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『かんと炊きと東どん兵衛』のこと。


Oden

黒田官兵衛で盛り上がり中の播磨の国。
そこで生まれた私です。
小学校の給食で、こういう食べ物は、
「関東炊き」とメニューにありました。
(ちなみに読みは「カントダキ」。Cuntを抱く者?
なんか、Motherfuckerの上位版みたい)
かといってウチおでんが、給食のそれと、
まるで別物かといえばそんなことはなく。
しょうゆ味のダシで具を煮込む同じ料理。
中学校の家庭科の先生いわく、
ごちゃっとした煮物のことをそう呼ぶのです、とか。
関西の煮物はお上品なの、という自負があるのでしょう。
確かに、京で煮込まれる大根は、醤油の味はすれど、
醤油の色が現れず白いのが良しとされたりするもので。
いまでも、東京のうどんの黒さに関西人はヒきます。
だから関東炊き。
なんやねんこれ下品な煮込みやのう。
そう言いながら食すのがマナーなのです。
ところで、うどんの国のひと、友人のS.Ukawaが、
うちのおでんパーティーに来たときのこと。
やつは、赤味噌と砂糖を用意しろとか言い出して、
なんかそんなのを練り合わせた甘味噌で食ってました。
てめえ。
ひとが丁寧に作った澄みわたるダシ料理になにしとんねん、
というつっこみを入れた私をみんなが笑いました。
私の受け皿、豆板醤と芥子たっぷりの地獄沼だったので。
写真のおでんに、緑色のものが浮いています。
春菊をしゃぶしゃぶしたなごりです。
すりおろした山芋をかけていただきました。
私の父は、すりおろした生姜醤油でおでんを食します。
関東からやって来た下品な煮物。
甘さが足りない、コクが足りない、爽やかさが足りない、
辛さが足りない、はんぺんとかちくわぶとか意味不明。
肉入れろ肉、手羽先と牛すじ入れてダシをとれ。
揚げ物とかいらんねん。もめん豆腐ください。
写真では入っていますけれど、卵とかじゃがいもも、
私は抜けるなら抜きたい。
肉と大根とこんにゃくだけでいい。
まあ、そんなこんなで。
好きに食えって話ですが、そこが鍋料理。
おでんパーティーで、ちくわがないと怒るひともいる。
だからあえて「関西炊き」は作られなかったのでしょう。
関東炊きを、好きな具選び、トッピングして食え。
なんやねんこの下品な煮物は。呑まなやっとれんわ。
つっこめるエンタメ要素が、おでんには必要。

(※追陳。写真の卵は、私が剥いたものではありません。
固茹では、冷蔵庫から出したばかりの卵を、
ぐらぐら沸いているお湯に放りこむべし。
それで傷ひとつなくつるんと剥けます)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ダシといえば、日清さんのカップ蕎麦が国の東西で味を変えているのは有名。
 私は、大阪在住。
 いま食べたそれのダシを撮ってみた。

Donbee

 写真を撮るのでレシピ通りの湯量で作りましたが(沈んでいる赤いのは、レシピ外の鷹の爪の輪切りです。なんにでも入れます、すいません)、いつもはなみなみとこぼれんばかりの湯量です。西に合わせた味らしいのですが、私にはまだ濃い。

 とか、こういう関西人の料理は薄味でアピールがウザがられるのも重々わかってはいるのですが。どん兵衛の東西の境界線は機械的なもので、西の国々のなかでも大阪京都の人々にアンケート取って味を決めたら、もっと透きとおったスープになるはず。

(そんなこんなで、以下、大阪の私が、機械的に東西に分けられた西のすべてを「関西人」と書くことに憤りをおぼえる西の同胞もおられるでしょうが、謝りません。私は私しか知らないので、ここでは私が関西人)

donbee-e

 ↑これ、東。

donbee-e

 ↑これ、西。

 パッケージの見た目は同じです。
 JANコードが違う。
 食べ比べてみるのも一興かも知れませぬ。

 ところでこのふたつの製品、成分表示を見比べてみると。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

●東 
エネルギー
489kcal
たん白質
10.4g
脂質
25.1g
炭水化物
55.4g
ナトリウム
2.5g
ビタミンB1
0.29mg
ビタミンB2
0.24mg
カルシウム
143mg

●西
エネルギー
478kcal
たん白質
10.5g
脂質
23.2g
炭水化物
56.8g
ナトリウム
2.5g
ビタミンB1
0.29mg
ビタミンB2
0.21mg
カルシウム
140mg

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ……あれ?
 カロリーの数値が違う。
 一方、ナトリウムの数値が同じ。

 ナトリウムは、すなわち塩分。
 東のほうが色が濃いのに、塩分としては同じ。
 これはつまり、京の煮大根が白いのと同じ理由でしょう。
 単純に、西のしょうゆの色が薄いだけ。
(もしくは吸い物のように塩で味つけしている場合も)
 薄口しょうゆは、通常のしょうゆと塩分は変わりません。

(蛇足ですが、鍋物のソースとして定番のポン酢。あれも塩分はしょうゆとほとんど変わりません。私は、ここで生まれ育ったウザがられる薄味教徒なので、自宅では水炊き鍋も、もっぱら大根おろしなどでいただいてしまうのですが。外で鍋を食べたりすると、あらかじめ器になみなみと入ったポン酢が出てくることがある。嫌いです。あんなのポン酢の味しかしない。辛党で鍋にも唐辛子は欠かせないバカなので、あまり声高に言えたことでもないですけれど、塩の辛さの過剰なのは淡泊な料理をまるでだいなしにしてしまうものだと主張します。水炊きを扱うすべての料理屋さんは、ポン酢を各個人が好きな量注いで使えるように配慮していただきたい)

 しかし、東京に行った関西人は、決まって言う。

「ダシが濃いねんっ」

 いや、そういえば。
 塩辛い、ではないのだった。
 色も、そして味も、濃い。
 それをふまえて、いまいちど東と西のカップ蕎麦成分表を見てみると。ああ。炭水化物が若干だけれど西のほうが多い。炭水化物の量によって変動するはずの総カロリーが東のほうが多いのに。

 ということは。
 東のダシにはカロリー数値を上げるなにかが多い。
 それを西の民は「濃い」と表現する。

 たぶん、それ糖分。
 みりんかな。カップ麺なら砂糖も使っているかもしれない。そう疑って、こんどは東西のどん兵衛原材料を見比べてみる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

●東
油揚げめん(小麦粉、そば粉、植物油脂、食塩、植物性たん白、醤油)、かやく(天ぷら)、スープ(糖類、食塩、魚介エキス、醤油、かつおパウダー、野菜エキス、ねぎ、たん白加水分解物、香辛料、魚介調味油、香味油)、加工でん粉、調味料(アミノ酸等)、リン酸塩(Na)、カラメル色素、炭酸Ca、酸味料、酸化防止剤(ビタミンE)、カロチノイド色素、香料、ベニコウジ色素、ビタミンB2、ビタミンB1、(原材料の一部に卵、乳成分、えび、さばを含む)

●西
油揚げめん(小麦粉、そば粉、植物油脂、食塩、植物性たん白、醤油)、かやく(天ぷら)、スープ(糖類、食塩、魚介エキス、醤油、かつおパウダー、ねぎ、たん白加水分解物、香辛料、昆布エキス、香味油)、加工でん粉、調味料(アミノ酸等)、リン酸塩(Na)、炭酸Ca、カラメル色素、酸化防止剤(ビタミンE)、カロチノイド色素、ベニコウジ色素、香料、ビタミンB2、ビタミンB1、(原材料の一部に卵、乳成分、えびを含む)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 違い、見つけられました?

 東に入っていて、西に入っていないのは、
「野菜エキス」と「魚介調味油」。

 西に入っていて、東に入っていないのは、
「昆布エキス」。

 ……興味深い。
 東京のダシはカツオが強くて昆布なんか使わねえのな、というのはよく聞く。それを実証するように、西のダシにだけ昆布が入っている。まあ予想通りです。しかし、東のスープにだけ入っているものたちは、いったいなんなのか。

 野菜エキス、というのは、クズ野菜から抽出したものだそう。そのものずばりの野菜ダシ。魚介調味油は、東にだけ注釈として「さばを含む」という記述があるので、サバを由来とする抽出油であるらしい。

 鯖? カツオブシではなく、サバブシというものがある。関西の、某ラーメン屋さんが売りにしているのを見たことがあります。肉の代わりになるくらい、がつんとした味になるのだそうで。ああ、そういえば、そこに各種野菜のエキスって、まさにラーメンそのもの。言いかえれば、肉の代わりに魚を使ったブイヨンの材料。東どん兵衛のカロリーが多いのも、これらが原因でしょう。野菜の糖分と、魚の油。

 さて、これでなにがわかったかといえば。
 私の通っていた中学校の家庭科の先生のおっしゃったことが、あながち間違いでもなかったということです。

 ごちゃっとした煮物のことを関東き炊きと呼ぶ。

 同様に、東のカップ蕎麦は、西のよりもいろいろ入ってる。

 関西人の「東のスープは濃い」も正しい。
 ごちゃごちゃして、いろんな味がして、濃いのです。

 そうしてみると、関西人がなにかをけなすときは、たいてい強がりだという法則にのっとって、結論づけてみても良いかもしれません。

 本来、スープはいろいろなものを入れたほうが深みが増すはず。関西で昆布ダシが主流になっていったのは、料理は素材ありきという高貴なる京文化の辺りから来ているのでは。やがて国の都は東に移ったけれど、シチューやラーメンみたいな「濃い」ダシに、いまでも「そんなん蕎麦の味がわからんようになるやん」などとうそぶいて、ごくごく飲めるダシを好む「気分」が残っている。

 気分も突き通せば、技になる。
 そうして西の昆布ダシ文化は極まってダシそのものを卵と小麦粉で焼くタコ焼きを生み出し、東の先進性は蕎麦そのものを置き換えて、しょうゆラーメンなる新たな日本食を作り出してしまった。

 めでたしめでたし。
 歴史に育まれたゆずれない味。
 どっちも別物として食べたら美味しいに決まっています。
 ああ、まあ、微々たるものですが、カロリー的には西の勝ちですけれどね。私的にはダシよりもなによりも、緑色のどん兵衛の甘いきつねあげが苦手です。甘くするなよ、刻みあげにネギでいいんだよ、素材を生かすことを知らんのか、と思います。

donbee-r

 ↑これ、日本食。

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