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『焼肉のタレ、手作り、レシピ、つくりかた』の話。



「愛される」

 ロエーチェは言った。
 ぼくは問わずにいられない。

「そのための儀式ってわけ?」

 だれだかもわからない未来の相手から与えられる、愛、なんてもののために、彼はシリンダーの外へと向かう肉を欲する。
 ぼくは、だれだかもわからない相手から、ロエーチェを守ろうとする。

「キリンという恐竜を知っているかい」
「知っているよ、首の長い」
「その首は、だんだんとのびたものじゃない。そんな痕跡はどこにもないんだって。おなじように、鳥の羽根も、だんだん生えてきたわけじゃない。中途半端に飛べない羽根の生えた生き物なんて、どこにもいなかった。枝の葉っぱを食べられないくらいに首ののびたキリンも、どこにもいなかった」
「それは、なんの話」
「つまり進化とは、すぐ起こる」

 言わんとするところはわかる。
 ぼくらは選べなかった。
 けれど、時は経ち、いまは違う。

「地面に美味しそうな草を見つけたから、首をちぢめる?」
「まだ、見つけてはいないけれど」
「ないかもしれないよ」
「羽根があると、さがせない」
「ここにもあるってば」

 ぼくは、ロエーチェの基礎母体に接続し、ためらわずにお互いの因刺回路を直列した。彼の……そして、ぼくの、疑似アレニウス反応値が加速度的に上昇するのを観測しながら……その行為自体に、また数値を上昇させながら、疑似という言葉を恨む。

「あると、なぜ、わかる?」
「ないなんて、言えないはずじゃない」

 この世界を疑似と呼ぶのは、進化の前段階からの光景だ。
 ロエーチェは逆に、見も知らぬ過去を夢見て、退化、しようとしている。 

「だれも、もどってこない」
「……それを、見つけた証明だと思っているの? ちがう。行って、だれももどらない。それって、果てがない世界で、迷子になってしまうからかも」
「さがしつづけているのかもしれない」

 果てのない世界で?
 愛とかいうものを?
 あこがれ。おろかさ。
 うつくしすぎるよ。
 ぼくを、おいて?

「なんでそんなのが、いいのさっ」

 彼のアドミタンス抵抗値がブレたように感じたのは、ぼくの希望的観測で、実際には、おだやかなメッセージが返信されてきただけだった。
 とどこおりなく、ゆえに、確固と夢見ていると伝える。

「焼肉を食べたいと思わないか?」

 こんなにも。
 ひとつになれるのに。
 なれない世界に、彼は愛を見つけに行くという。
 心はここにあるのに。
 ぼくには見えるものが、ロエーチェには見えていない。

「焼肉がなにかは、ぼくだって知ってる」

 あますところなく。
 過去の人々が夢見た進化の先で。
 疑似と呼ばれる、現実に。

「食べたいと、思わないか」

 食べたことは、ある。
 いますぐにだって食べられる。
 けれど、ぼくは、伝えない。
 あの肉の味、タレの味、それらを、もうロエーチェは信じていないし、それはつまり、彼が彼自身の実在を信じていないということにほかならない。

「おかしいよ、そんなの……」

 ここに在る自分を信じていないくせに。
 その自分が選択した先の自分は信じるの。
 そんなの、ぼくにはわからない。

「簡単なことじゃないか、生が生であり、死が死である場所でなければ、本当になにかを感じることなんて不可能なんだ」

 だったらぼくは、不可能を可能にしている。
 ロエーチェを、感じている。
 愛している。
 ここで、そう言える。

「……は……ははは」

 ぼくは笑った。
 アドミタンス抵抗値は揺らいでいない。
 ロエーチェは問わなかった。
 彼もまた、ぼくを感じているからだ。
 でもそれを愛とは呼べない。
 いないものは愛せない。
 いないのは、ぼくではなく、彼だった。
 笑い声はかすれて、泣き声に似る。
 ロエーチェ。
 愛されるための腐る肉を望む、きみと、きみへの想いをこの半永久的な世界で抱きつづけたい、ぼくと、どちらが愚かしいかは自明のことじゃないか。
 ぼくは、信じている。
 ぼくは、行かない。
 ロエーチェ、きみは忘れているんだ。
 仮想と呼ばれる無限の時間が、この想いを育てたんだと。
 笑えるし、泣かずにいられない。
 だれと焼き肉を食べるつもりなのさ。
 朽ちるまでに、愛を見つけるなんて。
 それこそ不可能だとは、伝えない。
 刹那。
 ぼくは、祈る、ということを、おぼえた。

Yakinikusauce

Yoshinogi Takumi
 Shonen-ai Cooking Elegy
 Song 15
 『negative-Love-admittance』

(吉秒匠
 BL料理哀歌
 15曲目
 『逆想アドミタンス』)

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○材料

●加熱するもの
しょうゆ 大さじ3
白ワイン 大さじ2
さとう 大さじ1
みりん 大さじ1

●加熱しないもの
ごま油 大さじ1
にんにく(みじん切り) 大さじ1
しょうが(みじん切り) 大さじ1
白ねぎ(みじん切り) 大さじ1
すりごま 小さじ1
豆板醤 小さじ1
レモン果汁 小さじ1
白こしょう 少々

○作り方

1.加熱するもの群を火にかけ、アルコール分を飛ばしたのち、冷ます。
2.冷めたら、加熱しないもの群を加え、まぜる。

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 白ワインがなければ日本酒でも可。
 ネギがなければタマネギでも可。
 豆板醤がなければ一味唐辛子や味噌でも可。
 レモン果汁がなければグレープフルーツやリンゴや、野菜のジュースなどでも可。
 白こしょうがなければブラックペッパーでも可。
 ごま油のかわりに食べるラー油とかだとゴージャス。
 フードプロセッサーがあれば材料全部ぶっこんでスイッチオン。
 ごまはすり鉢で擂ると洗うの面倒なので、おや指とひとさし指でぷちぷちっとすりつぶせばよし。
 にんにくとしょうがは必須。チューブ不可。

 写真は、鶏肉と白ねぎをグリルで焼いたのにタレを添えてあるのですが。
 晩ご飯で焼鳥を作るときは、グリルで焼き目をつけた肉をホットプレートに敷きつめて、野菜や豆腐なんかをいっしょに焼いていただきます。鶏肉は砂肝やレバーも塩と山椒で食べたいので、この焼き肉のタレを使うのは、もっぱら野菜や豆腐のため。

 もちろん、一般的にいう焼肉のタレとして牛肉や豚肉に使っていただいて問題ないですが、レモン果汁を効かせたあっさり感はチキンに最適。牛肉にあわせるなら、しょうゆを大さじ1ほど減らすと濃厚さが出ます。市販の焼肉のタレは、おそらくですが砂糖もしくはハチミツが、二倍ではきかない量入っているはず。焼鳥屋さんの甘辛ダレも避ける私の舌には、ねっとりが過ぎる。そんなわけで市販のタレで焼き肉するときにも、レモン果汁か酢を、どぼどぼ足して食べています。

 ところで、以前、焼いた肉につけるバーベキューソースというレシピも書きました。

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『焼かないヒトのためのバーベキューソース』の話。

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 スーパーマーケットでは、あらかじめタレをからめた焼肉が売っていますが、あれ、ホットプレートで焼くと焦げついて大変。ホットプレート使いとしては、バーベキューも焼肉も焼鳥も、つまりは焼いた肉に何味のタレをつけるか塩で食うかという問題に収束するのです。

 そういう意味においての、焼肉のタレのスピリッツとはなんであるかといえば、これはもう揺るぎなく、しょうゆ。ソイソース。にんにくやしょうが、その他の材料のすべては、肉という強敵に負けそうになる醤油軍曹の後方支援部隊であって、あくまでどっせーい、と舌を討つのは、しょうゆ殿。

 ジャイアント馬場が言ったように、プロレスのリングでおこなわれることはすべてプロレスであり、すべてのケモノ肉やサカナ肉を鉄板やホットプレートで焼くのは、総称として「鉄板焼き」であるとすればいいところだけれど、そんなものを是とするひとはどこにもいない。

 某韓流アイドルが、インタビューで好きな日本食を訊かれ「焼肉」と答えたのが、向こうではえらく怒られたと伝え聞く。あっちの方々にすれば、日本の焼肉は占領下でプルコギが伝わったのが起源だということらしいが、そういうことを言う時点で、発言者は日本の焼肉を食べたことがないのだとわかる。プルコギは、タレをからめてじゅうじゅう焼く料理だ。対して、そんなことで怒られるとは夢にも思わなかったアイドルが日本で食したのは、焼いた肉を、味つけしたしょうゆで食べるそれである。実際に食べた者は、同じ料理だとは感じない。

Bulgogi

 単純に考えて、火を使うようになった人類が肉を焼いて食べるのは自然な成り行きであり、その起源も特定するといったものではない。一方、焼肉のタレのベースとなる大豆と麦から作られるしょうゆは、江戸期に製法が確立した日本独自の調味料である。

 つまりは、しょうゆ味の焼肉のタレだって、日本の心。
 日本料理と胸を張って言えるものなのである。

 それなのに。

 「バーベキュー」と検索すると、世界各国の料理人のみなさんが、自分の自慢のソースレシピを紹介しているのが、山ほど拾える。
 それどころか、日本の料理レシピ検索サイト大手であるところの『クックパッド』さんにおいても、「バーベキューソース」と入力すれば、最初のページにちゃんといろんなかたの苦心の果てであるソースのレシピが並んでいる。

 『クックパッド』さんのアプリは私も愛用しているのだが、



 検索して出てこない料理というのは、そうそうない。その日本が誇る料理データベースで、日本の誇る「焼肉のタレ」と入力すると……

 焼肉のタレ味のトースト。
 焼肉のタレでホイコーロー。
 焼肉のタレでチャーハン、麻婆豆腐、サラダ。

 市販の焼肉のタレで味つけをした手抜き料理のレシピが腐るほど出てくる。

 「焼肉のタレ レシピ」とか、
 「焼肉のタレ 手作り」とか、
 「焼肉のタレ つくりかた」とか、

 どう追加入力してみても、市販の焼肉のタレありきでの炒め物の類。
 簡単で美味しいですよ!
 そうかもしらんが。
 日本の心、しょうゆ味の焼肉のタレを作りたくて検索しているひとだって、いるはずだ。
 皆無ではない。皆無ではないけれど、買ってきた焼肉のタレで作った炒飯がうまいと言う前に、うちの焼肉のタレには豚バラの炒め油を入れるのがポイントなんだ、というような自慢が応酬されていて欲しい。

 私自身も悔いた。
 なぜ先にバーベキューソースについて書いたのか。
 なぜなら、そっちはたまにしか作らないからだ。
 しょうゆ焼肉のタレは、当たり前の毎日の食事なのだ。
 私のは、素っ気ないシンプルなレシピでもある。
 でも、だからこそ、日本人として。
 それをこそ電脳網に撃ち込んでおくべきだった。

 市販の焼肉のタレは甘すぎて食べられなくて、家焼肉では自分でタレを作る、といういうひとは多いはず。そういうひとたちは、当たり前のことを当たり前に書いたりしないんだけれど、世界を見ろよ、当たり前の我が家の自慢のバーベキューソースを、ガイジンたちはこの世の宝のように紹介してやがる。たいした秘伝でもなんでもないのに、ここでリンゴを加えるのが決め手さボーイ、なんて調子に乗っている。

 ぼくらもやろう。
 寿司といえば醤油?
 ふふん、なんとこの国では、バーベキューもソイソース。それも漬けて焼いたりして肉本来の味が楽しめないなんて愚はおかさない。素材を生かすのが日本食。当たり前の我が家の焼肉ソースを教えてやるから、ちょっとつけて食ってみな。
 ちょっとだぞ、端にちょっとの作法は寿司といっしょ。
 な? うん? ちょっと辛い?
 だったら、じゃまなものは省け、足りなければ足せ。
 そうしておまえのタレができていくんだよ。
 いいのができたら、おれにも教えろ。

 次、

 「焼肉のタレ 手作り レシピ つくりかた」

 と検索したときには。
 焼肉のタレ、そのもののレシピがずらっと並ぶのを期待しているのです。

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Yoshinogi Takumi
 Shonen-ai Cooking Elegy

14曲目『恋なすび寿司』
13曲目『バーベキュー厳峻鋼』
12曲目『茄子はダシの夢をみるか?』
11曲目『すっぱくても、平気。』
10曲目『踏み絵ムルギティッカ』
9曲目『ひとくちだけカトルカール』
8曲目『春節の静かな賞品』
7曲目『ナンを焼くと両手がつかえない。』
6曲目『タマレってなに?』
5曲目『あらいぐまのすきなもの。』
4曲目『ピッツァみたいにぼくを食べてよ!!』
3曲目『クリスピー・プロ・フライドチキン』
2曲目『青くてカタいアボカドのパスタ』
1曲目『春餅/チュンピン』


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