最近の記事

スポンサードリンク

月別アーカイブ

『あんこを作ろう』のこと。



Mooncake

月餅。ムーンケーキ。
日本では、飲茶デザートでおなじみ。
当たり前だが、実際に食す、おやつである。
しかし、本場では。
毎年、売ったメーカーが月餅を回収する。
数年前には、過剰包装が法律で禁止された。
どちらも、月餅が食べるものではなく、
贈るものとして使われすぎているからだという。
秋の月見祭には、月餅。
とにかく贈る。
会うひとどころか、会わないひとにまで贈る。
贈られるのに自分でも買う。
会社は従業員へ配り、営業は取引先へ届け。
月餅は薄い小麦粉皮の内にアンコいっぱい。
いくら月を愛で秋の実りを祝ったところで、
そうそう何個も食べられるものではない。
というか食べすぎて体を壊すのも困る。
しかし秋の月見祭が終われば売れない月餅。
叩き売られる。そして、カロリー信奉者が買う。
あのメーカーの月餅食べすぎて私の人生は……
そんなのは困るので。
祭が終われば、月餅は自主回収されるのである。
一方、過剰包装がなぜ禁止されるかといえば。
やりすぎる営業マンがいるからだ。
秋に月餅贈るのは当たり前。
だから贈った、それだけのこと。
たとえば、高級車付き月餅とか。
そんなお菓子がありますね。
ミニカーに、ガム一枚。
ガムだからお菓子売場に並べる、これ当然。
売る側も買う側もわかっちゃいるのですが。
月餅にゴルフセットつけただけ。
月餅に宿泊券つけただけ。
月餅にテクのある女の子をつけただけ。
決して高官へのワイロなどではなく、月餅なので。
って言い続けてきたのですけれど。
さすが昨今の汚職公務員大増殖に、
遊んで泊まってねぶられて、
それワイロだって認識なく月餅だと思ってた?
その言い訳が通るほど国民アホだと思ってる?
で、法律化されたという。
便利だったのにね、月餅。
食べなくても作る、捨てるほど作る。
食べなくても贈る、贈るために贈る。
お中元お歳暮年賀状さえ忘れつつある身としては、
それってあれだよねえ、なんか、バレンタイン?
そういうのに近い気がする。
チョコの日だから好きとか言うのあり。
チョコにあたしをつける抱きあわせもあり。
いや、だったら告白だけでOKですよ?
甘いもの苦手なんで……
チョコも、月餅も、美味ですが。
バレンタインにフラレたひとも多い。
月餅のために借金したひとも多い。
見るだけで「きー」ってなるひと、いるんだろうな。
そういうことを、日本で月餅を見ると思います。
贈り物のために借金するとか、バレンタインに動悸息切れとか。
そういう神経質さは、この国から消えつつある。
食べると、小豆と小麦と砂糖の味。
ありふれた味の菓子に、意味深し。
でもそんなの隣の国の話、知ったことか。
ここでは、好きにしていい。
季節はずれで月がなくても、食べたいから月餅。
贈り物は贈りたいときに、愛はいつだって叫ぶ。
恥ずかしげもなく月餅を食いながら笑うのだ。
私は囚われていないのです。
ふふん。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 そんなこんなで鍵だとか、チケットだとか、金塊なんかを埋め込んでワイロにするために月餅は便利です。これがドーナツなんかだと、作るのに非常に手間がかかる。その点、月餅の中身であるあんこは、粘土のように自由自在。

 唐突ですが、あんこレシピ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

○材料
あずき 200g
さとう 200g

○作り方
あずきを600ccの水で煮ます。
やわらかくなったら
さとうを加えて
水気がなくなるまで煮詰めます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 このあいだ嫁の実家に泊まったら、義母が朝食にトーストと目玉焼きとタッパーいっぱいのあんこを出してきました。
 最近凝っているらしい。
 ちなみに上のレシピは一般的な分量で私が適当に書いただけですが、彼女のあんこにはハチミツやらなんやら企業秘密なあれこれが加えられ、実際に近所で評判なのだという。義母は花屋を営んでいるのだけれど、近所の男の子が、花ではなく「おばちゃんのあんこ」を目当てに訪れてくるレベルに達しているのだそうだ。
 その男の子(小学生)が、トーストにあんこを塗って食しているらしい。

「たくみさんもお食べ」

 そう言って彼女は微笑んだ。
 毅然と断りました。
 ていうか、私が来るとわかっていてじゃあタバスコを買っておく、というくらいに私の味覚をわかった方が、その発言は嫌がらせかと。
 半分砂糖の食べ物なんて、口にしたら気を失ってしまうかもしれません。

「わかってるわよ。言ってみただけ」

 しかし、それ。
 そのタッパーで小学生にあげて、その子、おかわり頂戴とやってくるの?
 200gどころか、倍入るよね。
 その子の肉体が心配です。

 言っておきますが、私は別にあんこが嫌いではありません。
 高校生のときには、本気でたいやき屋になりたいと思っていた。
 まあ、ちょっとテキ屋さんが主役の映画シリーズにかぶれていたせいなんですが。
 あんこに、悪い印象はない。

 しかしまあ、たいやき屋は昨今、きびしいかもしれません。
 ロサンゼルス・タイムズの記事で、月餅が叩かれていましたが、その記事の内容たるや、月餅は一個で800キロカロリー、それに対してマクドナルドのチョコレートサンデーは330キロカロリー。チョコレートサンデー二倍以上のカロリーを三分で摂取させる食べ物を、国中で贈りあっているというのは奇特なことだ、と。

 どうでもいいですが、比較対象に出されたマクドナルドのチョコサンデーって、日本だと237キロカロリーの表記なので、ロサンゼルス・タイムズを売っている国のマクドナルドのチョコサンデーが他国に比べてかなりでっかいということも公平な記事としては触れておいてもいいのではないかと思いましたが。

 なんにせよ、確かに、月餅は高カロリー食です。
 現代では贈られても食べずに、廃棄の山になって社会問題化というのも当然かもしれません。

 ところで、私に自作あんこを勧めた義母は、当然のように月餅が好き。
 でも彼女はやせっぽち。
 花屋さんは肉体労働者ですからね。
 あんこ好きを公言するには、それなりの資質というものが必要なのかもしれない。
 ちなみに私は、ほぼ同じカロリーの月餅一個と、チョコサンデー三杯と、チーズバーガー三個ならば、迷わずチーズバーガーをチョイスです。チーズバーガー二個とチョコサンデー一杯なんていう選択肢もありません。

 そういう理由で、私はあんこを口にしなくなり、嫌いではないけれど、むしろ好きだけれど、ふと気付けば、とんと記憶にないくらい、口にしていない。

 そういうふうになってみれば、なんだか納得できてしまうのが、外国から来た方が、日本のあんこを食べられない率が非常に高いという話。特に、私も大好きなあったかいプロレスの国あたりから来られたひとは、てんでダメなんだとか。

 そりゃねえ。
 あちら、豆が主食みたいなもので、しかもスパイシー。
 お菓子ですって出されて、口に入れたら衝撃でしょう。
 甘い甘い豆。
 羊羹なんて失神ものでしょうね。
 コンビニでパン買って食べたらあんパンだったりしたら、なんだよこの国ってなるのはわかります。
 氷あずきとか、もう別の惑星の食べ物だと判断してもいい。

 そういえば、あずきという豆の名は、

「あ」=「赤い」
「ずき」=「崩れやすい」

 という意味なんですって。
 赤く崩れやすい食べ物。
 そうだったからこそ、この辺りの土地で根強い人気を保っているともいえます。
 調理しやすい……
 すなわち、料理を染めやすい「赤」。
 赤い色が魔除けになるからこそ、祝いの席では赤飯なのだし、秋の実りに、あんこ祭。
 かつて、流れ着いた異形の人種を「鬼」と呼んだ海に面する国々で、独特に育ったあんこという赤い食品が、外国人留学生の大嫌いなスイーツ第一位になるというのは、見ようによってはおもしろい刻の流れの光景ですけれども……

 借金してまで贈っていたその国でさえ、昨年は、前年比半減の月餅生産数だったとか。詳しいニュースを読むと、どうやら会社で従業員に配る月餅が必要なくなった=倒産数の増加、という図式らしいのですが、そりゃあなあ、ばたばた倒産している中で、秋の実りだ月餅だとか言われても、今月の携帯通信費に困っている従業員側は、カロリーなんていらないから現金でよこせってなる。そういう風潮も、月餅離れを加速させているのは想像にかたくない。

 でもねえ。
 カロリー気にしてお祭りでたいやき買わないなんて。
 それって文化として豊かになってんだろうかって感はあります。
 あんこ食べないけれど。
 トーストにも塗らないけれど。
 異人さんが口にして「この豆あまっ! きっしょい国やなあ」って驚愕しない日本なんて、そりゃあつまんないなあとも思う。

 氷に甘い豆のっけて食いますか。
 そのうえに練乳とか。
 しかも氷はディープグリーン。
 冷静に考えたら、きっしょい。
 でも美味しそう。
 あんこ、次の世代にも残っていて欲しいよ。

 そういう意味では、彼女の行為は伝道師のかがみ。
 魔を除け、倒れないカラダを作り、便通もよくなる。
 さあみんなも小豆を茹でて、同量の砂糖を加え、近所の子供に大きなタッパーで配って、あんこのおばちゃんと呼ばれましょう。
 赤く甘い豆を愛する心をこの国からなくすな!!

 私は作らないですし、食べないですけど。
 だからあなたがやってください。

azuki

 そういえば、スーパーでも、めっきり赤飯て売っていないですが。
 初潮で赤い飯を食うという文化も、そうとうに奇異。
 ぜひとも廃れさせず、嫌がる娘に笑顔で炊いてあげて欲しいものです。

「なんでごはん赤いの?」
「あなたに合わせてよ」

 我が文化ながら、赤面します。
 変な国。愛らしいなあ。

azuki

TRACKBACK http://yoshinogi.blog42.fc2.com/tb.php/484-7719cce8