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『エグゼイド×トレマーズ』のこと。



「一番人に観ろと薦めた映画は何ですか?」
 はい。それは『トレマーズ』です。

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 岩井俊二 『トラッシュバスケット・シアター』

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 それに関して、岩井俊二は「内臓に鈍く効いてくる痙攣的な笑い」と、ともに記憶に残る映画だからと説明している。

 私でいうと、『男たちの挽歌Ⅱ』や『バートン・フィンク』あたりだろうか。思えば、岩井監督同様、それらの映画も、ラスト近くの怒濤の展開があまりに怒濤すぎて、ニヤニヤというか痴呆化したエヘラエヘラというかグフグフというか、確かにレバーを殴られて呼吸困難になったような状態で奇怪な笑いを漏らしていた記憶がある。初めて観た夜には眠れなくて、それから先の人生の節目節目で観返して、そのたびにふとまわりに薦めてみる。

「観たことないの?」

 たぶん、そのひとが自分と同じように、追い詰められすぎて突き抜けてしまったチョウ・ユンファやジョン・タトゥーロ(いま気づいたが、このふたりはどこか顔つきが似ている。マーク・ハントもお気に入りだし、私がこういう顔が好きだというだけのことなのかもしれない)に、引き攣れた笑いを浮かべながらハートになにかを撃ち込まれはしないものかを確かめたくて。

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 というか、なぜ唐突にトレマーズかといえば、テレビでやっていたクレヨンしんちゃんの映画を観たからだ。すばらしいもので、朝から夜まで動き続けている一歳の息子を座らせて釘付けにするのだから、しんちゃんはすごい。そういうわけで、録画してはいたものの、観ないままになっていたしんちゃんの映画を、息子を足止めするために再生して、消化しはじめてみると。

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 『映画 クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃』。

 これが、完全なる『トレマーズ』だった。リスペクトというよりもパロディといっていいレベルで、あからさまにパクっている。さすがに企画会議の段階で『トレマーズ』に似せるということが名指しで話しあわれたに違いない。

 そして結論は『トレマーズ』はパクってもいいだろう。ということだったのだ。『トレマーズ』はツタヤへ行くと、ホラーやパニック映画の棚に並べてあるはずだが、岩井監督が言うように、感受性のある鑑賞者ならばグフグフ笑いながら観るという点で、コメディと呼んでもいい映画だ……

 いや、それはたとえば地球が象の背中に乗っている平らな大地だと信じているひとに向かって「アースは球で、スペースに浮かんでくるくる回っているのさ」と大まじめに語ったらグフグフ笑われるようなものなので、コメディというには語弊があるか。

 『トレマーズ』をサイエンスフィクションという方向から見れば、あれは突拍子もないひとつのジャンルを確立した作品である。それ以前にも、トマトやカツラが人間を襲うというホラー映画はあったが、ちゃんとモンスターが襲ってくるのにグフグフ笑ってしまうというのは、発明だった。

 地味な男の子が異世界へ飛ばされて勇者になってハーレム展開。そういう小説を書いても、特定のどの作品をパクったということにはならないのといっしょだ。『映画 クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃』を観て『トレマーズ』も観ているひとならば、あれこれそっくりと100%気づくが、だからといってパクったわけではない。そういうジャンルだ。

 どういうジャンルか。

 しんちゃんは父の仕事でメキシコへ引っ越す。そこで個性的な面々(ルチャリブレのプロレスラー含む)と知りあい、サボテンに襲われる(偶然なのだろうか。冒頭引用の岩井監督のエッセイ集にサボテンガーという切ない大怪獣が登場するのは)。小さな町の外へ助けを求める手段がなく、彼らは民家に避難するものの、窓の外には跋扈するサボテンモンスターの姿があるのだった。

 とはいえ『エイリアン』ではないというところがキモだ。舞台は宇宙船ではない。逃げようと思えば逃げられるのである。しかし愉快な面々のなかに、ダダをこねるものが現れる。

 窓の外をモンスターが跋扈しているが、我々は無事だ。だったら、共存する道があるのではないか。

 『トレマーズ』のモンスターは、地面のなかを動き回る。進化の必然として、視力が退化していて、音だけで獲物を追っている。まったく同じ設定なので、しんちゃんはもちろん映画のなかで彼らしく、すかしっ屁にしようとして失敗して、ぷーっとやり、窮地に陥るのだ。

 静かにしていれば襲われない。
 だったら、静かに逃げればいい。

 ぜったいに死ぬわけではない。
 そうなると、壊滅的な被害を受けていても、我が家に残ろうとするものは出てくる。『トレマーズ』に至っては、第一作でモンスターを殲滅したと思い込み、モンスターの現れる町として観光地化して、また襲われる。アホである。そこがまた笑えるのだけれど、広大なアメリカ大陸で、わざわざモンスターに襲われる砂漠で生きようとする人々に、地震でいつ沈むともかぎらない小さな島国に好んで住んでいる私がなにを言える。なにを笑っているのだここだってトレマーズ砂漠みたいなものだ、と少しシラフになる。

 近ごろ実写化でなにかと話題の『ジョジョの奇妙な冒険』でも、あきらかに『トレマーズ』に影響を受けたとおぼしき展開がある。ひとに薦めるのみならず、先人の発明をパクって進化させてこそSFというジャンル。そういう意味では、横長の画面ではない時代の名作映画を、二十一世紀に生まれた子にも知らしめるという意味で、『映画 クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃』のスタッフ陣は英断をなした。SF書きの鑑だ。『そして父になる』で役者が雑談していた「スパイダーマンってクモって知ってる?」というセリフをラストに監督がぶっ込んだという話があるが、そういうたったひとことで、また『スパイダーマン』を観るものが現れる。SF設定は引き継がれ熟成していき、また新たな発明をなすのである。『映画 クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃』を、うちの息子が飽きずになんども観ているようなら、そろそろかと私はそわそわニヤニヤしながら、記念日に『トレマーズ』を差し出すだろう。『トレマーズ』の舞台はメキシコではない(『2』はメキシコだが、全編がとある施設内で進行するために町の人々が登場する余地がない)ので、ルチャリブレの戦士でありながら気の弱いプロレスラーが出てこなくて彼には物足りないかも知れないけれども。

 さて。
 そんなことを思いながら観た。
 これも日本が生んだ独自の極みである特撮というSFジャンル。

 仮面ライダー最新作の初回。

 ゲーム機ワンダースワンを私は所有していなかったはずなのだが、なぜか実家にいまもある私の机の引き出しには入っている(三人兄弟なので、たぶん下のふたりのどちらかのモノ。それがなぜ私の机の引き出しにあるのかは記憶にない)ので、仮面ライダーエグゼイドにそれが登場したときには、形状で理解できた。ベルトにカセットを挿すときに端子に息を吹きかけるのは、ファミコンでよくやっていた。そういうのが本職となったいまとなっては、息だと結露するからエアーダスターと接点復活剤を常備しておけよ高いものじゃないしとアドバイスしたいものです、あのころの私に。

 主人公の歯並びの悪さが少し気になりましたが、それ以上に気になったのは、ヒーローもヒロインも病的な二重人格者だという設定。

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『仮面ライダーエグゼイド』の話。

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 シリアスな脚本屋連れてきた結果、トンカチな仮面ライダーデザインとの整合性をつけるため「ふだんはまじめで気弱な医者なのに、テレビゲームに触れたとたんに俺様」その相棒女子は「人間界ではデキる美人系、実はトンじゃってるデジタルキャラクター」という、プロレスのリングでいうと「ザ・モンスターと呼ばれる真の怪物なのにマスクを脱ぐと優しい弟」ひとりで兄と弟を同じリングで演じた伝説のイロモノ、アビスのようなことになっていてスゴかった。

 なによりも、いちゲーマーとして注目していた『仮面ライダーエグゼイド』での、テレビゲームの立ち位置が、スゴかった。

 モンスターの巣だ。
 『トレマーズ』の砂漠である。

 初回の患者は、少年。あろうことか、ゲームがやりたくて仕方ないのに、それを制止されて発病する。しかも、制止したのは本作のヒロインだ。前述したとおり、彼女は人間ではなく、本当はデジタルなゲームキャラクターなのである。ゲームのキャラが人間のナース(ミニスカ白衣)姿に化けて、ゲーム好きの少年に「ゲームなんてやっていないで病院に帰るのよ」と無理強いしたせいで、少年はゲームのウィルスに感染してモンスターと化す。

 ……なんだこりゃ。

 テレビゲーム=悪だ。
 ゲームで発生したウィルスが、リアル世界の人間にも感染するというSF設定は目新しいものではないが、その原因がはっきりしているというのは、非常に特異である。

 平成仮面ライダーにおけるひとつの流派、マクスドライダーシステムに、エグゼイドは類される設定のようで、仮面ライダーと名乗ってはいるが、それすなわちパワードスーツを着た人間。パワードスーツを開発したのは、日本政府が設立した電脳救命センター。

 ゲームのウィルスが人間に感染してモンスター化するから、政府は仮面ライダーを開発しました?

 この図式、発生源が特定できていなければわからなくもないが。『仮面ライダーエグゼイド』の初回で、少年が感染してしまうのは、新作テレビゲームの発表会場でのことだった。そこに主人公もヒロインも居合わせるのだ。

 ゲームやめちゃえばいいじゃない?!!

 ヒロイン自身、ゲームキャラだからゲームのない世界なんて考えられないか? 主人公がゲーマーで、命の恩人にワンダースワンを貰ったから、ゲームを駆逐するくらいならば生まれてくるモンスターと戦うのか?

 仮面ライダーエグゼイドを開発する前に、どうやら電脳世界のウィルスが人間に感染しているようなので、ゲームもネットもやめましょうみなさん!! と総理は演説すべきではないでしょうか。

 『トレマーズ』の砂漠なのである。
 それを言ってしまったら、おしまい。
 彼らは、そこで生きる。
 モンスターが地の底をうごめいていても。

 私たちはゲームをする!!
 モンスターになっても!!
 仮面ライダーエグゼイドに倒されようとも!!
 やめられようか!!

 ……まあ、私は、わからなくもないが。
 けっこうこの国には、私の知人だけでも、原発を止めるためにあたしは原始人の生活に戻れる、などというようなひとたちがいるのである。『仮面ライダーエグゼイド』を観て「よしゲームするか」という気には、私でさえなれないのに、ゲームを敵視するひとたちにとっては攻撃材料になりかねないし、敵視していなかったのに敵視しはじめるひとたちだって育ててしまうのではないか。

 きわどいところを攻めるのが優れたSFではある。

 しかし、ゲーマー大歓喜させてくれるんでしょうねと観始めた仮面ライダーが、思いのほかゲームがあるがゆえに大ごとになる世界を描いていて、不安になってしまったゲーマーの仮面ライダーファンなのでした。

 『トレマーズ』みたいに笑えればいいのだけれど。
 シリアスな本書くひと準備していますし。
 攻めすぎないか、目が離せない一年がはじまってしまった。

 余談だが、劇中ゲーム『マイティアクションX』は、『Mighty No. 9』のパロディなのだろうか。

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Mighty No. 9 - Microsoft ストアのゲーム

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 この電脳世紀に、なにもそのあたりから感染しないでも、ほかにいかにもリアル世界に干渉してきそうなゲームがあるのにさ……『マイティアクションX』は、バンダイナムコさんのゲームの特典で実際に遊べるそうで。

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 いまさら買えないワンダースワンをあえて小道具に使ったことを見ても、リアルなゲーム戦争にはかかわりあいません、という姿勢なのでしょう。仮面ライダーのテレビゲームは発売しているのに。ゲームがテーマで、ゲーム売っている会社がスポンサーなのに。なんてひかえめな。仮面ライダーのなかに登場するテレビゲームならば世界中で需要がある。けれど世界中で売れるようなゲームを作ることができなくなっている。野心さえ持てないクールジャパンのテレビゲーム部門に、仮面ライダーを観て憂いのため息が出る日が来ようとは。

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