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『一太郎 文藝』の話。

 たがいの頭に真っ先にうかんだことはおなじだった。<ニューヨーク市内に連続殺人犯があらわれたのか>である。そういう犯罪者は、かならずといっていいほど、十八から三十歳までの女性をねらう。自然界にこれほど相手をえらぶ捕食動物もいない。

 トム・クランシー 『レインボー・シックス』

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 「メールが届きました」と知らせてくれる電子秘書からそれを受けとると、逆援募集の人妻がうんぬんとか……迷惑メール規制法ってまったく役に立っていない、朝からブルーになってしまう。ていうかちょっと前までこの手のスパムに「人妻」とか「逆援」とか背徳の香りするような単語は含まれていなかったのに、どうも近頃、名簿屋の吉秒データは更新されたらしい。まあ、更新されたってことは良いことで「あなたと結婚したい人がいます!!」……いや既婚者だし。というような無駄な時間を使うことは少なくなったので、きっとそこのデータが新しくなったんだろうが、それで新たに増えるのは人の嫁とかあなたを買いたい女性だとかそういうのかよ、と……いや、もしもそれが実際にそういうことで活動している団体なら、まあ百歩譲って良いですよ。ネットで公開しているアドレスに広告送るのは、まっとうな営業活動だと思うもの。でもその手のスパムって、あきらかに会員登録を誘う釣りメールであって、よほどのバカでもない限りひっかからない下劣なゴミメールなんだよな。一度受けとったのと同じヘッダー情報のは自動排除されているけれど、それでもまだ毎日届くゴミメール。いっそもっと名簿屋も精度を上げてくれればいいのに。聞けば私の友人の女性にも同じようなスパムはくるんだという。せめて男女の別くらい判別して送れ。無差別に送るからみんなが迷惑するのである。

 その町に現れた捕食動物の好みが完璧なら、十七歳までと三十一歳からの女性、ならびに男性は、なんの心配もなく町を歩ける。

 客を狙うならしっかり狙え。ホームセンター勤務なので、モータリゼーション(自動車社会)における小売店のありかたってどう、というようなまじめなこともたまに話すんですが、単純な数字の計算としてさ、遠くからも客が来ること前提なら、小売りは広く浅くよりもぐううっと深くに特化したほうが正解。私自身、おもな移動手段がバイクなので車以上にガソリン代ということには無頓着で(そもそも半分以上趣味の乗り物だし)、多少遠くたってお気に入りの店は行きつけになる。たとえばすぐ近所に二軒の古本市場(古本の大型チェーン店)があるのだけれど、時間があれば私が行くのは、個人で経営されている小さな古本屋さんだ。

 その店は、海外翻訳物小説の品揃えが豊富で、そこに特化しているがゆえに、売りに来る人もそっちに偏っていて、この数年でその店のマンガ売りスペースはどんどん狭くなっていき、いまではほとんどアダルト商品とマイナー小説の専門店と化している。でも、それゆえに近くに大型チェーン店があっても、わざわざそこに行く私みたいな客が増え、はたからみれば道路脇の寂れた場所にぽつんと立つその店が、なぜ潰れずにいるのか首を傾げるような光景になっているのである。

 ぶっちゃけ、私は某大型ホームセンター・チェーン店のカー用品担当者でもあって、そもそもそうなったのは私の上司に「やつはバイク乗り」という認識があったからなのだけれど、だが、うちの近くには全国で唯一のバイク専門オートバックス『バイクセブン』がある。ライダーズドリームである。ああそうさ私もそこに買い物に行く。当たり前だ。日本の端からわざわざバイカーが集まるような専門店が近所にあるのに、ホームセンターのバイク用品売り場になにか買いに行くやつぁいない(でもなぜか万引きしに来るやつは絶えない)。仕方ないので、清掃用品の売り場にカー用のぞうきんとか、家庭用品売り場にこっそり車内用ウェットティッシュとかならべて数字を獲りにいっている戦闘放棄のカー担当が私だ。

 一昔前、近所の住人だけを相手にしていた商店が、その町に住む100人に気に入られなければ店が成り立たなかったとすれば、いま隣の県からも車で客がやってくるのが当然の時代に、100の町を相手にできるなら、商店は100人に一人が「うわ、きたこれっ」と思うものを売れば、一昔前の規模の店が成り立ってしまうということ。

 同様にネット時代。一万に一人が気に入るマニア向けすぎる小説やマンガやアニメも、ちゃんとその一人に「こんな商品ありますよ」ということが伝わるならば、あらゆる商品がその図式で成り立つ可能性を持つ。

 で、本題。先日、ジャストシステムから発表されたニッチ(隙間)な商品に私が色めき立った話。
 その名も『一太郎 文藝』。
 プロの作家も認めた、文藝活動を行う方の一太郎のプロユースモデル、ついに誕生!!

 ……キタ。一太郎で数千枚の小説を書いた私の、細かな不満を解決する一太郎がついに……ああついに……二千本限定? 希望小売価格:50,000円[税別]……ま、まあ、いい、満足いけば払うさ、さあその驚愕のスペックをおれにさらせ!!

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特長1 プロの書き手も満足させる入力インターフェース

20字×20行の縦書き原稿用紙の画面を標準のインターフェースとして採用。さらに、プロの作家が机の上で原稿を書いているような「文藝プロ画面」もご用意しました。また文芸活動で使用頻度の高い機能を厳選したツールボックスで、原稿用紙に手書きするのと同じような感覚で執筆に取り組めます。もちろん通常の一太郎2005の画面も使えるので、作成する文書に応じて切り替えて使うことができます。

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 ……え、ちょっとなに。
 原稿用紙……いや。
 別にいらないからそんなの。

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特長2 微妙なニュアンスを伝える字体で多彩な表現力を実現

「一太郎 文藝」は専用辞書を搭載し、「圖」「辭典」など康煕字典を典拠として作られてきた明治以来の活字字体、いわゆる康煕字典体など、より豊かなことばの表記が選択可能です。

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 ごめんなさい、現代で小説書いてそこかしこの新人賞でも名前を見ていただけるくらいには書き込んでいる者ですけれど、そんな漢字が欲しいと思ったこと一度もないんですが……私の日本語スペックが低いせいでしょうか。

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特長3 イメージに合ったことば選びがスムーズに

連想変換で提示されたことばを参考に表現力をアップする「角川類語辞典 for ATOK」と、入力しながらことばの意味を調べることができる「明鏡国語辞典・ジーニアス英和・和英辞典 /R.2」を標準搭載。

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 あーこれはいいね。一太郎といえばATOK。もとはといえば、私もXBOXユーザーのマイクロソフトびいきだが、それにしたって鼻高ガイジンどもの作る日本語辞書機能ってこりゃなんだよ日本人スタッフいねえのか、と憤ってATOKに乗り換え、流れとしてWordから一太郎に移ったひとりです。XBOXでもきっちりひどいからマイクロソフト。数百枚のCDをハードディスクに入れてなお余裕があるのはいいが「長渕剛」は「長ぶち剛」としか入力できませんから。日本語ナメすぎ。360では改善されてくれよほんと。というわけでATOKが進化するのはすばらしい。辞書も多くなるのはいいに決まってる……でもこれ『文藝』本体の話じゃないな。

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特長4 伝統の文字「秀英体」フォントを初めて搭載

『竜馬がゆく』や『広辞苑』など多くの小説や辞典に使われ、味わいのある大日本印刷株式会社の「秀英体」フォントが「JIS X 0213:2004」対応し、初めて搭載され、「一太郎 文藝」でご利用いただけるようになりました。

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 同人誌作っているわけではないので、凝った字体などいりません。ていうかどこのだれが自分ちのプリンターで『広辞苑』を作るのだ。バカか。

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特長5 文芸作品と同じ仕様の出力テンプレートを約30点収録

本物の文芸作品と同じような「小説、論文、詩、短歌、俳句」などの出力テンプレートを約30点収録。作品のイメージに合った体裁で大切な一冊を仕上げることができます。

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 同人誌作っているわけではないので……(以下略)。

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特長6 1年間(365日)無償サポート

ひとつの原稿を書き終えるまでには長い時間がかかります。「一太郎 文藝」を購入した方は、購入より1年間、何度でも無償サポートを受けることが出来ます。初めてワープロを使うという方でも安心して使うことができます。

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 初めてワープロを使う人に希望小売価格:50,000円[税別]って……WinXP専用ソフトだよねえ。てことはWordがあるのに買ってもらう商品てことだよなあ……金はあるから最高のものでワープロをはじめたい、昨日までは原稿用紙で書いていた文豪とかが二千人ほどいると読んだのですかね、ジャストシステム。特化しすぎだろ。というか!!

 そんなことを考えるくらいなら、一太郎のクリップボード機能を増強してくれ頼むから。近未来モノジュヴナイルを書く作家っていうユーザー層がものすごく狭いので実現されないのかもしれないが、たとえば、あなたが童話作家で、それも小学生低学年向けの童話を書く作家だったとして、出版目的ではなく、手作りで一冊の童話を作りたいと思ったとき(それもひどく狭い範囲のユーザーになってしまうが)、一太郎を使い始めて三十枚ほど書けば気づくはず。

 ルビを振るのが面倒くさいのである。

 電脳空間と書いてサイバースペースと読むとか、そういう単語の大群で構成されているのが私の原稿で、それはすべての漢字におくりがなをつける小学校低学年向け童話と変わらない。いちいち範囲を指定してルビを振るのは面倒なので、もちろんよく使う単語は、ルビつきのままコピー&ペーストして使う。しかしそこで問題がある。

 そもそもwindowsのクリップボードには、ひとつのデータしか入らない。つまり、新しいものをコピーしたり切りとったりすると、ひとつ前のものですら消えてしまうので、さっき使ったデータをまた貼り付けたいときには、またコピーする必要がある。そんなんでなにがクリップ「ボード」かと思うが、伝統の仕様なので仕方ない。

 windows版一太郎も、初期の段階ではwinクリップボードにおんぶにだっこだったので「たったひとつのデータでいっぱいになる板」の機能をそのまま使っていたのですが、ワープロとしてはそれでは非難囂々(ていうかDOS版の一太郎は複数クリップ保存の機能があったんだから、後発のwin版にそれがないってのが解せないところ)。進化の過程で、win一太郎にも複数のデータが保存できる独自のクリップボードが載せられることになりました。

 で、すべての問題は解決したかというと……

 いや、三十枚の童話を書くなら必要充分だろうが……嘘をつきました。実は童話を書くなら一太郎には自動ルビ振り機能がある(しかも充実の「学年別ふりがな」機能まで)。しかし、自動ルビ振り機能にまかせると「電脳空間」は「でんのうくうかん」としかルビ振りできないので私にとってはまったく意味をなさない。ほとんどの漢字単語に「独自の」ルビを振る数百枚の小説を書こうと思ったら「コピーの履歴から貼り付け」→九個の履歴データが表示される。というようなものではまったく足りないのである。九単語なんて原稿用紙一枚分もないのだ。というユーザーの声に答えてか、一太郎には「一覧から貼り付け」の機能も搭載された。一覧は二十個まで記憶されるので、それでもまだ足りないんだけれど、まあ多いに越したことはない。

 が、この「一覧」がさらに輪をかけてくせ者なのだった(ああ……長い『徒然』になっているなあ……読んでいるかーい)。一太郎の独自クリップボードにデータが投げ込まれると、勝手にタイトルがつけられる……この機能がよくわからない。なんのために必要なのか理解できない。できないがともかく、データには順番に「クリップ1」から「クリップ20」という「クリップ+数字」というタイトルがつくのである。さて一覧を開いてみよう……

 当然のこと、そこには「クリップ1」から「クリップ20」という「クリップ+数字」というタイトルが並んでいるのである。むろん、ひとつひとつをクリックすれば、横には「クリップ」の中身であるデータそのものが表示される。しかしだよあなた。1から20の数字を並べられて、そのひとつひとつをクリックしないと中身がわからないクリップボードなど、使えるはずがないとだれでもわかりそうなものじゃないか。データそのものを並べろよ一目でわかるようにっ!!

 ……おそらく、画像を含む大きなデータを二十個溜め込まれると、すべてを同時表示などできないのでそういう仕様に落ち着いているのだろう。だからこそ私は期待したのである。プロユースに特化した、テキストデータ専門の一太郎! テキストデータだけを扱うなら、クリップボードに軽く百個はデータが溜められて、それを画面に一括表示して一瞬で選んで貼り付けられる……私の執筆時間、三割は減る。そこを期待していたんですがっっ!! だったら五万くらい払いましたがっっ!! 大日本印刷株式会社の「秀英体」フォントっつ!!

 いらねえ。
 プロユースってどこのなんのプロなんだ。
 教えて『一太郎 文藝』監修したプロ作家、紀田順一郎先生……って、あのさ、紀田順一郎って私のなかで荒俣宏なんかと同じ博物学というか雑学の権威(荒俣宏と『世界幻想文学大系』を共同監修したくらいだから同じ分類でいいはずだ)で、このひとが加藤保憲みたいなキャッチーなキャラひとつでも作っていれば荒俣のかわりに「へぇ」ボタン押していてもいい存在なんですけれど(余談だが、加藤保憲をトヨエツがやるって聞いたときはえーと思ったのだが(だっていまでも嶋田久作をみると魔人加藤だっ、と嬉しくなるくらいなんだ)、カッコイイよなあ……なんでもできるなあトヨエツ。金田一演ったときも観る前はえーと思ったが意外にいけてた。いい役者だ。好き)。小説屋ではないよこの人……ジャストシステムの人選ミスなのか、それとも『一太郎 文藝』に期待した私が間抜けだったのか。

 これでは小説家ごっこがしたいヒト用玩具ソフトではないか。
 
 『一太郎 カストリ小説』を熱望します。
 書くの面倒くさいのでコピペ機能充実させてください(笑)。修太(推敲ソフト)にネット連動の盗作探査機能つけてください、知らずにパクってしまう自分に困っているんです。

 どっかのフリーソフト職人さんでもいい。切実に、一太郎のクリップボードが不満で仕方なく、書きながら何度も「ああもう消えてんのかよさっきのっ」と罵って作品にも影響を及ぼすほど……コピペ機能というものがあってこそ書けている作風であることも事実なんで、望めばきりがないって話かも知れないけれどもさ。それが進化じゃん。望むほうは、無責任に望んでいいと思う。望みます。作って。

 まじめな話、クリップボード拡張ソフトというのはあまたあるんだけれど、それは一太郎の「よく使う言葉」機能と同じで、一太郎の形式でルビ付きのまま保存できるものではない。私が欲しいのはまさにそれなのである。単語登録がルビつきでできないと、結局ペーストしてからまたルビを振る必要があるので、だったら自分の原稿を語句検索してルビつきでコピペったほうがはやい。一太郎2005は導入していないが、バージョンアップ情報を読む限りそのあたりの点が変わっていないのでだったらいらないってことになるわけで、けっこうヘビーな一太郎ユーザーなのに、私を狙い切れていない感のあるジャストシステム。

 進化、待ってる。

 (にしても今月の原稿が厳しいことになっている。あと二日。150枚の作品の場合、私は170~180枚を書いて削っていくのがベストなんだが……200枚を越えるところまでのびてしまった、これなら300枚に膨らますほうが簡単なのである。本当に缶詰の状態で躯のあちこちに不具合が出てきているなか、お前喋りすぎなんだよと主人公を毒づく……成人男性の一人称は、少女の一人称と同じくらいに枚数を喰う。逡巡とか葛藤が多い生き物なんだよな、少女と大人の男。シンプルに生きて欲しい。ってシンプルに主人公に生きられちゃ物語にならないんですがねっ……ああ、どこを削るかばかりを今週は考えていて、夢うつつです現実のほう……ためしに一太郎の「要約」機能を使って枚数を削ってみる。日本語にもならない。この機能もだれが使っているんだよまったく……使えない。私よりも小説の才能がある有能な人間の秘書が欲しい(笑))

 ……この熱く語るユーザーをないがしろにしないように、そこの商売人。

bunge

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