最近の記事

スポンサードリンク

月別アーカイブ

『ボーイズラブ・ノーダル・ポイント』の話。

よしなが 本屋さんではいまだに耽美系という言葉をつかったりしますからね。同じカテゴリーだけれど耽美といえば美青年というイメージがあって、そうでなくもっとポップなものですってことを、最初に提唱したビブロスさんは言いたかったんだと思います。
三浦 みんな手にとろうよ、とりやすいよ、という感じを出したかったんですね。
よしなが 『レディースコミック』に対して『少女マンガ』という名前の区別があるように、『耽美』に対して『ボーイズラブ』だったんですよね。
三浦 確かに、JUNE系とは明らかに違うものになった瞬間がありますね。


『ホモ漫、そして少女マンガを語りつくす!?
 三浦しをんvsよしながふみ』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 SF的にそれを呼ぶなら結節点──ノーダル・ポイント──オークの木の枝のように、天に向かって枝分かれしつつのびてゆく、過去と現在と未来に、いくつもある分かれ目。

 そのオークの木の、その枝の股は、意外にデカい。

 いまや、ボーイズラブという言葉──定義は、JUNEや耽美などといった言葉──定義よりも、ずっと世間に認知されている。

 明らかに違うものになった瞬間。

 その結節点を生み出すきっかけになったのは、まぎれもなくその出版社であったと現代少女文化の権威二人が声をそろえる、歴史上の真実。
 ビブロス。

 本当はこの徒然、『ビブロス・ペーパーを読み解く』の話。というタイトルで語る予定だったのだが、途中まで書いて断念しました。だって私ごときが、なにを語れる。

 だからただ、提示することにいたしました。
 多くのBL読者の目には通常届かない、BL書きにだけ与えられる、文書。
 あと十年も経てば、きっと再編されたNHKの教養番組で、「ボーイズラブ研究家」なんて人たちも現れるだろうから、そういう人たちのお役にでも立てばいい。
 ビブロス倒産。

 そのとき、私の手元には、ビブロス・ペーパーが届いた。

bpaper

 ちなみにここにある第25回というのは半年も前に〆切があった回である。同封されていた原稿は、はっきりと読んだあとがあった。しかも、このビブロス・ペーパーは、封筒から出した直後にスキャンしたものなのにシワだらけ。バタバタとした編集部の混沌ぶりが伝わってくる。研究者にはたまらないでしょう?

 本来は第25回の発表と次の第26回の募集が行われるはずだった最新号が出ない。それにより、おそらく審査も進んでいたのだろうが、第25回もすべてはなかったことにした。苦渋の選択であろう。そして、民営化を前にする郵便局だけが、行って帰って千円あまりの郵送料を数百人ぶん、稼いだという結果になった。

 私の手元には、こういう文書もある。

epaper

 エクリプス・ペーパーである。
 この生々しさ。
 時代の息吹──2002年末桜桃書房の『月刊GUST』とともに『小説エクリプス』が休刊した。そのさいに送り届けられた文書である。
 当初の予定通り、『ビブロス・ペーパーを読み解く』の話。であれば、このエクリプス・ペーパーとの類似点を取り上げ、読み解いていくのだが、もはやそういったセチガライ世相の検証などはだれの気分も良くするわけではないと悟ったので、結論だけを書こう。

 両文書に共通するのは、BL小説誌を発刊し、小説賞を主催していた出版社が、そのどちらをも手に負えなくなり、より力のある出版社へと「雑誌と小説賞を移籍させた」という点である。ビブロスの倒産はBL部門とはまるで関係のない事業拡大の失敗によるものだし、幻冬社にBLを移籍させたあとも、桜桃書房はエロく元気に主に男性相手の出版物で手堅い商売を続けている。

 読みとれるのは、出版社が予想もしなかったほどBLというジャンルはしっかりと客を掴み、ほかの部門で赤字を抱えていたり、もともとが少部数専門の出版社では対応しきれないほどのジャンル拡大の道を勝手に歩んでいったということである。金の卵だが、先行投資もいる。社運をかけてまで、BLに賭けて良いものか……そういった悩みも、エクリプス・ペーパーからは感じ取れる。

 そして、両文書をじっと見つめていると、あることに気づく。
 片方は倒産のお知らせであり、片方は身売りのお知らせだ。
 しかし、両誌とも、数ヶ月と待たずに新天地で、名を変えて同じ内容の発刊を続けるという知らせもしている。
 暗さはない。
 むしろそこに見えるのは……

 ボーイズラブに、置いて行かれた者たちの悲哀。

 BLはまっすぐ歩いていく。
 すべてを食い尽くし、世界を萌えにする。
 実際、BLが市民権を得てからの、プロレスの観客に若い女性の増えたこと増えたこと。カッコイイものはカッコ良く、デブは可愛く、オッサンはきゃー渋い。ヒゲもメガネも禿げも持病さえも、彼女たちにとっては萌えを増大させるアイテムに過ぎず、そうなれば、世界はヲタ少女たちにとっての楽園だ。世界の半分は男でできているのであり、彼女たちにとって男とはホモだ。萌え狂いそうである。

 そしてここに一人、BLを書く男。
 私はここでなにをやっているのだろう。
 
 結論もなく、研究素材としてのみスキャン画像を置いて、この回は終わる。
 みんなそれぞれしみじみと考えるといい。

 私個人のことでいえば、先月はBL以外の〆切が立て込んでいて某BL小説賞を見送ったのだが、もう一週間早くビブロスが原稿を送り返してくれていたら、それを断念せずにすんだのになあ、という残念なことがあったくらい。まあ、明日もそのまた明日も、分岐する未来の中で分岐せずまっすぐに書き続けるだけなので、それはそれでいい。

 このBL結節点の先に広がったオークの枝の世界で、生き、書いていることに悦びをおぼえます。
 結節点はなく、この世にBL萌えがなくてハードゲイと耽美だけだったらどんなに息の詰まる世界だったことだろう。そんな世界で、私はなにかを書くことができていただろうか。
 想像すると、震えがとまりません。

 いまも小橋vs丸藤を観ながら、これを書いていたのですが、黄色い声をあげる彼女たちがポップだからこそ微笑ましいのだよ。小橋ががっつりヘビーストンピングで虐めないでと悲鳴をあげる丸藤を夢想しているのだとしたら、私はいちプロレスファンとして会場から出て行けと彼女たちに向かって怒鳴るだろう。
 萌えでよかった。

kobashimarufuji

 ビブロスのビーボーイ関連における出版事業を引きつぐことで合意したアニメイトは、ムービックやフロンティアワークスなど同社の子会社3社との共同出資で新会社を立ち上げると発表している。雑誌『BE×BOY』は6月にも出版を開始したい意向。

 だそうだが、この新会社、ビブロスの債務を一切継承しない。書店・書庫にある在庫も「新会社が引きつぐ形にはならない」とアニメイトは断言している。つまるところ、いま日本中の倉庫に「だれのものでもない」売ることも返すこともできない『BE×BOY』が山と積まれているわけだ。私も商品管理の仕事をしていたことがあるから、それが倉庫を管理するものにとってどれほどの悲劇かわかる。もちろん債権者さんたちは黙っていないので、売れないから捨てるというわけにもいかず、だったらどうするんだだれか古本市場に売りに行ってその小金を債権者さんたちに分け与えるのか、でもその作業をアニメイトはやらないと言っているのにだったらだれがやるんだ……おれかよ? と頭を抱えているいろんな立場の人たちの苦悩さえも喰い散らかしながら、ボーイズラブは結節点のその先へと邁進し休まず腐れ女子という自称を誇る少女(という呼称に年齢は関係ない)たちを量産してゆくのであった。

 一方、桜桃書房は現在、オークラ出版、オークスと統合、桜桃書房の出版物もオークラ出版のダウンロードサイトで電子出版されているが、どうやら多くの書き手さんたちに無断でダウンロード販売を始めたようで、問い合わせると「桜桃書房時代の作家名簿がなく連絡できなかった」という答えが返ってくるという話を某漫画家さんから聞いた。連絡できなかったから著作権など関係なく無断で販売する、という姿勢もスゴイが、それもまた、ひとつの結節点の先の世界。自分の躯の切り売りも、一緒に仕事した作家への裏切りも、全部許容して、生き残っていくエロ出版社のパワフルさには脱帽です。

 ちなみにエロ出版社の最近の主力商品はこれ。



 えーなんでどれも画像ないのー。
 と世の仕組みをわかっていない幼子に尋ねられたら、ちゃんと答えてあげましょう。
 あのね、銀魂っていうのは某Jって週刊誌に連載されているアニメ化もされたマンガでね……
 青学っていうのは……、でぃーぐれいまんっていうのは……

「著作権は?」

 ……そういうことを尋くコは、殴っていいです。
 世の中の理不尽さを知るといい。

TRACKBACK http://yoshinogi.blog42.fc2.com/tb.php/43-c0df2e14