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『カーズ:オルタナティヴ~メーターの崩壊~』の話。



CarsMater

映画『カーズ』の主役ふたり。
いや、二台か。
特に、左の茶色いの。
メーターという名前。
二歳になる前の息子が、ママをママと呼ぶよりも早く、メーターをメーターと呼んだ。
なにがそんなになのか。
それ以来、朝起きると、これを握りしめ、寝ている私に知らせにくる。

「メーター!」
「はいはい、メーターな」
「これ。メーター!!」

頬に押しつけてくる。
知っとるっちゅうねん。
分析してみた。
メーターはレッカー車だ。
そういえば工事車両全般を男の子は好きなものだ。うちにもそういう絵本はある。クレーン車に、目鼻のついた。だがそのキャラに名前はない。目鼻のついた、ただのクレーン車だ。

深い愛には名前が必須なのかも。
それに、見ていて気づく。
メーターの動きは、速い。
彼を主人公にした、いくつかの短編があるのだが、そりゃあもう目まぐるしい。そして彼はレッカ-車なので、ワイヤーフックを使いまくる。故障した仲間を牽引する。それは当然だが、ときにスパイダーマンのように、なにかに引っかけて、自分を宙へ飛ばしたりもする。
サーカスするクレーン車だ。

息子もメーターが、なにかを引っぱるという想定で、延々と遊んでいる。引っぱっているものを、吹っ飛ばしたりもする。

ここで写真を見ていただきたい。
トミカのメーターのフックは、やわらかい樹脂でできている。
息子は手にしたその日に千切った。
誤飲もある年齢なので、直さずにそのままである。
それから数ヶ月を経て。
いま彼の目には、どう見ても、ワイヤーフックが見えている。しかもそこだけ仮想なので、部屋の端から端までのびたりする。
寝ている私の頬に押しつけ、私の鼻にフックをかけて引っぱる。

「メーターぁぁぁぁあ!!!」

この時空には存在しないフックだ。
それを引っかけて気合いを入れる。
つきあうか?
つきあいませんよ、私は。
痛くないから怒りもしないし。
やがて彼は、なにかを連れて去る。
メーターの仮想のフックで、仮想の私を引きずっていったのか。
もういちど寝ることにする。
きっと寝室の隅には、彼の生み出した別時空の私が、ズタボロになって山積まれて、この時空の私を睨んでいる。おかげで睡眠時間を、もう少しでも確保できている。

ありがとう、私。

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 だがしかし、夢見がちなだけでは人生わたっていけぬだろうと、現実にメーターでものを引っ張れるように、リアルなチェーンと洗濯バサミをつけてやった。これでお父さんの鼻を挟んでひっぱったりはナシだぞと、強く言いふくめて。

 結果。

CarsMater2

 メーターのフックは土台から、もげた。
 弱ぇなドリームトミカ!!
 おさなごのドリームに太刀打ちできるくらいの頑強さは有していてもらいたい。

B004KKX7BA

 まあミニカーなんで、数百円のものですし、壊れたら新しいのを買ったっていいようなもの。実際、息子は微妙にバージョンの違うライトニング・マックィーンとメーターを数台ずつ持っていて、同時に遊んでいるから「メーターとメーターがいっしょにいるっておかしくね?」と訊いてみても、どこに不条理が発現しているのか理解できない様子。たぶん私が今夜、エイリアンにアブダクトされて、代わりに不出来な即席クローンが残されていたとしても、気がつきもしないのでしょう、薄情なやつだ。

 とはいえ、大人のほうは、『カーズ2』の美人スパイさん(もちろん車だが)が言うように、車体の凹みも想い出だったりするし、私はタンクの凹みを直さないバイクに乗っているくらいだし。

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『ライダー復帰』の話。

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 引きちぎれるクレーン部分は保管しておくにしても、クレーンの土台まで失ってしまうと想い出の傷を越えて喪失である。メーター卿のキャラクター崩壊である。というわけで、できうるかぎり新品を買い与えたりはせず、直して「おまえのメーターだろうが大事にしろよ」と諭したい。

 ので、ミニカーと同じくらいの値段の接着剤を買って常備しておきましょう。

B000TGLKPE

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 ※以下追陳。

 先日、『カーズ』を作ったひとたちの恐竜映画『アーロと少年』を観ました。

B01ERCVL9K

 なかなか、いろいろなことに配慮された設定が組んであって、シンプルなストーリーだけれど、だからこそ、個と個の絆とはなんであろうかと大人目線では考えてしまわされるピクサースタジオらしい良作。

 ただ、この映画、基本の設定がオルタナティヴもので。「if、恐竜が絶滅せず、人類よりも高い知能を持つ知性体として進化を続けたら」と、なっているのが、観ていてなんども『カーズ』と比べずにはいられなかった。

 『カーズ』には、人類は出てこない。車だけの、車の世界。そこで彼らは家族を持ち、愛や友情を育み、衣食住から娯楽までたしなむし、某国には女王陛下も存在する。単純な話、ライトニング・マックィーンと彼女がレストランでディナーをたのしんだり、メーターがピスタチオアイスと間違えてワサビ大盛りを頼むのに止めもしない日本車の寿司職人を見るとき、人類としては、「手がないのにどうやって寿司を握るんだ?」という当然の疑問が浮かんでしかりな世界である。が、観ているあいだは、そんなことは気にならない。

 そもそも、車に目鼻がついているミニカーを受け入れている時点で、あれはこの地球の並行宇宙ではなく、それはそういう世界であるのだと、了承済みだからだ。荒唐無稽の極北へ達しているがために、そういうものだと納得できてしまうのだ。

 その点が、『アーロと少年』の場合。

 たとえば、恐竜が農耕文化を獲得している。木の枝で編んだカゴに種を満載し、そのカゴを口でくわえて畑に種まきをしているのである。

 ……いやいやいや。手を使えないから口でまいているわけだが。じゃあ、その精巧に編まれた、口でくわえる把手までついたカゴは、何者が編んだのだ。

 その世界で、人類は獣のような知性しか持ちあわせず、猿たちは恐竜と折り合いが悪いようである。しかし、アーロたちは、どう見ても山から木を切り出して、加工して建てた家に住んでいて、石積みのサイロに食物を溜め込んでいたりする。口だけで石を積んで塔が建てられるだろうか。建てられるかもしれないが、日本の城の作り方も考えるに、やはり細かいところで角を削ったりする作業は必須なのではないか。首長竜のゾウのような手脚では無理ではないか?

 などということを、ずっと考えてしまうのだった。

 それが『アーロと少年』の興行成績が『カーズ』シリーズに遠く及ばなかった理由だと断じる気はないものの、観ながら『カーズ』の世界というのは、あらためて珠玉の出来ですなあ、と感心してしまったのです。

B00IEX4UII

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 ※以下蛇足。

 先日、『でも、結婚したいっ!~BL漫画家のこじらせ婚活記~』というドラマを観ました。

 結婚相談所がスポンサーで、作中にもそれが登場するとあって、まあ非のうちどころなくバレでもなんでもなく当たり前にハッピーエンドだったわけですが。

 こういうセリフがありました。

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 BLということを抜きにしたら、とっても心あたたまる、ラブストーリーとして読めました。このなかには、たくさんのあなたのやさしさが、あふれでている。



 ドラマ『でも、結婚したいっ!~BL漫画家のこじらせ婚活記~』

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 あ、書き忘れておりましたが、私、BL小説なども書いておりまして。このセリフ、に、うむ、と頷いたのです。

 私は、BLというのは俳句や短歌に似ている気がして、それを好んでいる。「BLということを抜きにしたら」とBL書きに向かって彼は言うけれど「五七五であることを抜きにしたら」などと俳句詠みに言ったりはしないでしょう。

 なぜ、ではなく、必要だから。
 この国が生み育んできた、珠玉の表現形式であり、文化。まだ少し若いので、ボーイズラブという形式は、なじみないひとを戸惑わせたりもするのですけれど。

 『カーズ』シリーズ最新作に合わせて公開された、日本だけのディズニー/ピクサー史上初ジョン・ラセター製作総指揮『カーズ』まさかの人類で実写化というミニドラマがある。



 マックィーンがヒトの幕井だと、一分三十秒ですべて語れてしまう話だと公式に。やはり『カーズ』は『カーズ』という形式があってのものだと再認識させてくれる、良いドラマでした。

 そういう形式があって、そこに添って詠むことで、あふれでてくるものがあるから、その形式を使っているのだ。ああ、そうだ。そのことを忘れないで今後も生きていこう──

 深く、教えられる。



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