撮らされて、私はそんなものを撮りたくはないと。ふだんから、人物を撮るのに目線を向けられるとカメラを下ろすタチである。幼い息子がピースサインをおぼえてしまったのが哀しい。私が撮りたいのは私を空気にして、空を見上げて憂う彼女の横顔や、飛びゆく鳥を目で追う彼のまなじりだったりするのに。イラストボードから顔を出すのに行列って。

 却下。並ばない。あれはだいたい小さい子と行ったなら、大人の側の娯楽だ。そして私は大人だが、穴から顔を出した息子の写真を撮ることに興味がない。

 トミカタワー!!

TomicaExpo201801

 基本的にプラレール博と違うところは、トミカは動かないという点だ。その欠点を補おうとピタゴラスイッチみたいな、からくりスライダーというコーナーもあったが、そこかしこでトミカが止まったりひっくり返ったりして、係員がてんやわんやともとに戻す繰り返しというピタゴラスイッチとしては放送不可な出来だった。あれ絶対、ちゃんととどこおりなくひとの手を借りずに永久的に回り続けるところまで作れなかったけれど期日が来たのでそのまま持ってきましたというもののようだった。現金なもので、観客はそういうのにあっさり醒めて、ものすごくおもしろそうな企画にもかかわらず、からくりスライダーに人だかりはなかった。

 それに、トミカをチビッコの手の届くところに置くと、悪気はなくてもポケットに入れてしまうという事態が起こりかねない。仕方がないので、アクリルケースに入れる。そうするとタワーにしたり、壁一面だとか、物量で押す方向になってくる。数百のトミカが壁に。それを一個一個目で追う子供ども。私の目には無数のキャンベルスープ缶を並べたアンディ・ウォーホル作品のように映るが、おさなごたちはスープ缶のひとつひとつを指さして「ポタージュっ」「コーンっ」とやるのだ。終わるわけがない。動きやしない。目はキラキラしている。そりゃそうだろう。一日中指さしても数え切れないトミカの群れ。知らない車もあるので父を振り返るが……知らねえよ。私は電車も車もがんばって名前をおぼえたことはいちどもない。

 そんななか、ステージショーが始まった。えらいもので音楽が鳴るとチビッコたちも動く。年の初めのプラレール博では、ドモりまくるおねえさんに萌えたことが私には一番の収穫だったが、あれから数ヶ月で、なんと司会は声を張ってダンスもできるどうやらプロのスジのおねえさんである。

 そう、今回は『トミカ博 in OSAKA~さあ、はじまる!ゆめのトミカワールド!!~』。トミカプラレール45周年ということで、トミカワールドという架空世界の設定がリニューアルされ、あの! あの! トミカプラレールの歌に代わるトミカの歌までもが作られてしまったのだった(ということは、プラレール単体の歌も間もなく作られるはずである)。数ヶ月前にエンドレスで会場にかかっていた「とみかっとみかっぷられーる!」という歌。息子は近ごろ私が替え歌で吹き込んでやった、あらゆる三文字に「マヨネーズ」をプラスして歌い「ごりらっごりらっまよねーずぅってゴリラとマヨネーズ、ベストマッチやないねえ」とセルフつっこみを入れるという芸までおぼえたところだったのに新曲だ。



 布教のためにプロが来た。
 で、新しいトミカワールドをビデオで紹介しつつTくんとゲームやダンスをたのしむという趣向。

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 ヘルメットに「T」と書いたのがTくんなのだが。大声で人を呼び集めておいて、けっこう宣伝臭いビデオを観せられて、もうすぐTくんとはお別れですっ、となったところで集まったひとの多くがそんなことより行列に並ばなくちゃと席を離れ、行列に興味がなくて離れなかった私などは前に詰めてくださいと前に移動したら、その後。

TomicaExpo201804

 サイクロンインターセプター登場だった。ショーが始まる何十分も前から並んで最前列にいたのに、知らされていなかったばかりにTくんだけを見て席を離れた人々が、あわてて戻ってきてでもみんな前に詰めてしまったので最後列になるという、そんなつもりはないのに前で見ることになってしまったこっちも心苦しい展開。なぜドライブヘッド登場を隠す必要があるのか意味がわからない。その後も、なんとこの夏ドライブヘッドの映画が公開! というトミカ博に来ている十人が十人とも知っている情報を、ここではじめて発表するかのごとくにもったいつけて画面に出してみたり。



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 ……そりゃね。ドライブヘッドショーはじめますよと呼んでおいて、後半でTくんが踊ってもだれも見ないのでニュートミカワールドの布教にならないということからの構成なのでしょうが。上手いとは言いがたく。おねえさんの司会はプロなので上手すぎて萌えず。なんとなく消化不良でステージをあとにした。

 会場には、この春新発売のトミカ『日産 スカイラインGT-R(BNR32) 』の実車もあって、比較的大きなお友だちと車談義に花を咲かせるお父さんの姿などがちらほら。

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 二十年以上前の車を、この春新発売だという玩具のラインナップがそもそもどこターゲットなんだという感ですし、キズひとつない二十年以上前の車を見るがために海上の孤島にまでやってくる人々がいるという需要層の広さ。実際、プラレール博と違って、トミカ博には大人カップルがけっこうおられました。デートですかね。ミニカー見に。集めているんでしょうかね、会場限定のトミカをショップでカゴいっぱい買っている大人も多い。それ毎年なんども各地でやっているんですよね、軽く実車買えるくらい金使っていますよね。

 大人カップルは、男×男も女×女も多く、一方、そりゃ無茶だろうというお母さんひとりで子供五人を連れているのとか、ミニカーよりもまわりの人間模様がたのしかったりする下世話な自分に気づく。いつもそういうひとを一定数見るのですが、遊びにつれて出て、はしゃぐ子供をずっと怒鳴って追いかけているひとなんかは、夫婦喧嘩は犬も食わないみたいなもので、あの親子はあれでたのしいから怒鳴り怒鳴られでもいろんなところに足を運ぶのでしょうか。ひとそれぞれですね。と、行列を回避するために午後から参戦の自分都合で手抜きな父が言えたことでもないのですけれども。でもね、私、人生のなかで実際に前売り券を買ったけれど行くのがイヤになって行かなかったイベントなんてあまたありますし。主観であるがゆえに時間は大事なので、たのしむために行くのなら、たのしめそうにないときは別の時間の使いかたを考える。

 こういうまったりわびさびペースならまた行ってもいいさ、くらいにしておいてくれたほうが、私もまわりもつつがなく続けられると思うので、許せ。

 そしてプラレール博で学んだ攻略の作法もやっぱり少し実践。閉場前にはがんばる。今回は、残り三十分で課金ブースをいくつか廻り倒した。行列はなし。どころか八人乗りの「のれるトミカ」に、ひとがいなくてひとりで乗ったり。

 あ、ただ、同じ時間帯に同じことやっていたひとのなかでちらほら見かけたのですが。16:30終了でプレイチケット販売は16:15まで。どこのブースでなにするからチケット何枚かを計算しておかないうえに放送もちゃんと聞いていないと、端数のチケットが余って買い増すこともできず……あれって次のイベントで使えないんですって。ギリの時間で行列回避するならば計算力は忘れずに持っていきましょう。

 戦利品。

TomicaExpo201808

TomicaExpo201809

 アトラクションのひとつ、トミカスライダーをクリアしたので入手した金メッキバージョン・マツダ・ロードスターがレアものなのでしょうけれども。二歳児はよろこんでいましたが。本物のミニチュアという視点でどうしても見てしまうマシン好きの大人からすると「大阪だけに秀吉の茶室か」と、つっこみたくなる悪趣味。乗りたくない。恥ずかしい。ショベルカーやトラックは、ハズレではなくうちの二歳児があえて選んだ。自分で色を選んで組み立てられるランボルギーニ・レヴェントンはボディが赤でシートも赤という、これも実車ならタダでもいらないような配色のうえに、なぜだかデフォルトでレース場のセーフティーカー仕様。パトランプをつければ子供がよろこぶという発想なのか。世界二十台限定生産の闘牛レヴェントンを赤か青か黄色に塗ってパトランプをつけて……萌えどころがわからんというよりも、これも悪趣味に過ぎる。

 ところで、このレヴェントン。ネットで検索するとすべての色組みあわせセットで、多数転売されている。全色を作るためには何度も何度も、あのアトラクションに並ばないとならないはず。転売屋が並んだのか。二歳児に「コレをココにはめこんでねー」と微笑むおねえさんに大人が微笑まれたのか。「カッコいいのできたねえ」と最後の仕上げをしてくれるカシメマンに大人はどんな顔をして「ありがとうカシメマン」と言ったのか言わなかったのか。

 ああ、そういう意味の偽装でカップルを装っている大人同士の転売チームや、カゴいっぱいのミニカーもいくらで転売できるかを想像してニヤついているのも多いのかも。と思って見ると、また違った経済戦争の奥深さも加わった人間模様の奥深さが彩られて、なんにせよ、大人も退屈しないイベントではありましたとさ。

タカラトミーモール

タカラトミーモール


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