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『鶏レバーカレー』の話。



 モノクロームなピラミッドの頂上まで数メートルの位置で、心を決めたItoは、振り返る。

「つまりきみは、この星で作られた?」

「ええ。受信機は同時に、このようなヴィアールの製造機でもあるのです」

「ヴィアール。それは翻訳してくれないのか」

「こうした技術に、あなたがたは到達していません。よって対応する語もない。ただし小説と呼ばれる媒体で、架空の商品名として記述された類似の技術を見つけました。それがヴィアール。旅する肉体という意味の造語です」

「小説? それもSFを読んだって?」

「電子化されたものを解読しました。映像記録を理解するよりも、ずっと効率的にあなたがたを知ることができます。言語体系の確立された種族とはわかりあうこともたやすい」

「それは、逆に言えば、蝉のように羽根をこすり合わせて会話するような種族がいたとしても、たやすくはないが、きみならばわかりあえるということも指すように聞こえる」

「知性の存在は前提条件として必要ですが、そこに規則性があれば解読できます。それができれば、ヴィアールはどんな種族の肉体形状も再現できるので、どんな形であれ表現することは可能です。その星に棲む種族の肉体は、その星にある物質で構成されているのですから」

「広い宇宙だ。肉体のない種族だっているんじゃないのか」

「そうですね。次元の捉えかたからして異なる種族は存在します」

「肉体どころか、脳みそもない?」 

「ぼくにも、あなたのような生体思考器官はありません」

 ぼく、と言った。
 見た目は確かにそう自分のことを呼ぶのが似合いそうな、ピラミッドの傾斜で下にいるために、よけいに小柄に見える男を、見つめる。こいつは、おれが想像もできないほど遠くから、データとして転送されてきて、この星に「あった」物質で肉体を作りあげた。

「その、ヴィアールとかいうカラダには、血がかよっていないのか?」

「肌の血色を表現するための装置としては、再現してあります」

「内臓は」

「食事や排泄、それに生殖行動などをつかさどる器官は相互理解のためにも必要ですので、機能としては再現してあります。ぼくには、興味深い体験です」

「肉を食えるのか」

「食べる演技はできます」

「クソするふりも、ヤるふりも? だが、頬を赤く染める演技はできても、生きているわけじゃないんだな?」

「……演技、という言葉の用法を誤りましたか? わかりあうために、相手の望む姿に似せ、望まれる行動をとる、という意味で使用したのですが」

「ああ。きみは実におれ好みだ」

「うれしいです」

「その顔で、そういう笑顔を浮かべれば、おれが落ちると。脳みそもないのに、こざかしい計算をしていただけたわけだ」

「悪意はありません。あなたもわかっているはずです」

「で? おれたちにも肉体の呪縛を脱ぎ捨ててデータ人間の仲間入りをして、宇宙の果てまで拡張しようぜと誘っている、その提案が善意によるものだとして、おれが、わかったよいっしょに行こうぜベイビーとか答えるとマジで思っている、と」 

「早口で理解しにくいのですが……」

 蹴ってやった。
 掛け値なしに理想を具現化した好みな外見だったので、「彼」がモノクロームなピラミッドの荒れた急坂を転がってヴィアールなる疑似のカラダを傷つけしかし流れるほどの血はこぼれずに速度を増していくさまは、心わきたつような光景ではなかった。
 吐いた息が、白い。
 心臓が、痛い。
 やっちまったか?
 どんな姿でもどってくるだろう。
 思いつつ、Itoは、沸き立つ血の温度に声をあげて笑った。
 データになって宇宙の果てへ転送されて、血の流れない気色の悪いカラダで、その星の色男を口説く繁殖行為?
 キュンとこない。
 むしゃぶりつきたいコケティッシュな見た目だったが、中身が電波だってんじゃダメだ。
 どくんどくんと脈打たなけりゃ、その場かぎりの恋さえも無理。

「そういう見た目のやつはさ。冷え性なんだよ。おれは、もっとレバー食えよとか言いながら、その手を握って、体温が移っていくのを感じるのが好きなんだ」

 愛には血が必須。

Liver
   
Yoshinogi Takumi
 Shonen-ai Cooking Elegy
 Song 17
 『Viacuer-Encounter』

(吉秒匠
 BL料理哀歌
 17曲目
 『ヴィアール遭遇』)

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○材料

鶏レバー 400g
赤ワイン 200cc

○作り方

レバーを刻みます。写真は心臓。鶏レバー買うとついてくる部位。これもおいしくいただきます。

Liver2

レバーを洗って赤ワインに投入。洗っても洗ってもそれそのものが血のカタマリですから。神経質にならず、ちゃちゃっと洗って済ませましょう。

Liver3

レバーを煮ます。しっかり火を通しましょう。アクとか取らないでよし。細かく刻んでカレーに入れてしまうのです。煮すぎて固くなるとか、そういう心配は愚かしい。

Liver4

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 以上が、レバーの下ごしらえレシピ。
 カレーはナンで食べるもの。

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『カレーが添うナンのカロリー』の話。

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 むしろナンが主役。
 カレーは付け合わせ。
 なので、味が濃いほうがいい。
 でも、塩辛い料理は嫌い。
 カレーの定番手法、タマネギをじっくり炒めるというのも面倒くさい。ていうか、すでに炒めてある飴色タマネギを使って作ることが多い。このところは生の野菜が高値止まりしていますので、パウチとか冷凍とかの野菜は積極的に使っていこうとストックも山盛り。炒めたタマネギが手元にあるのに、フライパンの前で一時間とか立っている気にはなれません。

ONION

 チキンが好き。チキンカレーが食べたい。そんなこんなで、手っとり早くコクあるカレーを作る材料として、鶏レバーをチョイス。

 しかしレバーは、臭かったりするもの。
 下ごしらえ重要。
 よく見るレシピとしては、下茹でしてしまうとか。でも、それってせっかくのレバーなのに、エキスの重要なところを流しに捨てているんじゃないのかなと懸念。せっかくレバー。せっかくだから、あますところなく血にしましょう。というわけで、臭みとりの定番、酒で煮る。そしてその赤ワインごと、カレーにつっこんでみる。

 つまるところこれは、レバーの嫌いなお子さんにレバーをそれと気づかせず食べさせられます、というようなカレーではありません。あくまで酒のつまみとしてナンにちょっとつけていただくための、レバーの味はちゃんとするカレーです。でも臭いのはイヤなので、ひと手間くわえましたよ、という手順。

 手順といっても、レバーの下ごしらえを説明してしまったので、あとは市販のカレールーのパッケージ裏に書かれている作り方の通りに作ってください。

 いちおう、私の分量も書いておきませう。

 箱裏の説明書によれば、

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肉 400g
玉ねぎ 600g
じゃがいも 300g
にんじん 200g
水 1200ml

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 これでカレー十皿を作るということになっておりますが、重ね重ね、私にとってカレーはナンのためのディップソース。肉と玉ねぎ以外必要ありません。じゃがいもとかにんじんとか、却下。

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鶏レバー 400g
鶏もも肉一枚 250g
玉ねぎ 600g
水 1200ml

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 これに、鶏レバーを煮た赤ワイン200mlが煮詰まって100mlくらいになったものが加わり、唐辛子三種類ほどと、タイムとターメリックとオレガノを少し振りました。

 カレーなんつうのは、そんなものです。

 いっしょに食べるひとがいるときは、ナン作るのに買ったヨーグルトもテーブルに出します。

 で、十皿分も作ってディップソース扱いですから、ほとんど残る。
 それを薄型タッパーで凍らせる。凍ったものをタッパーから取り出し、大きめのジップロックでまとめて冷凍庫ストック。これは朝食になります。ええ、朝食は白ごはんとでいただく。

(薄く凍らせるのがミソです。手で割れるくらい。朝、ごはんを盛った皿に冷凍カレーを割って入れ、電子レンジでものの数十秒。そのためにじゃがいもなどを入れないという側面もあります。かたまりが極力少ないほうが、すばやくカレー朝食を済ませられるのです。白ワインを足して少しゆるめてパスタソースにすることも。割って使える冷凍カレー。重宝しますぜ)

 そうして、冷凍庫に隙間が増えてきたら、またナンのためのカレーを作る。そのさいには、冷凍庫に残っている前回のカレーも解凍して混ぜる。そんなことを繰りかえしているので、なにげに私のカレーは、軽く十年以上、作っては足しの果てに偶然生まれる味わい。それゆえに、ここで詳細にレシピ解説しても意味がない。ときには牛すじが入ったり、豚肉なことも、ミンチ肉なことも。茄子とかズッキーニとか炒めたのをくわえたこともありますし、キノコを足したこともある。今回の写真にも、市販の炒めタマネギを使ったくせに手刻みのタマネギ的なものが入っているように見えますが、それはきっと四年前にあのひとと食べたときのなごり。そんな断片が、ふとどこからか出てきて、あのときはちょっと気合い入れてタマネギ刻んだりもしたっけ、と遠い目になったりする。私のは、そういうカレーです。

 あ、いつも勧めますけれど、カレーはぜひとも鉄の調理器具で作ってください。ダッチオーブンがあれば蓋でナンも焼けますが、お手軽に鉄フライパンでもいいです。なぜそれを勧めるかといえば、カレーに溶け出した鉄分によって、ルーが酸化して色が黒くなるため。今回はたっぷり赤ワインも入っていますから、そうとう見た目に「濃い感」が演出できます。黄色いよりも黒いほうが、美味しそうじゃないですか、カレー。鶏レバーにダメ押しの鉄鍋鉄分で、愛されるための血を補給すべし。

(血がなけりゃその場かぎりの恋もできない、というのは、あくまでItoくんの意見です。書いている私は、血の通っていない人形にも機械にも平面にも樹脂にも木綿にもポリエステルにも恋できます)

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 ただし、妊娠初期のかたが貧血改善のためにレバーを摂取するのは、ビタミンAの過剰摂取になる可能性が高いので、お勧めしません。鉄鍋で調理するのは実践していただいてけっこうですが、レバーは量を摂らないように、というのが近年の潮流。サプリメントで鉄分を補給するのは肝臓に負荷をかけるという向きもありますが、貧血になっては元も子もなし、ビタミンAの過剰摂取による催奇性を怖れるのも精神衛生上よろしくなし。妊婦さんは適度にサプリで鉄分補給がよいです、と、たまには薬屋らしいことも書いてみたり。鉄分と葉酸がいっしょになった医薬品をイチ推し。

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Yoshinogi Takumi
 Shonen-ai Cooking Elegy

16曲目『アネ化けロースカツ』
15曲目『逆想アドミタンス』
14曲目『恋なすび寿司』
13曲目『バーベキュー厳峻鋼』
12曲目『茄子はダシの夢をみるか?』
11曲目『すっぱくても、平気。』
10曲目『踏み絵ムルギティッカ』
9曲目『ひとくちだけカトルカール』
8曲目『春節の静かな賞品』
7曲目『ナンを焼くと両手がつかえない。』
6曲目『タマレってなに?』
5曲目『あらいぐまのすきなもの。』
4曲目『ピッツァみたいにぼくを食べてよ!!』
3曲目『クリスピー・プロ・フライドチキン』
2曲目『青くてカタいアボカドのパスタ』
1曲目『春餅/チュンピン』

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