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『ひれ酒、するめ酒』のこと。



Hirezake

ヒレ酒。
大阪道頓堀づぼらやさんの。
おっきいカニのもうちょっと先。
おっきいフグの看板。
それらは見慣れているけれど、
食べに入ったのは初めてだった。
三階の窓際。
壁が全面ガラスである。
道頓堀川を挟んで、
キリンが立っている。
ジラフ大阪というクラブ。
上から眺めていると、
ぞくぞくお客さんが入っていく。
流行語大賞も獲った半沢直樹のロケ地。
そのせいもあるのか、絶好調な様子。
こっちはまったり鍋です。
それにしても暑い。
同じフロアで食べていた男性の多くが、
シャツまで脱いでTシャツ姿だったりする。
冬ですけれど。
窓開けられない部屋で
各テーブルにぐつぐつ煮えたぎる鍋。
もうちょっと暖房落としていいんじゃないかと。
しかし見れば、コート羽織ったままの女性も。
あれ、そんなには暑くないですか?
ああ……鍋よりも、酒のせいなのかな。
ヒレ酒というのは、あぶったフグのヒレに、
酒を注いでダシをとる飲酒法。
なので注ぐ酒は熱いほうが良い。
づぼらやさんでも、
おねえさんが「熱いですからね気をつけて」、
ひとりひとり注意しながら差し出すくらい。
熱いけれど、ダシの匂いがたまらん。
で、ぐびぐびいく。
そりゃ、汗も噴く。
飲みながら、ふと思う。
和食が世界遺産に登録されたとか。
これ……和食だよな。
日本には、焼津割というカクテルがある。
カツオダシで焼酎を割る。
ロシアにはブルショットがある。
ブイヨンスープでウォッカを割る。
ウォッカに草を入れて匂いをつけた、
ズブロッカというのも私は好きだ。
しかし、こんなのは他にあるんだろうか。
動物の屍体そのものをグラスに入れて、
熱したアルコールを注ぎエキスをとる。
その香りがたまらんというのも、
考えようによっては奇異な感覚である。
このグラスは漢方薬にしか見えない。
東洋医学に馴染みのない国のひとが見れば、
むしろ黒魔術の類を想像するだろう。
しかし私はこのビジュアルがキショくない。
初めて見たときから美味しそうだと感じた。
酒に混じるダシの香りに、違和感がなかった。
これ、けっこう、和食の極北ではなかろうか。
ダシのウマミ文化は世界に広まったけれど、
幼い頃から島国育ちの和の民の、舌こそが和。
味噌汁禁止法案が施行されたら狂い人も出る。
そんなのはもう、嗜好というよりも、中毒だ。
冷静に考えれば、これはないわ。
いままさに飲んでいる。
あぶった屍体の芳香ただよう沸騰寸前の熱い酒。
こんなのがたまらんとか、なにかに毒されている。
つまり、和食に。
つまり、この舌が世界遺産。
次代に継承するべきは、幼き日からの教育。
生まれたときからダシに浸かって身を煮込む。
そこに生まれる狂気じみたものが和食の魂。
未来永劫、遺産として継承すべきはそれ。
乾きものぐつぐつ煮込んでいる黒魔女の鍋など、
「めっちゃ美味そうやん。ダシどんだけ出とんねんっ」
テンション上がって飲み干すようにあれ。
あぶったトカゲとか、たまらん汁になりそう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 で、思ったんですけれど。
 乾きもので、酒に合うといえば。

 するめ。

 縁起を担いで「金をすらない」ように「あたりめ」なんて言ったりもしますね。これ、あぶって熱燗につっこめば、それってなかなかヒレ酒に対抗しうるダシ加減になるのではないかという予感。

 足。
 軽く焦げるくらいにあぶって。
 ぶっこんでみた。

Surumezake

 沸くくらいの温度で。
 三分ほど待ってみた。

 ぐびっといってみましょう。 

 うん。
 ふつうに美味しい。
 これねえ、ヒレ酒ってフグだからありがたがる風習があるけれど、魚介の類ならなんでもあぶって入れたら美味いんだよ、たぶん。

 ただ、グラス半分ほどいって気づく。

「つまみにする、するめください」

 フグのヒレって食べないから、そこで完結できるんだけれども。
 酒のなかに浮かんでいるするめの足を見ていると、エキスが酒に滲み出していない、ちゃんと塩味のきいたあたりめをあぶってつまみたくなる。で、それやっちゃうと、あれ、なんで酒にするめ入れちゃってんのかな、つまみがするめなら、ふつうに呑みたいなあ、ってなるわけで。

 なるほどね。
 牧草とか、かったいフグのヒレとか、そこんとこ重要なのか。
 食べられないけれど、ひたせばダシが滲み出るもの。

(ここまで書いて、ほろ酔いの私の腐れた脳みそがワカメ酒(わからないひとは検索してみてください)についてしか語りたくないと叫びだしているので……自粛します。まあ、あれですね、味覚とは舌だけのものではないのだという当たり前のことで。ヒレじゃなくてスルメでもいいし、あなたにベタ惚れなだれかがいままさに一杯の酒を飲もうとしている、それをこの世でもっとも美味いそれにしてあげようと思うならば。太ももさえ露わにする必要もなく、ひとさし指、そのグラスにつっこんで「このまま飲んでみてよ」って言えばそれでいい。要はつまり、恋が足りないからヒレ酒が必要なのです!! って、うん、まとまっていませんが、そんなようなことが書きたかったのだけれど、酒飲んじゃうと無理です。先週、免許の更新に行って、まさにそういうビデオを見せられました。こんなくらいの酔いは大丈夫と思ったら撥ねて人生台無し。正しい選択は、飲んだら書くな。さようなら)

  

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