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『仮面ライダーゴースト』の話。




 全人類をロイミュードと同じく、ナンバー化して支配下に置き、だれも奴の許可なく肉体を持てない世界が来る。


 テレビシリーズ『仮面ライダードライブ』

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 あかされた敵の企てが、それ。
 えっと、首相暗殺?
 ああ違うの仮面ライダーのお話……

 そんなこんなで、見ていなかったかたにはネタバレになりますが、ちょっと記憶にないヒーローとヒロインが結婚して子供まで産んでしまったことが表沙汰になる最終回だった。

 前代未聞の車に乗った仮面ライダーと言いながら、しっかり昭和の最後でライドロンに乗っていた仮面ライダーブラックRXを意識して、トライドロンなんていう車に乗っているから、きっとこれは『仮面ライダーディケイド』以来の雨宮慶太コラボレーションなどがあるのに違いないと密かに期待していたのですが、そんな噂はついぞ聞かず。

 車かよ! 躯にタイヤ嵌まってんのかよ!
 などという出落ち感満載のスタートだったにもかかわらず、中盤以降は非常に鉄板な作りで、車で空を飛び回ったりするような演出も控えめになって、人類とロイミュード(機械生命体)は互いをわかりあえるのかといったハードSF愛好者に議論をふっかけるような野心も見せ、あげく機械とヒトとミニスカポリスの三角関係がコメディタッチで描かれるというウディ・アレン的アプローチまでカマしてきてくださって。

 いや、よかった。
 冒頭の、むしろそんな世界が来てからのマトリックス的混沌の地球を描いた超大作を撮って欲しくなるような敵の野望が提示されてからの流れは、いい意味で私の期待を裏切ってくれた。

 『仮面ライダードライブ』の開始当初、グレッグ・イーガンの『ディアスポラ』を引用した。

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『仮面ライダードライブ』の話。

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 終わってみれば、まさにそれそのものだった。『ディアスポラ』は、データ化された人類と、それを拒む一部の後進的な層が、それぞれにヒトとしての在りかたを模索する寓話だ。

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 仮面ライダードライブは後進的だった。刑事だから仕方ない。肉体のない人類なんて想像できないという保守派でありながら、戦うことには躊躇がなく、彼は人類の未来を守ったということなのだが、果たしてそれは真実なのか。それだって、一面的な見方に過ぎないのではないか。「支配下におく」という表現は悪の匂いがするけれど、いまだって人類の生活はインターネット網と無数の「サーバーに管理された」データによって成り立っている。傷つけあう肉体がなくなれば平和な地上……いや、その地上さえも必要としない永続的データ生命体に進化して、なにか不都合はあるか?

 『仮面ライダードライブ』に登場する、バイクに乗ったほうの仮面ライダーチェイサーが、かつてのシャドームーンやハカイダーのような孤高のヒーロー像を魅せてくれないかと期待した部分も、上手に裏切られた。

 終盤は、チェイスや、メディックといったロイミュードたちが、人間を模した姿形だけでなく、心の人間性までもを獲得するという展開であり、どう見てもシャドームーンでありハカイダー的な立ち位置だとしか予測できなかった仮面ライダーチェイサーが、恋してそれに破れたり。恋人が欲しいと願うシャドームーン。失恋して、それでも相手の幸せを願うハカイダー。そんなのは予想しえなかった。

 よかった。
 ただ、そういう展開であるがゆえに、見ていて苦しくなった部分もある。ああこれ『脳男』を観たときにも感じた痛みだと、思った。

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 映画『脳男』は、西部警察張りのドッカンドッカン爆発するなかでアクション満載という超娯楽作でありながら、ダークヒーローが「感情を持たない」という設定。言ってみれば『ロボコップ』に近い。無双な強さを誇るヒーローなのだけれど「悪を討つ」というルールに従って戦っているだけになってしまい、観客が感情移入できない危険性が内在する。実際『脳男』はアクションモノなのにとんでもなく爽快感が皆無だし、作品の最後で感情を取りもどして観客にカタルシスを与え、歴史になった二十世紀版『ロボコップ』が、シリーズ化したことで魅せるものがなくなってしまいスゲえ敵マシン陳列ショーに陥ってしまったことを思い出すと切なくなる。

 そういうことを考えていると、いまさらながらに『仮面ライダードライブ』は、平成ライダーの歳の離れた直系兄である、『仮面ライダーZO』の血を色濃く引いているのではないかと気づくのだ。

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(↑この冬、あろうことか劇場版雨宮慶太ライダー三部作がまとめてブルーレイ化される。夢に出てくるくらい観たし、あれをブルーレイにしたってもとがビデオ画質なのに、と思う一方、この三つをまとめてパッケージ化するというピンポイントな狙撃が憎らしいほどに我が胸を打つ)

 私自身、仮面ライダーブラックからの雨宮慶太ライダーのなかでも映画『仮面ライダーZO』に出てくるドラスが好きで、我が家のリビングに飾ってある唯一のフィギュアがドラスだ。

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 ドラスは、マッドサイエンティストによって生み出された新種の生物。仮面ライダーZOがバッタの遺伝子を使って人間を「改造」した「改造人間」であるのに対し、作中での立ち位置は同じ科学者に造られた二号ライダーでありながら「改造」ではなくゼロから生み出された。

 私が飾っているフィギュアの姿もアバターで、戦うためにドラスが「造った」物質的な仮想の肉体。ドラス本体は、サーバー(作中では謎の液体とその周辺物として描かれている)上のデータ生命体のようにして生きており、それを指して生きていると表現していいものかも怪しい謎だらけな生命体である。

 そんなドラスが、仮面ライダーZOに言う。

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「おにいちゃんのからだをもらうよっ!」


 映画『仮面ライダーZO』

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 そうして、ドラスはおにいちゃんと呼ぶZOと本当に一体化してしまうのだ。いったいなにがしたいのか。ドラスは自身を生んだマッドサイエンティストのこともパパと呼び、すでに自身へと取り込んでいる。ヒトになりたいわけではないのである。あくまで、同一な存在へとなりたいのであって、ドラスは自身のことを神と言ったりもするけれど、きっとドラスの描く新世界というものは、ドラス神=巨大データサーバーへ、世界のすべてを取り込んで、平らな状態にしてしまうことなのだろう。

 逆説的にそれは、無だ。

 世界のすべてを取り込んで、世界が無になれば、当然、それそのものも無になる。つまりドラスは、パパとおにいちゃんと一心同体になってその先も次々に人類も改造人間もなんなら宇宙全部を飲み込んで、最終的には消えてなくなるという概念さえもない無になろうとしている。

 作中では、マッドサイエンティストの幼い息子が、ドラスと心を通わせてしまったがために、ドラスに生まれた「感情」が邪魔をして、ZOに隙を突かれてしまう。そう、もともとのドラスは「感情のない」生命体として造られていた。

 それが、感情を持ったがゆえに破綻する。マッドサイエンティストがもっと優秀だったならば、ドラスはたかが人間ごときにバッタを掛けあわせただけの「おにいちゃん」に負けたりはしなかったはずだ。というか、実際に一体化するところまで行ったのだから、格闘技の判定であればすでにノックアウトの裁定のあとで、息を吹き返した対戦相手に後ろから殴られたようなものである。

 だからドラスが好きだ。

 勝手に造られて、そういう生き物だから世界のすべてを自分自身にしてしまおうとしただけなのに、その行為を「悪」だと呼ばれて倒される。けれどそれはもう一方の方角から眺めれば、マッドサイエンティストが目指した究極の愛のカタチがドラスの暴走によって昇華されたと見ることもできる。ドラスは自分を生んだ「パパ」マッドサイエンティストの次に、彼の幼い息子を取り込もうとし、おにいちゃんは現に取り込んだ。種の超越。完全なる同一。ドラスはそれを求めていた。

 自在に物理的肉体を創造できるドラスにとって、肉体という器に意味はない。そこに生みの親たるマッドサイエンティストの思考の浅さがあった。彼は最強の新生命体を造ろうとしたのだが、生命とはけっきょくなんであるのかを見誤った。

 赤ん坊は、日々大きくなる。その肉体の細胞増殖は、個々の細胞が分裂を繰り返しているのであって、赤ん坊の脳に指令を受けているわけではない。全人類をロイミュードのようにナンバー化して並列につないだとき、そこに「支配」だとか、だれかの「許可」だなどといった概念が残っていると考えるのは、仮面ライダー31代目になってもやっぱり仮面ライダーが「人間」だからである。

 そういう意味で、『仮面ライダードライブ』における「人間ではない」仮面ライダーチェイサーが、私の期待を良い意味で裏切って、ひどく人間臭い感情を獲得してしまったのは、今後の仮面ライダーシリーズに大いなる影響を与えるはずだ。作品的には刑事を主人公にした直球な物語だったが、ヒトではない生命体を敵でも味方でもない位置であつかい、ZOがそうであったように、ドラスの人間には理解し得ない無垢な思想を「悪」と即断しなかった立ち位置は、この先、肉体を超越していくであろう人類と、ヒトに近づいていくだろうAIが現実のものとなる近未来での「人類の兵器ではない」仮面ライダー像の端緒を築いたと語ってふさわしい。

 そのうえで次。
 『仮面ライダーゴースト』である。

 主人公が死んでいるらしい。
 生き返るために妖怪を倒すらしい。
 キモカワイいパペット相棒と、妖怪ハンター仲間がいるらしい。
 竹中直人が坊主なのか祈祷師なのか、そういう格好。

 うん。『牙狼<GARO>』っぽい。たしか『牙狼<GARO>~MAKAISENKI~』で竹中直人はホラー役で出ていた気がする。それが妖怪ハンターの側とは、贅沢なキャスティングだ。きっと雨宮監督も、ギャラが許すならば『牙狼<GARO>』の大法師役で使いたい人材だったろうに。

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 いや、それよりも脚本が『警部補 矢部謙三』の福田卓郎。というか、このひと主宰劇団の代表作『キネマの神さま』は、悩める新人監督の前に歴史上の大監督たちが降臨してシッチャカメッチャカという芝居だ。仮面ライダーゴーストが過去の偉人を降臨させるヒーローであるという設定はあかされている。これはもう、竹中直人を『ドラゴンボール EVOLUTION』の亀仙人チョウ・ユンファのように使う方向性だろう。むしろこれで意外にシリアス路線だったらツッコまざるをえない。 

 そうそう『仮面ライダーゴースト』で、初めて怪人デザインを担当するという島本和彦は、『仮面ライダーZO』をマンガで描いたひとでもある。

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 なにかと通好みな『仮面ライダーゴースト』。なにが通好みといって、ここまで出てきた名前が総じてコメディのなかにシリアスを混ぜ込んで、確信犯的にホロリとさせてカタルシスを与える名手である。『キネマの神さま』ではないが濃すぎる個性がぶつかりあって、現場は大変だろうけれども、良いものが観られそうな予感はひしひしとする。

 蛇足ながら、監督が特撮畑のひとなので心配ないとは思うのだが、舞台芝居の大物たちに囲まれた、主役の西銘駿(にしめしゅん。愛称はしゅんしゅん)が、演技経験のないことに一抹の不安。

 いや、私、生後四ヶ月になる息子と『仮面ライダードライブ』の最終回直前を観ていたのです。息子が観る……といってもスジが理解できるわけもないので、文字通り見ているだけなのですが……初めての仮面ライダー。これが結構食い入るように観ていた。

 仮面ライダードライブの実質の最終回に、仮面ライダーゴーストが初登場した。私はめっちゃ好みのデザイン。基本的に自分も真っ黒いバイクに乗って真っ黒い革ジャンを着ているようなひとだから、黒い仮面ライダーが好き。仮面ライダーブラックあっての私の人生なくらい。

 ただ、はっきりと、息子は醒めた。

 単純に、色の話。仮面ライダードライブの変身最終形は真っ赤で、フォーミュラーとかいうくらいで炎をまとっていたりする。生後四ヶ月、赤いのが飛び跳ねまくっている、これたまらない。でもそんな仮面ライダードライブがピンチ!

 助けに来たよゴースト!!

 真っ黒に、オレンジのラインが多少。

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 やっと寝返りが打てるようになったばかりのくせに、ドライブの活躍には手足がもげる勢いでバタつかせていた息子が静かになる。どうも、正義の味方がもうひとり出てきたというよりも敵が増えたという認識で、なぜ先ほどまでの、ど派手な真っ赤さんが暴れるのをやめたのかという不満顔。

 ベルトもこんなですしね。

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 通好みの狙ったキモカワ。
 で、ドライブ真の最終回。なんと仮面ライダードライブはすでにベルトを返上して変身せず、仮面ライダーゴーストが実質の主役。

 なかのひと、つまり、しゅんしゅんは出てこなかったのですが。仮面ライダーゴーストとして、声の出演はあった。

 高い。
 子供声。
 それも、硬い。
 特撮畑で、演技指導はお手のものな監督が優しくほぐしたのだろうが、それでも、ひとことふたことで、こちらに伝わってくる過剰な緊張感。

 本編前ですし。
 試運転ですし。
 平成仮面ライダーシリーズは、ケツの青い新人役者な彼らを高見から愛でるシリーズでもあるので、新日本プロレスの黒いショートタイツのヤングライオンたちがろくな技もなくドロップキックだけはきれいに撃てる、それだけを魅せる、みたいなところをなでなでしてあげればいいのですが。

 いかんせん、脚本も共演者も芝居人。
 ガチのコメディ、舐めたらいかん。
 ドロップキックしか撃てないで、一年乗り切れるわけはない。

 通好みながら、ある種の安定感あるスタッフの今回は、その野獣の檻に完全演技素人なジュノンボーイを投げ込んでしまったというところが肝でしょう。

 大河ドラマ。
 生き返るために必死に戦う主人公。感情は満ち満ちあふれている。甲高い子供声のジュノンボーイは、赤ん坊が悪と見間違うゴーストという名の黒い正義の味方として目玉のベルトを腰に巻き、泣いたり叫んだり愛を請うたりできるのか。

 一歳の誕生日を迎えても、まだプレゼントもねだることはないだろう息子へ、私が先走って仮面ライダーゴーストのソフトビニール人形をプレゼントしたくなるようなライダーになって欲しいと願う。なっていなかったら、ドラスのソフビはすでに私のコレクションにあるので、ゴーストは買わないでそれを与える。だって、私が語ることのできる、そうしたくなる仮面ライダーでなくちゃ、息子に愛も正義も生きることの切なさも、伝えられない。まず私を微笑ませ、ホロリとさせるバックドロップのひとつも魅せてくれなくちゃ。しゅんしゅん。形はきれいでなくてもいいんだ。観たいのは、魂の色なんだ。

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仮面ライダーゴースト | 東映 公式

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