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『お好み焼きの焼きかた』の話。



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・台所の配管が詰まったので汚水桝を開けて、がっしがっしと掃除してやったら、白いものが砕けて水が流れるようになった。どうやら小麦粉が配管のカーブに溜まって固着していたっぽい。流さないよう気をつけてはいるのだが…毎週ピザを焼くうえに大阪人であるということの生き辛さよ。

twitter / Yoshinogi

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 前回、ピザを焼きながらエリンギの性別はオスかメスかということについて話を膨らませたのですが。

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『エリンギの切りかた』の話。

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 我が家の配水管を詰まらせる原因としては、大阪人であることのほうが要因としては大きい。ピザの生地は丸めて球になるくらいの水加減であるから、こねたボールに粉はまったく残らないが、タコ焼きやお好み焼きといった大阪人にとっての聖なるワインな食品群の生地はゆるく、やんごとなく流しに生地の残滓を流し入れてしまうことになりがちなのだ。

 それでも食べる。
 なぜなら、便利だからだ。

 本当に美味しいお好み焼きを食べたければ、また違うレシピになるのだが、毎日のワインは高級品でなくていい。白米が主食なら、主食であるがゆえに、土鍋ではなく電気炊飯器で炊いて、少々黄ばんでも保温しておくと便利(うちの主食は玄米なので、保温は避けて、炊けたら即、冷凍していますが)。

 便利な料理としての、お好み焼きのレシピを、ここで書いたことがあるようなないような記憶があったので検索してみたら、この記事だった。

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『葉たまねぎでお好み焼き』のこと。

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 そんなこともあった。
 記事の主役は、葉タマネギで、お好み焼きのレシピは、文字だけで流し書いてある。と、いうわけで、あらためて。

 抜群に美味しいわけではなく妥協の産物であるが、抜群に便利な、我が家の……いや、私の、お好み焼きの焼きかたを、綴ってみる。

 私の、と、あえて書いたのは、私の母親が広島生まれだからだ。大阪のお好み焼き屋では、具と生地が混ぜあわされた渾然一体のそれがボールひとつで出てきて、勝手に鉄板で焼けというのが多い。大阪在住なので、大阪生まれでない妻なども、いつしかそういうお好み焼きが当然となっているのだが、私のなかには広島焼きが連綿と息づいているのだった。

 広島焼きと呼称されるお好み焼きは、お好み焼き屋の店主が、みずから目の前で焼いてくれるスタイルが主流である。理由は、広島焼きの調理には玄人の技術が必要だから。

 広島の農家の娘を嫁にもらった関西育ちの父は、いちびって広島焼きを家で作るようになった。もともと料理をするタチではないが、鍋や鉄板といった卓上調理では仕切りたがり、その流れで広島焼きも調理担当に名乗りを上げたわけだが、いかんせん、料理の腕が素人である。

 素人が手を出してはいけない、玄人の技が必要な広島焼きを、家庭の卓上コンロに乗せた狭い鉄板ごときでがんばってしまうとどうなるか。

 キャベツとネギが飛び散る。

 広島焼きは、具材を生地で固めない。まず鉄板にクレープ上に生地を広げ、そこへキャベツとネギを山盛りにして、また生地をかけ、ひっくり返す。薄い生地と生地でサンドしてあるだけの、千切りキャベツと細切れネギである。本来は、それをコテ二本で「よっ」とお好み焼き屋さんが目の前でひっくり返してくれる瞬間こそ、広島焼きを店で食う醍醐味といえる。

 それを家でやる。料理下手が。いつしか、幼い私と弟は、父がお好み焼きをひっくり返そうとすると、悲鳴をあげてテーブルの下へ逃げ込むようになった。それくらい、散々、キャベツとネギの雨を床へ降らせていたのだが、それでも懲りずにまた作りたがる。たぶん、息子たちが悲鳴をあげるのがうれしかったのか、作り続ければいつか上手くなると思い込んでいたのか……なんにせよクズだ。いいお父さんじゃないのと言われるかもしれないが、やつは後片付けというものをしない。床にキャベツとネギをばらまいて、原形とどめない「これ、お好み焼き?」というような物体を家族にふるまって、自分は酒飲んで寝てしまうのだ。まあ、一種のトラウマのようなものだ。

 そこで私は、関西育ちな広島娘の息子として、お好み焼きの呪縛には囚われすぎずに生きようと決意した。争ってはダメだ。それぞれに、それぞれの愛すべき部分があるのだから。

 葉タマネギが手に入って、それオンリーでお好み焼きを作る機会には、具材を生地へ混ぜ込む。お好み焼きというよりも、チヂミにする。キャベツが安かったときには、遠い地の母と祖母を想いながら広島焼きを食べたいときもあるので、それを作るが、ひっくり返さない。

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○材料

●具材
キャベツ
ネギ
天かす
紅生姜
肉とかあれば。
麺と卵もあれば。

分量はすべて「お好み」。

●生地
薄力粉 カップ1
水+卵 カップ1
ベーキングパウダー 小さじ1

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○作りかた

1. 中火に熱したフライパンへ生地を広げ、野菜と具を乗せる。焦げ目がつくまで焼いたら、フライパンよりもワンサイズ小さな皿に、すべらせて移し、その上から生地を回しかけます(野菜にも具にも火は通っていなくてよし。いま下になっている面を焼くのはこれが最後なので、生地だけは固まるまで焼きましょう)。

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1. 右手で構えた皿の上に左手でフライパンをかぶせ、密着させて半回転。皿を退けて、先ほど回しかけた生地をまた焦げ目がつくまで焼きます(豚肉などを使用のさいは、念入りにここで焼きましょう)。焼けたら行程1と同様、また皿にすべり移して、溶き卵を絡めた麺を乗せます。

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3. また同様に、右手で構えた皿の上に左手でフライパンをかぶせ、密着させて半回転。麺と卵に火を通します。最終的に食すときまで、もう焦げ目をつける機会はないので、しっかり焼いてください(中まで火を通す必要はありません。なので、焦げ目重視で火はずっと中火でよい)。

4. またまた右手で構えた皿の上に左手でフライパンをかぶせ、密着させて半回転。包丁で食べやすいように切りわけて、ホットプレートへと、すべり移します。

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5. 以上の行程を終わらせておいて、仕事が片付いたら、蓋をしたホットプレートを弱火でスイッチオン。蓋に触れてみて熱くなっているようなら、中身のお好み焼きも、熱々です。最終工程で蒸し焼きにするので、キャベツなどには火が通るため、整形段階では火を通しすぎないほうが歯ごたえが残ります。

2. 各々の皿にカット済みのお好み焼きを一片よそって、ソースでもマヨネーズでもカツオブシでも青のりや一味唐辛子でもかけて、コテでも箸でもナイフとフォークでも、好きに食うといい。

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 ちなみに、今回の制作過程ではメインの具材は鶏ササミとスパムハム、ニンニクの芽とチーズ。出来上がり写真では、豚バラの細切り。事前にどのカットをだれが食べるか決めておけば、そのあたりにだけ大人用ニンニクやキムチなどをまとめて入れておいてもよし。暖かい時期は、待機時間を短くするか、冷蔵庫にホットプレートの入る余地があることを確認してから試みたほうがいいかも。

 今回は、ふと思い立って作ったため、麺はインスタントラーメンです。焼きそばなんて常備していないので。時間通りに茹でて、お湯切りして、卵からめてカリカリに焼かれてしまえば、焼きそばだろうがインスタントラーメンだろうが、わかりゃしません。

 大阪の店でこんなふうに卵にしっかり火を通すと邪道だとされます。卵は階層の中段に入れて、半熟がよしとされる。そこらあたりが、格別に美味いお好み焼きのレシピではなく、便利なレシピ。そこそこしっかり焼いて、食べる前には温めるだけ。ここを妥協することによって、食事時間のぎりぎりまで原稿を書いていられる。

 「右手で構えた皿の上に左手でフライパンをかぶせ、密着させて半回転。」

 この説明を補足しておきましょう。

 要は、反面教師、父。調理過程で、コテやフライ返しの類をいっさい使用ないための作法。包丁であらかじめカットすることで、ホットプレート上での作業もなくなり、ホットプレート寿命も延びます。温めるのに使っているだけですから。

 焼いては、皿にすべらせて移し、フライパンのほうを皿にかぶせて、完全固定の上で「ひっくり返す」。ええそうですね、ひっくり返さないレシピではないですけれど、密封しているので、飛び散ることは絶対にない。ただひとつ注意することがあるとすれば、フライパンにすっぽり入る皿を用意するというところでしょうか。人情として、フライパンよりも大きい皿を持ってきてしまいがちですが。それだと生地に皿を密着させられないので、かえって悲惨なことになる。ひっくり返すリスクをなくすための皿。お好み焼きがぴくりとも動けなくなるように、挟み込んで固定できるベストサイズをチョイスしてください。

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 そうすると、フライパンにすっぽり皿が嵌まって取れないということになるかもしれませんが、だったらそのまま焼いてしまえ(写真のように鉄フライパン愛用のかたは、傷つけることを心配しなくていいので、薄い金属のバタービーターでもつっこんでやればよい)。とにかく生地はちゃんと焼くことです。生地が焼けていないと、フライパンから剥がれずに、空中分解というような事態も起こらないとは断言できません。あせらずじっくり。店で食べるお好み焼きのように、外の水分飛ばしてカリッ、なかはふっくら、みたいな欲をかかない。お好み焼きは、焼けてさえいれば、そこそこちゃんと美味いですから心配しないで。

最後に、余談ですが。

 先日拝読いたしました、よしながふみ『きのう何食べた?』最新刊で、タブチ君が「別れた彼女が大阪人で材料を置いていったから」お好み焼きを焼いているのですけれども。お好み焼き粉を使っておられます。そんな大阪人いねえよと、つっこんでしまいました。主食なんだぜ。白米的なアレなんだ。日常的に粉モン食な彼女ならば、生地に塩や、うまみ調味料添加なんて、許せないはず。薄力粉とベーキングパウダーで充分です。山芋があれば入れたりもしますけれど、それさえほとんど使わない。具で粉を食う。それが魂。味付けはソース。マヨネーズは許す。

kinounanitabeta

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