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『仮面ライダー鎧武/ガイム』の話。



・ ていうかもう仮面ライダー鎧武は時代劇にしてしまえばいい。核家族化極まれり、それなりの年齢になってから時代劇初めて観て失笑、なんて流れは、つまり東映時代劇の死なわけだし。シンケンジャー路線ではなく響鬼のノリで映画村で硬派にバイク走らせてくれたら喝采する。

6月25日

twitter / Yoshinogi

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 今年六月の段階で、東映が商標登録したために、次期仮面ライダーの名前が「鎧武」であることだけが判明し、そりゃあもうバイクとバイク、刀と刀が鍔競りあう硬派な作品になるのかもしれないと夢見ていた……

 わけでは、じつはない。

 モノが売れないと嘆き、そのせいで国も傾きかけているこの時勢に、新番組秋スタートに変えてからというもの、クリスマス商戦でライダーベルトとその関連商品が売上げランキングを独占する昨今。いまさら、響鬼のラッパ武器にはもどれない。

 そんなこと、わかっていてつぶやいている。
 
「秋からはじめる仮面ライダー第一弾『仮面ライダーW』は、USBメモリをベルトに挿して多段変身するという錬金術を確立した。向こう十年の仮面ライダー新世紀を目指した、最初の作にして大成功をおさめたのぢゃ。わかっとるのかね小室くん」

「はい博士。もちろんです。『W』は肉体の半分がメモリによって変身するという、これまでより二倍おいしい画期的な商法だったとはいえ、一年間で作中に登場させるアイテム数が限られてしまいました。それをさらに進めた翌年の『仮面ライダーオーズ』では、肉体を三分割して、それぞれがメダルで変身するということにして、より多くのメダルを作中に登場させることに成功しました」

「偉大な功績ぢゃった。そこでさらに翌年の『仮面ライダーフォーゼ』ぢゃ。人類初の有人飛行から五十年という、宿敵ウルトラマンがテーマにすべきところをごっそりいただき、舞台は高校、仮面ライダー部という名の宇宙を目指す若者たちが主人公。若さとは良いものぢゃな。多少の無茶は、ゆるされる。のう小室くん」

「両手両脚の肉体四分割に加えて、宇宙開発へのオマージュという名目で、くだらない変身も受け入れられましたからね。コメディ色を強くしたのは正解でした。四つのスイッチで、もはやフォーゼは原型留めない形状まで変身していましたが、むしろユーザーのウケは、暴走気味になるほどよかったようですから」

「的確な分析ぢゃ。だがの、それ以上はまずいんぢゃ。さすがに四つを越えて五体のパーツそれぞれが変身するとまで言ってしまえば、子供のおつむがついてこんし、大人はなお醒める。新世紀平成ライダー第四弾『仮面ライダーウィザード』は、両手に指輪という『フォーゼ』の四分割から逆行する二分割となったわけぢゃが……しかし、指輪の総数は、フォーゼに匹敵するほどの数になった。これはどういうことぢゃったのかな、小室くん」

「はい。ウィザードは、指輪で必ず変身をするわけではありません。指輪というアイテムは、あくまで魔法を使うための魔力の根源。変身の数だけアイテムを登場させる手法は飽和状態にまで達したと考え、仮面ライダーの「技」が指輪によって発動する設定を組んだのは、逆転の発想でした」

「そうぢゃの。おかげでウィザードリングの売上げは、歴代ライダーキーアイテムでトップの110億円越えを果たした。となると、次ぢゃ。これは難問ぢゃぞ。人体のパーツは限られておる。これ以上は……」

「顧客を増やします」

「なに? どういうことかね小室くん」

「次の主人公俳優は、おどれるジュノンボーイを用意しました。周囲もガチ美形で固めてあります」

「ガチ美形。興味深いの」

「新しい十年を目指す、このところのライダーシリーズは、その直前に『仮面ライダー電王』でせっかく掴んだ腐女子層が離れていく傾向にありました。そのぶん、正統なターゲットであるお子様にグッズが売れていましたが、これ以上の売上げとなれば、再度、彼女たちへのアピールが必要です」

「ほう。小室くんの得意分野ぢゃな」

「はい。この俳優陣、初回の視聴率は約束されています。ですので、インパクトを与えるために、放送当日まで、変身シーンを公開しません」

「変身シーンに、自信があるのぢゃな」

「キーアイテムは、フルーツです」

「な、な、なにぃ? フルーツ? 果実か。それは……確かにこの世には無限のフルーツが存在するわけで、アイテムを作るには困らんが……仮面ライダーフルーツなあ。やつらは納得したのか?」

「渋りました。そこで、対極のテーマをぶつけることになりました」

「テーマ? なんぢゃ」

「戦国武将です」

「な、な、な、な、なにぃ」

「異世界から現れるフルーツによって変身する仮面ライダーかつ武将。フルーツの甘ったるい匂いは相殺され、なおかつ、博士! フルーツと、おどれる美形戦国武将です。彼女たちがこれに食いつかないでなにに食いつくというのでしょうか」

「いや、訊かれても困るが。腐女子か……フルーツ武将。むう。確かに好きそうなワードが並んではおるな。それで、やつらも納得というわけか」

「彼らは、お客さまを増やすためなら仮面ライダーがどうなろうと知ったことではないようですから」

「小室くん。それをきみが言ってはいかん。きみこそやつらの口車に乗って迷走しているのではなかろうな。異世界から現れるフルーツで武将に変身とは。大丈夫か?」

「大きなオレンジが降ってきます。大きなバナナもです。メロンもブドウも。見たくないですか? わたしは見たいです。彼女たちだってそうなはずです。おっきいみかんが降ってきて、おどりまくる仮面ライダーに変身とか、子供だってよろこびますっ!」

「うむ……むう……さっきから、おどるおどると言っておるが、そういう物語なのか?」

「はい。主人公たちは、近未来の城下町でいくつかのダンスチームに別れています。主人公の所属する「チーム鎧武」も、いわばチーマーです」

「ほう。城下町のお。城というのは、なんぢゃ?」

「新興企業です。のしあがってきた大会社と、そのベッドタウン。若者たちは格差社会そのものを憎み、しかしその世界を改変することからは逃避して、享楽に夢見ている。そのひずみに現れるモンスター。主人公たちは、戦かわざるをえない敵の出現によって、チーマー団体同士、チーム内の仲間同士、力を認めあってゆくのです」

「うううん。どこかで聞いたような話ぢゃが……意外にダークな世界観ぢゃな」

「フルーツに戦国。ダンサーに抗争。今回はギャップです。下々のなかに御曹司もまぜますし、ヒロインは舞踏演劇アイドルグループ「夢みるアドレセンス」のメンバーです。ウィザードのヒロインは転んでばかりでしたが、今回はヒロインも激しくおどりますよ」

「舞踏演劇のお。で、近未来城下町。巨大悪に立ち向かううちに仲間たちが結束……こりゃあ、どこかで聞いたどころか『劇団☆新感線』ぢゃないか。ということはあれか、脚本は『フォーゼ』から再登板というわけぢゃな」

「いえ、そこは。ライダー作品にたずさわったことのない新人を用意します」

「なぜぢゃ!? 世界観にぴったりな人物がすでに経験者でおるのに、そんなリスクを負う必要があるとは思えんぞ?」

「今回は、フルーツありきです。これを、子供以外に売る。そのためには『劇団☆新感線』ではなく、おなじ星マークが入ってはいても、いまや老若男女に受け入れられた、そのくせとびきりダークネスなあの作品……『魔法少女まどか☆マギカ』の脚本家を招致しました」

「おお。おおお。それは、しかし……日曜朝の正義のヒーローぞ。ダークすぎるというのも……」

「怖じ気づいてはいけません。博士! フルーツです。まずそこを忘れないでください。仮面ライダーがフルーツで変身し、戦う。そのギャップがどこまで受け入れられるかが『仮面ライダー鎧武』のかなめなのですから!! あとの設定は盛れば盛るほどに、ギャップを深める作用があるはずなのです。テーマは混沌。おどり、憎み、愛しあい、戦う。ダンスブームさえ起こせるキャストを揃えたつもりです。博士は、ただ見ていてくれさえすれば、わたしは……」

「小室くん。きみは、この作品にかけておるんぢゃな」

「博士。わたし、博士のこと、リュウくんって呼んでいいですか」

「なっ。なんぢゃ突然……」

「わたし、あのひとが、博士のことを、はーくん、って呼んでいるのを聞いてから、わたしも、わたしだけの博士を呼んでみたいなって……思っていて。だめ……ですか」

「……ダメ……ぢゃないが。小室くん、きみは……きみとは」

「わかっています!! 博士がっ、わたしだけのものになんてならないことは!! でも、今年だけ、この一年『仮面ライダー鎧武』が終わるまでは。ふたりきりじゃないですか。その時間を、特別なものにしたいっ……それだけで、わたしは」

「小室くん……ぼくを、困らせないでくれ」

「困る? 困っているのはわたしです!! どうして博士は……リュウくんは……あのひとよりも先に、わたしに出逢ってくれなかったんですかっ!!」

 終わらないので、このあたりで。
 まあ、そういう流れだと思うのです。
 あ、いや、博士こと馳竜司と、助手こと小室くんの禁断の恋のゆくえがどうとかではなく『仮面ライダー鎧武』がフルーツありきだってところ。

 変身キーアイテムありきの企画会議だったのは絶対です。
 そして、数が作れて、子供以外の層にもアピールするには、イケンメンおどらせてチーマー抗争、タネで変身、武器はフルーツという「kawaii」を意識した戦略。そのうえ脚本家が『魔法少女まどか☆マギカ』から呼ばれたのは、もはやグッズ売上げ100億円が当たり前になった番組で、さらに上を目指すには、冒険が必要だという判断からでしょう。

 上乗せして戦国武将。
 鎧と、武者。

 フルーツの「kawaii」をギャップと呼ぶにはあまりにぶしつけな鎧武者というモチーフで「kakkoii」も世界の日本語にしてしまおうという野望さえ垣間見えます。実際、異世界からバナナやオレンジを召還して戦う格差社会のヒーローなんて、もはや仮面ライダーがどうのという段階でなく、日本の誇る混沌の象徴として我々は知っておく義務がある。クールジャパン大使に任命してもいいくらいです。紛争地帯にバナナとオレンジ背負った金ピカダンサブルな鎧武者を派遣すれば、ゲリラもバズーカ砲を向けることをためらうでしょう。

 いっさいバイクに乗っている画がないのが気にかかります(それどころか予告映像では馬に乗っている)。ウィザードもひさしぶりに序盤はバイクアクションしていたのが、後半は免許失効したのかというくらい徒歩でしたし。
 けれど、スポンサー的にはウィザードリングが売れて、仮面ライダーってなに? バイクに乗ったヒーローだよ。そういう逆行した布教活動でさえ、バイクが売れないいま、重要なのです。

 ガイムで、ロックシードがJKの通学バッグにアクセサリーとしてぶら下げられるようなことがあれば、一生バイクと接点のなかった層の唇から「オートバイ」とか「ライダー」なんて単語がこぼれることもあるかもしれない。すると『仮面ライダー鎧武』を観ていない彼が、あのコの唇からこぼれた単語に反応して「仮面ライダー? あいつバイク乗りが好きなのかよ」って教習所に通ってバイトして四十万円貯めてウィザードの乗っていたホンダCRF250Lを買ってしまうことだってあるかもしれない。趣味のバイクって、そういうふうに売れるものです。ギターを弾きはじめるのと同じように。音楽が廃れないことが重要です。バイクに乗っていなくても、鎧武者でも、仮面ライダーの戦いつづけていることが重要なのです。

(ホンダさんがバイク屋の誇りを東映陣に売り渡し、本編でもガイムを馬に乗せている、などということはないと私は信じます。反逆のライダー武将に鉄馬を駆らせ、今世紀では『イージーライダー』でも『マッドマックス』でもなく、世界で『仮面ライダー』がバイク=アウトローな図式のカリスマになる)

wizard

 というわけで。
 なんだかよくわかりませんが、私は期待しています。
 なんにせよ、勝負しようという気概を感じる。
 それが博士と助手の、玩具会社からの「今年は200億イケますよね?」というプレッシャーに知らず愛に逃避するなかで生み出された混沌だったとしても。
 パワーとは、そういうものです。

 ところで、唐突ですが格闘技ファンとして。
 現在は活動していないもののかつては隆盛を極めた総合格闘技団体『戦極』のWikipediaに、「商標権を調査して公募から「戦極-SENGOKU-」に決定した」という記述があるのが気にかかっています。商標権を調べたうえで決定した団体名称を、商標登録しなかったなどということがあるでしょうか。

 仮面ライダーガイムの変身ベルトは『戦極ドライバー』。
 200億円稼いだところで、『戦極』親会社のドン・キホーテが「はーい」と手を上げることなど、ないでしょうか。
 心配です。

 それはさておき、今回は変身ベルトが番組開始前に発売されます。どうせ買うんでしょ。予約忘れませんように。

gaimu

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『仮面ライダーウィザードと現代の魔法の指輪』の話。

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 ウィザードは、まあ、なんちゅうか、安定飛行でしたね。
 期待通りにスタイリッシュで最後まで通してくれましたし、上の記事で書いた「その作品が、魔法使えりゃ強くてハッピー、みたいなことだけで終始したとすれば、幻滅する」という部分において、私は満足ですが。玩具の売り上げのわりに、歴史を作り世界を覇する作品とまで呼べる影響力は持てなかった気がする。

(PASSPO☆(お、ここにも星が)の今年一年の躍進に、奧仲コヨミの果たした役割は大きいですが。我が家でも『ウィザード』前から私はガールズロック好きなのでPASSPO☆は聴いていたのですが、いくら共有フォルダに入れても嫁は聴かなかった。それが『ウィザード』に出てるコのグループだというので聴くようになりましたから。ささやかなことですが、アイドルが成り上がるというのは、こういうことの積み重ねです) 

 仮面ライダーオーズの鴻上コーポレーション会長こと宇梶剛士が、ドラマ『半沢直樹』で記録的な視聴率を獲ったのを見ても、悪役の存在感こそが観客を惹きつけるのは定石。そういう意味では、ウィザードは敵まで美しく描きすぎたのかもしれません。ガイムでは異世界からの魔物よりも、下克上物語として城会社のブラック企業ぶりとそのボスの嫌らしさをこそに力を注いでいただきたいものです。

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「仮面ライダー鎧武/ガイム」公式ホームページ



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クロムハーツ ピアス  クロムハーツ ピアス  2013/10/23 14:02
『とかげの月/徒然』 『仮面ライダー鎧武/ガイム』の話。