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『粋な勃起』の話。


・引っ越してはじめての選挙。ノンレム睡眠学習効果で公示初日にして各候補者のフルネームを記憶。さすが駅前…うるせえ。 

twitter / Yoshinogi

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 骨太な政党が好きです。
 けれど、駅前に引っ越して、この一週間で、いくつかの名だたる政党の候補に投票しないことを決めました。朝八時から街頭演説していいんですね、そのあたりのルールをよくは知らないけれど、決まってその時間なので、きっとそうなのでしょう。

 休みが二日あった。
 家にいた。熟睡していた。
 どっちも硬派な政党に起こされた。なぜメガホンを使う? いわゆる無党派層を狙うみなさんは、何時から駅前で、というウグイス嬢を走らせておいて、集まった聴衆にそれなりの音量で話しているのですが。硬派なみなさんは、街宣車で乗りつけてメガホンでがなる。メガですよ。メガホーン。あれは武器。

 集まってくれないから?
 聞いてくれないから?
 だから数百メートル離れた鉄筋住宅のなかでテレビ観ている人間にだって一言一句聞き違えようもないほどのメガホーンで攻撃するのでしょうか。それで心動かされるひとはいるのか? 伝統なのかも知れないけれど、少なくとも、私は大幻滅。

 駅前にはヒトが多い。

 ちゃんと話せば、聞くひとだって絶対いる。でも、名前は有名でも長年にわたる少数派でいらっしゃる彼らは、通りがかるヒト、みんなに聞かせたいのです。しかしねあなた、ストリートミュージシャンだって、あんなメガな音量で歌ったら五分で警察に止められるはず。それが彼ら、のきなみ三十分はしゃべる。
 「最後に」と口にしてからの話が長いのも共通している。

 プロレスには五秒ルールというものがあります。
 私の大好きな団体がいまスポーツ紙を賑わせていて、数年前から「とまってしまう」ことについて語りはじめていた、あの小橋建太も、重大なことをあしたの大会で発表するという。

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『テレビ大阪・ノアぷ~』の話。

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プロレスリング・ノア公式サイト

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 私はニュースもSNSも見ないようにしながら家に帰り、日テレG+さんの生中継を録画したのを観ながら、第五試合のあと、泣いているのか笑っているのか。その大会に、太陽ケアや小島聡も参戦しているというのも、いまから複雑な想いを胸に浮かばせてしまう。

 なんにせよ、小橋はもういちどチョップを打つ話をするはずだ。

 骨太な豪腕、小橋のチョップは、相手の胸だけでなく、喉を打つ。
 プロレスリングのルールでは、喉への攻撃は反則。
 でも、彼を卑怯者とののしる者はいない。
 なぜならプロレスには、五秒までならば反則攻撃が許されるというルールもあって、まったくもって小橋のチョップは反則でないどころか、五秒も許されるのに、一発、すなわちコンマ数秒で留めることも多いのだから。
 これを観客は、紳士的と取る。

 目、喉、急所を攻撃してはいけない。
 でも、五秒まではなにも禁止されない。

 矛盾しているようだけれど……確かにルール的に矛盾はしているのだけれど……このあいまいさこそが、プロレスがエンターテインメントスポーツと呼ばれるゆえんである。
 そこには、明文化せずとも、演じる側も、観る側も、察しているものがある。
 否。
 なければならないのである。

 「粋」

 そう呼んでいいだろう。
 わざと着衣作法を破って着くずす者を指して、粋なヒトだねえ、と賞賛するそれである。ルールを破ればだれもが、ではない。だらしない者は誉められない。粋とはすなわち、明文化できない、そこを、どのように見事に泳ぎ切るかという技量のこと。

 五秒まで反則は許される。
 けれど、観られる彼らは粋でなければならないので、五秒ぜんぶ使って木刀でめった打ちにするとか、急所を蹴り続けるとか、そういうことはしない。
 観客の支持が必要なのだからあたりまえ?
 だが、学生プロレスから底辺のインディー団体まで、世界中にあまたあるプロレス団体で、百年にわたり暗黙の「粋」が守られているのは、すごいことだ。少なくとも私は、リング上に向かって「本気でケンカはじめんなよみっともない」と叫んだことはない。

 だが、今週は。
 布団のなかから、私は叫んだ。

「八時からはじめられるんだとしてもっ!!」

 反則でなければ許されるのか?
 愛の歌を歌うストリートミュージシャンだって袋だたきにあいかねないボリュームで、この国のルールがどうだとか絶叫している奴がいるのに、期間内時間内だから警察は介入しないし、私も殴りに行ってはいけないなんて!?

 粋ではない。
 名前はおぼえた。
 彼らを落とすために選挙に行く。
 引っ越したおかげで投票所も目の前だ。なんなら裸にコートを羽織って行けちゃうくらいの距離だ(私は一年中裸で寝ているので、新聞を取りに玄関先に出たりするとき、掛けてあったコートを着て下は裸ということは、ままある)。ルール内だから聞きたくない者にまで聞かせていいなんていう精神の持ち主が、戦車と戦闘機を保有する国の政治を動かすなどあってはならん。007は、殺しのライセンスを有しているからこそ、だれよりも紳士的な人物でなければならない。

 こうして無党派層は決意するのだということを……

 なぜに歴史ある団体の彼らが気づかないんだろうか。
 観客のよろこぶことをしないと、ダメでしょう。

 ところで先日、イスラエルでこういう実験がおこなわれた。

①なにも知らせず眠ってもらった彼女の鼻に良い香りを嗅がせ、同時に音Aを鳴らす。
②おなじ彼女(依然睡眠中)にひどい臭いを嗅がせ、同時に音Bを鳴らす。
③くりかえす。

 いわゆるパブロフの犬の実験なので、できれば良い香りというのを彼女の大好物なドーナツの香りにでもして、音Aを聴いたらヨダレを垂らすかどうか検証してもらいたかったが、実験レポートには使用した香りがどういうものかは書いていない。

 とにかく。
 ここで重要なのは、彼女は眠っている犬だということ。
 起きているパブロフ十二世が香りと音の関係について学習するのはいまや常識であるけれど、もしもパブロフ十二世が眠っていたらどうなのか。

 結果。
 彼女は、眠ったまま、音Aを聴いただけで呼吸を深くし、眠ったまま、音Bを聴いたら呼吸を浅くすることをおぼえた。

 のみならず。
 この先が、イスラエル発のパブロフ実験再検証レポートが世界中で報道された理由の部分であるのだが……

 目を覚まし、時間が経ち、彼女に、音Aを聴かせたとき。
 やっぱり彼女は深呼吸をした。

 五十人あまりで実験し、確証が得られた。
 ヒトは眠っているあいだに学習できる。

 ……ふうん。
 という結果では、ある。
 まわりくどいことをしているが、たとえばあなたの隣で眠る彼のほっぺたにキスしたあと、彼の逆のほっぺたを目を覚まさない程度にビンタする。これを一週間ほど続ければ、たぶん彼は眠りながら左の頬にキスを感じた瞬間に右の頬をガードするモーションに入り、全身の筋肉を緊張させるはず。実験しなくても、たぶんそういうことになるだろうと想像はできる。

 そして彼は、目を開けているいつでもどこでも、あなたにほっぺたにキスされると、身構えるようになる。
 五十人で実験したから間違いない。

 ということは、逆に。
 殴ったあとでキスを与えれば。
 いつしか彼は殴られるたびにデレるようになる。

 のだろうか。
 試してみたい気はする。

 ……どうも話がずれた。
 イスラエルの実験。
 その副産物として、これも興味深いデータがとれていた。

 睡眠学習効果は、あきらかにノンレム睡眠時に高い。

 これは少し、私には意外な結果だった。
 ノンレム睡眠とは、霊長類などに特有の高度な睡眠方法である。
 名前からしてレム睡眠とノンレム睡眠がセットで睡眠のような印象を受けるけれど、そのふたつの発達は別の目的にもとづいている。

 レム睡眠は、カラダを休めるための睡眠。
 自分の住処で、筋肉を弛緩させ、でも脳は休みきってはいなくて、夢を見る。記憶を整理する。いろいろなことを考えてはいるけれど、カラダは徹底して動かない。

 一方。

 ノンレム睡眠は。
 脳を冷やすための睡眠。
 小さな死である。

 野生では小さく死ぬことも難しい。カロリー消費を抑えるためにレム睡眠をくり返し、脳は絶えず古い情報を捨て新しい情報を蓄積する。

 だから、漠然とだが、レム睡眠時にヘッドフォンなどで情報を送ってやれば寝たままで記憶できる……睡眠学習法というものが現実に存在するならば、そうであろうと私は考えていたのだ。

 でも。

 現実には、ノンレム睡眠。
 大脳皮質をクールダウンさせるための、小さな死の谷に墜ちているあいだにこそ、睡眠学習がぐんぐん進むなんて。

 ……どういうことだろう。
 考えられるのは、実験が呼吸の浅さ深さという、肉体反応を基準にしている点からして。レム睡眠とノンレム睡眠が、思っているよりも、もっと、もっと、別々のものなのではないかということ。

 頭はものを考えているが、カラダは死んでいるレム睡眠。
 ノンレム睡眠は、さらに頭も死んでいる……

 のではなく。
 ノンレム睡眠時には、逆にカラダは起きているのでは?
 レム睡眠時に、脳からの指令がカラダに届かないのは、見ている夢の通りにカラダが動いたりすれば、筋肉に休む間などなくなってしまい、レム睡眠そもそものカロリーの抑制という目的に反するからである。
 しかし、ノンレム睡眠時は。
 脳が死んでいるのだ。
 カラダのスイッチを切る必要はない。
 あえて切らずとも、命令が発せられないのだから。

 俗に、レム睡眠が浅い眠りで、ノンレム睡眠が深い眠りと表されるが、人間も動物である以上、ノンレム睡眠時でも情報は受け付けて、危機が迫れば覚醒する。一説によれば、浅いノンレム睡眠時のほうが、深いレム睡眠時よりも目が覚めやすいとさえ聞く。

 だとすれば。
 スイッチの切れていないカラダが、危機的悪臭を嗅ぐ。
 遠くから音が聴こえる。音Bが。
 脳は死んでいる。
 けれどその情報は無視できない。
 ゆえにカラダがおぼえる……

 そういうことなのかもしれない。
 ならば、くだんの実験結果は、だれもが期待する、睡眠学習でヘブライ語の単語を記憶する、というような成果に結びつけるのは、難しいのだと信じたい。

 そうでなければ、この場所で、今後も選挙のたびに眠る私の脳にインプットされるのは、朝からメガホーンでがなってもいいと考える粋ではない人たちの理想の国家像ばかりになるのであって、数年後には、私の思想はひどく極端なことになってしまうに違いない。知らないあいだに、右の頬にキスされたら、機関銃を手に徴兵志願するような人間になってしまわないとも言い切れない。

 イスラエル語も極な政策も睡眠学習できないが、肉体反応だけが記憶できる。

 それは残念だが、同時に良かった、という長い話でした。
 ご静聴感謝いたします。

 最後に。

 レム睡眠時にカラダは死んでいると書いたけれど。
 男性の下半身の海綿体は、その時間を使用してメンテナンスをかけているというレポートを先日、読んだ。言い換えれば、レム睡眠が訪れるたびに健康な男性は勃起する。もういちど書く。勃起する。いわゆる「朝勃ち」は、目覚める直前の最後のレム睡眠時勃起であって、それらは尿意とも性欲とも無関係。機械的な調整作業だ。裸に剥いた彼を一晩中観察していれば、約90分ごとに訪れるレム睡眠のたびに硬くそそり立つものが見られるはずである。

 ……な?
 長い話の「最後に」と言われてさらに話されることって、だからなに? ってつっこみたくなるでしょう?
 このタイミングがカチンときて完全覚醒してしまうのですよ。
 話は短いほうがいいんだよ。
 そして単純なほうがいい。

 つまり。
 粋に語れ。
 ひと晩に五回は勃起をくり返す。
 そういう話。
 おしまい。

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