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『さようならボブ・サップ』のこと。

 なんでしょうかねえ、あれは……
 観てました?

 K-1 オランダ大会。

 メインイベンターは、四度王者アーネスト・ホーストと、そのホーストをぶちのめしたボブ・サップとの、因縁の対決。オランダ国民的には自国の星、ホーストが野獣に負けたまま引退なんてしょぼーんなので、初のオランダ大会、それはオランダ国民が待ち望んでいたものでもあった。
 だが。

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 開会式に出席し、バンテージも巻いて臨戦態勢だったボブ・サップは、シュルトvsヴァン・ダム戦中、リングサイドに現れ、FEGと地元プロモーターを相手に「“これを認めなければ出ない”という無理難題」(谷川氏)を吹っかけ、拒否されると、試合30分前に「やらない」と通告して会場を立ち去り、そのまま行方をくらませた。

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 ありえない話だ。
 谷川氏は「契約上にかかわる」として、サップが吹っかけた“無理難題”の具体的な内容には明言を避けたが「これまで聞いたこともないレベルの内容。受け入れる必要もないもの」と語っているという。

 なんなんだろう。
 マイク・タイソンの傍若無人ぶりを見て、ボブ・サップはわがまま言ったもの勝ち、とでも勘違いしたんだろうか。とはいえ、脳内麻薬出しまくって試合するタイプの選手ではあるが、ラリるにもほどがある行動に見える。

 当然、谷川氏はサップを今後試合出場させないと話し、その一方で、

「サップとはK-1が長期独占契約をしている」

 と明言した。
 これは、プロレスを含めた他団体にサップは移籍できないが、うちではもう試合には使わないという……

 野獣、飼い殺し宣言である。
 ていうか、ワガママ言ったらこうなると、わかっていたはずなのに。
 団体を渡り歩いてきたボブ・サップ、意外に自分は自由だと思いこんでいたんだろうか。
 すべては、K-1とFEGの後ろ盾あってのことだったのだが。

 そしてもちろん、K-1を開催する団体FEGが、K-1と並んで育てているイベントHERO'Sでもこの影響は大きい。

 痩せてよわっちいのと闘えと強要されてPRIDEを飛び出した桜庭和志がHERO'Sに参戦。

sakuraba

 世界最大のプロレス団体WWEで最年少王者となり、その後日本で新日本プロレスに参戦──現ヘビー級IWGP王者、ブロック・レスナーもやってくる(アントニオ猪木のおじさまは、彼は総合はやらないよ、と語っていたが、近頃猪木の予言はハズレてばかりだ。新日本を売ってしまったことで吸引力が低下している感があるな)。

wwe

 サップは、その両者を「オレ様が喰う」と明言していた。

 が、谷川氏の怒りを買っては、それも、もう無理。

 二度と観られないのかボブ・サップの勇姿。
 キレやすいのキャラじゃなかったんだなあ……
 冷静に考えると、別にもういいやって感じもある。
 観客への裏切りは、エンターテイナーとして絶対やっちゃいけないことだ。
 いやむしろ、エンタメ作家の人生は、観客のためにある。
 格闘家と呼ばれる人種の中でも、サップはプロレス経験があるし、ショーマンシップにもあふれていた。

 エンタメ職人として。
 芸人としての、自覚は持っていると思っていたのに。
 幻滅です。

 それにくらべてピーター・アーツはどうだ。

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 メインイベントが興行不可能となった最悪の状況で、主催者側はペーパービュー放送の解説で来場していた三度王者ピーター・アーツに出場を要請。

「1時間前に『試合をしてくれ』と言われた。シュルト戦(3月5日)以降は練習してなかったから危険だし、妻も止めたが、ホーストの引退試合だから、やらなきゃ男じゃない」

 ピーター・アーツは、試合衣装も持ってきていなかった。
 それでも、セーム・シュルトからぶかぶかのトランクスを借りてリングへ向かったのである。

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 ……惚れる。
 エンターテイナーとしてもそうだが、これが男気だよ。

「しかたねえなあ、おれとヤるかい? ホースト」
「おいおいパンツも持ってきていないんだろうがチャンピオン」
「オレのを貸してやるよ。そのマッチ棒みたいな腹で履きこなせればな」
「「「……行くか。ファンが待ってる」」」

 試合直前の控え室で、歴代のチャンプたちは、逃げ去ったサップのことなんて一言も話さなかっただろう。
 彼らの人生は観客のためにある。
 だからこそ、観客は彼らに酔う。

 はからずも、わかってないヤツの愚行で、もともと心技体の極地を目指すカラテから派生したK-1という格闘技の、根っこの部分にある力強さを見た。
 体を鍛えると心も磨かれる。
 その美しさを体現してこそ格闘家でしょう。
 K-1観ると腕立て伏せしたくなる。
 そうでなくちゃ。

Circulate

 母国での引退試合を終え、ホーストは、真の引退試合の相手が「アーツかもしれない」と発言している。
 万全の体調で、三度の王者と四度の王者がぶつかるのだとしたら、必見だ。
 男たちに、惜しみない拍手を贈りたい。
 野獣?
 醜き獣はうせやがれ。
 リングのなかに観たいのは、
 人の美しさなのである。

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