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『山手迎賓館での結婚式』のこと。



・ タクミにいちゃんタクミにいちゃんとしたってくれた従妹から結婚式の招待状がとどいた。実弟ふたりの結婚は「そうなんだ」というくらいのものだったのに、いとこの結婚に胸が詰まる自分におどろく。嫁ぐという響きは、なんだか想いうずまいてやまない。

・ 彼にも逢ったことがあるし、いまの彼女に対して含む感情などないのだが。私の祖母は、いとこ同士だった。だから「結婚できる距離」というぎりぎりの境界線がそこにあることを幼心では意識していたかも。とか。だからなんなんだというようなこともいろいろ考えながらの祝杯。おめでとう。

twitter / Yoshinogi

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 それが半年前のこと。
 その従妹の結婚式には、ちょうど出産が重なって行けず、その年の年末……つまり今月。彼女の弟、私にとっての従弟も、結婚式を挙げることになった。

 従妹にも、やっと直接の、おめでとう、が言える。
 向かった先は、神戸三宮フラワーロードの山手迎賓館。

 オシャレな言葉の響き。
 そっと教えると、私のバイクは神戸ナンバーで、いまは大阪在住だから、まわりからいいなあと言われるのだけれど、そんな私からしてみても、特別感のある会場。 

 なかはこんな感じ。

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 二階バルコニーからお色直し後の登場があったり。

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 大きなお屋敷ではあっても一軒家な造りなので、披露宴と書くよりも結婚お披露目宴会と書いたほうがしっくりするくらいに自由な雰囲気になる。そういったわけで数十人規模での披露宴なのだが、だれもかれもがあっち行ったりこっち行ったりで、写真を撮ると見知らぬだれかが入ってしまうため、ここにアップできるのは天井風景ばかりになってしまうのでした。

 結婚式自体は、人前結婚式。
 神父も牧師も神主も族長も占いバアバもいない、親戚知人の前で誓いをたてるというの。そういうのは、司会進行の腕に成否がかかってくるものですが、山手迎賓館のスタッフさん、若い女性なのですが、滑舌良くて雰囲気もいい。指輪交換の前に誓いのキスをしはじめようとした従弟のことを、ちょっと待ってくださいっ、と、お願いして止め、参列者を爆笑させたタイミングの取りかたなど、不測の事態をさばくことまでできる能力はスポーツの生実況アナウンサーでも通用しそうなほどでした。

 というか、ここのスタッフさんの平均年齢が、妙に低い。まったく調べないで憶測で書きますが、きっと全国各地でこういう結婚式場を運営しているベンチャー企業なのではなかろうか。なんというか、司会もカメラマンも、披露宴会場の給仕たちも、みんながインカムつけてやりとりして動くさまが軍隊チック。ホテルの結婚式でもよくありますが、通りがかっただれかに「ビールおかわり」と頼んだら、そのひとが持ってくる、という居酒屋方式ではない。だれに頼んでも、おそらく司令官へいったん指示を仰ぎ、そこからトップダウンで命令が下りてきて、駒が動く感じ。

 気持ちよかったです。ただ、いかにもゼロからノウハウ築きました、先輩と呼べるひとはだれもおらず、自分たちでやりかたを見つけてきました、という雰囲気だったので、マスゲームの駒か特殊部隊の隊員かというくらいテキパキ動けるようになったいまは素晴らしいが、きっと最初の数年は目もあてられないほどにひどいありさまだったに違いないと、勝手に確信したりもしていました。

 巨大プロジェクタースクリーンを二基装備で、映像と音楽をもって飽きさせない。当日の動画を即編集してスクリーンに流すなど、裏方さんも凄腕。実は挙式の記念撮影で、うちのゼロ歳の息子がギャン泣きしたのですが、現場でも「泣き声は写らないですからー」と場をなごませてくれたのに加え、動画では息子の泣き顔をインサートして、会場を笑わせてくれた。ちゃんとこうしたらこういう空気になるというのがわかっていて、それを数十分で仕上げる。あの映像技術、これも推察ですけれど、たぶん高価い。良いスタッフ使っているのか育てているのか、なんにせよ、ちゃんとギャラ払って優秀な人材を逃がさないでいる会社は、良い会社だと思う。

 スピーチの類も、事前に依頼してあって、それ以外のひとにはいっさい振らない。ケーキカットも、飲めや騒げばやっているひとたちを、無理に集めたりしない。まあストレスのない式でした。いや、新郎も新婦も飲むひとなので、飲んで食っていってくださいと本人たちも言っていたように、まさに宴会だった。従弟は、親戚のなかでもいちばん背が高くて、二メートルほどある。幼いころからサッカーをやっていて、そういう友だちも集まっている。もちろん、スクリーンには新郎がケツを出している写真が映されたりする。私だったら、これにかけたであろう札束で新しい大きなバイクが買えるなあ、と思ってしまうが、そう大規模ではない式を、気取らないかたちで、でも贅沢に仕上げたいという向きには、札束を惜しまず最高の一日のために使う最適の式場です。

 私も従弟も、結婚前にすでに同棲して長くて、私は式なんてやらないと言い切っていたのだけれど、まわりに親戚だけは集めろと諭されてそういう式をした。従弟のほうは、まったく逆の感覚で、式はちゃんとしようと貯金してそれをした。性格的に、純白の山手迎賓館で、純白のタキシードを着て、純白のケーキを彼女と食べさせあって、ケツを剥いた写真をさらし「タクミ兄ちゃん、おひさしぶりですっ」と抱きついたりするような、そういうハイテンションなところに私は立ちたくないが、従弟には似あっていたし、あのふたりは、仲睦まじくやっていきそうな気がする。

 と。褒め倒しても「山手迎賓館 結婚式」でググってここに来られた、式場絶賛おさがし中のみなさまにおかれましては、けなすところはないのかという情報こそ欲しているものだと思うので、書き添えておきましょうか。 

 うちの親戚は、血筋としてアルコールに強い。私の座っていたテーブルは、そういう先天的酒豪が集まっていて、まあ飲むんだけれど、平気な顔をしている。冷静に酒の銘柄を選んでいたりする。ちゃんぽんもなんのその。結果、会場でおそらくもっともスタッフの手を焼かせたテーブルになっていた。前述の通り、この会場のスタッフが軍隊的に優秀なので、同じテーブルで何種類もの酒を次々頼むのに対し、いちいち注ぎに来る。優秀なのでグラスをカラにすることはない。だが、雰囲気は完全に宴会なので、違和感がある。そのワインボトル、置いていってくれたらいいのに。飲みかけのビール瓶がテーブルに並んでいくのが宴会ぽいんやんか、と思ったりする。頼むとワインの底のカスまで注いでくれるし、ビール瓶を預けてくれたりもするのだけれど、なにせ軍隊だから。規範があるようで、かたくなにそれを守ろうとする。

 白身魚をフォークで突き崩してそれをつまみにベルギービールを傾けている至福の私に向かって、白ワインがあいますよと勧めてきたので、いただいたのですが。うーん。そこはビールを注いで欲しかったかなあ。

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 「Takumi (はーと)」と新婦みずから書いてくださったお茶目なサングラスなどをかけて何度も乾杯する雰囲気なのだけれど、スタッフさんの行動規範のもとになっているのが、どうもホテルマン。そこは居酒屋チックでいいのではないかと感じる部分はあった。

 お品書きも、かたくなにフルコース。求められているのだろうか、それ。もちろん、お酒飲まないひともいるわけだから、きちんとしたコース料理が出てきて嬉しいわという方々もいらっしゃるのだろうけれど、私は新郎をよく知っている。あれが、これで飲みまくってくださいと選んだ料理に、ポタージュスープがあるというのはどうも解せなかった。

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 これでどう飲めと。いやまあスープは飲むものだけれど。スープで酒は飲めない。たぶん、料理のランクは選べるが、どれもコース料理設定で、このパンプキンのポタージュスープ、パンプキンチップスにして出してあげたらタクミ兄ちゃん喜ぶと思うんですよね、なんていう融通は利かなかったのだろう。残念だ。スープは美味かったが。あの雰囲気のなかで、粛々とポタージュを口に運ぶのが、なんだか可笑しかった。身長二メートルな、かつてのサッカー少年の友人たちとその親戚たちが、浴びるように酒をあおっていたのがポタージュスープ登場で、しかもこの皿だから白髪酒豪大男な叔父さんもグビグビいくわけにはいかなくて、スプーンを使って猫のように舐めはじめ、静かになる。コース料理だから仕方ない? とはいえ、けっこうな人数が「いまここににスープ出てくるか……」と思ってた。私は思った。茹でたカボチャ丸のまま出したほうが盛り上がったのではなかろうか。

 とまあ、そんなふうだったのでした。
 式場レポート終わり。

 歳が離れているせいで、風呂に入れてやったり、生協のゲームコーナーでメダルゲームをおごってやったり、夏休みともなれば親戚が集まるが、それすなわちみんな家で飲んでいるということなので、私も飲めるようになるまでは、完全なベビーシッターとして過ごした十代のころ。おかげでタクミ兄ちゃんと可愛い従妹たちに慕われて、二メートルの大巨人に抱きつかれたり、いまでもするのですけれど。

 従弟、私の末の弟と、同年代。
 彼らの共通点。
 結婚式で語った、夫と妻、互いの第一印象。

「凛とした大人の女性だなあ」

「すぐ仕事辞めそう」

 思えば最近、私のまわりで結婚した男性は、例外なく五歳から十歳上の女性がお相手だ。今回の式でも、向こうの親戚さまが私のグラスにビールを注いでは、

「チェルシー(仮名)は、これでもうヨシノギ家の人間ですから、煮るなり焼くなりしてやってください」

 などと、のたまったりするのだが。
 後ろで流れているプロジェクション映像が見えていないのか。どう見ても、おたくのチェルシーちゃんが、二メートルのうちの従弟を公私ともに煮るなり焼くなりしている感じなのですが。

 そういうカップル、多い。
 こういうのをつかまえて、近ごろの若い男が草食だからとかピヨッてるからだとか言われがちだが、よくよく見てみれば、私のまわりも男のほうが年上というカップルは多くいるのだ。ただ、結婚しないのである。結婚というかたちになるのが、この組みあわせが多い。あくまで最近の私のまわりでの話だけれど。本当に多い。

 さっきの双方のコメントに、凝縮されている感もある。
 恋愛は意外性だと言うし。

 職場に新しく入ってきた、八歳下のガキにしか見えないボク。すぐ辞めそう。でも五年経っても辞めない。それどころかちゃんと働いている。

 冷静に考えれば、ちゃんと働いているというだけのことが、最初の印象があるだけに、意外性として機能する。

 逆は、もっとチョロい。
 八歳年上の、職場の先輩など男女問わず怖そうなものに決まっている。が、たいていのひとは、五年もいっしょにいれば、鬼ではないと知れる。結果、チェルシーは特別なふるまいはなにもしていないにもかかわらず、彼における最初の「大人の女性」フィルターにより、なにをやっても「大人の女性なのに可愛い」となる。

 あげく、大人の女性に求められる。
 え、オレなんかが?
 なに言ってんの、あんた、自分で思っているより、すごいしっかりしているわよ。

 まあ、チェルシー目線で勝手に無能な新人扱いしていただけだが、終わりなのか始まりなのか、良ければすべて良しである。

 これが、年上男性と年下女性の場合、同じフィルター効果で意外性演出されて、くっつくことはあっても、じゃあ結婚しましょうか。という流れに、なかなかならないのだろうなという推測は難しくない。後輩女性の側からプロポーズしてしまえばすんなりいくのかもだが、まだまだいまの日本では「すぐ辞めると思ったのに意外にがんばっている後輩女性」として先輩の恋心を射止めた女性の側から、つきあうだけじゃなくて結婚で! という、ややこしい話は振りたくないものであろう。

 かくして、国民総活躍国家になりたての本邦では、年上女性と年下男性の結婚式がすごくしっくりきて、その宴会の場で「うちのチェルシーをどうぞ」などと発言する家制度が抜けないおっさんたちは、滑稽でさえある。

 そういうことをあらためて思いながら、そういえばあの夏の日、従弟妹たちを連れまわして、おじいちゃんおばあちゃんの家に帰ったら、だれかとだれかが必ず怒鳴りあいをしていたり、号泣していたなと記憶がよみがえる。

 うちの家では、結婚とはそういうものだった。
 そのために結婚したのかと思うくらいに、怒鳴る泣く。
 親戚がみんなそうだし祖父母もそうだから、子供たちも、なんにも心配していなかった。結婚とは、ああいうもので、お姫様と王子様のものではない。おじいちゃんとおばあちゃんは従兄妹同士で、幼いころから、死ぬまでケンカしていた。でも、幸せに逝った。

 良い式だったなあ。
 あ、ここで、山手迎賓館での結婚式における参列者のちょっとしたことを、もうひとつ。なにせ迎賓館で、入り口がひとつしかない。もとは一日に一度のパーティ-で使われていたのだろうが。現代の結婚式場となってからは、日に何組かが訪れる。当然、ホテルのように共用のロビーがないので、前の組の参列者は、迎賓館の建物そのものから追い出されて、道路でたたずむことになる。二次会の話などは、路上でおこなわれる。

 子連れで、しかもゼロ歳児で、さっき記念撮影でギャン泣きしたのなどを連れていると、二次会など、とんでもないわけで。

 そそくさとタクシーへと乗り込みました。

 まだお昼過ぎだったから、すぐ近所の王子動物園へ。

 私、薬屋なので、確固たるエビデンスのない通説は信じていないのですけれど。妻が言うには、生後一年以内に動物園に行けば免疫力が上がってアレルギーになりにくいのだとか。

(ちなみに、あとでちゃんと調べてみたら「農家の子」と、そうでない子とを比べた実験が元ネタ。あと、ペットを飼っている家の子も、確かに免疫力は上がる模様。そういう意味では、夏休み中を牛農家で過ごし、家には猫とニワトリとカエルとザリガニとスズメとインコと、数えきれないほどのゴキブリとクモとダンゴムシがいた、私が花粉症にならないのは当然だな。その理屈で見れば、午後の数時間を動物園で過ごしたくらいで、どうこうなるわけがない。が、それを論破しないのが夫婦である)

 日本で唯一、パンダとコアラをいっしょに見られる動物園。
 兵庫県立美術館がそばにあったので、美大生だった私は、大人になってもついでによく訪れた勝手知ったる動物園。美術館の移転にともなって、ついでに訪れることはなくなってしまった。

 ああ、久しぶりのなつかしい場所……
 だったのだが。

 妻は神戸山手の坂をおしゃれな靴で歩いたせいで靴ズレがと言ってベンチへ向かい、閉園まで一時間もないから、だったらこいつとコアラとパンダ見てくるわとベビーカー押して歩き出したら、肝心の息子は泣いて食って騒がしかった反動からか、すっかりおねむで。

 十二月らしからぬ陽気で、ネクタイは取り、第二ボタンまで開けて、オールバックの黒服で、ベビーカーの中身は眠っているので話しかけることもせず、ただ淡々と見た、ひさしぶりのパンダは、こんな状態だった。
 ぴくりとも動かず。

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 穏やかな一日でした。
 画像フォルダの名前を書いていて思った。
 公式には「OJIZOO」と書くの、

 「OOZIZOO」

 って表記したら左右対称で、ロゴ、格好いいのに。
 歴史ある動物園に、いまさらな提案だけど。

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神戸市立王子動物園【公式】

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 まあ、あれだ。
 これを読んでいるはずもないから、ここで言うのもなんですが。
 でっかいが可愛い年下の従弟よ。
 同じあの夏に育ったから、心配していない。
 やっていける相手が見つかったのだな。
 それはすごく、幸運なこと。
 おめでとう。
 よかった、よかった。


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