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『やわらかい器』の話。




 肉体は精神を必要としないのではないだろうか。肉体が独りでする仕事はたくさんある。肺に空気を送りこみ、血液を循環させ、食物から栄養分を搾り取る──思考力などなくても、それくらいのことはできるのだ。

BARKER

 クライヴ・バーカー 『マドンナ』

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 このあいだ、この記事を書いてから、考えたことがある。

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『魚醤ローストスペアリブのレシピ』のこと。

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 人造肉の地産地消を実現すれば、人類は家畜を「食べることなく」飼育して童話のような共存社会を築くことができるかもしれない……というような話をしている学者さんがいるが、私は培養されたブヨブヨのミンチ肉のハンバーグだけでなくホネもスジもあるかったい肉がお好みなのだ!!

 そういう主張でした。
 それはそれでそれとして。

 BiSが解散した。

BiS



 解散する前は、解散してしまったら私はどうやって生きていこうかと考えていたが、解散してみれば別にどうということもなく生きている。

 ステージで放尿することで有名になったノイズバンド非常階段とコラボするなかで「あの子たちは巫女だった」とBiSは評されていたが、つまるところそれはアイドル=偶像=依童ということであり、言ってしまえばノイズが響き生肉が飛び交う会場に、彼女たちの肉体が「在る」ことそのものに意味があるのだという……

BiS

 BiS階段の最後のライヴを収録したディスク1の全二十五曲のうち、最初の十三曲がBiSの代表曲『nerve』のノイズ版。アホである。一時間以上、同じ曲のループ。歌詞に意味はなくなっていき、踊り狂い客に向かって水を撒く少女アイドルたちの存在そのものが、器になる。

 思考力などなくても、それくらいのことはできるのだ。
 いや、思考力をなくしてこそ、できることがあるのだ。

 依童と書くとヒトになってしまうが、アイドルなどというものは、いっそ依代と書くべきかもしれない。ヨリシロは、神を降ろす器であり、生きてはいないモノ。歌って踊るアイドルは生きているけれど、生身のBiSが解散したところで、私は今日も彼女たちの曲を聴いて、そこになにかを降ろし、降りてきた神なるもので、みずからの欠落を埋め合わせている。

 モノは死なない。
 生きていない。
 皮肉なことに「いま揉めるアイドル」として、ステージからスク水で客の頭上へダイブしていた肉体派アイドルの肉体は、むしろ歌詞の一部だったのだ。生きているが、生きていない。太古の昔から言われることである。アイドルはウンコしない。そんな生き物はいないが、いるのである。それがアイドルという依代、ただ「在る」だけの、やわらかい器。

 BiSの解散アルバムの装丁が、エロ漫画界の巨匠、師走の翁の手に依っていたり、ダッチワイフにメンバーの顔写真貼り付けだったりするのが、自覚的にモノたる自身を信者たちに与えて魅せた、まさに「Brand-new idol Society」=「新生アイドル研究会」の研究成果であるように見える。

 モノだから癒せる。
 でも。
 モノだから物悲しくなる。
 ダッチワイフに射精したあとの寂しさは想像にあまりある。
 こんなことしなけりゃよかったとさえ思ってしまいかねない。
 だから、弱いヒトはアイドルを求める。

 私のために神を降ろしてくれる、
 モノになってくれる生きた巫女を。
 生きていないことにしておいてくれる、
 やわらかくてあたたかい依代を。

 解散していないが、聴かなくなってしまったアイドルグループlyrical school。

lyrical school

 lyrical schoolに改名して最初のアルバムまでは聴いたが、先日発表されたこの新曲を、私は入手していない。彼女たちは、デビュー当時tengal6という名だった。ゼロからアイドルグループを作ろうという企画で、スポンサー企業とメンバーを同時募集し、六人の少女と、スポンサー企業TENGAが決定。

 tengal6という名は「テンギャルシックス」と読む。
 「テンガ少女6人組」という意味だ。たぶん。
 TENGAさんといえば、こういう商品群で知られる。

TENGA

 男性用のオナニー器具である。
 しかし、いわゆる大人のオモチャとして知られる、これまであった同種の商品のように、女性器を模したり、エロいイラストの箱に入っていたりはしない。私は薬屋でもあるので、この企業の製品がどれほど革新的であったかを痛感している。男性のマスターベーションのための器具が、きれいでオシャレな姿で売り出されたことによって、薬店やコンビニでまで売られるようになったのだ。エロ装丁の、女性器を模したエロピンクなオナホールでは、開拓できない販路だった。

 某市長が外国の軍隊に向かって「風俗を活用しろ」と進言したのが叩かれまくっていたが、現実的に男性にそういう欲求が生理現象として存在してしまう以上、異国で金網に囲まれた軍事基地に駐留するという日常のせいで性犯罪者が生まれるのだという視点は間違ってはいなかったと感じる。たぶんあの市長は(現実に子だくさんだし)、テンガの存在を知らなかったのだろう。オナニーの未来を作りあげるTENGA社の製品群と心意気を知っていれば、あのひとこそ、外国の軍隊に「うちの国の企業が作っているすばらしい製品だ。なんなら輸出もするぜ」などと言ってダンボール箱でテンガを贈りそうなものである。やってくれていたら、それを各紙がどう取り上げ、どう断じるのか、読んでみたかったところではある。

 ともあれ、そういう企業が、アイドルグループを作った。
 中身は正統派だった。
 ファーストアルバムは、いまだに私のiPodから削除されず、ときどき再生もされている。

TENGA



 でも私のなかで、彼女たちの曲を聴くとき降りてきたものは「これいい曲じゃないか、売れたらテレビの歌番組なんかに出て、名前の由来はって訊かれて、そうやってTENGAさんの高い理想が実現され、ふつうにテンガのテレビCMなんかが流れる近未来がやってくるのかもしれないなあ」というようなことであったものだから。

 男も女も、依代が、器が、安寧に生きていくために必要なのだと、語り合いこそせずとも、だれもがわかり、そこに偏見も、罪悪感も、必要以上に感じないでいられる世界。フィクションと現実を、ごっちゃにして規制しない世界。狭くて妙な神を求めるだれかに、狭くて妙な神を生み出したいだれかが表現して安価に売ったりできる世界。コンビニでテンガをカゴに入れてレジに行ったら、レジっ娘が「あらこのひとはオシャレに自分の欲求を自己処理できる大人だわ」なんて受け止めてしまったりする世界。そういう世界の入口に、tengal6は、いたから。

 売れるために改名するとか。
 それもリリカルスクール?
 可愛らしいですねえ。
 私は聴かなくなった。
 いや、彼女たちをどうこう言うわけでもなく、ファンの皆さんはガンバッテ下さい。ただ、私は彼女たちに大きな夢を見てしまったがゆえに、改名は大きなショックだった。それは事実だ。巫女が巫女の衣装を着ているというのは非常に大事なことで、テンギャルがテンガを宣伝しないなんて、そりゃいったいなんなのさー、と、こっちがラップで歌いたいくらいだぜヨーホー。

 あ、もちろんオナニーの未来を考えるTENGAさんは、女性用も製造しています。

TENGA 

 この製品もモニターさんの協力によって完成したとか。男性用と違って充電池が入っているせいで高価なため、オシャレにしても薬屋などでは見かけません。男みたいに単純じゃないですものね、いろいろと。描く未来も奥深い。

 そんなあたりで、話がもとに戻るのですが。

 さらなる未来について、考えたのです。
 
 アイドルは、生々しすぎる。
 シリコンは、オシャレすぎる。

 その次に来るもの。

 生きていない肉による、やわらかい器。
 血は通っていないので、抱いてあたためて使う。
 ふたつがひとつになるくらい同じ温度になったあとで。

 私は包まれる。

 この巫女を欲する信者は飢える者の数ほどいるはず。

 そういうことを、考えていました。
 クローン技術って、知性あるヒトをヒトが生み出していいものかという視点で語られがちだが、生きた家畜を殺すことなく細胞培養して生きていない肉を食す未来が「在り」ならば……

 知性のない「人肉の」ダッチワイフを作るのはどうなんだろう。
 むしろその狭くて妙な神をこそ欲する層が、絶対にいる。
 倫理的な問題はないように感じる。
 培養肉は生きていない。
 だれも殺していないし、個人的に手に入れて処理するのならば、だれに迷惑をかけるわけでもない。

 人造肉は、コスト面が難問だという。
 いまのところ生きた肉のほうが安いのだ。かなり未来に行っても採算が取れないみたい。だから、だれもホネやスジまである本物そっくりのスペアリブを家畜を殺さず培養して作ろう、などという商売をはじめない。
 しかし、アイドルならどうかしらね。
 採算ベースに乗りませんかね。

 彼女や彼は、在るだけ。
 指一本触れられない。
 幹細胞を培養し、正真正銘の自分の「肉」を求める者に与える。
 生きているアイドルから切り離された、
 生きていないアイドルの「肉」。
 やわらかい器。

 他にもここには書けないようなアイデアがあります。
 手を組みませんか、そこの某研究所をクビになったあなたとか。

 需要があります。 
 未来を作るのです。

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