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『破れないバイクカバー』のこと。



MOTORCYCLECOVER.jpg

夏が終わり。
ミシンを準備。
バイクカバー。
もう十年以上も前。
いま乗っているオートバイと、
いっしょに買った。
良い品です。
高価です。
最初は、ねえ。
数年後に少し裂けた。
買い換える?
いいえ。
安いのを買い足しました。
二枚がけ。
以来、外側のカバーは、
年を経るごとに安物に。
一年で買い換える二千円くらい。
そして今年も夏が終わり。
安いバイクカバーの、
背は焼け、ミラーで裂け。
日よけにも雨よけにもならん。
でも、生地の端は新品同様。
そこ切り取って、
十年選手な相棒へ。
かくして年々、
内側のカバーは、
つぎはぎで分厚くなっていく。
内側なので見た目はどうでもいい。
ミシンでざくざく縫うだけです。
ただねえ、これが。
家庭用のミシンなもので。
生地を回転させるのもひと苦労。
なにせ4Lサイズのバイクカバーが、
年々、分厚くなっていく。
今年は、くじけそうになった。
ミシンの隙間を生地が通らない。
いったん抜いて逆から縫ってみたり。
十年かけて分厚く成長した相棒を。
扱いにくくて買い換えたろか、とか。
いやあ、でもね、愛着がね。
バイクカバーでもさ。
こうなると、中身のバイク同様。
私の人生の一部なのです。
なかば……いや完全にキレつつ、
毒づきながら、縫うにしても。

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 ミシンの音を子守歌に育った。

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『機械偏愛』の話。

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 だから、縫うのは好きだ。
 しかし、である。
 たいていの機械が母の世代と私の世代ではまるで様変わりしたこの二十一世紀に、あいもかわらずミシンがミシンでしかないことが象徴しているように。

 縫っていて思う。
 裂けるのって、ほぼ同じところ。
荷重がかかる、てっぺんと、両ミラーの部分。
 裂けるから縫い重ね、そこばかり厚くなっていくわけです。

 おかしくないか?

 逆に言えば、ほかの部分は、ほぼ無傷。だったら、なぜ最初から裂けるに決まっているところを二重三重にしておかない? 縫う手間がかかるから? いや、ほんの少し高級なバイクカバーだと、縫い目から雨水がしみこまないように、穴を塞ぐ裏地がついていることが常である。そっちのほうがずっと手間だ。だが、いくら縫い目に裏地で蓋をしてあったところで、ミラー部分が裂けたりすれば商品寿命が尽きるのである。優先順位のつけかたが、おかしくはないか?

 最近の街中では見ないけれど、古い英国を舞台にしたドラマなどだと、ジャケットに肘当てを縫いつけているのをよく見る。

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 近ごろの生地は強くなったということもあろうが、すたれたのはもっぱら見た目の問題なのではないかと推察する。道行くひとのジャケットの半分に肘当てがなくなれば、残りの半分は羞恥心をおぼえ、一気に形勢が傾く。綱引きと同じだ。動きはじめると加速度的に負けてしまう。

 逆の進化だってあっただろうにと思うのである。

 特に、もったいないを美徳とする国、日本。東洋のガラパゴス文化を持つ国と呼ばれる日本で、そういう気概を持った傑人が現れなかったことは残念だ。いまちょうど朝ドラで戦後の日本にファミリアが創業され、子供服やオシメまでもが西洋スタイルへと変わっていったのを描いているが、その同じ時期に着物を脱いでジャケットを羽織った男たちが、肘当てをしてもまだ破れるからと、日本流にアレンジをしていれば、歴史も変わっただろう。

 日本には、甲冑の文化がある。

 鎧には金属の肘当てがついているものだ。ジャケットに縫いつけると動きづらいというならば、鎖かたびらという手もある。だれも思いつかなかったとは思えない。戦後の物資不足のなかで、けっして良い生地ではないだろう布で仕立てられた、一張羅のスーツ。それで事務仕事をする。肘に穴が空く。革の肘当てなど手に入らない。しかし板金工場はそこらじゅうにあったはずだ。なにせ建てまくれもっとネジもってこいという復興のさなかであるのだから。なぜ金属チェーンを編んだ肘当てを発売しなかった? 北斗の拳の悪役に見えるからか? いやまだ連載ははじまっていなかったし、マッドマックスだってクランクインしていないころだ。鎖かたびらのニンジャが闊歩していた時代のほうが、近いときなのに。

 そして現代。

 オートバイも、自転車も、車さえ、いまだに布で覆うのが主流だ。いや、特にバイク業界で、なぜメーカーは純正品の頑丈なカバーを売らないのか。この業界では、オフロードという競技がある。モトクロスバイクは宙を飛ぶ。その選手たちが身につけるプロテクターは、甲冑だ。

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 違う。バイクカバーを金属で作れと言っているわけではない。鎖でバイクカバーを作ったら早晩、愛車は傷だらけになるだろう。

 しかし、いまはもう、3Dプリンターでセクシーアイドルの樹脂製フィギュアを個人的に出力することさえできる時代なのに。

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『データに実体はない』の話。

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 アイロンに、すっぽりかぶせるケースがついてくる。樹脂の。

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 ああいうのがいい。
 バイクをすっぽり覆うの。
 サイクルハウス?
 あれはダメだ、台風で飛んでいく。
 ガラス繊維強化樹脂で、ぴったりボディに寄り添うようなのがいい。カスタムしたらつけられなくなるじゃないか? もちろんだ。そこはだから純正品なのだ。ノーマルのまま乗り続けるひとのための、ぴったりびっちり収まって息もできないようなオートバイケース。気持ちいい。 

 アマゾンさんで「バイクカバー」の一番高いのを検索すると、これだった。

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 五万円。
 それだけ出して、やっぱり布。

 傷がつかないように化学繊維と化学繊維のあいだに鎖かたびらを埋め込むとか、なにかさあ、ひとが宇宙に行ってひとの臓器を持った豚が作れるっていうのに、破れないバイクカバーが作れないってさあ。

 本気出してなくないか。
 だれか出せ、さっさと。
 そろそろいいだろう。
 本気を。


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