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『ニール・スティーヴンスンとFOREWORLD』の話。




 2009年にここで言っていた、2003年にクラーク賞を獲ったニール・スティーヴンスンの『Quicksilver』が邦訳されないって話ですけれど。

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『善良な男を狙え!!』の話。

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 2012年現在、いまだ事態の進展はなく。本気でこのひともクーンツみたいに、映画化とかそういう日本でも注目されることがあって、最新作が突然に刊行され、でもそれもライトユーザー獲得にまで届くような熱は生まず、けっきょく初期の作品と最新作が書店に並ぶが途中がすっぽり抜けているという、そんなことになりやしませんかねとあきらめ顔な近ごろだったのですが。

 それでもやっぱり『ダイヤモンド・エイジ』が傑作であることに間違いはなく。

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『ライフゲーム』のこと。

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 ブラウザのブックマークにニール様のサイトを記しておいたり、ときどき検索もかけてみたり。

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『Neal Stephenson』公式サイト

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 ああ、むこうではまた新作が出るんだね、みたいなテンションだったのですけれども。ある日、その名で検索をかけたら、アップルストアがヒットした。

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『The Mongoliad Mini』

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 私はipodユーザーなのでこっちですが、アンドロイド版もキンドル版もある。モバイル機にこのアプリを入れると不定期に物語が配信されるという形態で、めでたくこの春には紙の本としてもまとめられた。
 ていうか、紙にできるものなら、最初から紙でいいじゃないかというような気もしますが、ほかにもアップルストアにあるニール様アプリとしては、モンゴルつながりでホーミーを仮想生成するのとかあって、なんだか謎です。余談ですが、私、小学生のころからホーミーが得意です。最近はやっていませんが、いま試してみたら、いまもできた。幼い頃身につけた自転車の乗り方は、乗らずにいても忘れないものなのですね。ちなみに知らないかたのために説明しますと、ホーミーというのは、喉をふるわせてひとりで多重音声を発する奇怪技です。できても得になることはあんまりありません(小学生の時代にできると、あのコ扇風機の前で声ふるわせるみたいなのが扇風機なしでできるんだってさと別の学年から見物人がやってきたりはします)。

 ところで『The Mongoliad』。
 ニール・スティーヴンスン単独名義ではなく、なんと巨星グレッグ・ベア先生の名前も併記されていて、いやそれどころか「そして友人たち」とか、よくわからんクレジットも。

 グレッグ・ベアといえば、近ごろでは一部(私を含める)のゲーマーが「あのグレッグ・ベアがHaloの小説を書くんだそうだぜい!」と身悶えた存在です。

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『ProjectNatalとMilo』の話。

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Greg Bear

 なにがはじまってんの、これ。

 つまるところ、サイバーな現代にSFを書く者はなにを為すべきかとか言っていたニール様が、グレッグ・ベアであれだれであれ、好きにこの世界観をつかって物語ってくれ、そしてこの世界をひろげていこうぜ、というコンセプトではじめたのが『FOREWORLD』なる統一空想世界観であるという。なので『The Mongoliad』も電子の海に解き放たれていたわけです。連作形式で、小説に限らず絵でも歌でも、他人の作品に影響されて次々この世界観を回して行っちゃって、というのをネットを介して形づくる試み。それゆえにいろんな作家の名が連なり、友だちがすべて世界の一部を形づくる。ホーミーアプリも、思いついたから世界をひろげてみた精神の顕示で仲間を増やしたいニール様の心の声の具現化なのでしょう。

 『FOREWORLD』は、みんなの世界。
 最近アニメ化ニャル子さんでもおなじみクトゥルー神話みたいなものですね。

aisora

 ラブクラって知ってる?
 クトゥルーの生みの親のことです。
 そんなふうに、現代に神話だって生みだせるのが小説屋の醍醐味、どころかニール様は以前も『プロジェクト・ヒエログラフ』なる、現実の科学とリンクしたSF設定をひろく作家の共通認識とすることで現実の科学レベルを引っぱりあげるぜ、的な活動もしていて。

 物語の力を舐めていない。

 舐めてはいないニール様が、本腰入れてはじめた統一世界観ってなによう、どんだけ現実にサイバーなのよう、と覗いてみたら、これがさあ。

 思いっきり、鎧と剣の世界。
 ほんとなにはじめてんの。

 なんか、よくわからん展開だったわけですよ、邦訳もされないし、断片的な情報を覗いているだけで、しかしあきらかにニール様がなにかおかしなことになっておられる。もやもやするなあ、と過ごしていたら、ついこのあいだのこと。

 Kickstarterに、ニール様が。

 Kickstarterというのは、とある計画を実現させたいひとが、ウェヴ上でプレゼンすることによって資金提供をつのるというサイトです。

 ニール様が金集め?
 『スノウ・クラッシュ』どんだけ売れたと思ってんの。使い切れないほど金はあるでしょう、なんなんですかいったいもう。
 ニール様、語りはじめます。



(なんか上の埋め込み動画だけ表示されないという報告を受けましたのでミラーへのリンクも貼っておきます。

 とかげの月 / 徒然<鏡>
 『ニール・スティーヴンスンとFOREWORLD』の話。

 んー。うちではモバイル含め、どの端末で試しても見えていて、話によると例によってIEみたいだが、うちのあんまり使っていないIEでは表示されるんですよねえ。再現しないので試行錯誤のしようがない。不可思議な相性があるのかFC2)

 わお。
 ゲーム?
 ProjectNatal(現キネクト)向けじゃないですか。
 かと思ったら、そういう、ただ剣を振り回すだけのゲームしかないじゃないか、というところが、ニール様の逆鱗に触れているらしい。
 ゲームの差別についてニール様、語る。



 要は、こういうことです。
 銃はいろんなゲームで完璧にシミュレートされ、現実の武器を反映し、自分好みにカスタマイズできたりもするのに。それなのに。ゲームの世界に出てくる剣ときたらどうだ。弓矢と剣を選べるくらいのもの、振り回すモーションは棍棒と変わらない。別に剣からビームを出してくれと言っているわけじゃない。剣には剣の歴史があり、刃も鍔も柄も、デザインだっていっぱいある。

 さあどうですかみなさん。
 ソードワールドを生きてみたくはないですか。
 いや、その世界観は『FOREWORLD』という、私の提案する統一世界観において描かれます。すでにアプリや紙の本でもおなじみ、グレッグ・ベアまでからんでる。

 ていうか、このビデオ。
 完全にゲーム、作りはじめているじゃないですか。
 金あつまらなくったってやる気でしょう。
 これ、資金集めもさることながら、あのニール・スティーヴンスンが本気でゲームを作るらしいということを、世に知らしめるのが目的のように思えてならない。

 それにしても、次世代サイバーパンクの担い手と騒がれていた男が、SFではなく(ヴァイキングとサムライの戦いとか言っているから、それはそれで一種のSFではあるものの)剣を描きたいんだ、メジャーにしたいんだ、魔法なんてなしだ、刃と刃でがっつんがっつんやりたいんだ、というのは……

 本人曰く、単純な理由。
 小説を書くために資料を集めていて、剣にハマった。

 で、きっとニール様は、ゲーマーとしてやってもみたのだろう。
 『ソウル○ャリバー』とかは、逆に剣マニアの身になるとショーアップされすぎていて腹立つんだろうなっていうのはわかるし、オープンワールド系のRPGでは、レベルが上がれば剣の先から炎を飛ばすのは当たり前。それもまたムカついて。『ベルセルク』とか、剣自体の動きは良いけれど、それでばったばったと敵をなぎ倒すっていうコンセプトが、ソード対ソードを求めるニール様には興ざめだったのかもしれぬ。剣神ドラクエ? いや斬りたいのはスライムじゃないんだよね。

 で、ここがニール様のKickstarterなのですが。

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『CLANG by Subutai Corporation / Kickstarter』

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 2012年7月10日現在。
 9000人から5000000ドル。
 集まっちゃってます。

 てことは、作られるわけです。
 プロジェクト・CLANG。
 SFは現実の科学さえ変えられると夢見ていたひとが、ハマってしまったから、リアルな剣劇テレビゲームを本気で作る。

 仮想空間で剣の美学をよみがえらせるというのは、そうね、見ようによってはものすごくサイバーな話です。体感できる『FOREWORLD』。その設定自体が、リアルな異世界SF(?)みたいな響き。五十万ドルは、昨今のゲーム制作費としては十倍あっても足りないくらいの額だけれど、ニール様が夢を語り、それに呼応したユーザーがいると証明できたことは、今後の出資者集めにすごく有利なはず。

 ものすごく個人的な想い出ですが、私の書斎には、額に入った一枚の地図が飾られています。『ルーンワース・ソードワールド』というゲーム世界の地図。その第一作にものすごくハマり、ソフトに特典としてついてきた紙の地図を、にやけながら見つめていた。第一作では、その地図のごく一部しか舞台にしていなくて、物語も途中で終わって、それから何作にもわたって『ルーンワース』世界は描かれるはずだった。

 でもね。

 『ルーンワース』は、いちおう第三作まで出たのですが、世界観をひろげるというよりは、売上げがあんまりなので方向性を変えていこうというのが見てとれて、私のような一部のファンをこそ醒めさせていったのです。

 いまも壁の地図を見つめ、生きることのできなかったソードワールドを夢見ることがある。
 ニール様は、私にそれを届けてくれるのか。
 キネクトじゃないほうがいいな。
 操作は指先がいい。
 夢は、頭で見るから。

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変態趣味ができてしまった脳は、どんな治療でももとにはもどせない。
 そういったことをつらつら考えるに、黒いストッキングというカードがわたしに配られてきたのは、とりたてて悪い運命でもないのだ。

Neal Stephenson
 
ニール・スティーヴンスン
『クリプトノミコン4 データヘブン』

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 ニール・スティーヴンスンが剣への変態趣味に侵されたことは、間違いなく幸いである。ほかの熱心な彼のファンにとっては違うかもしれないが、十年待っても新作が訳されない小説屋としてしか知られない、この国では。だれもやらないからオレがやると吠える彼の映像が見られる、こっちのバージョンのほうが、ニヤニヤ笑いがとまらない。

 現実が気に入らないならば、変えろ。
 欲しいものがないならば、生め。

 ここは未来で、言葉なんて使わなくたって、メッセージは伝えられる。
 ニール・スティーヴンスン、生き様で物語る。
 それこそ物語作家の真髄だと思う。
 敬愛いたします。

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クロムハーツ リング  クロムハーツ リング  2013/10/23 04:19
『とかげの月/徒然』 『ニール・スティーヴンスンとFOREWORLD』の話。