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『ホワイトベルグ』のこと。




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 ライオネスアスカの語感はいつまで経っても最強だというようなことをいつかどこかで書いたけれど、最近よく聞くドリンドルレイナというのも、私のなかでレイナといえば最強シュートボクサーを連想してしまうというのもあってドリル的な響きとあいまり忘れがたいものになっている今日このごろ。

 ファイナルドラッドタコウカン。

 という響きがいまぼんやり頭のなかに浮かびましたが、それに負けないくらいゴジカラのある語だと思う。

 ダイヨンノビールホワイトベルグ。

 日本語を知らないひとが聞いたら、よっしゃそれをカタカナで俺の右肩に彫ってくれと言ってしまいそうなくらい、謎めいていて忘れがたい。

 このあいだ、といっても夏の話ですが、冷やしお好み焼きを作ったと話しました。

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『炭水化物の重ね食べは大阪文化』のこと。

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 発端は、私の「ビールや発泡酒の類で、見たことないのを見たら、とりあえず買ってみないと気が済まない病」のせいだと。

 そう書きながら、ついでに触れておきたいことがあったのだけれど、ビールの話じゃねえしなあ、ということで流した件を、ちょっとだけ。

 関西限定のクリアアサヒが、ソースの味に負けない強いのを作ったと自信満々に言うからお好み焼きを作って、つまみに飲みつつ、ふと思った。

「第三のビールが、ビール臭いのばっかになっちゃったよ」

 酒税を統一してリキュールも発泡酒もビールも同じ土俵にしようかと議論がされているところで、私は前述のように「ビールや発泡酒の類で、見たことないのを見たら、とりあえず買ってみないと気が済まない病」だから、なにもかも飲む身では、結果的に同じことなのでややこしくない税率統一に賛成派なのですけれども。

 私の祖父が、死ぬまでキリンラガーしか飲まないひとだった。逝くころには缶ビールがもちろん主流の時代になっていたのだが、酒屋から瓶のラガーをケースで配達してもらっていた。中身いっしょなのに。高いのに。おじいちゃん、瓶も缶もいっしょだよと言いながらも、親戚一同、その頑固に気高さも感じとっていた。

 その子供たちは三人兄弟で、私の父は痛風持ちなのでプリン体ゼロとかいうものを愛飲している。真ん中の叔父さんはワイン好き。末の叔父さんだけが、キリンラガーにかぎらないが「発泡酒以下は飲めたものではない」と、かたくなにビール派であるところが、祖父の血を色濃く継いでいるのかもしれない。

 私は、いつか書いたが、キリンの「本格<辛口麦>」というリキュールが、大好きだった。

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『裸でコロナ&ライム』のこと。

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 舘ひろし先生が、「嵐を呼ぶ男」を演じるというCMにも惹かれたけれど、実際に飲んでみて「あれ? ライチ風味?」というような、それが。その味が、なんだか私にはピンと来たのである。

 当時、発泡酒の税率が上げられて、各社は第三のビールを発売。さらにはリキュールで香りづけた第四のビール=新ジャンル=ビールテイスト飲料を乱発したり、国外から安い発泡酒を輸入したりと、課税との戦いに挑んでいた。

 世の中では、私の末の叔父さんのようなひとが、発泡酒だというだけでもビールとは認められないのに外国産などもはやビールの味もしない、という論調でそれらを毛嫌いしていたが。

 私にとって、あれはいい時代だった。
 ふだん飲みが、テキーラやジンである。酒が香るということに関しては、いやいっそ臭いくらいがいいんじゃないかという味覚。よくわからん国の、確かに日本のビールとは似ても似つかない発泡酒の、触れたことがない香りと舌触りに「ビールや発泡酒の類で、見たことないのを見たら、とりあえず買ってみないと気が済まない病」は、おおいに発揮され、ああこれもあれもいい、これもおもしろい、と、天国な日々だったのだ。

 が、名を上げることは避けるが、私が、これは飲み続けるしかない、と決めたものは、ことごとく市場から消えていったのだった。飲み続けたくても、消えていくのだから飲み続けられない。

 そんなおり、「本格<辛口麦>」の登場である。

 天下の日本製、それもキリンビールが館ひろしCMでガンガン売っていく姿勢だった。それを気に入ってしまった。いまでも断言できる。「本格<辛口麦>」が、いまも売っていたら、私は飲み続けている。

 あれは奇妙な味だった。あきらかにビールではなかった。麦のリキュールを加えたビールテイスト飲料として、ビールではないもうひとつの王道を敷かんとする、大いなる試みであった。あったのだが。

 発売して一年ほどだっただろうか。
 リニューアルが施された。

 そして消えた。

 ……思うに、キリンビールから大々的に売り出したという血筋が、あだとなったのであろう。インディでは許されても、メジャーでは許されないテイストがあり、そこを修正した結果、曖昧な立ち位置で存在意義を失う。よくある話だ。彼が、ずっと路上で歌い続けていてくれたら私は毎日聴きに行けたのに、彼は大阪府立体育館を埋める必要があったのだ。エロい歌とか大声で歌えなくなってしまったのだった。

 そうして近ごろでは、「第三のビールが、ビール臭いのばっかになっちゃったよ」という嘆きとなる。いや、それはそれで美味い。ただ、こなれてしまって、ソフィスティケイトされてしまって。なに飲んでも、ビール的に美味くて。

「これぜんぜんビールじゃねえけど美味い!」

 という悦びは、なくなってしまった。
 と、一抹の寂しさを感じていた数年前。

 唐突に、サッポロビールという存分にメジャーでありながらも首位陣を追うという位置のチャレンジャーが、おもしろいものを出してきた。

 それが、くだんのホワイトベルグである。

 ベルギービールに寄せた、コリアンダーシードとオレンジピール使用のリキュール。

 コリアンダーとオレンジ?
 完全にジンの香りづけだ。
 第四のビールの一種として発売されるのに?
 ベルギービールってあれだよな、酵母臭い感の常温でも美味しく飲めますという、日本でも地ビールでよく見るタイプの。なんというか、つまり発酵させまくった高級ビールのイメージ。

 私がベルギービールを勘違いしているのだろうか。

 思って買いに行った。
 売っていなかった。

 なんとまあ、大ヒットしていたのだ。
 製造が追いつかず、品切れ店続出。

 ふーん。
 と、私の熱は逆に少し醒めた。
 それだけ売れるということは、違和感がないということだろう。臭いジンのようなスパイスを使っていても、しょせん、日本のビールメーカーが出す日本人好みな洗練の味わいなのでしょうさ。

 で、やがて事態が落ち着き、ほとんどその存在を忘れかけていたころ、最寄りの小売店で、その独特なカラーの缶を見つけたのだった。

 まあ、買いますわ。  
 「とりあえず買ってみないと気が済まない病」なので。

 飲みますわ。
 言いましたわ。

「これぜんぜんビールじゃねえけど美味い!」

 ちゃんとオレンジピールの香りがする。コリアンダーの風味がある。うん。勘違いではなかった。これなら常温でも美味いかも。めっちゃ臭い。良い意味で。

 以後、数回、飲んだ。

 そこが難しいところではある。
 あくまでビールはビールで生活必需品だ。ホワイトベルグは美味いが、冷蔵庫をそれだけで埋めるかというと、そういうテイストではない。ふっと思い出して、ああ今日はホワイトベルグがいいかも。そういう感だ。

 飲み会に行くと、最後までビールで通すヘビーなビール好きである私の感覚でいうと、ビール好きがこれをケースで買い続けるというのは違う気がする。それなのに品切れるほど売れたというのだから、一本二本で売って稼いだ数なのだろう。すごいことだ。たぶん、みんな、美味い新ジャンルのビールが出た、と伝えたりしなかったのだと思う。

「おもしろいから、一回、飲んでみ?」

 ビールがダメなひとでも、いけるという場合があると思う。一方、ビールが大好きな私のようなのでも、何本かは冷蔵庫に入れておきたい味だ。

 端的に言って、気に入った。
 「本格<辛口麦>」を想い出す。
 なつかしい、彼を。
 あまりに臭いほど香り高く、新たな地平を切り拓こうとしたばかりに、永遠の別れを告げることになった、彼を。ビールは冷蔵庫に詰め込まれてナンボだ。おもしろくて、変わっていて、そこそこ美味くても、継続事業としては成り立たない。

 彼とは長いつきあいになれるのだろうか……

 そんなことを思っていた、この夏。
 なんと来た。
 ホワイトベルグ、リニューアルの報であった。

 おお、「本格<辛口麦>」……
 悲劇再び。
 ホワイトベルグお前もか。
 売れたから、もっと売れるように、冷蔵庫に詰め込まれる味を目指してしまうのか。

 しかし、まあ。
 「とりあえず買ってみないと気が済まない病」なので。
 買いましたわ。
 リニューアル。

 飲んだ。
 のけぞった。

「臭み増してる!」

 オレンジ強すぎないか?
 いや、めっちゃおもしろいけれども。
 これいいのか。
 いいのかこれでサッポロビール。

 ホワイトベルグが、この夏、新たな荒野を耕しにかかっていやがるぜ。
 飲んでみ。おもろい。
 私は好き。とてもとても好き。
 毎日飲むのは他の銘柄。
 それは変わらないままに。
 アバンチュールな味わいです。
 色っぽい。
 なまめかし気味です、10点。

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 ところでホワイトベルグの缶に描かれているコレって、自転車の国ベルギーの象徴たるロードレースの沿道で振られる国旗よりも有名な、舌を出したライオンに違いない。

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 それを缶ビールならぬ、ビアマグに舌をのばしているように改変。

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 国旗って著作権侵害は起きないが商業的な利用は不正競争防止法に引っかかる、とかいうのを聞きかじったおぼえがあるのだが。そうかこのライオンは、国旗ではないものな。国章だっけ。だとしても日本でいえば菊花紋章みたいなもので。そうするとたとえば「白い日本」という名の菊の御紋が缶に描かれたビールが外国でヒット商品になって、でもよく見てみたら菊の御紋から舌がぺろんと出て酒を舐めているというようなデザインなわけで……そんなの、この国で愛車に菊花紋章と「愛国」の文字を入れて時速五キロで街宣するようなかたがたが日本刀持って空港でピンポンピンポン鳴りまくる事態に発生しそうなおふざけです。

 よく許されるなコレ。
 もともと舌を出しているライオンだからセーフなのだろうか。
 ていうか、許されるならいっそベルギーで売ったら売れるのではなかろうか、ホワイトベルグ。そっと缶の裏を見てみると、オレンジピールで香りづけしていると書きつつも、原材料は、みかんだったり。日の丸で玉乗りするライオンでも萌え風味で描いてやれば、気に入ってもらえるのではないでしょうか。それともかの国にも、ライオンの旗の末裔を名乗る怖いおにいさんたちがいたりするのでしょうか。


 

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