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『二歳児のためのインターネット』のこと。



 内閣府が、十歳未満の子供のインターネット使用について調査した。十歳未満を対象にした全国調査は初めてだという。

 新聞で読んで、詳しい調査結果を内閣府のホームページで、あさる。

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低年齢層の子供のインターネット利用環境実態調査 - 内閣府

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 十歳未満の子供の親、二千人に、インターネット利用に関して質問する。

 回答の結果、突出していたのが、七歳と、二歳。

 平日に一日平均75分インターネットを使用する七歳が断トツだが、なぜだか、それに続くのが65分で二歳。

 七歳の子は、自分でタブレットを操作もするし、ゲームだってする。

 だが、二歳というのは。

 ちょうど、うちに二歳児がいるので、どんな感じかというと。もっとも接触しているインターネット機器は、Xbox360だ。書斎で、私はXboxOneを使っているので、旧世代機のXbox360は、リビングでDVD再生機となっているのだった。

(徐々にアップデ-ト対応され続けてきたXboxOneの下位互換は、いまや旧世代機Xbox360を片付けても困らないくらいに実現済み)

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『XboxOneを買ってきた』の話。

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 いま、うちの二歳児は、延々と一時間、ただひたすらに日本中の通勤列車が走り続けるというDVDに夢中である。

 再生の仕組みは理解している。Xbox360に、ディスクを入れると、列車のビデオがテレビに流れる。DVDは彼の手の届かない高い位置に置いてあるので、ディスクを入手するのには大人を呼んでくる必要がある。

 のだが。朝の忙しい時間に、大人しくさせるためにXbox360を起動させていて、そのまま電源だけ落として出かけることがある。大人としての使いかたはそうだろう。私だって、XboxOneにはずっと『Halo5: Guardians』のディスクが入ったままだ。

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『大魔王クッパ様が強すぎる件について』の話。

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 列車のビデオに夢中なら、そのディスクを、わざわざトレーから取り出すのは無意味に思える。だからついやってしまうけれど、二歳児の目はそのときキランと光っているのである。

 帰ってくる。そして大人の目を盗んで、Xbox360の、いつか赤く光ったあのギョロ目を押そうと企む。

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 ディスクが入れっぱなしなのをおぼえているわけではない。ときに大人が、ディスクを抜き忘れてしまうことを学習してしまっている。だからもう、結果としてディスクが再生できるかどうかは、本末転倒な話だが、どうでもよくなっていて、彼は、もしかしたら列車のDVDが再生できるかもしれないXbox360の電源を入れることに必死なのである。

 私は賢い大人だから、HDMI接続で、連動機能もあるのだけれど、あえてそれはオフにしている。つまり、Xbox360の電源が入ったところで、連動してテレビが点いたり、入力が切り替わったりはしない。結果、二歳児はXbox360のギョロ目を押して電源を入れることにはときどき成功するが、お目当てのビデオを自分で再生できたことはいちどとしてない。ないのに、やる。

 「観たい」という思いを、Xbox360に飛びつく行動で示しているのだと解釈できる。デンシャ、と発声することはできるから、口で言えばいいものを。猫よけのトゲまでなんのそのと、フェンスまで乗り越えてがんばっている。

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『幼児をテレビまわりに近づけないための方策』のこと。

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 どうせ観られはしないのに。二歳児というのは哀しい生き物だ。こっちも、これ以上フェンスを高くしてはテレビが観にくいし、言葉がそこそこ通じるようになったので、言葉での教育強化月間中。ひとに頼むことをおぼえなさい。いまからごはんなのに、がんばってXbox360の電源を入れたって、大人はきみのがんばりに心動かされて、ルールを変えていますぐ列車のビデオを観ようか、なんてことにはならないのだよ、大人だから。

 そう。七歳の75分は、きっと、本人の能動的な行動の結果だ。ゲームがしたくてゲーム機の電源を入れたうえでのゲームだ。

 しかし、二歳児は。
 大人が与えた65分だ。

 ……まったく近ごろの子供は、というか親は、という苦言が聞こえてきそうだが、この調査。そもそも、首を傾げるところがありはしないか。

 そりゃまあ、朝が忙しいからスマホでアンパンマンを観て黙らせました、という累計での65分であろうことは想像にかたくないけれども。

 たとえば私の場合。
 ノートパソコンを開いているときに、二歳児がやって来て、膝に座らせろと言われる。仕事中でなければ、そうする。せがまれて、列車の動画を再生してやることだってある。そのとき、DVDビデオ再生と、ネット動画のストリーム再生とを、わけて考えたりはしない。

 というか、我が家は、ひかりテレビだ。

ひかりTVショッピング

 ディズニーチャンネルを観る、その映像を運んできているのは、インターネット網。内閣府の調査の項目にも「インターネット接続テレビ」という項目があって「携帯電話の契約が切れたスマートフォン」と同じくらいの比率で使用されている。まあ、セットトップボックスを経由してテレビに映し出されている、ひかりテレビは、微妙に意図とズレているが、しかし、十歳未満の子供のインターネット利用というお題目に反してもいない。

 多くの親の場合、テレビとスマホの境目も、いまやあってなきものである。携帯電話の契約が切れたスマートフォンも、ネット接続できるテレビも、わざわざ子供にストリーミング動画を見せるために購入したわけではなく、気がつけばリビングにWi-Fi接続された機器が転がっていたという状況だろう。

 常時接続の、余っているインターネット端末で、アンパンマンを観せて子供を黙らすのは、けしからん? おかあさんといっしょ、は長寿番組だ。むかしから、おかあさんは、おかあさんといっしょを子供と観て、いっしょに歌って踊った。いちにち、一時間くらいか。スマートフォンで、おかあさんといっしょのネット配信をストリーム再生して、子供といっしょに踊ったら、けしからんか? 画面が小さいからか?

 いや別に、内閣府は、それが良いとか悪いとかいうことを調査しているわけではなく、はじめて十歳未満の子供に関してのインターネット使用の状況を調査してみましたよ、と言っているだけだ。良いか悪いかということを論じるのは、その調査結果を見た私なのであって、ゆえに私はいまこれを書いているわけだが、いかんせん、プロレスと格闘技の専門チャンネルを視聴するために契約しているインターネットテレビの存在が、脳内議論に水をさす。

 動画をインターネット経由で視聴するかどうかの調査自体が、だからそれでどうした、というふわふわしたものになってしまっている気がしてならない。

 このあいだ、元プロボクサー亀田興毅が、素人相手に四連戦した。ネット中継だった。回線がダウンするほどに視聴者が集まった。私も観ていた。サーバーダウンしたり、やっとつながったのもひどい画像でカクカクだったから、やはりテレビはテレビで観たいなあ、と思いはしたけれど、つまりそれは画像が安定さえすれば、映像を運んでくるのがテレビ回線だろうと衛星回線だろうとインターネットだろうと、どうでもいいということでもある。 

 それはどうでもいいのだが、このあいだ、同じ年頃の子を持つ友人が集まっていて、ごく自然に、おかあさんといっしょ、の番組の最後に流れる『ブンバ・ボーン』の体操をやっている? なんて話になったとき。

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「録画したのをそこだけ何回も再生しているわよお」という。ああ、そうだ、うちのデッキにも『宇宙戦隊キュウレンジャー』のエンディング、キュータマダンシングだけをチャプター編集したデータがある。

 ビデオテープの時代から、アダルトビデオのストーリー部分は早送りされるものだった。だがあれは、けっこう面倒なものだ。数分の絶頂シーンを繰り返し観るのも、片手で仕事しながら、もう片手のリモコンで操作しても、がっちゃんがっちゃん時間がかかって萎えがちなものだった。

 だがしかしいま、インターネット経由の動画を、一部たりとも早送りせずに観るひとのほうが少ないのではないか。私も、ひかりテレビで格闘技を観つつ別のことをしていて、あっと思ったら試合が終わっていたのでKOシーンへ巻き戻す、というのが当たり前のことになっている。

 ちかごろ、ストーリーのないポルノビデオは、確実に増えている。単なるシチュエーションの提示に終始し、はいこの娘はアイドル、この娘はオフィスレディ、と言いはするものの衣装と場所がそれっぽいだけ、という作りだ。

 ものすごく逆説的な話だが、これって、つまり、だれも観ないから、だれも描かなくなったのではないだろうか。いまだと、そういうことを言う先生はクビになるのかも知れないけれど、私の教えてもらった高校の国語教師は「お前らはすぐエロいところに早送りするんだろうけど、いっぺんちゃんと最初から最後まで観てみろって。映画撮りたいけれど撮れずにアダルトビデオ作っている監督なんかが、良い物語を描いたりしているんだ」と語ってくれた。女子もいる、授業中の雑談だったのは問題だったが、それで実際、私はいくつかのエロビデオをちゃんと観て感動したおぼえがある。

 ビデオテープやDVDでは、操作のわずらわしさから流しっぱなしにするということはある。だが、インターネット配信の動画では、そういうことはまずない。ママ友が集まって、最初から最後まで、おかあさんといっしょ、を観るだろうか。ブンバ・ボーンだけををタップ再生して我が子を踊らせてしまわないか。

 内閣府の調査の結果では、幼い子供たちも、半分はインターネットに触れている。私見で言うならば、ある程度の電子機器に耐性は作っておかないと、この先、スーパーやコンビニが無人レジになっていくのは確実だし、インターネット通販のありかたも、もっと生活から切り離せないものになっていくだろうから、幼いうちから、当たり前に普及しているものには、当たり前に触れておいたほうがいい。学生ならば休み時間や登下校時にリアル会話もあるだろうけれど、現代のいそがしい大人の友人や家族の会話はインターネットなくして成り立たない。ネットで発信も受信もできず、会って話さないとなにも決められない大人に育っては、家族崩壊以前に、今夜の夕食の話もできなくなってしまう。

 と思う一方、たかだか三十分の子供番組を、親のほうさえじっと観られず、観たい箇所をクリックが当たり前の視聴形態になってしまったのは、なにかを殺しているという確信もある。

 内閣府には、どうせみんな使っているインターネットを、どれくらい当たり前に使っているかの調査から、さらに踏みこんで、インターネットでの動画視聴が普及していくにしたがって「物語」が、寸断されてはいないかを調べてほしかった。

 村田諒太、疑惑の判定!!

 そのニュース見出しを翌朝見て、どれだけの、昨夜、村田諒太のボクシングの試合を観なかったひとが、動画を検索して観たのだろう。ダイジェストを。相手ボクサーが、ダウンした瞬間だけを。ボクシングがニュースになり、ボクシングの試合を目にしたひとはインターネットの普及でものすごく増えたわけだが、でも、翌朝のニュースで昨晩の試合を観返すことが当たり前になった結果、会場に足を運び、テレビのチャンネルを合わせて、入場から歓喜の雄叫びまでもをリアルタイムに早送りせず観たひとは、増えたのだろうか。まだ増えるのだろうか。

 オードリー・ヘプバーンという美少女が現れたよ、という口コミで、人々が映画館へ足を運んだ時代は終わり、ググって彼女の一部を見定めてから、好みのタイプであることを確信して映画を観に行くひとは行く。予備知識なしに噂だけを聞きつけて一本の映画を最初から最後まで観て「最初はあんまりだと思ったけれどラストシーンにたどり着くころには彼女に恋していたよぼくは」なんていう体験をしなくなる。インターネット網が、なにもかもの断片を与えてくれるために、自分好みでないものに時間を割くことがなくなってゆく。

 直感的なポルノ。キャッチーなダンス。しかし、人間と人間には、物語がある。面倒くさいところがあるから愛せたりするのであって、ググっても彼のことはなにもわからないから、試しに軽いキスでも迫ってみないと、なにもはじまらないのであって。

 映画や小説やマンガ、ゲームがなくなるとは思わない。だけれども、もうすでにインターネットが現存する世界に生まれた世代のあいだでは、ロールプレイング・ゲームが廃れはじめているように見える。タップするだけの簡単操作、なんてゲームを私はプレイする気にならない。でも世間では、簡単であること、物語を排除すること、絶頂シーンだけがあらかじめ詰めこまれていることで、あら素敵とトキメク観客は、どう見ても増えている。

 インターネットで動画を視聴するさいに、アンパンマンの絶頂シーンだけを選んで子供に観せたことがある、という項目も盛っておいてもらわないと。アンパンマンは、バイキンマンとドキンちゃんをアンパンチで海の藻屑とする。そこだけを観せて、うっきゃっきゃ、と二歳児を笑わせるだけでいいのか。バイキンマンにだって悲哀はあるのではないか。そんなバイキンマンのそばにずっと寄り添うドキンちゃんにこそ、読み解けば涙なくして触れられない、深い深い物語が宿っているのではないか。

 内閣府よ。そういうことだ。
 調査が甘い。

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