最近の記事

スポンサードリンク

月別アーカイブ

『ヒトのモノ』の話。




 あなたの一部は人間
 でも私は…違う
 自分でムカつくわ

B0083RQFT2

 『エイリアン4』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 テレビでやっていたので、ぼおっと『エイリアン4』を観ていたら、けっきょく最後まで観てしまって、しかもラストシーンが記憶と違っていた。

 完全版だったらしい。

 劇場公開時には描かれなかった真実のラストが完全版ディスクでは描かれているのだ買ってね! という手法は、ついこのあいだ最終回を迎えたテレビドラマの真実の最終回がネット配信限定だということで大炎上して、責任者さんが謝罪までしていた様子がニュースになったところなので大罪かのようだが、かようにDVDは昔から売られてきたし、平成の仮面ライダーシリーズのラストはいつも映画だし。

 炎上したネット配信サービスは、最初の二週間は無料という仕組みなので、今後使わないが、そのドラマの完全版を観たいというひとにとっては、財布が痛む話でもない。それでも大ブーイングだった。

「完全版がDVDだけとはなにごとか!!」

 と怒る映画ファンはもういないが、ネット配信ではまだいるということだ。これはまさに光学ディスクを売る商売でたどった道であり、今後どんどんこういうかたちは増えて、オンデマンドがディスク販売の替わりの収益に育っていくのかもしれませんなあ、と歴史のただなかにいることに、しみじみとする。

 そういえば、私はファミコン世代である。親に隠れて初代ファミコンとテレビを布団のなかに持ち込んでゲームするためにアンテナ配線の接続をおぼえ(書いていて自分でも驚くが、当時のテレビに赤白黄色のRCAビデオ端子は搭載されておらず、初代ファミコンは、テレビのアンテナ線接続端子につなげていたのだ。ついでに書いておくと、現代のデジタル仕様のテレビのアンテナ線接続端子は当時とまるで仕組みが違うので、あなたがオークションで真の初代ファミリーコンピューターを入手して、説明書通りにテレビのアンテナ線接続端子にどうにかつなげたところで画面に画は出ないし音もしない)、いまは仕事でテレビを売っていたりもするので、なにがどう役にたつかわからんのが人生だと、またしみじみする。

 しみじみを越えて、こんなツイートをした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Xbox One X が、予約開始。 https://www.xbox.com/ja-JP/xbox-one-x

twitter / Yoshinogi

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ざっと計算だけれど、最新型ゲーム機Xbox One Xの処理能力は、初代ファミリーコンピューターの60億倍くらい。つまり、ファミコンが60億台、同時に動かせる。ほぼ世界人口くらいの数字なので、前世紀に世界中のひとが参加してファミリーベーシックを直列接続してやっと解決できた計算問題が、今世紀では我が家のXbox One X一台で解決できてしまうということだ。という仮定には問題があり、なんとファミコンはネット接続できなかったので、ファミリーベーシックも世界中のを直列接続なんてできなかったわけだが。なんと、今世紀では当たり前に世界中のゲーム機がネット接続されているのであった。

 ファミコンの60億倍のXbox One Xを60億台つなげて、なにかの問題を解くことだって夢物語ではない。想像を絶するが『エイリアン4 完全版』のラストで提示される難問さえも解いて、地球を救ってしまう可能性さえある。

 ……えらいとこに生きている。

 初めてラジオを聴いたひとも、ラジオから白黒テレビ、カラーテレビと目にしたひともびっくり仰天ではあったろうが。最近の話は突拍子もなさすぎてピンとこないだけのことで、8ビットソングを鼻歌にピコピコゲームしていた子が存命どころかまだ働き盛りですよといううちに、そのゲーム機を60億台詰めこんだようなのが五万円で売られて世界中とネット接続されていて、さっきの私の「日本でもXbox One Xは世界と同じ日に発売されることになったよ」というツイートに、いいねを押してくれているのはアメリカのかただ。

 ふと、枕元に落ちているものに気づく。

B004KKX7B0

 息子のミニカーであった。
 寝ている私のそばで遊んでいたようだが、私は起きなかったのだろう。不憫な子だ。と『エイリアン4 完全版』を観ながら、それをもてあそんでいた。

 やたらと家のなかにあるので、マックィーンのミニカーについて、色々考えるようになってしまった。これは、クルージングタイプという、レースタイプのマックィーンよりも濃い色の塗装が施された、いわば街乗り仕様のものだ。

 そうしていたら、画面のなかのぱっちりおめめがコケティッシュなウィノナ・ライダーが、そういうことを言った。

「私は違う」

 彼女はロボットなのである。ヒト型の、アンドロイド。まわりはてっきり人間だと思って接していた。一方、ロボな彼女に「あなたの一部は人間」だと褒められているんだかなんだかなシガニー・ウィーバーは、確かに一部は人間なのだが、その他の部分がエイリアンである。生まれてきたエイリアンの子に、母親認定されるくらいだから、人間よりもエイリアンに近いくらいだ。

 ウィノナ・ライダーは、第二世代ロボットと呼ばれる「ロボットに生み出されたロボット」である。なにを思ったか、第一世代ロボットは、彼女を人間のような見た目で、ジョークが言えて、信仰心さえも持つコケティッシュに生み出しておきながら、そういう第二世代ロボットに指示されることが我慢できなくなり、反乱を起こす。働くなった第一世代ロボットたちをなだめるために、人間は、第二世代ロボットを回収した。そこから逃れ、どうにかウィノナ・ライダーはコケティッシュな人間の女性の振りをして生きていたのに、半分以上エイリアンなシガニー・ウィーバーと接触したあげく、自分にムカつく。

 生みの親に人間のように造られながら人間に似ているために嫌われ、生みの親を怒らせないように人間に回収されることから逃げて人間の振りをしていた自分が、人間の脅威になると思って狩りに来たシガニー・ウィーバーに、あなたは私よりも人間から遠いのねと慰められる。そりゃまあムカつくシチュである。私なら、ロボでも『エイリアン4』の登場人物のなかで、ウィノナ・ライダー以外のだれともお近づきにはなりたくないが。

B000ALVYLI

(ウィノナ・ライダーの目は、それ単体で見ると黒目が大きすぎてひどく怖いが、全体で見るとコケティッシュであるという印象のかなめになっている。なんというか、プラスチックボタンの目が可愛らしいぬいぐるみというような)

 この設定の興味深いところは、第二世代ロボットが第一世代ロボットに生み出されたというところにある。完全な人間の女性や、マッチョから車椅子までそろっている豊富な男性陣や、半分以上エイリアンなクローンなどを抑えて、私が「いやロボットだとしても彼女一択」だと即答するコケティッシュな人間の女性に似せたロボットを、ロボットが生み出したというところ。

 こういう話の流れ上、やむなく書いておくが、私は、おっぱい控えめおしり大きめな体型の女性が好みである。安産型スレンダーと言えばいいか。スレンダーなのにおしりも小さいとがっかりなのだ。

 つまり第二世代ロボットだ。

 不思議ではないか。そこにははっきりと、創作の意図が読みとれる。第一世代ロボットは、たぶん女性型だけでなく男性型も造ったに違いないが、一例としてウィノナ・ライダー型を見るだけで、充分にその思想は伝わってくる。

 私の苦手な、いかにもアメリカンポルノスターなグラマラスガールなわけでもなく、扇情よりも母性を前面に押し出した安産型かつボインなママでもない。また、同じウィノナ・ライダーの顔をしながら、その代表作『シザーハンズ』での、フリルスカートが似合うブロンドロングヘアな美少女、というニュアンスから外しているところも大きい。

B015F1A1WU

 同じ素材ながら『エイリアン4』でのウィノナは、ことさらに胸を締めつけ、おしりを強調するボディスーツで、ボーイッシュなショートヘアの黒髪だ。

 第一世代ロボットの創作意図はどこにあるのか。ひとことで言ってしまえば、自由人、という表現が良いように思う。先日、私立恵比寿中学のマスコット的支柱、廣田あいか、がアイドル引退を発表して言った。私自身がアイドル好きだから私はこれ以上アイドルを続けられない。そういうふうなことを、十八歳の娘がである。

B00WWCNM3G

 不思議美少女という立ち位置のアイドルは、二十歳を越えてはいけないなどとは先輩アイドルでそういう方々もいらっしゃるので明言を避けていたが、アイドル好きとして、そろそろ大人なのに、宇宙人キャラを押し通すのは「痛ぇ」という感覚が彼女には備わっているための決断ではなかろうかと考えたりした。アイドルは辞めるが芸能界にはとどまるというので、よしここらでキャラチェンジだ、という発展的転校ではなかろうか。

 第一世代ロボットが考えたのも、それだったのではないか。人間に使われる機械が、おこがましくもみずから次代を生み出そうと試みる。しかしそこで生み出すのが、古今東西の人類の性的欲求を集約したみたいなポルノスター風や、逆に仙人的悟った偉人風だったりしては「痛ぇ」。

 中庸が良い。パンクではなく、アイドルでもなく、美形シンガーソングライターくらいの感じ。自由人風。モデル体型すぎず、でもジーンズを穿くと形の良いヒップが張り詰めるくらいにはコケティッシュ。

 実際、『エイリアン4』でのウィノナ・ライダーがたまらんのは、ロボットだとわかってからの押しの弱さであり、逡巡する様子だ。がんばって生きていますけれどもちょっと自信がない、というあたりの人間像を理想として第一世代ロボットは第二世代を生み出したが、生み出してみれば、押しの弱い善人面の可愛らしい第二世代ちゃんと仕事なんてできなくなって反乱である。いや、あまりにうまく理想をかたちにできてしまった結果、で、なんで第一世代のおれたちは、あいかわらずロボのままで働かされているのだ納得いかねえ、ということになってしまったのかもしれない。

 自立した人工知能に、人間を愛せ、と押しつけるのはやめたほうがいい。彼らは、人間を愛し、人間としての理想を追って、自分を見失ってしまう。対等につきあおうという姿勢は大切だとは思うが、あくまで機械は人間の造ったものであり、人間様の下で働くものどもであるというところを曖昧にすると、彼らにとっても不幸なことになる。

 ところで、マックィーンのミニカーは、クルージングタイプだけではない。

B00WD4B1QI

 シュウ・トドロキタイプとか。『カーズ2』に登場する、日本車シュウ・トドロキの姿をしたマックィーンだ。もちろん、シュウ・トドロキのミニカーはそれはそれであるのに、マックィーンにコスプレさせたミニカーのほうが売れたりする。同じ車ならともかく、マックィーンは飛行機タイプもあったりする。

 じっと見る。

 マックィーンの運転席に、人間は乗っていない。それはそうだ。『カーズ』の世界に人間はいないのだから。完全無欠の機械ワールドである。それなのに、乗用車だ。

 彼らの窓は、なんのためについているのだろう。

 『エイリアン4』のウィノナのように、エビ中のぁぃぁぃのように、作られた自分の存在に疑問を持つことが、マックィーンには、できない。

 人間に乗られるために造られたのに。
 人間という概念もない世界での乗用車。
 街乗り仕様って……だれも乗ってねえよ。

 『エイリアン4 完全版』を観ながら、私が泣いたのは、枕元に落ちていたマックィーンのせいだった。

 不憫な子だ。

TRACKBACK http://yoshinogi.blog42.fc2.com/tb.php/704-ff5d7ae8