最近の記事

スポンサードリンク

月別アーカイブ

DVD『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』の話。



 DVD発売!!

Odddvd

 


 レンタルはTSUTAYA限定ということで、通りがかった大きな駅のTSUTAYAさんを覗いてみた。
 ときまさに三連休初日。
 在庫は30本(!?)。
 そしてその30本すべてが貸出中(!!)。
 キテる。これはキテるよっ。
 ていうかめっちゃ推してくれているなTSUTAYAさまっ。

 しばらく見てた。

 でっかいPOP付きでズラッと並んだ

「え? これ劇場公開とかされた?」

 というアントン・イェルチン主演作。スマホを取り出して検索をはじめるお嬢さん。我慢できませんでした。ちらっと見ちゃいました。

 私、自分のサイトを見知らぬひとが街中で熟読しているのを、初めて見ました。
 書き続けていて、応援し続けていてよかったと、泣いた。
 (嘘。でも本気で感動のシーンではあったのです。覗いてごめんなさい)

 現在、『オッド・トーマス』という語句をググったかたの三人にひとりは、この記事を読んでいます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

吉秒匠 『とかげの月』 / 徒然
映画『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』の話。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ぶっちゃけ、ものすごい数字。
 全国のTSUTAYAの『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』棚の前、そして全国のあらゆるDVDショップの『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』棚の前で、コンニチハ。

 で、ぜんぶ貸出中なら、三千円のDVD送料無料のAmazonさんで買っちゃいましょうかという方々がどれくらいいるかは秘密ですが、結果、DVD発売開始から現在五日目。Amazonさんの在庫も「一時的に在庫切れ」の表示に。

 これをバブルと呼ばずになんと呼ぼうか。うわああ、チャンスロスもはなはだしいわっ。イケるって言ったのにっ、TSUTAYAさんの在庫数は期待以上でしたが、Amazonさんっ。オッドくんを見くびりすぎ。倍は仕入れておくべきでした。

 しかし、しかしですよ。
 こうなってみれば、思わずにいられない。

 やっぱり出来が素晴らしいんじゃないか!!

 チャンスロスという意味では、この映画『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』を、きちんと宣伝して世界中の劇場で興行打っていれば、どれほど儲かったか……

 そして、ほぼ間違いなく、続編も製作されていたはずなのに。

 いや、まだあきらめません。
 継続して推しますよ。
 映画『オッド・トーマス2』は、ある!!

 さて、DVD。
 なぜだかレンタルはブルーレイがあるのに発売はDVDのみ。いいですけどどっちでも。迷わず私も手に入れて、選ばれしパパの子、劇場鑑賞者たる私は、日本語吹き替えをチェック。劇場公開は字幕版だけでしたからね。

 素晴らしい印象として、ところどころ引っかかる表現のあった字幕を、吹き替えはとてもスムーズでスマートに整えてくれている。
 たとえば変な夢を見ておびえる友人ヴァイオラとオッドの会話。

 字幕はこう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「昨日の夜
 変な夢を見たのよ」

「僕なんか殺戮の夢だけど」

「自分を見たのは初めて」

「自分の顔を?」

「私と男の死体が
 横たわってた
 乱射されたみたいに」

「心配ないよ
 今までに現実になった夢は?」

「ないけど
 あなたを ただの変人だと
 思ってる人は多い
 でも本当は違うわね?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 同じシーンの日本語吹き替えは、こう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「昨日ね
 すごく変な夢を見たのよ」

「ああそう
 僕なんか大虐殺の夢だった」

「夢で自分を見たのは初めて」

「自分の顔を見た?」

「ええ
 男の人といっしょに
 倒れて死んでいたわ
 ライフルで撃たれたみたいだった」

「心配ないと思うよ
 今まで正夢を見たことはある?」

「ないけど
 みんなあなたのことを変人だって言うけど
 ああもちろんストーミー以外ね
 本当は違うでしょう?
 なにか隠してる」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 字幕には文字数の制限があるために、簡易な表現になっているという側面もある。けれど、文字数以外の面でも「私と男の死体が横たわってた」を「男の人といっしょに倒れて死んでいた」などと、より具体的にわかりやすい表現に変えている部分が、映画全編にわたって多数確認できる。

 原作では、このシーンには乱射という言葉も、ライフルという単語も出てこない。ヴァイオラは、死んだ自分の崩れた顔を夢に見る。男といっしょではなく、彼女ひとりで。額に穴が開いている。オッドはそれを聞き、口径の大きな銃で額を撃たれれば、穴が開くと同時に強大なエネルギーが放出するため、頭蓋全体を歪めることもあるかもしれないと推理する。

 映画のオッドくんは推理しない。冗談もあまり言わない。そもそも邦訳の『オッド・トーマスの霊感』は、500ページを越える聖書のように分厚い文庫本。字幕や吹き替えの前に、映画作品自体が96分である時点で、展開も台詞も端折りまくっている。

 ちなみに、字幕は私が映画館で観たものと同一だった。ジェット・コースター・ムービーに、ぽんぽんと投げこまれる短いセンテンス。それはそれで良いものだ。だが、分厚い原作をなんども読んで隅々まで知っている私のような者が、映画館で若干だが感じた「ここまで端折られて原作読んでいないひとは理解できているのだろうか」という思いが、吹き替えでは、だいぶんと薄まる。乱射事件が起こることを知らない観客にとって「乱射されたみたい」よりも「ライフルで撃たれた」のほうがすんなりと理解できることはあきらかだ。

 結論を言おう。
 字幕も吹き替えも、どっちも良い。
 でも、やはり英語で最初に観たほうがいい。

 なぜなら、日本語を話すオッド・トーマスが、ひどくカッコイイから。
 間違いなく原作を読んでいるアントン・イェルチンが、苦心して作った「オッド・トーマス的」な発声法が、やはりこの映画のオリジナルである。『ターミネーター』のときよりも『スター・トレック』のときよりも、アントン・イェルチンは、高い声で喋っている。話す速度も速く、ときおり、声を裏返らせたりもする。霊が見えるが、基本、お調子者で楽天家なオッド・トーマスに、よく似合う。
 吹き替えは、それに対し、ずいぶんと二枚目だ。

 わかりやすく言えば、こう。

 英語で話すオッドは声が高く、ストーミーは抑えた低い声。
 日本語で話すオッドは声が低く、ストーミーは可愛く高い声。

 ストーミーが鳴海杏子さんだというのは、DVD発売元のアース・スターエンターテイメント所属だということではっきり記述があるのですが、オッド・トーマス役が、どこにも公式な記述がないので憶測や推測を書くことは控えておきます(平日になったら東宝さんに訊いてみるつもり)。でもカッコイイ。オッド・トーマス=ヒーローということで人選したのではあるまいか。ていうか鳴海杏子さんだって、パッケージに名前入れれば、それで売上げ変わってくると思うのだが。プロレス好きとして『世界でいちばん強くなりたい!』は私も観ていましたし、豊田美咲がストーミー・ルウェリンを演じると聞けば、クーンツファンという視点以外からも「おお」と思える人選なのに。自社ホームページの公式プロフィールには記述するが、発売するディスクでは謎めかせるとか、アース・スターエンターテイメント的やり口がよくわかりません。

SEKATSUYO

 ちゃんと吹き替えした役者の名は入れるべきです。

(そういえばアニメ『世界でいちばん強くなりたい!』もTSUTAYA限定レンタル作品でした。なるほど、アース・スターエンターテイメントさんが販売元です。同じビジネスモデルなのですね。しかしだったら自社のイチ推し声優の名をなぜTSUTAYAに並べようと画策しないのか。声優ファンの底力を知る方々のはずなのですが)

 一方、DVDパッケージにちゃんと明記されている。

 原作
 ディーン・クーンツ
 『オッド・トーマスの霊感』
 (ハヤカワ文庫)

 ああもう、ここもぶっちゃけましょう。しくじりました。私が本当に推したいのはディーン・クーンツそのひとです。映画を検索したらダイレクトにこちらへ飛ぶように画策しておけばよかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

吉秒匠 『とかげの月』 / 徒然
『オッド・トーマスの霊感』の話。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 DVDもですが、心底みなさんに手にとって欲しいのは、小説です。分厚いです。本とか読み慣れないひとにはつらいかもしれません。けれど、想い出したときにちょっとずつでも、一生かかってでも、読んでみてください。得るでしょう、そして広がるでしょう。映画『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』にやられたあなたならば、わかるはずです。ラストがもうわかっちゃった? でも、あの話で分厚い500ページ越えの文庫本ておかしいと思いません? すごくシンプルな物語なのに。クーンツ師の真髄は、そこにあるのです。蛇足と言ってしまえばそうとも言える。けれど、師が私に教えてくれたなかで、もっとも大事なのは、そこのところ。

 人生の無駄さ加減を愛せないひとは不幸。

 ディーン・クーンツ公式サイトに、師が、息子オッド・トーマスにインタヴューするというページがあります。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Dean Interviews Odd « Dean Koontz

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 このなかのやりとりで、ディーン・クーンツがオッド・トーマスから端的な彼の信条を引き出してみせる。
 オッドくん曰く。

「ぼくは雇われコックだから返しコテだけあればいい」

 クーンツの質問は「銃は持たないのか」というものでした。オッドくんは、ほかにも自動車のタイヤを売るひとになりたいという夢を持っている。二十歳そこそこで、文筆をたしなむ端くれでありながら、そっち方面の野心はなく、指向するのは、とことんにシンプルな生活。

 おなかの空いたひとに朝食を。
 タイヤのすり減ったひとにタイヤを。
 それも自分で仕入れてではなく、ただ雇われて売りたい。

 オッドはディーンの分身です。
 ディーン・クーンツ作品の根底には、絶えずこの考えかたがある。

 いま読みたいひとに読むものを。
 書いて届ける。
 だから筋立ては複雑でなくていい。
 ショートオーダーダイナーで出てくる、シンプルきわまりないベーコンエッグとトーストみたいに。もしくは、新品のタイヤみたいに。

 いま読めるものを売る。
 書けるものを書く。

 『オッド・トーマスの霊感』が映画化されたのは、ストーリーが端正だったことよりも、オッド・トーマスがだれもに愛される存在だったから。それは逆に言えば、書きすぎて分厚い本になってしまうくらい、ディーン・クーンツがオッドくんとそのまわりの世界について「書けた」から。

 映画原作『オッド・トーマスの霊感』の無駄さ加減を愛せないひとは不幸だとまでは言わないものの、オッドくんを愛せるあなたが「読める」その無駄に触れてみようとしないのは、とてももったいない。

 映画を観たなら想像できるはず。
 オッドとストーミーが、もっとだらだらぐだぐだ、どうでもいいやりとりを応酬しあうのです。
 ほら、あのラストを観たあとだと、そんなの読んだら自分がどうなっちゃうか、わかるでしょう。



 以下、続刊。
 まだ邦訳されていないシリーズ最新刊もある。ぜひともハヤカワ文庫の勝負根性で『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』地上波放送決定!!の報とタイアップしての大オッド祭を企画して欲しいものです。売る気があれば売れますって、ここからクるんですってディーン・クーンツが!!




 

TRACKBACK http://yoshinogi.blog42.fc2.com/tb.php/528-2fee655a