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『iPhone、iPod touchで自炊PDFを読む』のこと。


 たとえば鳴かず飛ばずのボクサーが、同じ階級で良い試合を戦ったという選手の戦いっぷりを撮ったビデオを手に入れて、ディスクに焼き、寝ても醒めても見つづけて、もはや試合展開がひとつの音楽として記憶され、画面のなかの選手が右フックを出すのと同時に「ここで、こうっ」と自分も同じパンチを出せるようになったとき。

 それは確かに一種の音楽で、どうもテンションのノらないときにも、見れば覇気が満ちあふれるというまでになったそのビデオを、彼が携帯端末用の動画に変換し、肌身離さず持ち歩くようになったとしても、なんの不思議もない。

 もともとは、なにかが盗めれば、あまつさえ、近い将来に直接対決になればどう攻略するか、そういう視点で見ていたはずのビデオなのだけれど、彼にとっての音楽となったそれを、まったくビデオに映った選手とは関係ない試合の前に見ている自分に気づく。

「いってくるよ」

 携帯端末の小さな画面のなかから、いつも通りのパフォーマンスで気合いを入れてくれた相手に声をかけ、彼はリングへ向かう。
 そうして、ひさしぶりの勝利を手にした。

 やがて、彼は、実際にビデオの選手と対峙する。
 知り抜いたクセ、聞き慣れた足音。
 気合いが満ちる。
 だが同時に、彼は、彼を、すでに愛しているのではないかと疑う。少なくとも、彼の過去の作品たるあの試合は、彼にとって肌身離さぬ聖書であり、ドラッグであり、血肉。

「おれは、あんたを知ってる」

 ささやかれた彼には意味がわからない。
 しかしそれは、まぎれもなく。
 告白だった。

 ……というような(笑)。
 そういうことが、近ごろでは、あるんじゃないかなと。そのむかし、カセットテープがすりきれるほど聴いた彼のギターを、はじめて生で聴いたときに、勃起して射精して、男が男に惚れるということを身をもって知ったということを遠い目をして語るおっさんに遭ったことがありますが、最近では動画を持ち歩いている人も多いから、スポーツ選手なんかだと、倒すべき相手のビデオを見つめすぎて見えないものまで見えてくる、という展開は、現実にありそうです。

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・最寄り駅のすぐそばにローソンがあって、ipodユーザーだからLAWSON Wi-Fiは開始以来とても重宝しているのですが。平沢唯、店出て電車に乗ってもついてきて、車内でわめいてた。 http://eng.mg/fb004

・というわけで今夜は平沢唯をホームにたたずませて電車待ち。 http://bit.ly/Othzm9


twitter / Yoshinogi

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 ところで私は、小説を書く。
 そんなわけで、ボクサーよりも他人の試合は持ち歩きやすい。

 iPod touchはやっとローソンのおかげで駅でもネットにつながるようになったけれど、Wi-Fiがなければオフラインの端末。
 それを電車でなにに使っているかといえば、読書。
 ダウンロードしたものではない。
 どうしても持ち歩きたくて、自分でそういう形にまとめたものを。

 世に言う自炊というのとはまた違う。いや、紙媒体のデータをスキャンしてデジタル化し持ち歩くというところはその通りなのだが、私の場合「どこかでだれかが良い試合をしたらしい」という、その試合は、たいてい、分厚い雑誌のなかなのである。本になっているなら、それを読みたい。しかし、やすやすと文庫化されはしない新人の試合がほとんどで、しかも一般男性が電車で読んだりするのは、はばかられるイラスト満載のジャンルが主なところに私は棲んでいるわけで。小説は紙で読みたいが、雑誌を持ち歩くわけにはいかない。やむなくデータ化しているというところである。

 携帯電話の液晶が大きくなっても、やっぱり読みやすいのでノートパソコンに溜め込んだりしていた。iPodを使いはじめてからも、それは変わらなかった。

 だがしかし。
 iPod touchを第四世代に乗りかえてから、ふと気づいたのである。この解像度なら、ノートパソコンに入れてるの、そのまま持ってきても充分に読めるんじゃないの?

 iPod touchもiPhoneも第四世代から画面解像度は960×640。Ratinaディスプレイと名付けられていて、この秋に出るはずのiPhone第五世代でもサイズが少し縦長になるが同様のパネルが使われるんだけれど日本のシャープの工場で作っているのがちっとも追いついていなくてちゃんと発売できんのかコラ、みたいなことになっていると聞く(正確にはドットの数は同じでも、iPod touchとiPhoneのRatinaは別物。iPhoneのほうがIPS液晶というゴージャスなの使ってる)。

 多くのPC向けサイト管理者は、画面の横幅を1000ピクセル越えないあたりで設定して作っている(余談だが拙サイト『とかげの月』は、コンテンツは中央配置でモバイルでも切れないようにはしているが、大画面でも背景が途切れないように横幅2000ピクセル近くある。それは、セガのゲーム機ドリームキャストから生まれたサイトである誇り。モバイルも無視はできないが、お茶の間テレビでインターネットこそがぼくらの夢だったので、テレビの大画面化にも追いついていきたいのだ)。つまりは、情報を読むのに960ピクセルもあれば、だいたい大丈夫ということ。

 それにしても、8センチ×5センチの画面に、960×640もの点々が描かれているパネルって。それを星の数ほど作り、そのどれもにひとつもホコリが入ったりはしない工場って。シャープさんはすごいことをやっているので、少し納期が遅れるくらいは許してやってほしい。

 ともあれ、思いついたので、さっそくデータを移してみた。
 なにこれ、当たり前に読める。

 という自炊生活のはじまりと、とても使いやすい無料アプリの登場によって、この一年くらいで私の電車通勤は、酔える試合を持ち歩くボクサーのようなことになっている。読みにくいBL雑誌もスキャンして。自分の原稿の推敲もiPodに放りこんで。なによりも、すばらしい選手の演じた良い試合、良い舞台である作品を、読みこみまくって、もともとは、なにかが盗めれば、あまつさえ、近い将来に直接対決になればどう攻略するか、そういう視点で読んでいたものが、私にとっての音楽になるまで。

 というわけで。
 けっこうこなれてきたPDF生活の、いま現在、私が使っているソフトやら、その設定値とか。おもにA5版の分厚い小説誌を自炊して持ち歩くための作法。
 愛をはぐくめ!

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○スキャナ

 私のスキャナは、年代物のエプソン。
(発売から十年経ってるよ……そりゃガラスも汚れるわ)
 現行機種なら、このあたりの。

GT-F730

 小説雑誌のスキャンだけなら解像度いらないけれど、スキャナー持っていれば、私もだけれど、やるつもりもなかった写真の焼き増しなんかで重宝する場面もあったりするし、これくらいの機種を持っていて損はないのではないかと思われる。

 むろん、雑誌一冊丸ごと自炊するとか、そういう使い方を想定するなら、積み重ねた原紙を自動で読み続けてくれる機種が良いのでしょうが……私は、本をバラすという行為がどうしても許容できない。読み捨てられる雑誌の類であったとしても、本は本の形のままで私の目の前にあってほしい。なので、自炊のために新しいスキャナを導入するとか、考えたこともありません。

 で、エプソン機の付属ソフトの設定がいまも私の使っているのと同じかどうかはわかりませんが。

●EPSON Scan設定

原稿種「雑誌」
イメージタイプ「カラー」
出力設定「その他」で200dpi
出力サイズ「等倍」
画質調整「モアレ除去」
明るさ調整「明るさ+20」 

上記設定でスキャンして。

ファイル形式「PDF1ページ(*.PDF)
品質「48(中間)」

 で、ファイル保存。

 もっと低い数値の設定でも もとの雑誌の紙質によっては快適に読めないことはないですが、そんな鬼のようにデータ圧縮する必要性も感じないので、このあたりで(もちろん、高画質であればあるほど読みやすいに決まっていますので、容量とスキャンの速度を気にしないならば、最上質で行っちゃってください)。

 何枚もの見開きPDFファイルが用意できたところで、フリーソフトを使って、一個のファイルに統合してしまいます。

○PDF加工ソフト

 こやつで落ちつきました。
 結合のみで使っているのですが、シンプルでよい。
 
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『窓の杜 - PDF Split and Merge』

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●『PDF Split and Merge』の使い方。

起動します。
左の「マージ/抽出」を選択。
右上の「追加」を選択。
出力先ファイルを指定して、
(作者と作品名を明記しておくのがよい)
右下の「RUN」で結合。

 これだけ。
 そうしてできたPDFファイルを、
 アプリ経由でiPhone、iPod touchへと表示します。 

○PDF閲覧ソフト

 このアプリに出逢ってから、ほかのなんて考えられない。



『辰巳システム / SideBooks』

 開発者さん的には、ページをめくる質感や、本棚ビジュアルなんかの生々しい読書感覚がウリみたいなんですけれど、一ページに段組の雑誌スキャンが主で、ファイルは今日電車で読むぶんを入れて読み終わったら端末からは消す、という使い方なため、私はこのアプリのウリの部分をまったく体感していません。
 しかし、イイ!
 ウリの部分以外は極力シンプルにという開発方針であるのでしょう。原稿用紙で二百とか三百とかの長編スキャンでも、最初から最後までがするする動いて、慣れるとページをめくる動作がないぶん、あ、ちょっと前を読みかえして確認、みたいな動作が考えるよりも先に画面では起こるようになる。
 快適至極。
 いやこれ無料って、なに? 神?
 本気で、ありがとうございますと床に額をすりつけてお礼が言いたい。
 おおげさでなく、私の一生のなかでも、ひとつの転換点でした。それまでも、どうしても時間がなくてデータ化した小説を読む、ということはあったけれど、このアプリによる快適さによって、むしろ積んでおくくらいならデータ化して持って出る、という行為が身についた。

●『SideBooks』設定

回転ロック「オン」
ページ間隔「なし」
ページ切替方法「スライド」

 アプリ終了しても、読みかけのページを憶えておいてくれるのも、実に手軽に起動できて、それゆえに起動させずに何日も持ち歩くことだってできて、ああ、あのライバルの作品をいま読んで熱くなりたい、というときにページをひらけて。
 すばらしい。

Scanbook01

 拡大しない状態でこんな感じ。
 さすがに、これで3.5インチ画面では読めません。

Scanbook02

 三段組みの、一段がちょうど画面に収まるように拡大。
 ね。これなら読める。問題なし。
 ちなみに、画面はA5雑誌の見開き(つまりA4サイズ)なのですが、この雑誌、基本は二段組みで小説を掲載するところを、新人だと三段組み。ぺーぺーにページは割かないぜ、という方針なのですが、そういうぎっちり詰まった誌面でも、このように大丈夫。使っている感覚でですが、これ、『SideBooks』の側で、かなりの自動補正が入った結果によるもののようです。ノートパソコンの画面で読むのよりも、小さなiPodの画面で『SideBooks』経由のほうが、あきらかにクリアで読みやすい。
 気になるのは、本を分解しないことによる、ページとページの狭間の部分ですが。

Scanbook03

 充分でしょう。
 確かに、ときには、拡大率を上げないと読めないような状況には出くわします。だったら拡大すればいい。ほとんどの場合、この見えにくい谷間も、過剰に拡大せずに問題なし。問題があるとしたら、ほかの作業と並行しながらスキャンしている私のテンションが上がりすぎているときに、外光が漏れこんで白飛びしたどうしようもない箇所に出遭ったりしたとき。作業の荒さは、ソフトでは解決しません。

 以上、こんな感じで私は電車でPDFファイルを読んでいるよ、の回でした。
 キンドルも二代目が出るとかで、そういう画面の大きな端末に変えればもっと読みやすいのでしょうが、このやりかたで、眼精疲労もないレベルで読めるしなあ、とか思ったり。そういう意味では、アップルがiPad miniなるiPodとiPadの中間機種を開発中だという噂は、まさしく私のようなのに向けた戦略なのでしょう。Xboxフリークとしては、来年に出るという噂の新型Xboxと連携させたマイクロソフトのモバイル端末があるんじゃないかなあ、と様子見なところもあったり。

 スキャン画面をさらすことが引用にあたるのかどうか非常に微妙なところであり、後日、写真が差し替えられたりしていたら、私が怒られたのだと思ってください(笑)。でも、これがいま、まさに私の端末でヘビーローテーションされている画面です。もしかすると作者さんが推敲のために読んだのよりも、私が目を血走らせて読みかえした回数のほうが多いかもしれない。

 私のiPodに表示されているのは、小説Wings/NO.75 とりで凌『悩める悪魔とフランツ・フィリップの日記』。勇気をもった、読者に愛されそうもない冷血悪魔が主人公で、せっかくのアクションシーンにできるところをことごとく削りこみながら、多方向からの視点で感情の飛び道具をぶっ放し、ちゃんと最後にはロマンスの香り漂っている。 
 私には、書けない。
 だから、私はいかにこれと違うものを書くかを考える。
 でもそれでいいのかと自問する。
 電車のなかで叫び出したいときがあります、マジで。

 それって、いいことです。
 自炊PDF持ち歩いている、かいがあるところ。
 あなたも、身もだえするほど恋い焦がれる相手の試合、持ち歩いてみませんか。精神的に追いつめることで、己のなにかが進化するやもしれません。
 私が、私自身であなたに証明できればいいのですけれど。

 そんなこんなで、第五世代発表直前というところでiPod touchも価格下がっております。一個どうです?

iPod touch

 最近、思います。
 デジタルと、紙で、同じ雑誌が同時に発売されるようになったら、私は嬉々としてスキャンの手間のないデジタルブックを選ぶだろうかと。単行本なら、それもあるなあと思いはじめているのですが、雑誌ってやっぱり。
 こういうの含めて、な気がますますしてくる。
 少年マガジンのグラビア切り抜いて勉強机の前に貼ったりとか、そういうのこそ雑誌。そのアイドルの首から下に、別のエロ雑誌から切り抜いたのを貼ってみたりしてしまうのが雑誌。

 著作権、コピーガード。
 むずかしい問題だけれども。
 私は間違いなく、遊ばせてくれる雑誌という媒体を、もっと好きになっている。ある意味、これよかったんだ、聴いてみて、と無邪気に友人に勧めることのできたカセットテープの時代こそ、音楽を愛し敬意を払う人たちを育てたみたいな気もしてる。
 だから遊んで。
 デジタル機器が身近になったいまだからこそ、紙の雑誌買ってみて。小説、読んでみて。ラノベ流行りで、ラノベってあれでしょ、アニメ化されて……みたいな偏った第一印象も広がったけれど、そういうあなたにこそ、ぴったりの作品たちがあるから。ああいうラノベに、すべてが淘汰されたわけではないのです。淘汰? なに言ってんのここからがこっちの出番、なんてノリで書いている者たちだっているのです。
 私は、ジュヴナイルという運動を忘れない。
 
 遊びましょう。
 遊びつづけましょう。
 ハードもソフトも、だれかが作らなければどこにもない。
 だれかが作ったものに背を押され。
 次に作るもの、わき出させましょう。
 この身のうちから。


 

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