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『小橋建太という答え』の話。


 高山善廣復帰!!
 日本武道館で、タッグマッチ60分1本勝負

 秋山 準 & 三沢光晴
  vs
 高山善廣 & 小橋建太

 なんて豪華な……そしてなんておもしろそうなカードだろう。
 にやりと笑う高山と秋山、それを遠巻きに眉根を寄せて眺めている三沢……目に見えるようだ、息詰まる観客、温度の上昇する武道館。

 きっと、次の瞬間に小橋が動く。
 雄叫びをあげ、ただがむしゃらに秋山につかみかかる。
 きっと自分のパートナーで、その夜の主役のはずの高山にまで、

「なに笑ってんだプロレスってのは!!」

 魂と魂のぶつかり合いだろう、と。
 皮膚が裂けるほどのチョップを振りかざす。
 目に見えるようだ。
 一分後には、乱入した三沢のエルボーが、高山のアゴをとらえ、それでも倒れない高山の姿にファンは彼の傷ついた脳髄が確かに完治したと知り、安堵のため息を漏らす。
 
 小橋はまた吠える。

 闘えるなら全力で闘え!!
 ここで燃え尽きるまで闘え!!

 復帰戦、二年のブランクなんて関係なく高山を叱責する。
 そんな小橋の姿に、観客は想い出すはずだ。

 迷いなく生きることができたなら、それこそが最強なのだと。

 2006年6月29日、プロレスリング・ノア社長、三沢光晴が突然の会見を開いた。

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 プロレスリング・ノア所属、小橋建太が腎腫瘍摘出手術のため、次期シリーズを欠場することになった。精密検査の結果、早期発見だが、悪性腫瘍の疑いもあるという。

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 摘出手術。
 ……想像したくもない。
 あの完璧な肉体にメスを入れることなんて。
 完璧は、傷つけられても、完璧へと戻ることができるのか。

 会見では、早期発見ならば病院を探すよりなにより一刻も早く手術すべきなのでは、と質問した記者に対し、三沢社長が睨みつけて「疑いが高いというだけで悪性とまだ決まったわけではない」と言い放つシーンもあった。が、その緊張感と、三沢社長が「ガン」という言葉を口にした事実が、事態のぬきさしならないことを暗に示していた。

 復帰した高山と小橋は同年齢。
 39歳である。
 この年齢からの長期欠場は、パワーファイターにとって非常につらいものがある。

 そしてもちろん、心配なのは小橋の心だ。
 彼の闘争心が消えることはないだろう。
 想像したくないが、最悪の状況となっても彼はその病に打ち勝つだろう。

 けれど、エンターテイメントスポーツの世界で、日本人離れしたビルドアップ・ボディを自らの代名詞としていた小橋の名前と並べると、腎臓疾患は、どうしても筋肉増強剤の使用をイメージさせる。

 そうしてみると、女性ファンの多い小橋が独身をつらぬいていることに関し、本人が「おれはプロレスと結婚しましたから」と発言したのも、この状況となってはゴシップ誌にとっては記事を書くのに好都合以外のなにものでもない。薬物使用によってボディビルダーに性的肉体機能の不全が見られることは、衆知の事実である。

 実際のところ、本当の小橋好きならば、彼が好きな女性の前で子供のように不器用になってしまうだろうことは簡単に想像がつくし、もしも小橋がステロイドを過剰使用していたとしても(ショープロレスラーにとって禁止薬物などないが、本人ははっきりと使用を否定している)、こと腎臓に関してはマウス実験での報告こそあれ、人間では顕著な因果関係は認められていない。

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 現在、自宅療養中の小橋は文書で心境を吐露した。

「あまりに突然のことで今の心境をうまく言葉にすることができません。試合には出られませんが、皆さんからのご声援を励みに、治ると信じて病気と戦っていきたいと思います」

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 高山善廣復帰戦のカードからも、小橋の名が消えた。
 以前の怪我による長期欠場は、徹底したトレーニングによって乗り越えた。
 しかし今回は。
 ニュースを聞いた刹那、私も思った。

 戻ってこられるんだろうか、小橋……

 たとえ戻ってこられたとしても、数年を要せば四十代も半ば。
 プロレスラーとしては、決して戦い続けられない年齢ではないが、二度目のブランクと、おそらくは前回よりももっと多いだろう絶望を囁く世間の声。

 プロレスと結婚した小橋だからこそ。
 その足場が揺らいだとき、吠え続けることができるのかどうか。
 信じているけれど。
 私は待ち続け、応援し続けるけれど。
 とても不安だ。

 こんなとき、人は祈りというものを発明したのだと思う。
 なにもできない。
 ただ、できるだけ良いほうに転がってと、願う。
 最良ではないにせよ、最悪ではない。

 小橋建太は、はじめての写真集を出したばかりだった。

kobashi

 戻って、来て。
 そして二冊目を撮って、魅せて。
 その存在の揺るがないことを。
 負けない絶対王者という生き方が、自分の想いひとつで、本当に具現化できるのだという、ことを……魅せに戻ってきて。
 こないと、怒ります。
 そのときまで、私も。

「小橋も走り続けてんなあ、あのときはダメかと思ったけどな」

 言って、ふふんと鼻で笑って良い気分になれるように。
 鍛え続けます。

 そんなふうに思っている人は、この地上にいっぱいいる。
 その拳に、感じて刻みつけられた人たちが。
 小橋建太。
 そのイメージは、ひとつの答えだ。
 絶対王者。
 負けないということは、こういうことだと。

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クロムハーツ ピアス  クロムハーツ ピアス  2013/10/23 14:03
『とかげの月/徒然』 『小橋建太という答え』の話。