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『ラリアートとキス』の話。



 前回の、アンディ・ウォーホルの映画の続きで、とあるゲイをモチーフにした映画の話をしようかと思っていたのだけれど、そんなことよりも今週観たプロレスの試合がすばらしかった。

 DDTプロレスリングの両国国技館大会が、今年の夏は2DAYS。
 その一日目、『DDT万博~プロレスの進歩と調和~』は、各種アイドル(筋肉少女帯や「冬のオペラグラス」を熱唱する新田恵利を含む)のファンに席を埋めてもらって、内容もきらびやかに。そして、メインイベントだけが、純粋にプロレスラーふたりの一騎打ちだった。

 私が観ていたテレビ中継はプロレス・格闘技の専門チャンネルがおこなっていたものだったので、プロレスに興味のないひとが観てはいない。でも会場は、冗談でなく、プロレスのルールすらわかっていないひとが、少なからずいたと思う。両国国技館で、リングの上というよくわからない舞台ではあっても、メジャーデビューは果たしているけれど、まだインディの香りただよう推しているアイドルの晴れ舞台。二階席3000円なら親心。彼女の笑顔をそっと覗きに来ただけ、というかたがいっぱいいるだろうことは、事前にわかっていた。

 その大会のメインイベント。

 男色ディーノ vs 飯伏幸太

 この試合について、触れたい。
 触れてみてどうなるのか、書いてみて、読んでみて、おもしろいのかどうかはわからないが、ともかく私はその試合を観ているさいちゅう、ああ、とか、おお、とか、感嘆のため息をつきっぱなしでしたもので。

 で、なぜその試合が、ゲイ映画の話と置きかわってしまったのかといえば、プロレスラー男色ディーノがゲイレスラーであるから。

 ゲイレスラー。

 そう本人が表現している。
 おかしな表現だと思う。
 むかしから、男色をキャラにするプロレスラーというのは多い。特にプロレスの本場、メキシコのルチャ・リブレと呼ばれるエンターテインメント性を追求したプロレスでは、屈強な男のケツを追いかける屈強な男という絵が、子供から大人まで笑える健全なネタとして披露されることはある。

 男色ディーノも、そうだった。
 それが最近、なんだか芸に(ゲイに?)深みが出てきたのか、彼の試合を観ていると、ただ笑うだけではないことに。ヘタすると、涙腺を刺激されることまであったり。で、たぶんそれは彼の試合を観ているみんながそうなのだという証明として、プロレスを観ないひとでいっぱいの両国国技館でこそ、ディーノを、という流れになったのだ。

 相手の飯伏幸太は、説明は省くが、プロレス界が誇る超新星。
 いわゆるジャパニーズ・スーパースターのひとり。

IBUSHI KOTA

(人名に強いATOK変換だが、イブシコウタを変換すると「燻し小唄」と出た。昨夜観た『リンカーン』で、プロレスリングNOAHの絶対王者、杉浦貴が新日本プロレスのテーマで入場させられていたのを見ても、プロレス界でのスーパースターは、まだまだだれもが知る、という存在ではないからこそ、我々プロレスファンが叫ぶ余地なのである。天下のATOKさん! この日本で、いま「燻し小唄」と入力するやつがいるとお考えですか? 私が断言します。間違いなくその全員が「飯伏幸太」と変換して欲しがっている! アップデート対応を願います)

 DDTプロレスリング以外の団体でも大活躍。
 女性ファンも多い。
 その相手が、男色殺法の使い手、男色ディーノ。
 入場から「狩り」と称して客席の男性客の唇をガチで奪うというのがお決まりのゲイである(ときどき、あのひとは男色ディーノが初チューの相手だったのかもなあ、という反応のお客さんがいて、自分で望んで会場に来たのならいいけれど、友だちに連れられてこんなことになるとはつゆ知らず、とかだったら、本当に人生ってわからないものだなあ、なんて思わされる)。

 魅せる側も観る側も。
 そりゃ当然、飯伏幸太が唇うばわれそうになるのから逃げまどいつつ空中殺法を放ち、それでも追いすがる男色ディーノが必殺のファイト一発を極めるのかどうなのか、両国国技館のいつもは裸の力士たちが踊る土俵の上に設営されたプロレスのリングで、力士よりも裸の(ディーノは脱ぎます)ふたりが、公開ファックで女性ファンの悲鳴をあげさせるのか。
 そういう試合だと、思ってた。

DIENO

 事実、そういう試合では、あった。
 ただ、リングを取り囲む彼女たちの悲鳴がひときわ高周波になったのは、飯伏幸太がラリアットを放つのをやめ、男色ディーノのキスへ、キスを返した刹那だった。

 ラリアート(Lariat)とは、なにか。
 クローズライン(Clothesline)とも呼ばれる、プロレス技のひとつである。
 走ってくる相手の行き先を、閉じる。
 なにで?
 自分の腕で。



※以下、内容バレまくりです。
 バレたところで影響のない作品だと私は思いますが、どんな試合であれ観ていない試合のストーリーは知りたくない、というかたはここで回れ右をおねがいいたします。

(この試合を含む『DDT万博〜プロレスの進歩と調和』の様子はテレビ東京で9月29日深夜3時46分から1時間枠で放送される予定。おそらくは地上波らしくBiSプー・ルイのスク水吊り天井や坂口征夫・憲二VS渡辺哲の俳優対決あたりがクローズアップされて、純プロレスは超ダイジェストになっている予感ではありますが。観られる地方のかたは、地上波ですし夜のお供に、ぜひごらんになってくださいまし)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 ディーノ入場。
 ドアの脇にいた細身の立ち観客(男)の両方のほっぺたを手で固定して接吻。
 直後、椅子に座っていたガタイの良い短髪の男を背後からのけぞらして接吻。
 三人目には拒否られ、彼の持っていたペットボトルのお茶を奪って口に含むと、その彼とは無関係と思われる後列席の女性の顔面へお茶霧を吹きかける。
 女性は笑顔。
 階段を下りながら、太めの白Tシャツ男性へすばやくキス。その彼の隣にいた彼とは対照的に痩せた男性が、太め男性を奪われまいと抱き寄せたように見える。この儀式、ノンケよりも、男カップルで観に来ていた本職の方々にとってこそ、戦々恐々なものなのかも。
 黒いシャツの男が、みずから両腕をひろげてディーノに求める。
 ディーノは躊躇せず、その男のシャツを脱がせると、客席の遠い位置にまで放り投げ、両国国技館の観客席で上半身裸になった彼へキスは与えず背を向ける。
 「狩り」なので、求められても好みに反すれば冷たくあしらうし、女性に対してはボディタッチさえ許さない。一種の美学が構築されている。
 デジカメを向けた眼鏡の男性の、そのカメラを奪うと、自分のショートタイツを左手で引き延ばし、剥き出しの股間に向かってフラッシュを焚く。
 カメラを彼に返す。
 リングが近くなってきた。
 さっきのカメラ青年が最後かと思っていたら、通りすがりに帽子の男性へ熱烈な接吻を贈る。リアルに好みだったのだと思われる。彼は帽子を落とした。それほどに抵抗したのだが、ディーノのキスはすばやく、抵抗は無駄だった。
 ようやく花道にあがり、大の字になって寝ころぶディーノ。
 両国国技館を、堪能しているようである。

 いつものことだ。
 しかし、前述のように、この日はアイドルファンが多い。最後の帽子の男性などは、ディーノが横を通るのにキスされるまで逃げる姿勢ではなかったことから、ある種のお約束があって、接吻されるのはDDTプロレスファンの一部信者に限られているのだろうと楽観していた節がある。
 その会場でも、狩り遂げた、ディーノにまず拍手した。

「国技館のメインに、ついにゲイが立ちましたよ」

 解説が、がなる。
 そうなのだ、ときにはもめ事が起きてニュースにもなる厳格で神聖なるとされる女人禁制な国技の土俵の上に、その夜のリングは設営されているのだった。
 だが、いま、そこにブーイングはない。
 女性アイドルが歌い、女性客がお茶を吹きかけられて笑い、ゲイのカップルが嫉妬し、試合がはじまって、飯伏幸太をリングに押さえつけた男色ディーノが、尻に男根をこすりつけている。
 プロレスは国技ではない。
 だが、国技館はプロレスを赦す。
 プロレスが赦されるということは、それを観ている私が赦されたということだ。

 攻防は続く。
 飯伏幸太は、なんどか手をショートタイツの中へ引き入れられたり、タイツの上から股間をわしづかみにされたりしたが、果敢に得意の空中殺法を披露していた。

 だが、試合中盤。
 ディーノが、ラリアートを放った。
 そのうえ、ラリアートの神、スタン・ハンセンの真似をして、テキサスロングホーンを発声する。

「ウィー」

 プロレスファンは、呼応する。
 ひとさし指と小指を天に向け、ウィー、の叫び。
 それは、そのラリアートが、男色殺法ではなく、二十世紀からつながる正統派、王道のプロレスの秘技であることを指し示していた。
 男色ディーノが「ふつうに」プロレスをはじめる。
 プロレスファンのみならず、両国国技館の観客が沸く。
 飯伏幸太もラリアートを返し、ディーノは肘を撃ち返す。
 ふつうのプロレスだ。
 それに会場は、興奮している。

 ひとしきり、その攻防が続いた。
 半裸の男と男が、互いに殴りあっているのである。
 そんなものは、だれの目をも惹くに決まっている。
 知識は必要ない。
 ただ、予備知識のない観客こそ、どう見ても飯伏幸太の肉体のほうが隆起した筋肉を備えているため、ディーノは劣勢だと見る。

 だから、ついにディーノが肘ではなく、拳を握ったとき、ため息のような歓声が起きた。プロレスを知っている者は、拳で殴るのは反則だと知っているから。知らない者も、追い詰められた男が拳を握るのは、最後の手段だと知っているから。

 ディーノは、その拳をふるった。
 と、見せかけて。
 飯伏幸太の股間にそっと触れた。

 会場がざわつく。

 腰が引ける飯伏幸太。
 かまわず、もういちど股間へ触れるディーノ。
 試合序盤のように、握ってはいない。
 指先で、タイツの上からなぞるように触れるだけ。
 肘を強烈に撃ち返す、飯伏幸太。

 男色ディーノは、接吻する。

 飯伏幸太が、戸惑った顔をした。
 また肘を撃とうとして、ためらう。
 そして。

 飯伏幸太は、ディーノにキスを返す。

 沈黙する国技館。
 そして拍手と、大歓声。
 頭を抱えるディーノ。
 飯伏幸太が接吻に接吻を返すことができるのならば、それは「技」として成立しているのか。

 観ている私も悩む。
 しかし、飯伏幸太にダメージのないはずはない。
 男色ディーノの判断も、同じだった。

 もういちど、唇を彼の唇へ触れる。
 よろめきながら、飯伏幸太も、また返す。

 キスにキスを返すをくり返し、十五回ほどの攻防の果て、男色ディーノが、飯伏幸太の首を抱えてディープなキスを撃つ。

 くずおれる、飯伏幸太。

 さっきも、観た光景だ。
 ラリアートを撃ちあって、肘をぶつけあっていた。
 王道のプロレスと、起きていることは同じ。

 その後、ディーノはよろめく飯伏幸太の頭をタイツの中にねじ入れて頭から落とす(男色ドライバーという技)が、飯伏幸太は倒れず。

 試合が二十分を越えるころ、接吻の応酬がもういちど。
 もはやそれは、ラリアートと同じ扱いだった。
 唇を撃つ。撃ち返す。
 
 最後は、飯伏幸太の肘だった。
 国技館の中心で、横たわる男色ディーノ。
 飯伏幸太は、フェニックス・スプラッシュ(横方向半回転180度、縦方向一回転半450度、回転しながらのボディプレス)でディーノを沈黙させる。

 20分59秒の試合。

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 いつか読んだBL小説に、そんなフレーズがあったよなあ、と、本棚をまさぐってみる。

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「唇から『そんなとこ』まで、全部ひと続きの皮膚だぞ」

Dressage

 いつき朔夜 『初恋ドレッサージュ』 

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 だから、そんなとこを舐めるなんて、という受けの反応は、恥ずかしい自意識過剰だ。
 そうも読めるが。
 前回、ウィーホル映画の局部モザイクに触れたところで書いたけれど。

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『Andy Warhol Presents: FLESH』のこと。

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 日本では、まずいところを隠せばそこにエロはないという法解釈なので、年齢区分はあるものの法的な意味でのポルノというものは存在しない。そして、隠すべきは男性器と女性器ということになっているので、たとえば性器をすべからく隠す衣装を身につけていれば、肛門は検閲の対象にならない。ということは、男色ディーノの試合で、解説者がよく「放送事故になりますっ」と言っているものの、ショートタイツをずらして尻だけを剥き出しにする行為は放送上なんの問題もないし、もしもディーノの肛門そのものが映ってしまっても、モザイクをかける必要はないということである。

 その前提で考えてみれば。
 フェラチオされて、アナルを舌先でくすぐられて「そんなところを」と恥ずかしがる男ヒロインは、彼の「唇から全部ひと続きの皮膚」発言に反論できないけれど、でもまだ恥ずかしいという場合、むしろ唇にパンツを穿く必要がある。否、パンツが丸見えではそれも恥ずかしいので、顔にジーンズくらいは穿くべきだろう。

 おかしな話に聞こえる。
 自分で書いていて、頭のおかしな文章だと思う。

 けれど、私はさっき、ラリアートとキスに、同じように心揺さぶられた。
 ラリアートに倒れた男色ディーノにまだやれると声援し、ディープキスに膝をつく飯伏幸太へ、やり返せと手に汗握った。

 ヒロインは、恥ずかしがらなくていい。
 赦すなら、すべてを赦せばいい。
 赦しただれかにカラダの隅々まで味わわれるのは、罪ではなく祝福だ。

 ということを突き詰めていくと。

 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』で聖天使神猫が初デートで彼と手をつなぐことになり、手と手が触れただけで興奮のあまり鼻血を出してデート続行できなくなったのは、それこそ恥じらう乙女として正しい反応なのだ。

camineco

 手だって、ひと続きの皮膚。
 手に手を触れるのが、唇と唇を、性器と性器を触れあわすのと、なにが違う。
 それだけで気が遠くなる絶頂の極みに到達したって、おかしくない。

 エルビス・プレスリーのライブでは、失神者が続出したという。
 近ごろ、そういう話は聞かない。
 ライトノベルの登場人物たる、男免疫のない腐女子代表は初デートで指が触れあっただけで鼻血るけれど、現実にはいくら異性に免疫がないとはいえ、フォークダンスで大好きなあのひとと触れあうことになっただけで、その場でイッてしまう男子も女子もいないと思う。

 裏を返せば。
 だからBLやラノベのヒロインに描かれる。
 プロレスが成り立つ。



PiCNiC

 地球最後の日に。
 それでも最初は、さぐりあうように。
 やがて、互いのカラダの内へ。
 短い舌は絡むほどにはならなくて。
 けれど濡れた音は、混ざっていると感じられる。

 だんだんと、激しくなっていくラリアートの応酬。
 途中からキスに変わって、またラリアート。

 どんなアイドルにも、気絶はできないスレた世紀。 
 触れるだけで満ち足りることは、できない。

 欲しいのは、赦されること。
 ゆるされること。

 だれかを好きになることは、
 だれかを好きになれる、
 自分を好きになること。   
 
 あこがれる。
 さぐりあいながら、膝をつきながら。
 アザだらけになりながら。
 ついには気を失うまで、触れあえる。

 ラリアートか、キスかは、どっちでも同じ。
 ひと続きの皮膚。
 当たり前のこと。
 肛門を舐められて悦ぶなんて、好きだから。
 もっと好きになれば、手をつなぐだけでイっちゃう。
 ラリアート?
 撃ってみて?
 もしかして、天国まで飛ぶほど気持ちいいかも。
 パンツを脱がされたら頬を染めたい。
 触れるだけで鼻血を出したい。
 すべての力を出し切るまで、殴りあえる相手なんている?
 いるなら、キスもしたい。
 最初はそっと、やがてくちゅくちゅと濡れて。

 アイドルレスラーと、ゲイレスラーが、伝統の土俵の上空でどこまで赦されるのかと演じ、だれもがまだまだだと赦し、性別も性癖もなにもかも関係なく、みんな気付く。

 これに微笑んで、感動してる。
 ゆるしてる。
 私も、まわりのみんなも、気持ちいい。

 良い試合だったんですってば。
 良い大会だった。
 アイドルも好きなので、おなかいっぱい。
 赦されて、満ち足りた。

 いわゆる賢者タイムがおとずれる。

 私は願う。
 あなたに、私にとってのプロレスのようなものがあればいい、と。
 いや、実は、プロレスそのものが、あなたの赦しかもよ? 

 飯伏幸太は、プロレスをメジャースポーツの座に推し上げたいと言った。
 野球や、サッカーのような。
 仕事が終わって、ビール飲みながら、ゲイレスラーのキスの巧妙なすばやさと、尻は魅せるが局部は巧みに隠すテクニックについて語りあったりする。
 そりゃあ、楽園だ。
 ていうか、いまこれを書いている、私がまさにその楽園にいる。

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『DDTプロレスリング公式サイト』

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『男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ - 4Gamer.net』

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 ↑飯伏幸太先生にはツイッターが、男色ディーノ先生にも公式ブログがあるのですけれど、私も毎週読んでいる、こちらのゲーム情報サイトのコラムのほうが、内容に深みがあってオススメです。
 まず、入口として。


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chrome hearts  chrome hearts  2013/10/24 16:50
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