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『すかっと爽やかアスパルテーム』の話。



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 三年目ともなれば愛車のサビも気になる、しっとりとした梅雨の季節。
 ちょうど昨年のいまごろ、『暗闇にてアスパルテーム』の話。という話をここでしていたのですが……あのときの栄養士のタマゴだった彼女は最後までタバコとダイエット・コーラの愛飲者全員に眉をひそめながら、泣いてバイトをやめて行ったけれど、そんな彼女が毒だと断定するアスパムテール飲料を、国民に愛せと強要する超大国のニュースを見た。

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 大人はもちろんのこと、子供の肥満が深刻な問題となっている米国では、近年、学校の自販機で販売されている清涼飲料水に批判が集まっていた。

 その批判を受け、ついに先日、米国飲料協会(ABA)は、小中学校での糖分の多い清涼飲料の販売を3年後に全面的に停止すると発表した。

 2008年の新学期から全米の75%の学校で販売を停止、09年の夏休み後の新学期から全面停止する。
 その後、販売できるのは、ミネラルウォーター、加糖していない果汁100%のジュース、低脂肪牛乳だけになる。
 なお、高校ではそれらにくわえ、低カロリーの果汁飲料、カロリーゼロのダイエット飲料などが販売を許可されるという。

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 全寮制の学校なんかだと、本気で「大人になるまでコーラの存在を知らなかった」というお嬢様も生み出せそうな状況だ(笑)。
 原作は書店によってはBLカテゴリーで分類されていることも多いのでまったくといっていいほど男性読者を獲得していなかったが、物語うんぬんよりもアニメ化のクオリティの高さ、そして同時期にキャラの立ちまくった「ハルヒ」というヒロインがアニメ界に二人同時に現れたことでの「涼宮ハルヒってさあ」と批判的なことを言うときに「でもあっちのハルヒはいいよね」という引き合いに出されるという現象によって、万人にウケることが口コミで広まった『桜蘭高校ホスト部』の藤岡ハルヒがホスト部の面々に飲み方をレクチャーしていたお湯を注ぐだけの「庶民コーヒー」なんてのも、いつかギャグにはならない日が来るかもしれない。

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ああそれはですね
最初に麺の下にかやくをしけばいいんですよ

すげえワザだ!!
庶民テクだ!!
庶民ズセオリーだ!!

素晴らしいよ!!
この感激を体で表現しても良いだろうか…?


葉鳥ビスコ 『桜蘭高校ホスト部』(おうらんこうこうほすとくらぶ)

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 (↑引用は「庶民ラーメン」という名のカップ焼きそばの具がフタにつく難問にホスト部面々が困惑していたところ、藤岡ハルヒが助け船を出すシーン。原作第一巻収録)

 親には子供の飲むものじゃないと厳しくしつけられていたので、はじめて飲んだコーヒーが興味本意で買った自販機のコーヒーだって人はけっこういると思うのだ。でもあれも加糖飲料に分類されるので校内から消える。無糖のコーヒーだけ置くってこたあないでしょうし。

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 まったくの余談ですが、私が涼宮ハルヒに出逢ったのは『ザ・スニーカー』2003/6月号が最初でした。第八回スニーカー大賞、大賞に『涼宮ハルヒの憂鬱』が決定したと発表された号ですが、私がそれを買ったのは巻頭特集の『ガンダムを読む』のためでさえなく押井守の連載『立喰師列伝』(題字・寺田克也)の最終回を読むためであった。というわけであかほるさとる絶賛のハルヒも、読んだものの「うーんこれが大賞?」という感想しかなかった。しかしこうしてアニメになってみれば実際おもしろいわけで、なにに感服したといって「ダメだがいい」とあの時点で読み切っていた選考委員のあかほりさとるの眼力のスゴさにである。

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 キャラクターさえ魅力的ならばその他がダメダメでも覆すことは十分可能だと信じている。作品全体のコンセプト、ストーリーはその後に来るものだと考えている。ある意味、文学作品ではこの考え方は成り立たないであろう。


 あかほりさとる 『第八回スニーカー大賞 選評』

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 なるほど『らいむいろ戦奇譚』のストーリーがぐだぐだなのは意図的なものなのですねと、納得した(笑)。

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 話は戻って。

 全寮制はともかく、テロの時代、家から学校まではバス通学、学校の自販機には水しかなくて、家に帰ったらコーラなんて冷蔵庫に入れないロハスできれいな両親に育てられるお子様たちの多くが、高校に通い始めたとき、はじめて出逢ってハマるのは、もはやアルコールやドラッグやセックスなどよりも先に、ダイエット・コーラだろう。

 イマジン。想像してごらん?
 十五の昼休み、あなたは生まれてしゅわしゅわした泡の立つ、黒い液体を両手でくるんでいる。
 ベースボールの中継は観たことあるので、なんだかビールとは違う赤かったり青かったりする、どうやら大人だけが飲める清涼飲料水がこの世に存在することは知っていたけれど……でもだとしたら、これ、いま、ぼくの手のなかにあるこれは、大人の証明?
 心臓が張り裂けそうだ。
 ひとくち、口にする。
 手が震えて、こぼれたコーラがあごをつたい、ぼくの白いTシャツに染みを作る……大人になったアカシに、汚れてしまった存在だというように。
 舌が焼ける。
 喉が痛い……でも甘い。
 甘くて痛い感覚に、ぼくの脳がついて行かずに、定まらない視点で空を見たらとても青くて。
 ボビーがぼくの肩をたたいた。

「うまい? コーラ」

 ぴりぴりした舌は、本当はちょっと不快で痛みも残っていたのだけれど。
 ぼくは、小さく首を振って、視線を定めてボビーを見た。

「ああ。いいよね。これ。サイコー」

 ……それがドラッグでもサックなしのセックスでもないのなら、実に健康的なことだと思う。栄養士のタマゴと、マイケル・J・フォックスのフリークは眉根を寄せるだろうけれど。

 そもそも、米国飲料協会は、コカ・コーラもペプシコも加盟していた団体。悪者扱いされるくらいなら、うちにはフレッシュ・ジュースを売る技術も、カロリーゼロのコーラを作る技術もあるし……というよりも、きっとそういう打算は働いたはず。

「むしろガキどもに売らないことで、コーラは大人向けのクールなドリンクだと認識されるのでは?」

 大人が自分の判断で糖分の入ったコーラを飲むのは勝手だし、それで太るのも勝手だ。数十年後には、その仮説が正しかったかどうかの答えが出る。現在、三人に一人が深刻な肥満だとされる米国で、ガキにコーラを売らなければそりゃガキは痩せるだろうが、そのガキが育っても本当に太ったりしないのか。それはきっと、ガキどもが、目の前にあったからコーラを飲んでいただけなのかどうか、という点で分岐する。

 エイズ撲滅に、十代のセックスを禁止するのではなくコンドームの無料配布を行う。その選択は、結果としていまのところ世界的に成果を出している。撲滅には至らないものの、感染は防げるのだという知識は広がった。
 
 甘いジュースを飲めば太り、過ぎれば死ぬ。
 学校からコーラが消えても、その知識を教え込むことは重要だ。
 そうでないとコーラを知らないお嬢様は、ダイエット・コーラの味に失禁し、翌日には友達にこう囁かれて、マスターベーションにハマるように、ベッドの下にそれを溜め込むことだろう。

「学校では売ってないけどさ、本物のコーラってもっと甘くておいしいんだってっ」

 副作用のあることは、だれかが叩き込む必要ありませんか。
 アスパルテームの危険性よりも、私はそっちのがずっと怖い。
 スーパーに行くと、ダイエット・コーラの隣に、同じ数だけの加糖コーラも並んでいる。
 私はダイエット・コーク愛飲者だから、そっちに肩入れしてしまうのかも知れない。
 でも、飲み屋でダイエット・コーラがないけれどどうしてもコーラが飲みたくて年に何度かは「本物の」コーラも口にするが、さほどの味の違いを感じ取ることができない。
 よくできていると思うんだ、ダイエット・コーラって。
 でも、売り場から「本物の」コーラはなくならない。

 味へのこだわり?
 アスパルテームへの警戒心?
 いや、ただ無頓着に、昔からある馴染みのドリンクを手にしているだけの人々が大多数なのだと思う。
 とき同じくして、肥満問題に関してもう一つの動きもあった。

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 ウォルト・ディズニーは、同社の映画に登場する主人公のキャラクター商品の使用をここ10年にわたって認めてきたマクドナルドとの販売提携を打ち切ることを決めた。これにより、ディズニーはマクドナルドからの年間1億ドル(約111億円)の著作権使用料が減収となる。
 ディズニーの経営陣はかねてから、肥満の原因の一つとされるマクドナルドのメニューの宣伝に同社の映画キャラクターが使われていることに神経を尖らせていた。

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 『トイ・ストーリー』の新作が封切られることになっても、マクドナルドのハッピーセットにウッディの人形はもうついてこないということである。

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 ゲーム好きなら神と呼ぶ、あのブロック崩しの生みの親といっていい(詳しい話をすれば異論はいろいろあるが)、スティーブ・ジョブスが率いるピクサー社は、四年がかりで70台のSGIワークステーションそして117台のSUNワークステーションを使いディズニー初の劇場公開全編CGアニメ映画『トイ・ストーリー』を完成、ヒットさせ、ジョブスはその後ディズニーの筆頭株主となり、先日、ついにディズニーの取締役に就任したわけだが……まさに最初に振るった大鉈でばっさり斬ったのがマクドナルドだったということ。
 しかしその一方、ディズニーランドを含む、ディズニーの施設でマクドナルドは引き続き営業できるらしい。

 要は、イメージ戦略の重視ということだろう。
 マッキントッシュを生み出すさい、美しくないという理由で拡張スロットの採用を拒否した彼らしい方針だ。
 確かに、神ジョブスも、マイクロソフトのトップを辞めるとついに言ったビルおじさんも、一生の大半をモニタの前に座っていて、そのうえ庶民バーガーなど食べていては、あのモデル体型は維持できないだろう。
 思えば、『トイ・ストーリー』以来、『モンスターズ・インク』、『ファインディング・ニモ』など大ヒットを連発しながらも、収益の配分や契約内容を巡って衝突を繰り返して来たディズニーとピクサーが、ついに決別して『トイ・ストーリー3』をディズニーだけで製作することが決定したと報じられた、ちょうどそのころ、あの映画が公開され話題となっていたのだった。

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 米国でもっとも消費されている野菜は「フライドポテト」!!

 おそらくはビタミン剤と流動食のような食事で体調を維持していただろうジョブスと現場のスタッフたちは、何年も自分たちの生活のすべてを台無しにし、財産のすべてを吐き出させた、その画期的なCG映画が本当にヒットするのかどうか疑心暗鬼に陥っていたはずだ。それでも彼らは成功した。
 すべてを投げ打ち、手に入れたものだったのに、ジョブスの指の隙間から、いままさにディズニーはすべり落ちようとしている。

「30日マクドだけ?」

 親玉ジョブスにとって、映画館に行列を作ったその映画は、憎くて仕方なかったことだろう。
 この十年をディズニーとの映画にかけてきた。
 作品はヒットさせた。
 でもおれたちは全部を失いかけていて、ハンバーガーをむさぼり食って「国が悪い」と叫んでいるクールじゃないやつの映像に行列ができている。
 その劇場は、今年も来年も、十年後もおれたちのCGが客を酔わす場だったのにっ。

 その後、ドラマチックな展開によってジョブスはディズニー王国を手にしたが、あの大食い映画が大ヒットしていた時期の出来事は、想い出したくもないはずだ。だとすればいま、彼が、マクドナルドのイメージで自社商品──我が子のようなキャラクターたちを売りたいなどと思えなくなったのだとしても、仕方のないことだろう。

 『スーパーサイズ・ミー』の監督、モーガン・スパーロックは、TVのニュースを見て、映画の制作を決意したという。
 そのニュースは、肥満症のティーンエイジャー二人が、マクドナルドを相手取り訴訟を起こしたというものだった。
 彼らの言い分は、こうだ。

「自分たちが肥満になったのはハンバーガーが原因」

 マクドナルドは、公式見解として「自社の提供する食品の栄養バランスと肥満との因果関係は全くない」とコメントを発表し、裁判の行方は、二人の若者が、自分で自分を管理できる「子供」か否かという点に絞られた。
 結果として判決は、

「大量に食べたのは本人の責任」

 ということで原告の請求を棄却ということだったのだけれど。
 つまるところ、アルコールが禁止されていた時代もあれば、いまも禁止の国もあるというようなことで。

 先週、中国では大手ポータルサイトが軒並みダウンした。
 はっきりとは言わないが、国の方針として検索サイトでワードを入れてもなにもヒットしないという「電子検閲」を行ってきた中国が、さらに禁止ワードを増やしたがためのダウンだったらしい──そのニュースを聞いて、私は思った。

 国中のみんなに、なにも知らせずにいることなんて、もうこの時代には不可能なことなのに。

 どちらの大国も、大きくなりすぎて、自分たちがどうしていいんだかわからなくなっているのかもしれない。
 学校にコーラを置かなければ子供たちはコーラを知らずに大きくなる?
 ネットで調べられなければ世界でなにを言われているかみんな知らずにすむ?
 それはなんのファンタジー?
 だれの夢?

 太るとあぶないからダイエット・コーラにしなよ、でいいじゃん。
 世界から特殊な国だって言われているけど、私たちはこれでハッピーでしょみんなで盛り上げていこうよこの国を。
 そう言えないの?
 肥満訴訟とか情報隔離とかいう前に。
 だれかの意志を操作できると信じる夢見がちな心が病んでいると思う。

 なにかのせいにすんな。
 クールじゃないなあ……
 というようなことを鬱陶しい梅雨空の下、思ったのでした。
 すかっと生きたいものですよね。
 さわやかアスパルテーム入りコーラ、いまも飲んでます。
 爽快。

 たとえ、数十年ののち、世界的に現れた奇病の原因がダイエット・コーラだったとしても、私はだれも訴えない……だって私は、これを好きで飲んでいるのだもの。
 クールとは、潔さのことだよ。

 アスパルテーム、おかわり。
 

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