最近の記事

スポンサードリンク

月別アーカイブ

『理想のサンドイッチ』の話。



 穴に挿しこまれる。
 くすり指の先。
 手のひらは、ほっぺたに、ぴったりと。
 じぃと、見られてる。

「また。これ、なに」
「なにと言われてもな」
「聞こえない」
「両耳をふさいでいるからなあ」

 くちびるが尖ってしまうくらいに。
 両手がほっぺたに密着している。
 両方のくすり指で、穴をまさぐられる。
 くすぐったい。
 耳の穴は、弱い。

「トモヒロ、と呼ぶといい」
「……ともひろを? 呼んでるし」
「これを、だ」
「ひとのほっぺたに手を当てながら指の先で耳の穴をほじるのを?」
「そうされて染まりゆく、おまえの頬と表情の変化を愛でるのを」
「……もっと、ふつうに愛されたいかも」
「真なる発明は後世に認められる。伯爵のごとく」
「伯爵?」
「サンドイッチ伯爵の偉業を知らないとは。ゆとりめ」

 知ってる。
 たぶん、ともひろ、よりも。
 サンドイッチ伯爵がサンドイッチの発明者だというのは嘘だし、サンドイッチ伯爵はギャンブル好きでもなかったから、徹夜でトランプをしながら食事ができるようにそれを作らせたというのも嘘で、たぶん仕事をしながら食べられるように作らせたというのが有力な説。その料理を、ごちそうされたひとがサンドイッチと呼びはじめたのは本当だけれど、伯爵自身は、ただ自分のいつも食べている料理をふるまっただけだった。ともひろみたいに、自分で自分の名前を命名したりはしていない。

「後悔してる。きっと」

 少しだけ、ともひろの手から力が抜ける。
 だからはっきりと、言えた。

「伯爵が、秘密の料理を食べさせてくれたのに。伯爵の名前をつけようとか、みんなに大声で言っちゃってさ」

 ほっぺたに、手のひら。
 穴を、ほじられて。
 すごい近くで、見られる。
 これを、トモヒロ、なんて呼んだら。
 後世の、みんなが、そう呼ぶの?
 サンドイッチみたいに、だれもが。
 当たり前に、自分が、これを好きみたいに。

「ともひろが、これを好きなんでしょう」

 もっと手の力が抜ける。
 これをされながら、微笑まれるのは好きじゃないみたいな顔。難易度高い嗜好だし、名前をつけたって普及はしないような気がする。
 でも、まあ。

「ぼくは、理解するよ」

 自分が百面相になっているのを、ともひろは気づいている?
 すごい近くで、見る。
 これに名前をつけるだなんて。
 ともひろの。
 ぼくの。
 名もない秘密の。
 そうすべきだったんだ。
 彼も。

EarlofSandwich00.jpg

Yoshinogi Takumi
 Shonen-ai Cooking Elegy
 Song 22
 『He shouldn't have named to His it.』

(吉秒匠
 BL料理哀歌
 22曲目
 『彼は彼のそれを彼と呼ぶべきではなかった。』)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

 晩ごはん、というものは、酒のつまみ。
 酒といっても、ビールやウォッカといった、なぜかロシア人ぽいもの嗜好なため、炙ったイカよりも、サンドイッチが好適。

 しかし、連夜の茶の間プロレス観戦者でもあるものだから、俗にいうBLTサンド的なものはいけぬ。ベーコンは噛みきれないし。レタスはマヨネーズをはみ出させるし。トマトは、みずみずしく滴り落ちるし。

 フキン持ってきて、フキン!
 なんてやってる間にエメラルドフロウジョンが極まって、スリーカウント。録画なので巻き戻せばいいようなものですが、会場には行けないけれど観戦気分で観ているのです。会場でサンドイッチとビールを目の前に広げていたら、バラモン兄弟の餌食にされるだろうし。

 サンドイッチといえば卵もだけれど。
 茹でて、刻んで、マヨネーズで和えて?
 あれもな。
 かぶりついたらこぼれるのな。
 おれの喰いかたの問題なのかよ。
 どうしてあれが歴史上のサンドイッチの定番になっているのさ。

 会場気分だけれど、自宅だ。
 アイアムア・シェフだ。
 ヨシノギ=アイアムアシェフ=タクミ。
 リングネームっぽい。
 それはどうでもいいけれど。

 こぼれず、噛みきれるように作りゃいいんじゃないの。そんな簡単なことが、なぜわからないの。語源からして仕事中毒者なサンドイッチ伯爵が片手に羽根ペンを握ったまま、もう片手で口に押し込めるようにってのらしいし。トマトとか刻んだ卵とかベーコンの脂ぎったのとか、大事な書類に落ちでもしたら惨事ではないか。

 卵サンド、かくあるべし。

EarlofSandwich01.jpg

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

○材料

卵 三個
タマネギ 半分
合い挽きミンチ 適宜
ニンニクの芽 適宜
塩、こしょう 適宜

○作り方

卵以外の材料を刻み、溶いた卵に入れ、三等分して卵焼き器で焼く。

正方形に。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 卵焼き器というのは、こういうの。

B000IAADIQ

 食パンにジャストサイズ!
 と言いたいところだが、たいていの食パンは12センチ角で、卵焼き器は15センチ幅。なので、ちょちょいと端を寄せる感じで焼くとぴったり。

 ニンニクの芽は冷凍庫に常備しているのでそれ入れましたが、むろんミックスベジタブルとかコーンとか、そういうのでも。肉もミンチ肉を使うことで、ベーコンのように噛みきれなかったり油が滴ったりなどが皆無。

 若い男は卵でとじておけばいいのよ。と、モテるお姉さんが言っていたとおり、きれいに食べやすいだけでなく、なに入れたって卵でまとまるからボリューミー。食欲旺盛な胃袋にも満足。

 トッピングはマスタード。
 スライスのピクルスは、こちらを参照。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『ピクルスのレシピ』のこと。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 テーブルにはブラックペッパー(ミル入り)とタバスコが欲しい。やさしい心遣いで家族のためにスパイスひかえめに作っているのですが、自分のためにはあとで足すくらいの自由はあっていい。

 あ、できあがり写真を忘れていた。
 こういうふうにタッパーに入れておくと安心。

EarlofSandwich02.jpg

 なにが安心?
 いや子供が起きてきて、また観戦中断とかならないように。タッパーなら蓋を閉じて膝に抱いて食べ続けられる。

 ああ、ええ。うん。詐欺ですよ。できあがり写真が華やかではないから、小説挿写真は、カツサンドにしておいたのでした。
 こちら参照。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『ロースカツをまとめてあげる』の話。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 美味い。
 それは認める。
 でも、その卵、こぼれるでしょ。
 刻んだキャベツもキュウリも、こぼれるから。
 カツで口のまわりも手指も脂ぎってたえず拭いていないとならんでしょ。
 ピクルスとマスタードでいい。
 あとタバスコと。
 プロレスと、ビールと。
 それでいいから。
 それがいいのだから。
 観戦のための理想のサンドイッチは、一枚の布みたいなのを挟んだやつに行き着くという、お話なのでした。これまたシンプルな……あ、だって、こぼれたりすると試合に集中できないかもと思って……なんだとこのプロレス愛に満ちた料理もできる娘は運命か……的な感じで掴める胃袋だってありましょうさ。まあ私はモテるお姉さんではないので、成否は保証しませんが。そんなものです。特に、プロレス好きでビール好きとかいう男の薄っぺらさなんてものは。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Yoshinogi Takumi
 Shonen-ai Cooking Elegy

21曲目『形状と呼応』
20曲目『轢かれ鉄のサイジ』
19曲目『黒い彼が焼いたぼくのための白いパン』
18曲目『となりの部屋』
17曲目『ヴィアール遭遇』
16曲目『アネ化けロースカツ』
15曲目『逆想アドミタンス』
14曲目『恋なすび寿司』
13曲目『バーベキュー厳峻鋼』
12曲目『茄子はダシの夢をみるか?』
11曲目『すっぱくても、平気。』
10曲目『踏み絵ムルギティッカ』
9曲目『ひとくちだけカトルカール』
8曲目『春節の静かな賞品』
7曲目『ナンを焼くと両手がつかえない。』
6曲目『タマレってなに?』
5曲目『あらいぐまのすきなもの。』
4曲目『ピッツァみたいにぼくを食べてよ!!』
3曲目『クリスピー・プロ・フライドチキン』
2曲目『青くてカタいアボカドのパスタ』
1曲目『春餅/チュンピン』


TRACKBACK http://yoshinogi.blog42.fc2.com/tb.php/654-fb6defaa