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『トゲペニスふたたび』のこと。




 完全に愚痴なんですけれども。
 毎回のことなので、自分が悪いといえばそうなのですが、原稿が滞っておりまして。それでもまあ、経験上、無理をすれば完成するはずという目論見の上で動いていたのです。

 それが休日出勤とか。

 なんなんすかと出て行ってみれば、同僚の女性が引っ越すことになったという。
 で、数日休みをくれと。

 あれ、これ、ちょっと前に、別のひとで同じパターンを聞いたような。デジャヴュ。あのときは、よくわからない専門外のしかも途中で中断された仕事を片付けるのにものすごく労力を使ったおぼえが。

 え、うそ。
 またあれですか。

 まさにそうでした。

 離婚。

 それも突発性。
 家を出るわ、いま出るわ、な離婚です。
 うーん、今回はそういう印象のないひとなんだけれどなあ。泣いているのは見たことあっても、怒っているのを見たことはない。おだやかなひとなのです。ってまあ、私自身、職場では声を荒げることなんて年に一回あるかないかですが、家では締め切りなんかがあると奇声あげていたりしますから、いっしょに働いているだけではそのひとの半分もわかっちゃいないんでしょうけれども。

 しかしまあ、中学生の娘さんとアパート暮らしを今日からはじめる。その行動力が、彼女のてきぱきした感じと、怒りの深さを物語っているようで、仕方ないなあ、かわりに働いてやりますよ、という気にはなったのでした。

 あとで聞いたところによると、彼女の夫、ぐうの音も出ない状況で出て行かれたそう。
 いわゆる不貞というやつ。
 ああなんか、年に何回そんな話を聞いているのだという感があるくらい、身のまわりに離婚経験者が増えていきます。

 経済紙など読んでいると、よく出てくる話ですが、離婚件数のグラフと、景気動向のグラフを重ねると、驚くくらいにぴったり重なって、しかも、ちょっと景気のほうがあとを追って動くために、離婚件数グラフで景気の先読みができたりもするらしい。

 でも、そういうことだと、離婚の原因は、ほぼすべてが経済的な問題に絡んでこないとおかしい気がするのですが、離婚原因のトップは、毎年不動で変わらず「性格の不一致」なんですよね。肌感覚としても、ときまさに不況が続いておりますから、経済的に深刻な問題はそこかしこに転がっているのですけれど、相方の仕事がなくなったから別れる、みたいな話はまず聞かない。
 恋愛結婚が大半な二十一世紀。
 健やかなるときも病めるときも、という誓いに代表される、ふたりでひとつな意識での結婚をされるかたが多いからだろうと思います。

 だったらなぜ、好不況と離婚件数はリンクするのか。
 単純に、ギスギスするんでしょう。
 相手がどうというよりも、自分がつまんない。
 つまんないのが世が不況なせいだったとしても。
 つまんないからつまんなくないように結婚したのに、なにも変わらないと、人間は過去を忘れる生き物。「結婚してから人生がおもしろくなくなった」という印象に走ってしまうひとも多いのかな。まあ、そういうひとは、ひとりでいてもおもしろくはなれないんですが。おもしろくないから、行動を起こして、やっぱりおもしろくない。
 けっきょく、ずっと退屈なわけで、それは自分のせい。

 宗派によっては、健やかなるときも病めるときも、の続きには、死がふたりをわかつまで愛し慈しみ貞節を守る、ことを誓います。一種のお約束、ルールですね。なにやってもおもしろくなくなってしまったひとは、ルールを破りたがる。十代で煙草を吸いはじめたひとの、ほぼ全員がそれ。別に破ったからといって、これもおもしろくなるわけなんてないのだが、とにかく刺激に飢えているので、やってしまわずにいられない。

 ぶっちゃけ、性的快楽への欲求が激しすぎて我慢できずにことにおよんだ不貞、なんてものが、いかほどもあるものでしょうか。

 ロミオとジュリエットが不朽の名作と呼ばれ、大日本プロレスでまで演じられるのは、だれもが共感するから。彼と彼女は、許されぬからその恋に命まで捧げた。本来、恋とか愛とか、そんなものは、手近な相手を美化するための手法です。ぼくのベイベはあたしのダーリンは世界一、というセリフを世界中のベイベとダーリンが言いあっているのであって、そういう自己催眠がかけられるという状態まで自分を持って行くということこそが恋であり、相手よりも自分。セックスなんて相互オナニーです、って前にも書いた気がしますね。

 醒めなければ幸せに決まっている。

 あらゆる動物は利己的に進化する。

 ヒトゲノムの解読が完了した。
 近縁種のゲノムも次々解読されてきた。
 この最近。

 発生生物学者ジル・ベジェラーノの研究成果を信じるならば。
 かつて、ヒトの男性器には、トゲが生えていた。

 それ自体は、別段、珍しいことでもない。漢方薬の店に行けば、トラのペニスが焼酎漬けになって売っているけれど、あれったらもう、トゲトゲです。格闘ゲームに出てくる蛇腹剣のような代物で、あんなもんでピストンされたら痛いだけなんじゃないの、というところだけれど、実際にネコ科動物の男性器のトゲはそういう進化の果てらしい。
 ひどい話です。
 メスの膣を痛めつけて、強制的に排卵させ、自分のあとにほかのオスとやる気にならないよう、発情を止めるためのトゲなんですって。

(夜中に聞こえるあの声は、赤ん坊の悲鳴か、猫がよがっているのか、なんて言いますが、そういうわけなので、猫もよがっているのではなくて痛くて泣いているのです。排卵の悲鳴です)

 ヒトにもトゲがあったというのも、まだまだ道具を使ったりはできない野生動物に近いころのヒトの話なので、そういうネコ科動物のような目的だったのかもしれない。ほかの男に女を奪われないためのトゲ。しかし、サルとヒトの違いはハーレムを作るか作らないか。つまるところ、ヒトへの進化とは恋の発明。恋だの愛だの言いだしたヒトは、徐々に一夫一婦制へと向かい、それにともなって、男性器のトゲも退化、いや進化なのか、なくなって、つるつるてかてかな卑猥な肉の棒へと変化していく。

 飛ぶ虫の多くは、ネコ科よりもえげつないチンコをしている。
 飛びながら性交するので、単純に、抜けないためのトゲが生えている。そんなときくらいどこかに寝転がればいいじゃないかと思うのだが、もともと、敵から逃れて自由になるために羽根という進化アイテムを装着したわけで、それだけは大前提として外せないファクターになってしまったのだろう。

 飛びながらつながるためのペニス。
 それはもう、痛い。くさび、である。仔細な研究によれば、ある種の羽根持つ昆虫は、セックスすることでメスの体内を傷だらけにしてしまうことが確認されている。

 なんだか、納得のいかない話である。
 進化とは利己的なものであるはずなのに、自分たちが泣き叫んだり、傷つくようにできあがってしまうなんて。

 だが、それは私がヒトだからであって、想像しているのがヒトのまぐわいだからだ。猫はさっきやったセックスをすぐ忘れるし、昆虫はそもそも痛がったりしない。ついた傷は、かさぶたになる。そうなることで、引っかかって抜けなくなりながら、それ以上傷つくことはない強度も得るという。

 進化過渡期のヒトも、たぶん、そういうことになったはず。
 ここから先は、なんの根拠もない、私の憶測である。
 でも、進化は突発的に起こるのでないというのは知られたこと。
 ということは、ちょっとチンコにトゲの残った何世代かがいたはずだ。ネコよろしく、ピストン運動したら醒めてしまうようなチンコでヒトとしての生活を始動させる。その性生活では、傷だらけにもなっただろう。膣には、かさぶたもできたろう。いちどかさぶたになったら、そこは平気になる。平気になるということは相互オナニーをたのしめるということである。

 当たり前だが、チンコが変わるとトゲの位置が変わるので、また痛い。必然的に、ヒトの女性はトゲのあるチンコを持つ男たちと交わるうち、快楽を追求するなら、そうなっていく。

 同じ相手とやったほうが気持ちいい。
 別の男とやると、違うトゲが馴れていない粘膜に刺さるので、たのしめない。

 こうして一夫一婦制は確立した。

 (重ね重ね、私の憶測である。あなたを納得させるだけのレポートを書く気は、今後もない)

 そうなると、卵とニワトリのどっちが神の創造物かという話のごとく。
 トゲペニスによって男と女は鍵と鍵穴の関係になったのだけれど、その関係性が確立してしまえば、トゲそのものがいらなくなってしまうのである。

 オメデトウ、ヒト。
 そこから、つるつるでてかてかで、ぬるぬるでぐちょぐちょな性の営みが謳歌できる生命体へと進化したのだった。
 結果だけ見れば、実に利己的である。

 ……そうしてヒトの進化は完成を見たのです。

 食うに困らない楽園で、裸のアダムとイブはじゃれあって、永遠に仲良く暮らしましたとさ。ああ、良い話じゃないか、それでいいじゃないか。

 どうしてそれで満足できないのか。
 チンコに引っかかりがなくなって幾年月。
 先進国の若年世帯離婚率は50%あたりで浮き沈み。

 考えようによっては、そうなるための進化だったのかもしれない。自由に抜き刺しできるチンコを得たから、相手が変わっても問題なくなったということなのかも。でもだったら、二組に一組が離婚するこのヒト世界で、ここを越えたら、もういちどそれを抑制することが利己的な選択になるのではないだろうか。

 男か、女か、といえば、男の性器のほうがやっぱり変形はたやすい。
 離婚率80%あたりまでいけば、相手に捨てられないための、かつてよりもっと長くて鋭いピストン運動もままならないトゲが、生えてきたっておかしくない。

 虎が、メスの気を削ぐためにトゲを生やし、飛ぶ虫が、飛び続けながら抜けないように、傷つくこともいとわずトゲを生やし。
 進化なんてそんなもん。

 当人たちだけの問題ではない。
 くっついたカップルの大半が別れるという社会では、私のように、一夫一婦制の崩壊を年になんども見て、これちゃんと次の休みはとれるんだろうな、倍書かないとまにあわないな、おれきっと倒れるなこれ、なんて現実的な迷惑を被るヒトだって増えてくる。
 そういうヒトたちは、当人たちより熱心に祈るはず。

 ちょっと神さま、ヒトを戻してくれないか。

 傷ついても離れられないトゲ、生やして。
 膣にかさぶた作って、痛みに馴れて。
 楽園はあきらめるにしても、アダムとイブに還りたい。

 そういう単純な話じゃないのと、私の同僚も言うでしょうし、職場でこんな話はいたしませんが。私は、まわりの迷惑かえりみず、円満な手法もとれず別れてしまったカップルを見たら、これから、心のなかでこう言います。

「ったく。チンコにトゲがもどるぜ」

 WWEあたりでジョン・シナの使う新しいスラングとしてどうでしょうか。お客さんに理解してもらうために、このブログを読んでいただく必要があるのが難点ですけれども。

 Return Thorn Dick!!

 アールティーディっ!!

 さあ、みなさん、ごいっしょに。
 なに別れたりしてんの。
 やってられない。

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