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『穴のない盗撮計画』の話。


「盗撮されてるよ」

 よく言われます。
 私が撮られているのではなくて、撮っている。
 コンデジ(という略称が嫌い。スマートフォンがスマホならば、コンパクトデジタルカメラもコデジ、もしくはコカメでいいはず。なんだかなにかを揶揄するような響きだと感じるのです。コンデジ)を持ち歩いています。メモ代わりに撮りまくります。それなに撮ってんの? なにに使うの? と言われるようなどうでもいいものこそ、なにかが引っかかったらとりあえず撮っておく。

 さすがに見知らぬ人物を撮るときは事前に許可をいただきますが、知人友人ならば、あんまり気にしない。私が絶えずカメラを手にしているのは、近しいひとたちだと当たり前の光景なので、いつものこととしてスルーされるのです。なので逆に、友だちの友だち、だとか、親戚の親戚、みたいな関係性の相手がそこにいたりすると、私のことを知るひとがそのひとに言ってくれたりする。

 タクミさんに盗撮されているよ。
 でもあれいつものことだから気にしないであげて。

 そういう意味で、カメラがカメラの形をしていることが、私には重要。手にしているのがスマホだったら、盗撮のフレーズはシャレにならない。いくら性能差がなくなってきたとはいえ、スマートフォンで「写真を撮っています」と言いきってしまうのは、なんだかおこがましい。カメラの形をしたカメラを手にしているからこそ、堂々と趣味だ仕事だと言えるのです。いくら高性能でも、プロレスのリングサイドで雑誌記者がスマホでリング上を撮るようなことには、この先もならない。

 ふつうに考えると絶滅危惧種だと思われそうな、使い捨てフィルムカメラが、いまだに大型店には商材として置かれているのも、そういう理由。

B000WSBEUK

 学校行事の旅行では、デジタルカメラが禁止されることがままあるのです。

 盗撮、が理由なのでしょう。
 何千枚、何万枚と撮っては消せるデジタルカメラだからこそ、私もメモ代わりに使えるのであって、フィルムカメラ、ましてや使い捨てカメラなどで同じことをやっていたら、おこづかいがいくらあっても足りない。

 盗撮は悪。

 写ルンですでだって、盗撮はできます。けれどきっと、39枚撮りの写ルンですだけをもって修学旅行に行った彼が、彼女のことを盗み撮るのならば、それはそれで良い想い出であり成長の一部だとPTA副会長代理も認めるところで、それは悪ではないという認識があるのかも。そこがデジカメだったなら、はしゃいで無防備になった同級生のあられのない一枚を数撃って当てようとするヤカラが現れる、それは悪。

 というか、単に修学旅行でスマホをあちこち向けてシャッター切る彼ら彼女らは、美しくないですしね。禁止したくなる先生がたの気持ちは、よくわかる。昨今では、プロレス会場どころか、花火大会でさえ「ねえ、一瞬でも肉眼で花火観てた?」というような人々が多い。私、カメラはメモ代わりだからこそ、本当に大事な一瞬にはカメラをポケットにしまいます。その場に居合わせた想い出が、シャッターを切った、なんていうのはイヤだもの。

 でもきっとそのうち、ファーストキスの直後の彼の顔とか、初夜でハメ撮りとか、そういうことをせずにいられない若者どもが増えそうな予感がする。大事な場面で、無意識にデジタルな記憶を残そうとするニューエイジたち。

「はじめてだったんだ……うれしい」
 はにかみながら、かしゃかしゃ撮りまくる。

 来年、Apple Watchが発売されるそうですが。

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Apple - Apple Watch

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 いよいよデジタル端末を身につけるウェアラブル革命が起こるのか、起こすんだ、と彼らも躍起ですけれども。たとえば、見たものすべてが記録されるカメラとか、技術的にはできるのだろうけれど、意味あるのって気はします。今年の大阪マラソンで、国内初のウェアラブル端末装着ランナーが走るというニュースも。

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大阪マラソン2014 応援サイト by ケイ・オプティコム

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 ゴーグルにタイムが表示されて、SNSで友人に励まされて、迷わないように地図が出て。

 うーん。
 最新技術でリビングへディズニーランドを持ってきたXbox&Kinectのようなことを、現実のスポーツでもするならば、御堂筋もリビングで走ればいいのでは。最新のポリゴン技術で描かれた通天閣は、本物と区別できないくらいに本物らしいはず。

 Kinect

 どうせ身につけたデジタル画面の向こうに見るシンデレラ城ならぬ大阪城なら、SNSでなくリビングで実際の友人に応援してもらいながらカロリー消費したほうが、良い休日になるかもしれません。すぐにシャワー浴びられるし、ベッドもビールもあるし。

 いえいえ。
 囓られた林檎時計や、近未来的大阪マラソンをディスりたいわけではないのです。

 とあるニュースからの連想。

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ミニスカ盗撮事件、夫婦ら3人不起訴…大阪地検 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

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 端的に書けば、この犯罪計画。

1. 男ふたりと女ひとりが共謀。
2. 家電売場で女が超ミニスカで商品に夢中になり身をかがめる演技。
3. 盗撮される。
4. 男ふたりが盗撮したやつを脅す。

 実に単純な計画。
 相手も大声で自分に非はないと言えないし、警察に駆け込むのも躊躇してしまうシチュエーションを作り出すところなど、珠玉のできばえ。

 彼らはこの計画、一年前に実際に女が盗撮されたことから思いついたのだという。

 にしても……
 レシピの3番が、私にはどうにも解せないところである。

 男ふたりで、がっちり監視しながらの犯行だ。成功を疑っていない。少なくとも近所のコンビニで三人が時給800円で数時間働くよりも、この犯罪のほうが儲かると踏んでいるからやっているのである。

 で、実際に、成功している。

 いやいやいや。
 大手新聞社、流して書いているけれども。

 電気屋で、ミニスカ穿いていたら盗撮されるの当たり前か?
 それほどにニューエイジたちは思ったら自然とスマホを向けてシャッター切る病に侵されているのか。自分の彼氏のファーストキス顔ではなく、赤の他人の下着である。簡単に釣られすぎている。

 結果的に、この事件。
 だれも起訴されなかった。

 盗撮したけれど法的には盗撮ではないのだそうだ。
 でも倫理的には盗撮なので撮った側も裁判を嫌がり、事件自体がうやむやになった。

 盗撮、の定義を、私は初めて知った。
 迷惑防止条例等により、その撮影が、

「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」

 であれば、法的に裁かれる盗撮になる。
 つまり上の事件の場合、女は撮られる気でパンツを見せていたのだから、それを撮られても恥ずかしくないし不安にもならない。だから盗撮ではない。

 ふうん。である。

 詳報では、身をかがめるだけではなく、女はさかんに「背伸び」も、くり返していたという。背伸びして見えるパンツって。超ミニスカートというそれ、もうたぶん、なにもしないでも秘境デルタ地帯がチラ見えしている状態だったのだと推察できる。

 「あきらかに見せている」、レベルだった。
 それも本人が、意図して見せている。

 そこにカメラを向けても、悪ではない。
 という、法。

 自分に置きかえてみよう。

1.彼が私の部屋で脱いだ。

 これは完全にOK。
 盗撮と呼ぶ余地がなにもない。
 ただ、シチュエーションを変えると……

2.いっしょにテレビを買いに行ったら彼が売場で脱いだ。

 私の知りあいなので、私が撮っても問題はない。
 が、場所が公の場であるというのが。
 その彼を他人が撮るとどうなのか。
 私はあわてて弁護するだろう。
 撮ったひとを、ではなく、彼を。

「ああ、こいついつもこうなんですよ、すぐに脱ぎはじめちゃって」

 私の上着でくるんで、店から逃げ出すだろう。

3.目を離したすきに私のいない路上で彼が勝手に脱いだ。

 それをかしゃかしゃ撮られまくっている。
 彼の頬は少し染まっている。
 羞恥があるのかもしれないが、そもそも自分で望んで脱いでいる。ストリーキングだ。パンツがその身に残されているのならば、某競泳アニメのコスプレイかもしれない。

 そう。そう考えると、迷宮に入る。

 プロレスラー、タイガーマスクのコスプレをした女が路上に現れたとする。顔は覆っているが、それ以外は丸見えである。ああ、けっこう仮面のコスプレでいいのか。

kekkou

 ともかく、どう見ても、コスチュームプレイ。
 露出度は高いが、本人が望んでやっているうえに、見られたがっている。
 これを撮る。

 マスクで顔は見えないが、恥じらっていようがいなかろうが、この場合、撮影者はむしろ彼女の協力者だ。彼女の欲求のために必要不可欠な観客である。

 これは盗撮ではない。

 おそらくは、家電量販店でしゃがんだり背伸びしたりをくり返していた女も、けっこう仮面級だったのだろう。もはや完全にどうにかしてしまっている、ストリーキング的な表現者。背伸びして見えるようなパンツは、撮るほうもスマホを両脚のあいだに差し込んだりする必要もなく、ごくごくふつうに、カメラを向けて撮ったのだ。

 路上で見かけた過剰なコスプレイヤー。
 もしくは、夜空の花火のように。
 記録しておくべき対象を、デジタル記録した。

 脅されて、我に返ったのだろう。
 けっきょくは警察に駆け込んだところからも、彼は「あれは撮ってもしかたなかった」と解釈していたのだと思う。そして現実に、法的に悪と呼ばれることはなかった。

 この話。
 ひろげようと思えば、ものすごくひろげられるのだが、そのニュースにいろいろ考えた、ということだけにしておきたい。
 なぜなら、私は性別的に、男だから。
 この手の話をだれかと突き詰めた結果、イヤなことになった記憶が、多い。
 そういうことを、今回も突き詰めそうになった。

 現実世界では、男女関係はコスプレイヤーと撮影者のように単純ではない。
 言ってしまえば、襲われた女が、襲われるような格好をしていたからだというような話。
 この手の話に、がうがうと噛みついてくる女性は多い。
 当たり前だ。襲われるのはいつも圧倒的に女性が多く、それがミニスカートやチューブトップのせいにされては、男なんて万年発情期なクズな生き物と言いたくなるのもよくわかる。

 でも、そのミニスカと恐喝のニュースが「盗撮にはならないんだって」という論点で語られているのを読むと、感じずにはいられない。

 でも、あきらかに誘っていたんだよ?

 私と彼のケース1ではどうだろうか。
 彼は私の部屋で脱いだ。
 撮ってもいいはずだ。
 いや、襲ってもいいはずだ。
 襲うという表現になること自体がありえない。
 そういう解釈で正しいに決まっている状況なのだ。

 でも。
 あとになって脱いだ側は、脅せるのである。
 逆は決して、ない。

 今回の計画の珠玉なところはそこだった。
 私は心底、感心した。
 レシピの3番は不自然などではない。
 だって、だれか、どの男かが、たまらなくなって撮るまで、襲われるまで、女の側は脱ぎ続けるだけでよかったのである。かまわないわ。どうぞお好きになさって。そう発信し続け、カモが現れた時点で、ひるがえすだけ。

 穴のない盗撮「される」計画。

 撮る側、襲う側とされる生き物にとって、境界性はないも同然であり、誘いに乗るときには、常に相手を疑ってかからなくてはならない。誘っている、というメッセージも瞳と瞳のやりとりなどではあからさまにそうであっても信じてはならない。カメラを取り出す前、まして襲う前には誓約書が必要だ。署名の入った、客観的に第三者が見て、そこに罪はないと証明できる書類が。

 ハンコを押す前に、押し倒してはいけない。
 脅されるに決まっている。
 ここは、そういう世界。
 すべてのコスプレとミニスカとアイコンタクトを疑ってかからなければ、喰われて骨も残らない死にかたをする。

 写ルンですが当たり前だった時代には、修学旅行で「写真いっしょに撮ってください」という告白があった。コスプレイヤーも地下アイドルもいなかった頃には、カメラ小僧は被写体を探して特攻する勇気が必要だった。

 パンツ見せられてスマホを取り出して脅されたり和解したりする事件がニュースになるシュールな現代では、境界線どころか距離感さえ危うくて、どう見てもペンペン草な相手にさえ毒があるかもと羊は疑ってしまう。

 だから、寂しいことのようだけれど。
 喰う気はないんだ、愛でたいだけなのだと、あからさまどころかはっきりサインを書くみたいに示さなくちゃいけない。写真を撮りたいですとスマホではなくカメラを見せ、結婚がしたいですと婚活パーティーに出て、押し倒されたいのなら弱さを明示する必要がある。誤解のないように。はっきりと。仰向けになって腹を見せて、尻尾を振って、それでも足りない。目を閉じて唇を突き出すくらいではサインにならない、キスはもらえない。あっちはこっちを悪かもしれないと思っているのだから。

 まあ。つまり。
 草食系男子が増えたとか言うけれど、女性専用車両なんてホラーかつファンタジーな世界でしかありえそうもないものが現実に走っていたりする社会で、あからさまに誘っているのに指にも触れないの、なんて言われたって、怯えるのが当然だと思うのです。家電量販店のミニスカは罠。通勤通学電車の男はみんな痴漢。草がちゃんとおとなしく食べられる草なら、草食だってがつがつ行くが、そんな楽園は、もうどこにもないのです。

 だれの得なのだろうか、この設定。




 
 
  

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