最近の記事

スポンサードリンク

月別アーカイブ

『おすすめのフライパン』の話。


 前回、カレーは鉄鍋で作ると酸化して黒くなって見目がよい、という話をしていたのですけれども。そういう鉄分摂れますよ的な方面からのアプローチを除いても、どう考えても炒めたり煮たりするには鉄の調理器具がぜったい便利だという信念を持つ私なのですが。

 フライパン売ってます。

 早朝品出しの短時間バイトから数えれば、精子と卵子がヒトになってまたぞろ性も欲もともなった恋をしはじめるくらいの年数、この稼業にたずさわっておりますけれども、鉄のフライパンの新発売棚なんて、作ったことがないし企画したこともないし見たこともない。

 だって鉄だもの。
 新商品が売り出されるにしたって、まあデザインとか? 底が厚くなりましたよ、とか? そんなの定番棚でやってなさーいという話。百貨店などに行くと、オッシャレな銀色の鉄フライパンがきれいに陳列してあったりするけれど、それだって山積みになっているのなんて見かけない。

 だって鉄だもの。
 フッ素樹脂加工みたいに剥がれたりしないし、がっつんがっつん炒めものしたって、歪むこともなくガタつきもなく。新製品が出たと言われたって、買い替えるわけないじゃん。

 数売ってなんぼの小売店の場合、山積みにして売れない商品は、高価である必要がある。しかし客層からして、まったく売れないもの売ったって仕方ないわけで。数万円のフライパンが街行くおにいさんおねえさんに訴求するわけもないから、鉄のフライパンは企画棚には座れない。

 でも、フライパンそのものは、この新生活がはじまる時期、とても人気の商材です。初めてのひとり暮らし、初めての単身赴任、新婚生活、そんなこんなで、フライパンだって必要だよね、というタイミング。で、山積みにしたって色気のない鉄フライパンの代わりに、今期は、セラミックコートのフライパンが、どこの店でも山積みになっているのを見かけます。

 私、鉄フライパン信奉者なのですが。
 売れないものに精通していたって仕方ない。
 というわけで、やむなく新製品は試します。どうせ鉄フライパンのすばらしさを再確認するだけなのに、セールストークのためだけに買う。精神衛生上は不毛なことです。でもプロだもん。きみの良いところを見つけて、使えない子は使えないなりに、そういうのも愛せそうな人に売ってあげる。そんな気持ちでこれまでいろいろな新製品のフライパンを買いました。

 一年使った、セラミックコートのフライパンです。

Fryingpan01

 染まっていますねえ。煮物、揚げ物には使っていない。焼き専用。それでも何度か使うと、洗っても落ちない染まりが出てくる。メーカーによっては取扱説明書に「汚れが気になる場合はメラミンスポンジでこすってください」などと書いてある。

S-103

 書いてある時点で、染まること前提なのですね。
 面倒くさいので、メラミンスポンジでこすったことはありません。だってどうせまたすぐ染まるのだし。だいたい、色が白いってなんなのか。販促POPなどでは「白いから料理が映える!!」なんて謳っておりますけれども。冷静に考えて、白ければ汚れも目立つわけで、毎日のように味噌もソースもぶっかけられる調理器具で、あえてセレクトする色だろうかという感でございます。

 検索をかけると、最近では白くないセラミックフライパンも各社から出ています。ですので、色の白さはまあ置いておきましょうか。そのうえで、セラミックコートのフライパンの特徴といえば。取扱説明書には、かならず「油が必要です」とも書いてある。いわゆる、フッ素樹脂加工とかテフロン、マーブル、そういった近年、現れては消えていったものどもとは違って、油なしでもこびりついたりしません、というものではない。逆にいえば、こびりついたりもしますよ、と。え、それってメーカーさんが大声で言うところ?

 けっきょく、みなさん、フッ素樹脂加工の寿命の短さにイライラしていらっしゃる。そこでまあ、それよりは寿命が長いものを作ってみましたよ、というニュアンス。そのかわり、油なしでつるんと剥がれるようなものではない。とあるメーカーさんの謳い文句ですが、フッ素樹脂加工と鉄のフライパンの良いとこ取り、だそうです。

 色の白さもそうですが。目を惹く、そこそこ使える素材があれば、新製品を作らなければならない。それは拡張し続ける消費社会の宿命なのでーす。

 前述の通り、フライパンごときを重点販売となると、山積みだけではこころもとない。そこそこ高価な商品が必要。そこで、どこのメーカーさんとは申しませんが。煮込み鍋から卵焼き用まで揃った、しかも外側は淡いピンクだったりグリーンだったりするセラミックフライパン10点セットなんかが新発売される。

 一万円くらいの商品。

 売らないわけにはいかない。
 そのために私も彼らの良いところをさがそうと使ってはみたし、事実、良いところも見つけた。だからそこを推してはいる。さっきも書きましたが、セラミックコートなフライパンの良いところは、フッ素樹脂加工のフライパンなどに比べると、断然に長寿命なところ。汚れたらメラミンスポンジで洗えって、あれ、一種の研磨剤ですからね。そんなものでこすってもなんら平気なほど強固な焼き面を持つというのは、長所です。それに、ものすごく軽いというのも良い。

 でもここ、私のサイトですから。
 日頃のストレスを発散します。
 ほんとは、笑顔でセラミックフライパンを売る自分の舌にドラゴンスクリュー(プロレス技)をかけて引きちぎりたい。いや、別にね、繰りかえしますが、あれはあれで良いところがあるのですけれどね。でも、フライパンをさがしていて、数千円持っているならば。

 鉄にしておきなさいって。

064109
 
 まさにまったく同じ↑これを買いました。
 その数年使った実物。
 ぴかぴかの銀色が、どす黒く変色。

Fryingpan02

 他にも何本かの鉄フライパンを使っています。そのなかでも、これが一番新しい。二年くらいでしょうか。そこそこに真っ黒。そう、ここです。セラミックフライパンが、色が染まってもメラミンスポンジでこすって剥がせるという、そのつるつる具合を売りにしている一方、鉄フライパンの良さは、使えば使うほどに、身も心も汚されていくという性質。

 現状、二年使った鉄フライパンと、一年使ったセラミックフライパンでは、セラミックフライパンのほうが、油を大量に必要とする事態に陥っている。長寿命とはいえ、やっぱり徐々に劣化するセラミックのつるつる面に対して、鉄のフライパンには油が染みこみ馴染んでいく。その性質をもって、ある時点でくっつかなさ具合は逆転して、以後、実力差(というのは、その後の使用頻度に直結します)は開いていくばかり。

 空焚きができないというのも大きいですね。鉄の場合、どんなになにがこびりついても、最終的に高温で焼き切ることが可能。どんな物質であれ、炭化するまで焼かれたら、タワシで落ちます。それに対し、一年使ったセラミックフライパン。使うたびに水を溜めて洗剤を数滴たらし、放置。タワシでがしがしやるわけにもいかないので、最終的にはスポンジ洗いです。面倒くさい。がしがし洗いたーい。

 同じ、二千円ほどで買った28センチのフライパン。
 けれど、いま私は一年目のセラミックフライパンの捨てどきをはかり、二年目の鉄フライパンを一生愛する相手かもと感じている。実感しているからこそ、商人としては、ますます鉄フライパンを売れないのですが。だって来年も新製品買ってもらわないと困りますから。

 ここだけの話です。
 あなたは二千円の鉄フライパンを買うべき。
 おすすめ品を金の亡者たる店員に訊いてはいけません。

 28センチの鉄製だとさすがに片手で振るには日々の腕立て伏せが必要なので、虚弱なかたは20センチあたりのもひとつあれば、なにもかもに対応できます。

AHL17020

 ついでに。
 前々から、たびたび書いていますが。私、アウトドアをまったくやらないひとなのですけれど、鉄のダッチオーブンを使わない月はない。先日も、友人がふらりと遊びに来たので、ダッチオーブンでパエリアを作りました。

Fryingpan03

 具で主役の米が見えないですが。
 揚げ物や、こういったパエリアといった料理には、ダッチオーブンの鉄の重さこそが威力を発揮します。知ってます? ケンタッキーフライドチキンって、圧力鍋で揚げているんですよ。そんなの家で真似たら爆発しそうで怖いですけれど、ダッチオーブンの爆発したってへっちゃらな厚い蓋なら、適度な圧がかかって良い感じ。蒸気が漏れるために、実際には爆発しませんし。

81062232

 私が使っているのも、これくらいのダッチオーブン。ロゴスさんより、もっと安いノンブランド品です。けれど家で使うならば、こういう凝っていない形状のものが良い。底が平らなほうが安定します。

 パエリアは、鉄フライパンでも美味しくできますが、米を炊く行為ですので、やっぱりこれも蓋の重さが味に直結します。だったら炊飯器で炊け? いえ、炊飯器だと「ごはん」になっちゃうんです。パエリアって、米をパスタとして扱うので、芯を残しつつ圧力かけて味を染みわたらせる、という過程こそがかなめ。
 レシピはこちらを参考に。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『ユウキ食品パエリアの素で作るパエリア』の話。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 あ、遊びに来てくれた彼女はご心配なく。肉が食べられないきみのためのパエリアには、肉エキスの入っているパエリアの素は入れませんでした。完全に魚介のみ。なまみのだしの心による作です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『なまみのだし』の話。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 でもやっぱり、他人のレシピをおぼえたって、火加減などは何度か作って微調整を肌でおぼえるしかないです。日々これ精進なりー。
 あふん、ダッチオーブンで思い出した。
 もうひとつついでに。
 このあいだ、フッ素樹脂加工アルミホイルについて書きましたが。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『フッ素樹脂加工を再生する代替案としてのシリコン樹脂加工アルミホイル』の話。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 あれの応用で、ダッチオーブンの厚い蓋を、カセットガスコンロと組み合わせると、最高のひとり焼肉セットになります。
 このように。

Fryingpan04

 ステーキハウスでも、こんな厚い鉄板ないです。超高温。焦げつきます。それを科学のオルタナティヴ、フッ素樹脂加工アルミホイルが救う。超快適。油一滴もなしで肉と豆腐を焼いて、大根おろしとポン酢でいただきました。緑色のはニンニクの芽です。翌日が仕事でニンニクの実(根?)が食べられないときには、冷凍のものをよく使います。

 ちなみに写真のカセットガスコンロは内炎式バーナーが特徴的なイワタニさんの商品。これがまたごうごうと燃える集中高火力で素晴らしい。

CB-ECO-SL2

 一万円のハンドル着脱可能なセラミックコーティングフライパン10点セットを可愛いっ、って買っちゃうあなたも経済を回すうえでは必要な生贄なのですが、私、個人の意見としては。同じ金額で鉄フライパンと鉄ダッチオーブンを買うと、一生ものの愛すべき道具と、まだ見ぬ謎レシピの世界が広がっておすすめです。突き詰めれば嗜好によるのでしょうけれど。私は、だれかの家にお呼ばれして、謎のダッチオーブン料理をどかんと置かれたら、それだけでテンション上がります。淡いピンクのセラミックフライパンよりも、黒く油の馴染んだ鉄フライパンがコンロにかかっているほうが、そこで作られる料理に期待してしまう。

 確かに、重いです。そこが許せるならば、鉄、一択で間違いなし。
 おすすめー。


TRACKBACK http://yoshinogi.blog42.fc2.com/tb.php/526-3cc55288