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『飯野賢治の死』のこと。


 飯野賢治さんが亡くなった。
 私はそのひとのことを好きだった。

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『飛の字とDの食卓2』のこと。

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 ブログも、ツイッターも読んでいた。
 喪主の、妻、飯野由香さんがゲーム雑誌で書いておられた連載も読んでいた。

 上の記事で触れている、Wiiで出たゲームはプレイしていない。
 Wiiを買っていないので。

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『きみとぼくと立体。』公式サイト

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 『newtonica』のシリーズはプレイした。
 いや、いまもプレイしている。

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 小説デビュー作も読んだ。

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 飯野賢治、と名の入った本が、御本人が書かれたもの、彼について書かれたものなど、棚の一段を埋める量で、目の前にある。ほとんどは、ずいぶんと前のものになってしまったが、手をのばせば取れるところに並んでいるということは、私が、ときどき、それらに目を通すことがあるということ。

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 誉められたいんですよ、正直いうと。自分が認められたい。人間、認められる方に行くんですよ。結婚している主婦がいて、新しい男の方に行ったりするじゃない。なぜかっていうと、そっちの方に大事にされていたりするから。会社で引き抜きされたりするじゃないですか。本当は給料とかの条件もあるかも知れないけど、「君のグラフィックはすごいよ」とか言われると、元いた会社では誰も誉めてくれなかったから俺が必要なら行ってみようかなって思うじゃない。そういうのって、誰だって一緒なんじゃないかなって。つまんないことなんだけどさ。


中田宏之/レッカ社 編
『ゲームを変えた男・飯野賢治―E0事件の真相』

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 つまんないことなんだけど。
 私はいままさに今年も、十数年にわたって一円にもならないが数千枚を書いた某誌へ向けての原稿を、また数百枚書いているところで、なぜこれがやめられないかといえば、その雑誌が私の小説を最初に誉めてくれたからである。
 それだけで、人生は決まってしまう。

 飯野賢治がいなければ、私はいまXboxユーザーではないと思う。
 彼が、誉めてくれないプレイステーションを蹴って、セガサターンで『エネミー・ゼロ』を作ると表明して、そこからの彼のゲームを追いかけて、200万本売れるRPGは実現しなかったけれど、セーブできないゲームとか、画のないゲームとか、そういうのを、プレイして。

 我が家のリビングには、何枚かの映画ポスターと並んで、ゲーム『L.0.L. Lack of Love』のポスターが貼ってある。坂本龍一と西健一が生み出したゲームで、私がそれに触れたのは、そのふたりと親交の深い、飯野賢治がいたから。



 ポスターが気に入っているからいまも貼ってあるのではなく、忘れてはいけないものを、忘れないように貼ってある。
 
 そういうところに連れていってくれたのは、彼でした。
 おおげさでなく、私は、飯野賢治のゲームが好きという以上に、そのひとがいなければ、いまの自分のかなり大事な一部分が形成されなかっただろうことを確信している。

 ……それにしても。
 高血圧性心不全。
 由香さんと息子さんのことが、心配。
 数年前にブログで倒れて入院したことを書いていて、その後、倒れた理由と御本人が書いていた体重を管理して実際に痩せて、それでも。

 私の義妹の兄が、三十代の体育教師でありながら、冬の風呂場で同じように亡くなった。同じように、ひとり息子と妻を遺して。葬式では、息子はまだ幼くて、なにが起きたのか、理解できていなかった。いまは理解している。
 飯野家の息子さんは、もう少し大きい。
 けれど、由香さんを支えるほどにではなく。
 いま、ひどい、つらい、ことだと思う。

 私にとっては、モニタの向こうのかた、だけれど。
 いろいろ教えていただいた。
 見せてくれた。触れさせてくれた。
 そのひとが、そのひとの人生をたのしんで生きる様子が、支えになった。
 かっこよかった。
 った?
 ううん。
 これからも、の、はずだったのに。

 ああ。
 なんてことだ。

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 坂元裕二さんが飯野賢治企画監督作品『風のリグレット』の脚本をアップしてくださっています。

『風のリグレット』

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 上でも書いた、画のない、音だけのゲームでした。
 ゲームをしているのに、画面は真っ黒で、でもコントローラーを握っていて、ゲームをプレイしている。不思議な体験で。

 ゲームという囲いそのものを無意味にするんだという姿勢と、それをちゃんとパッケージにして発売してしまった行動力。それらは、ミクスドメディアの画家と呼ばれるフランク・ステラの模倣から絵を描き、ミクスドジャンルの王と呼ばれるディーン・クーンツにあこがれて小説を書きはじめた私にとって、すごいすごいと拍手喝采する出来事だった。

 できれば、ゲームでプレイしてほしいけれど。
 脚本だけでも、ぜひ読んで。
 内容もさることながら。
 まだXboxもWiiも発表前だった、セガとソニーがゲーム機戦争だと世界で報じられていた時期に、これをゲームだと呼んで発売するのって。
 どうよ。

 同じ時代、同じ国に生きられたこと。
 誇ります。

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