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『チョロギジャパン』の話。




ChineseArtichoke.jpg

チョロギ。
そういう名前の野菜だそうだ。
調べてみると、酢で赤く染めて正月に食すのだそうだ。
……食べたことねえなあ。
実家が関西のせいか。おせちは自作派だったからか。
しかしこれは、関西の道の駅で買った。
変なカタチだ。
英語で呼ぶと、
Chinese artichoke。
ぜんぜんアーティチョークぽくないが。
ちなみにアーティチョークの和名は、チョウセンアザミ。
漢字表記だと……

中華朝鮮薊?

混沌としている。
Wikipediaによると、
フランスでjaponaise(ジャポネーズ、日本風)と名前に付く料理には、必ず付け合せにチョロギを盛り付ける。
……必ず、という表記がWikiらしい。
そうでないこともあるに違いないが。
でも、それくらいチョロギなのだろう。

アメリカンプロレスを観ると、日本人レスラーは「必ず」言われる。

中国人?
韓国人?
なんだ日本人かよ。

おまえら見分けつかねえ、という侮蔑。
つかないのでキャラをつける。
奇声をあげることが多い。
読めない行動が多い。
口から毒の霧を吐くひと多数。
奇妙であること。
それがジャパンクール。
チョロギは、クセのない野菜だ。
揚げて塩ふって、つまみに最適。
いわばなんの味もしない。
あっさりフライドポテトのよう。
好き嫌いというレベルでもない。
まさしく、付け合わせのカガミ。
味ではメイン食材の邪魔をせず、奇矯な見た目で害はなく、大皿大会を盛り上げる脇役。
……そう思われているのだ。
これが世界の見る日本人なのだ。
辛いも甘いも苦いも酸いもない。
チョロギ的に愉快な変人。
むしろそうであれという願い。
本当にクールなところを魅せたい。
チョロギつまみながら、け、と思う。

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 アメリカとの戦争のあと、日本では力道山が、ガイジンを空手チョップで打ち倒すというスタイルでヒーローになったが、同じことはアメリカでも起こっていた。

 ヤマトとか、カトーとか、トーゴーといった日本軍人ぽい日本人悪役レスラーたちが創造され、倒されるためにプロレスのリングに上がる。特攻隊のバンザイ突撃がアメリカ人にとってホラーだったのは言うまでもなく、戦争には勝ったものの、真珠湾に予告なく自爆攻撃をかける狂気の民族が、ゼロ戦で市街地へ特攻してくる悪夢を、子供たちのみならず、大人だって寝汗をかいて見たことだろう。眠れないから、起きてテレビをつけると、狂ったようにわめく日本人レスラーたちが、正統派アメリカンレスラーにやっつけられている。ああ大丈夫だ、こうしてみれば、日本人というのはまっすぐつっこんでくるだけで、動物のようなものだ。インテリジェンスあふれるマイクパフォーマンスをともなった文明人たるアメリカ人レスラーの敵ではない。

 その流れは、上田馬之助やグレート小鹿、マサ斎藤あたりまで引き継がれる。だが、70年代に入り、日本では新日本プロレスと全日本プロレスが旗揚げされ、アメリカで悪役を演じていた選手たちも、アントニオ猪木やジャイアント馬場へケンカを売って日本へ帰る流れができ、テレビドラマ『スター・トレック』では、アメリカ初の日本人メインキャストとされるヒカル・スールーが登場する。

 苦笑いしたくなるのは、『スター・トレック』が日本でテレビ放映されるにさいし『宇宙大戦争』というタイトルにされたのはともかく、ヒカル・スールーが「カトー」に改変されたという事実である。以後、世界で一番有名な日本人の名は、日本でだけ加藤ということになってしまった。戦後のアメリカンプロレスでグレート・カトーがボコボコにされていた記憶も新しいなか、日系俳優が正義の味方の一員としてアメリカンテレビの超有名人になったという時代の流れを踏まえられるひとがひとりでもいたならば、凱旋した日本人エンタープライズ号主任パイロットを、カトーなどと呼びはしなかっただろう。

 あれが結節点だったのかもしれない。

 スター・トレックに日本人! でも名前が日系アメリカ人だから、日本人にわかりやすく、日本人らしい役名にしてしまおう。

 そういう発想が、アメリカ側から見れば、苦笑どころか爆笑モノだった。カミカゼハラキリホラーな民族は、多民族連合軍のなかで宇宙戦艦の主任パイロットにまで上り詰めた出自の複雑な彼を、わかりやすい日本人として描きたがる可愛い民族だったのだ。

 日本人は怖くないと気づいたあちらの要請に応え、生まれたのはヨコヅナ、そして、ザ・グレート・カブキ。

 悪役ではある。しかし、本物の力士ではないのにヨコヅナを名乗るニセ日本人。毒の霧を吐きヌンチャクを振り回す歌舞伎役者。夢に出てくるホラーの怪物とは、もう呼べない。かなりの割合で、ニヤニヤしながら観るたぐいのものになってしまった。ほら、日本人が出てきたよ怖いね(笑)。

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 そんな風潮で80年代、そして90年代。

 グレート・ムタも、タジリも、奇声をあげて毒の霧を吹いた。

 アメリカ社会に日系人も増えてきたのだろう。フナキは、ちっちゃくて陽気な日本人として、番組でマイクを持つことも多かった。ふつうに英語を話すアジア人が珍しくなくなったために、言語能力を持たない怪奇系キャラにこだわる必要がなくなったのだともいえる。

 ハイブリッドは、ケンゾー・スズキ。

 ゲイシャを連れて、神輿で入場する、アメリカ人よりも背の高い日本人。日本語で話すが、ゲイシャが通訳して叫ぶ。

 アメリカでの日本人レスラーの歴史は、日本人を笑う歴史だ。恐ろしい日の丸軍人のイメージを、戦後の悪役日本人レスラーたちが「でも弱いから安心」という図式で魅せた系譜が、いつしか、コワカワイイ、というニュアンスで描かれるようになった。寡黙で真意がわかりかねるから不気味だったはずの日本人が、かん高い声で日本語をまくし立て、アメリカ人にシッシッと指先であしらわれるのが定番になった。

 そして、二十世紀が終わった。

 アメリカンプロレスに、日本人キャラは、なくてはならないものだった。しかし、チョロギだった。

 二十一世紀、新日本プロレスや、DDTプロレスリングは、全世界に向けてネット中継を繰り広げる。アメリカンプロレスの選手プロフィールに、いま並んでいる日本人たちときたら、どうも二十世紀とはニュアンスが違う。

 Hideo Itami。



 Asuka。



 だれも笑っていない。日本人らしい名前に変え、やっぱりエキゾチックで、けれど、日本人の側も、笑われるためにキャラクターを創っていない。言い換えれば、団体が、参戦する日本人に、そういうモノを求めていない。

 『X-MEN』から派生したテレビドラマ『レギオン』の第一クールをこのあいだ観終えたところだが、妻の記憶をなくした白人男性が、自分の妻は中国人か日本人だったはずだと力説するシーンがあった。ジョークを言っているのではない。アメリカンドラマ視聴者たちは、真顔で「そりゃあ理想の妻はエロ可愛いアジア系さ」と思っているのである。

 単純に、熱狂の提供者としての日本人。

 先日、シンスケナカムラがアメリカで創り出した熱狂に、私は泣き笑いだった。クソ格好良かったのだ。



 あいもかわらずのチョロギである。

 妙だ。日本人て、変だ。
 でも、そークール。

 心底、世界にそう想われていることが伝わってきて、うれしかった。期待通りの日本人レスラーは、いま、ヌンチャクも毒霧も吐かず、日本語訛りの、たどたどしい英語を自分で話す。それさえカッコいい。日本人が来やがったぜ、と観客がワクワクテカテカしているのがわかる。怖がってもいないし、笑い飛ばす気もない。スターとして日本人を観ている。彼らは、その日本人の次の試合を観るまでは死ねないので明日も生きるのだ。

 ところで、いまやクールジャパンの代表格たるジャパニーズアイドルの出世株『バンドじゃないもん!』の生存片割れツインドラムなリーダーの好きな食べ物は、公式にチョロギである。

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バンドじゃないもん公式ウェブサイト / プロフィール

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 完全無欠の創られたファンタジーキャラクターアイドルが、いまもっともアピールする日本の食材はなんだと突き詰めた結果、現れたのはチョロギだったということだ。他のメンバーのプロフィール、年齢りんご5個分、や、出身地プレアデス星団、と並び立つほどに、チョロギは愛らしく日本を象徴する食べ物なのである。

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 赤く染めたほうが可愛いが、揚げて塩のほうが美味い。もう、奇声をあげる必要はない。素の変なところで勝負して通用するチョロギジャパンなのである。

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