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『冷えピタダイエット』のこと。




 晴天なのに、雷が鳴っています。
 立秋のころが暑さのピークと言われる本州で、すでに八月もなかばながら、気温はぐんぐん上昇中。扇風機もクーラーもまだまだ売れているので在庫処分どころか追加発注かける始末で、なんか年々、季節の先読みができなくなっている。

 そんななか。
 冷えピタはよくできた商材。
 当然、冬は売れる。
 風邪の熱を冷ますために。針金のスタンドから氷のうをぶら下げていたかつての光景は、優秀な放熱ゲルシートにとってかわられた。熱を吸い、水分とともに放散する。メントールですーすーもする。ゲルの水分が気化しつくすには八時間を越えるので、氷が溶けたからと夜中にじゃらじゃら交換したり、結露がしたたりぼたぼた顔にかかることもなく、ひと晩中、冷え続ける(メーカー公称値)。

 そんな冷えピタ。

 最近は、夏もよく売れる。
 太い血管の走るところに貼ると効く。循環する血液を冷やすので、カラダ全体の温度が下がるんだという。試しにわきの下に貼ってみたら、うーん。冷える、とは言いがたいが、なんだか汗は引いた気がする。

 冬も売れるし夏も売れるなら在庫が増えたって怖くないので強気発注で店頭に山積みされて、ますます売れる。この数年は、メーカーさんも無料サンプルを大量に持ってくる。これがまたありがたい。効果を見てもらいたいという思惑からだろう、薬店の試供品というのは便秘薬とかイライラに効きますとか、耳鳴りを抑えますとか、そんなのが多いのだけれど、そういうのは、レジを打ちながら、実に悩ましいのである。他社の便秘薬を買っているヒトに、これも試してみませんか、なんていうのはよけいなお世話だろうし。かといって、まったく違うものを買いに来たお客さんに、そういう効能がはっきりした試供品を差し出すのは、気が引ける。少なくとも私が逆の立場なら、便秘症に見えるくらいならともかく、イライラを抑えてとか、耳鳴りがしませんかとか、一見してわかるほどそんな雰囲気をかもしだしているのかと疑って、店員を睨んでツバさえ吐くかも。

 その点、冷えピタは、わたしやすい。
 こんなに暑い夏なら、だれにわたしたって自然である。

(冷えピタは某社の商標だが、冷却ジェルシートなどと書くのも面倒くさいのでこう書いているだけである。商品開発当時は、夏に売れることを想定していなかったのか、他社の熱さまシートという商標は、実際に「あ、これ、おねつ用ね」とつぶやいて冷えピタやデコデコクールに手をのばすお客さまがいることを見るに、いまからでも改名すべきだと思う。各社のシェア比がどれくらいのものなのか私は詳しく知らないが、冷却ジェルシートをさがしている方が「冷えピタはどこ?」と訊ねる率は、圧倒的に高い)

 深刻な便秘が試供品で治ってしまっては売れるものが売れなかったということもありうるが、一枚冷えピタをもらったくらいで、これで箱入りを買わなくていいなどと考えるひとはいないだろうし。

 そうして、ますます売れる。

 ところで。
 以前放送されていたテレビ番組で『特命リサーチ200X』というのがあって。いわゆる科学情報番組ながら、ビッグフットから美味しいハンバーグの作り方まで、実に幅広いネタを提供してくれて、私は大好きだったのですが。

 ご多分に漏れず、視聴率稼ぎのためのダイエット特集にのめりこみはじめてから、番組がおかしなことになっていった。化学的に事態を解明する番組なのだから、いかに運動して、いかに食事制限すれば、いかに痩せるかを解説すればいいところを「食べてOK」「一日5分」なんていうフレーズが得意技になっていったのである。

 そんな番組の末期に、ついに世に解き放たれた究極のダイエット法を、私は近ごろよく思い出す。
 それが、

 冷えピタダイエット。

 冷却シートを貼るだけの痩身術。

 かなり眉唾物なネタに寄った回ではあった。あろうことか、冷えピタをカラダに貼るだけ。食事制限や運動は、まったく必要としない。つまり、一日5分なんていう枷さえもはずしてしまったのだ。効果よりも目新しさを優先させて、その日の視聴率が稼げればいいという試みではなかろうかと、子供でも疑いたくなる。

○ダイエット方法

 冷えピタをうなじに貼ります。
 背骨のラインに添って数枚貼るとなおよし。

 ……それは。
 とてもすーすーする。
 うなじから背骨のラインに添って手のひら大のシートを並べて貼るというのは、自分自身ではかなり難易度の高い作業である。湿布薬を背中に自分で貼る器具というのも市販はされているが、それを使っても、背中のまんなかにまっすぐ貼るのはかなり難しい。

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 仕方がないので、だれかに頼もう。

「冷えピタ、ここんとこにずらっと貼ってくんない?」

 なんのプレイだろうかと思われること確実だが、背に腹はかえられない。なにせ、それだけで痩せるのだから。

 200Xの説明によれば、うなじにつながる背骨のラインを冷やすと、代謝が上がるのだという。つまるところ、消費カロリーが上昇する。それにより痩せる。

 なにせ、私の記憶だけで書いているので、正確性には乏しいのだが、番組でサーモグラフィーを使った実験をしていたのは確かだ。それなりに科学的根拠は示されていた。いまググってみても、それらしい論文の類はどうしても見つけられなかったが200Xの手法からして、当時、なんらかの学術的成果が元ネタとしてあったのだと思う。

 ヒトのうなじは外気温センサー。

 そういうことを発表した博士かなにかが、いたのだ。
 そういえば、膝の裏に光を当てればヒトの肉体は朝が来たと錯覚するので、これを利用すれば時差ボケが抑えられるという話も、最初に目にしたのは200Xだったような気がする(これも記憶に寄るところなので絶対とはいえない。ただし、ヒトの膝の裏が光を感知するセンサーだというのは、いまもググればいくらでもヒットする証明された事実だ)。
 膝の裏が光を感知するなら、うなじが外気温センサーであってもなんの不思議もない。

(まったく話がそれるが、私の通っていた美大の色彩学の先生は、私たちに赤と青の色画用紙に手のひらを当てさせ「ほうら赤色のほうがあったかいだろう」と言い聞かせたものだった。ちなみにそのとき教室にいた半数ほどが本当だと驚き、私を含めた鈍感な半分は、だったら金色は冷たいのか熱いのか、などということを考えていた。むろん、目で見てしまえば温度差はある。しかし、先生は手のひらだけで差を感じるはずだと本気で論じていた。私はいまだに鈍感なままだが、あの実験はいま振り返れば、手のひらが色の温度を感じているというよりも、手のひらはモノが見えているのではないかということを証明しているように思える。先生は色彩学の権威だったので、色画用紙の側が温度を左右すると力説したがっていたけれど、生物学的な観点から手のひらに視覚があるかどうかのほうこそ、真剣に研究すべきテーマではないだろうか。膝の裏が光を感じるのだから、手のひらがこの紙はなんだか赤くてあったかく見える、というセンサー的役割を果たしていないとは軽々しく断じられないところではなかろうか)

 サーモグラフィーを使い、代謝が上がることを証明していたのだから、番組がなにを見せていたかは、記憶に頼らずとも、おのずと明白である。

 うなじを冷やすと体温が上がる。

 冬場にヒトの肉体が震えるのは、寒さに対抗して体温を上げようとする反射であり、むろん、外気温に対して体内から無い熱をもって迎え撃とうというのであるから、そこではカロリーがおおいに消費される。

 冷えピタをうなじに貼ると、同じことが起きる。

 ただし、それは錯覚なのだ。
 うなじが外気温センサーであることを利用して、おのが肉体にカロリーを消費すべき外気温であるぞよと思い込ませるという……そういうダイエットである。

 くり返すが、私の記憶に寄って書いている。
 だが、200Xでそういうネタをやっていたことは絶対だし、うなじに冷えピタを貼っていた絵が映っていたのも、記憶ちがいではないはずだ。
 ということは、そういうダイエット法がある。
 そして、科学番組での検証に耐えた。

 そういうことを、冷えピタを真夏に売りながら、思い出してしまう。

 不安なのは、それが本当にうなじから背骨にかけて、という箇所に生じる特異な現象であるのかどうか、という点である。うなじは黄色人種だと白さが尊ばれるように、肉のうえにすぐ皮膚があり、太い血管など走っていない。血管を冷やすとカラダが冷える、という話と、それは矛盾している。だから、おそらくは私の記憶通り、そのダイエット法は、うなじがヒトのカラダにおける特異な外気温センサーである、というものだったと思うのだ。

 だって、そうでないと。
 冷えピタでカラダを冷やせば体温が上がる。
 それでは、痩せるかもしれないが、真夏に涼しくなりたくて飛ぶように売れている冷えピタが、実際には意味がないどころか、真夏に自分の肉体を錯覚させてまで体温を上げていることになってしまうのである。

 確信がない。
 でも、私は、言いたい。

「お客さん、その冷えピタ、うなじには貼らないほうがいいですよ」

 もっと暑くなるから。
 言えずにいる。

 テレビをつけると甲子園で、かちわりの冷たい氷水袋を、しきりにうなじへあてがっている親子の姿が映し出されていた。
 あれも、よけい暑くなるだけだ。
 なんなら、痩せてしまうくらいだ。
 冷やせば冷やすほど体温が上昇する地獄へと、みずからをいざなっている。

 200Xによると。
 私の記憶によると。
 それが真実なのです。
 私の記憶はそうだが、私はこの話を信用していないのですけれども。
 膝の裏が光を感じるくらいですからね。
 冷えピタ貼ってんだから涼しくならないと嘘でしょう。
 でも、涼しくなったらダイエット法として成立しない。
 200Xが間違っていた?
 いや、そうではない。
 ヒトのカラダなど、まだまだ謎だらけなのです。
 そういうことなのです。

 冷えピタをうなじに貼ると痩せてしまうほど暑くなる。
 涼を求めるのならば、うなじ以外に貼るべき。

 冷えピタご使用のさいには、
 お気をつけください。
 
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『とかげの月/徒然』 『冷えピタダイエット』のこと。