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『エリンギの切りかた』の話。




 前回、ピッツァをリバースするマンガから話を膨らませたのですが。

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『はじめての内臓』のこと。

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 文字通り、毎週一回は、強力粉生地をイーストで膨らませて、ピッツァを焼きます。なんか馴染まないので言いなおします。ピザを焼きます。

 こんなの。

eryngii.jpg

 右上にタバスコの瓶の可愛いヒップがチラチラしているので、大きさを比べていただければわかるように、サイズ的には目玉焼きよりも洗面器に近い。トマトソースと鶏もも肉の迷迭香焼きからしたたる肉汁のせいで、ボリュームたっぷりな生地が、まさに洗面器のごとく、アンチョビの香りも混じった赤い液体を溜め込んでいるという風情。
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『鶏もも肉の迷迭香焼き』のこと。

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 そのため、宅配ピザのように、事前にカットしておくということができない。切るとピザの下の皿が洗面器になる。すると生地の裏が濡れてしまう。せっかく焦がしたのに、カリッとした食感が消え去って、トマトソースに生地を浮かべてふやかすようなことになってしまう。

 私のピザは、焼きたてを、少しずつ、自身の口に押し込めるサイズにナイフとフォークで切りわけて、汁をすくいながら食べて欲しい。じゅわっとして、カリッ。私にとってのピザはこれなので、宅配のは、なにか物足りない。

 レシピへのリンクも貼っておこうか。

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『ピザ生地とソースのレシピ』のこと。

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 貼ってみて気付いた。
 必需品のアンチョビが紹介されていない。

Yotsuba&!

 いろんなところから輸入販売されている、こういう大瓶を買います。700g瓶だと、毎週ピザを焼いても、一年保つ(家族はアンチョビが苦手なので、私のぶんにしか使用しないでの分量ですけれど)。

 拡大写真。

Anchovy2

 カタクチイワシの群れ。
 大瓶で買うと、きれいな形で入っているものは少ないのですが、それでも本邦のチリメンジャコ文化に比べると、こんな小さな魚をさばいて漬けるというのは大変な労力だと感心する。ちりめんじゃことか桜エビとか、ありのままの小魚系乾物って、瓶に入れてフリカケみたいに料理に使っていると、最終的に瓶の底に数万個の黒いつぶつぶ=目玉が残って、あんまり気持ちのいいものではない。その点、頭を取って漬けてあるというだけでも、アンチョビはエレガントだ。

 あ、ちなみに、冒頭のピザ写真は、具材にオイルサーディンも使用。左のほうに見える銀色のね。オイルサーディンも好きなのだが、あれってなぜか大瓶は売っていない。アンチョビと同じ「鰯の油漬け」だけれど、きっとポイントは塩分。オイルサーディンは、アンチョビほど塩辛くないので、たぶんだが、一回食べきりサイズの、おなじみ平べったい缶詰で真空オイル漬けにしていないと腐るのではなかろうか。缶詰の、特にオイル系のものは、手軽なようでいて、洗うのも捨てるのも面倒なので、積極的には買い溜めしない。今回のオイルサーディンも、たしか実家へ行ったとき「もって帰んなさいな」と持たされたものだった気がする。昭和のひとは保存食が好きだ。乾麺とか缶詰とか、夫婦ふたりで食い切れるわけがない量を溜め込んでいて、使わないからあげるわと言う。使わないなら買わなければいいのにと思うが、台所に備蓄食材があるというのが重要なのであろう。非常時にオイルサーディンで飢えをしのぐというのは、あんまり想像したくない状況に思えるけれども。せめてクラッカーも常備しておいて欲しい。タバスコも。うん。クラッカー食べると口のなかがパサパサするので、ビールも欲しいな。非常用に。

Yotsuba&! 

 ビールが好きだ。
 ピザはビールに合う。オイル漬けたイワシとチキンの香草焼き、ニンニクのスライスとオリーブオイルで、香りの役者はそろっている。あと、歯ごたえが欲しい。タマネギはあまり薄くスライスせずに、ところによりシャキッと感が残るくらいが良い。キノコも欠かせない。

 絶えず、エリンギは、こう切るべきだと思う。

eryngii2.jpg

 なんだか知らないが、エリンギを細く裂いたり、輪切りにしたりするレシピを散見する。なにを考えているのだろうか。

 某寿司料理バトルマンガで、マグロの短冊を切りわけるのに、身に入った繊維に沿って包丁を入れるという技を読んだことがある。通常、マグロの短冊は、一定間隔で赤い身に白いスジが入る。あれは、あえてスジをぶった切ることで、噛みきれない最悪な刺身にならないようにしているわけだが、マンガ技としては、それを消極的発想だととらえ、スジに沿って包丁を入れることにより、まったくスジのない短冊を作り上げるという奇跡を演じていたのだった。

 実際にやるのはハードルが高い。白いスジとスジのあいだに、短冊と呼べるほどのブロックを確保できるマグロは超大物になる。そんなマグロから、あえて赤身を切り出して「これが最高なんですわいっ」と吠えても、審査員は「トロもちょっと切ってくんなましっ」と感想するだろうから。バトルに負ける。

 しかしエリンギはキノコだ。
 キノコとは、その身すべてが繊維だ。
 ましてエリンギなどというものは、その繊維をしゃくしゃくと歯ごたえていただくことが存在意義な、お嬢さんではなかろうか。

 だったら、なぜ、必要以上に細く裂いたりする。それならばエノキダケを買ってくればいいではないか。だったらなぜ、繊維をぶった切ったりする。それならばマッシュルームでいいではないか。

 エリンギは、歯ごたえを残して、縦に切る。
 いっそ切らなくてもいいくらいだけれど、火が通らないと困るし、ピザの具として使う場合、具材の下の生地やソースにも火は通って貰わないと困るので、太い一本を六つ切りくらいを限度で。それ以上はダメだ。エリンギのカットは、それに限る。

 このエリンギに、トマトソースとオリーブオイルと、チーズ。粗挽きブラックペッパーと、タバスコ。

 ビール。

 すばらしい。

 いやほんと、マツタケを同じように縦切りにして、炙って焦げ目がついたくらいが最高という向きもあろうが、エリンギのほうが太いし。同じように、炙って食べてみても、すばらしく美味しい。キノコなんてしょせん、どれもぜんぶ繊維なのである。価格的に、エリンギ一パックが百円を切るというのが、先入観となっているのではないか。

 安いが、見てみなさいよ。
 めっちゃ太いよ。
 こんなのそこらに生えていないよ。
 つまり、人工的なキノコなのである。
 食べられるためだけに造られた。
 その結果、大量生産できるようになってスーパーに山積みになったが、それってつまり、この世が楽園になったということだ。

 一生に一度、ふっといマツタケを食べました、というのに喜ばないで、毎週、ふっといエリンギをピザに載せて焼いて食べたりできる世界に生まれてしまったことに、毎週、感涙したほうがいい。ほうがいい、というのもなんだが、エリンギを輪切りにしてクタクタに煮てしまうとか、それはちょっと遊びすぎだと苦言を呈したい。安いけれど、繊維の王様の風格があるお方だ。

 丁重に。
 大胆に。
 縦切りにして、焼け。
 そして食え。

 話は、それだけだ。
 
(統計上、世界の発展途上国ではキノコの消費量が少なく、先進国になるにしたがって増えていくという事実がある。これをもって、富める者は健康を気遣うようになるために、単純にカロリーになる作物だけでなく、キノコなどの繊維質を意識的に摂取するようになるからではないか、という分析があるのだが。私は異論を唱えたい。セックスだ。食感という名の性的な行為として、ヒトはキノコを消費する。完全な嗜好品なので、先進国での消費量が多くなる。つまり、少子化と比例するはずである。ヒトは余裕を持って高尚になると、ヒト同士で生殖するような野蛮な営みから卒業し、あらゆるものをパートナーにしたがる。その代表例がキノコだ。キノコがダイエットに効く? それすなわち、栄養がないということ。栄養がない菌繊維を、歯ごたえのために品種改良して、太く、太く、太く、したのは実は日本だ。さすがオナニー大国。さしずめエリンギ工場とは、生ける菌の性玩具をにょきにょき製造している場所なのだ。だってそうだろう。そもそも、エリンギは、枯れ木に生える貧相なキノコだった。日本では、野生のエリンギは存在しない。なんども書くように、人為的な品種改良の果てなのだ。果てで、アレだ。見るからに御神体だ。巨大マツタケにしてアワビのごとし。あえてそう造った。性的な思想がそこに介在しないという説を唱えることのほうが難しいと、私には思えるのです。だれも大きな声で言わないから、私は言うのです)

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