最近の記事

スポンサードリンク

月別アーカイブ

『聖日戯言』の話。

 雪ですよ雪。近畿大雪。私の勤め先なんてさらに郊外型ホームセンターなので山のふもとで「雪国?」というような朝でした。そして私はカー用品担当。男性従業員が全員で駐車場と店のまわりの道路を雪かきしている中、私だけが店内でひっきりなしに鳴る携帯をとりながら接客も……そう。タイヤチェーン売れまくり。ほかの売り場にはひとっこひとりいない。一日が終わるころには、見たこともないくらいケタの少ない数字の並ぶモニタ上の売り上げ確認画面で、なんかの祭りでもあったのかと思うようなカー用品の逆にケタ違いな売り上げ。ずぶ濡れになってがたがた奥歯を鳴らすオトコドモが帰ってきて、暖房の効いた店内にいた私は恐縮しきりだったが、みんなも倉庫に山積みだったタイヤチェーンを余すところなく売り尽くした(ということは後半、すいませんそのサイズは売り切れましたと頭を下げ続けたということでもある)、私を気の毒そうな目で見ていた。実際、疲れたよ。テレビで見たけどチェーン取り付けも行っているオートバックスでは購入三時間待ちの装着一時間待ちだったとか。出かけるのやめようという発想がないのかね。アマゾンもチェーンは軒並み在庫切れ。きっと近畿需要だ。普段こんな大雪ないから、いざ降るとあれがないこれがないって……追加発注したけれど、ちゃんと入ってくるんだか。いやそれよりももう降らなかったらどうしよう。アホほど注文してしまった。

 帰ってホワイトシチューを作りました。あったかいものが食べたくて、土鍋シチュー。パンとワイン。アボカドとトマトのサラダも添えて。

 ふと本棚を見て、まったく忘れていたそれに気づいた。

 ディアプラス。あら朔夜さんの新作ですねとか思って嬉しくなっていたら、そういや発表もある号だねと……まったく忘れていた。

 結果を見てその雑誌を床に投げつけて力一杯踏んづけたあと、バックドロップも決めてつばを吐きかける。嘘。すばらしい作家さんたちの描く素敵な世界たちにそんな真似はできません。でも罵ったのは本当。

「なんだそれは?」

 以下、興味のない人には毎度のごとく意味不明なイニシャルトークと、興味のある人の大半にとってもどうでもいい吉秒のどうでもいい話。

 思えば、この出版社の出す評価にその手のセリフをなんど口にしたことか。またです。なんだこの伝わりにくい評価の仕方。えーっと。三次選考通過で、でもなんか私の頭の上に※印がついている──シルシのついている方は「ボーイズラブ的な恋愛をテーマに捉え切れていない、いわば「ボーイズラブ度」が低い作品を書かれた方です」──Dの方向性が変わってから絶えず私の頭の上にあるこのシルシは、今回もきっちり私の頭上に輝いているのでした。

 ──ていうか。なにがわかりにくいって、だったら私はなぜそこまでの選考過程を通過しているのかということなんですが。これはあれですか私の好きなプロレスにたとえると「まあ確かにそこそこ強いけれどねプロレスラーとしての華がないよね」っていう高山解説でこき下ろされるようなことなんでしょうか。だからそういう言われ方って言われた当人はすごく戸惑うんですけれど──強さを求めてきたのに。華がないって、いったいおれは明日からどうしてなにを鍛えればいいの? もうヒンズースクワットも手につきません。

 ほかの団体に行く気はないから。ここで戦いたいから。考えます。ひとつわかったのは、今回の私の書いたのは半分以上が濡れ場だったということで、D編集部のいう「ボーイズラブ的な恋愛」は決して=アナルセックスとオーラルセックスの過剰な描写ではないということ(笑)。わかってみればものすごく困って、私は今月書いていた原稿を一から書き直すことにしたクリスマス。いまからDの原稿を始めてしまうと、肝心のWのほうが時間が足りなくなるおそれ大なのですが。んな高山解説されて噛みつかなかったら、それこそそのレスラー終わっていますからね。

 濡れ場が増えればいいってものじゃない──私に決定的に欠けている「ボーイズラブ度」ってなんだろう。なんとなくわかる気がしないではない。自分の中でも、本来自分が書いていなければ読まないであろうボーイズラブ誌を乱読していて、受けつける作品と受けつけない作品があることは確かなのだ。それはいわゆる小説全般を指して「リズムが合わない」とか「なにかひっかかるものがある」といった肌の合わない感ではなく──そうだよな。結局、男性向けポルノを論じるのに「ヌける」か否かで論じるのが究極であるのと同じように──まったくなにも感じるモノがないBL小説というものが、私には確実にある。

 逆説的に、そのなにも感じない作品たちの傾向を統計立てて分析してみると、どうやら私は「攻め」と「受け」の両方が「笑顔」でいる作品に無反応であるらしい。セックスの絡む恋愛小説において、本来ならば双方ラブラブで笑顔振りまいているならそれは物語としてただの「恋人たちの風景」を描写したものであって、それこそ現実に電車の中でイチャついているカップルを見て微笑ましく心が温かくなる人より「け」と唾を吐く人のほうが多い方程式に当てはめて、需要などあるはずがないとゾウリムシでもわかる。けれどBL業界には確かにそういう物語が存在していて、なぜだかそこには需要があるらしい。これは私には理解できない謎だ。

 もちろん、古来からの男性向けポルノや女性向け少女漫画の下流に当たる「いつのまにかぼくはあのひとのことを好きになっているみたいだ」というパターンこそが王道では、ある。そしてそのパターンならば──つまりは最初に手首をつかまれて「なにするんだよっ」というようなセリフのある作品ならば──私も萌えられるのである。でも同じそのシーンで、ヒロインが「あっ」とか言っちゃって、すでにその時点でセリフの末尾にハートマークが感じられる行間であったなら、それは私にとっては「け」なのだった。

 ところで今号のDの表紙ですが。

 男二人が向かい合って抱き合い、ひとりは胸をはだけ、ひとりは半ズボンで、彼の手は彼の頭を撫で、彼の指先は彼の鎖骨にそえられていて、二人は読者に流し目腺で、二人そろって「笑顔」である──け。

 実証として、今月発売のボーイズラブ誌六冊が私の手元にあるが、そのどれもが男二人のツーショットイラストであることが共通しているものの、二人ともがそろって「笑顔」なのはDだけだ。ほかの五誌は、どちらかが甘えてくる片方に困った顔でむしろ怒り顔だったり、どちらかが不敵に笑んでいても、もう片方はクールに読者を睨めつけている。そして私の作品はDでもっとも評価が低い。

 答えは簡単だ。

 今年のプロレス大賞授賞式で、話題賞を審査員満場一致で受賞した『ハッスル』のインリン様ことインリン・オブ・ジョイトイに、豪腕プロレスで知られる『NOAH』の小橋建太と『健介オフィス』佐々木健介が拍手を送ろうとしなかった、そういうことだ。でも実は私は川田利明のファンなのである。だれもが認めるデンジャラスな実力派レスラーでありながら『ハッスル』でも踊ることができる──このプロレスたとえ話にいったい何人が頷いているか疑問だが、まあ聞き流せ。

 答えは簡単だ。

 このリングはおれの肌にあわねえ、と背を向ける気がないのなら、私が今やるべきことは、そこで踊る作法を身につけることだけ。謙虚な心と従順な学習姿勢。というわけで「これでどうだ」的な筆致で書いていた今月の原稿はDには評価を求めるだけ無駄だと悟ったので、書き直す。

 なんだか毎回同じことを書いている気がするが、まあそれもそれ。この業界で泳ぎ続けて十年越えて、もはやこれが私の人生だから。読み捨てられる小説を書くために、今日も今日とていますぐ悩もう。冬は日の落ちるのが早くて、気がせく。

 以上なんということない話。あっさりと終わり。
 みなさま良いクリスマスイヴでしたか?

TRACKBACK http://yoshinogi.blog42.fc2.com/tb.php/5-1f5b8f76