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『どっちでもいいカタチ』の話。


Mwm5000

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『新しい靴』のこと。

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 新しいマウスを買うのはイヤだと駄々をこねて直してから、ほぼ一年半。
 また左クリックが効かない。
 そしてなんだか最近、電池が切れますよというメッセージがよく出る。
 メッセージが出るのに、まったく電池切れにはならず、それはたぶん私が充電池を使っているがゆえの電圧の不安定さから来るのだろうが、でもそのマウス、五年くらい、ずっとエネループで動いているのである。そうか、エネループの寿命か、と思って新しいのに変えてみたってなにも変わらない。もうすぐ電池なくなりますよ私……でも倒れることはなく。

 こういうのは、精神衛生上、よくない。

 左クリックの効かないのが、なんのせいなのかが、ぼんやりとする。責任の所在が明確でないというのは、責める相手がいないということで、胸ぐらを掴める相手がわかっていれば説教することも可能であろうが、もはやなんだか……

 直そう、という気にならなかった。

 写真を見てもらえれば一目瞭然なことに、ていうか写真なんて見るまでもなく、価格ドットコムの情報によれば『Wireless IntelliMouse Explorer M03-00036・レザーブラック』の発売は2003年の暮れである。今年は2012年である。九年前……マウスは革ジャンやお気に入りのステッキではない。ましてワイヤレス。まして縦横自在スクロール機能つき5ボタン。そういうものほど、日進月歩どころか秒単位で技術は洗練されていくもの。言いかえれば、最先端という言葉は一年もあれば陳腐化する。

 クリックが効かないことも、こいつの自己主張なのかもしれない。そろそろ別れたい。もう無理。見てよ艶やかだったレザーの隙間に、あなたの手垢が詰まって、分解清掃したって落ちないほどに薄汚れてしまった。
 じっと見る。
 まだまだやれる、と言っていないかと耳を澄ます。
 いや、そう。
 こいつは、もう、終えたがっている。
 異存はない。
 こいつは、もう眠っていいくらいに働いた。

 というわけで。
 三代目の新しいWireless IntelliMouse Explorerを買いに行った。

 なかった。

 うおおおおおおおおお。
 なんと、なかった。
 IntelliMouse Explorerというシリーズが終了していたのである。
 いや、それはこのときすでに知っていたのだが。

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『Microsoftマウスの閉じる設定はInternetExplorer8で無効になる』のこと。

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 私が言いたいのは、あのいわゆる、

「マイクロソフトの変なカタチのマウスシリーズ」

 それが、いまやものすごくヘンな形のものはあるのだが、インテリマウスの後継機と呼べる形では、存在しないのであった。いま現在、マイクロソフト製の先鋭はこれ。

Arc

 まったく食指がのびません。
 いやそもそもノートパソコンでマウスは使わないので、携帯性うんぬん言われても困ります。私はXboxのコントローラーがXbox360でひとまわり小さくなったことさえなげいた「もっと大きいのを握らせて」な派閥の人なのです。
 なのに、時代か。
 マイクロソフト製マウスの大半が、モバイルで収納らくらくとか、そういうことを謳ってやがる。

 他社製ならば、いろいろあるのです。
 でも、ダメだよ、怖いよ。
 マウスは手の一部です。自分の手を革新的な異形に変えたいなんてなぜ思う。育てたそれを、着実に進化させた、あたりさわりなく高機能な指先が欲しいのです。

 で、マイクロソフトのラインナップをもういちど見て気づく。
 左右対称が多い。
 右手でも左手でも使えます、と、どれにも書いてある。
 私が愛したヘンな形のマウスは、世にいうニンゲンコウガクテキエルゴノミクスデザインにもとづく作法で生まれていたのだが、そういえば……エルゴノミクスなマウスの、左利き用ってあるのだろうか。店頭で見かけたことはない。

 私の弟は、左利きだ。
 彼が、パソコンをさわっているのを見たことがあるだろうか。記憶にないが、マウスのつながったノートパソコンを持ち歩いているのは見たことがある。別段、違和感をおぼえる光景ではなかった。たぶん、彼は、右手でマウスを操作するのだ。だって、そうでないなら、ノートパソコンにたいていついているタッチパッドで操作したほうが、ずっと使いやすいはずだもの。

 ほぼ10人にひとりが左利き、というのが世界標準らしいが、日本ではその数がグッと減る。最近は矯正しない親が増えてきたので世界標準に近づいているというデータがあるけれど、私のまったくの推測で語らせていただくなら、それは若者の車離れと関係がある。

 そもそも、ナイフとフォークは両手に持つものだが、箸は片手。そのうえ、国土が狭くて人口密集度が高いとなると、ずらりと並んで食事するとき、ひとりだけ左手で箸を持つと、隣のひとと肘が当たる。武家の昔なら、酒を注いでまわる女房衆も、あらこのひとだけ反対だわ、となってイヤな顔をされる。つまるところ、レストランならコースでひと皿ずつ、家庭ならワンディッシュで、というのならば左右は関係ないけれど、お膳に小鉢を並べて箸で食うとなれば、必然的に全員が同じ向きで食べてくれないと配膳係が困ってしまうのである。

 というのが、特に日本で左利きが矯正されやすかった理由だととなえる方たちが多いのだけれど。私が思うに、日本独自というのなら、着物のことを忘れてはいけないのではないかと。

 洋服は、男女でボタンの留めかたが違う。
 男が右前、女が左前になる。「前」というのは「手前」ということで、あなたが裸族やヌーディストや江古田ちゃんでないならば、いま自分が着ている服を見てみるといい。
 あなたは女性ですか?
 だったら、左前だから、一人称視点でなら、ボタンの上に右の布が来る。
 女性は銃を脇に吊らないので右手を上着の中へ入れやすくする必要がない、という消極的な理由による説と、ボタンが普及した当時、それは貴族階級のもので、貴族とはいえ男性は自分でボタンを留めるから左手はボタンを持つだけで済む右前が標準になり、女性はメイドに服を着付けられるので、メイド視点でボタンが留めやすいように男性とは真逆になった、という説がある。

 そんなのはどっちでもいいが、少なくともアメ車のハンドルが左についているのは、助手席にベイビーちゃんを乗せたとき、ボタンの隙間からブラチラするのを眼福頂戴するためである。馬車の時代の貴族紳士の文化がそのまま自動車に反映されたのだ。ちょっと考えればわかるが、右利きの男が、押し倒そうとする女性を自分の右に座らせるなどというのは、かなりの不都合である。押し倒すのも左手になれば、そのまま彼女のボタンを外すのも左手になる。右利きのメイドが留めやすいように作られた左前のドレスを、わざわざ左手で脱がそうとするのは、アホなおこないだ。
 つまるところ、それは逆の発想なのである。
 左ハンドルは、襲わないことの確約。
 その後、左ハンドル車の助手席に左前のブラウスは、特に車の所持率の高い広大で暑苦しい薄着の南米あたりで絶対に不都合があったと思うのだが、メイドなんていなくなってからも、その形式が守られ続けたのは、サービスサービスぅ、な事情があったというのは想像にかたくない。決まって運転者たる男が左に座る車が普及した国で、左側から覗ける形の衣服が定着するなど、エロいこと考えている以外にありえません。
 というわけで、車中では、おさわり厳禁ながらチラ見せ合戦な修羅場が繰りひろげられ……ホラー映画よく見るひとならぴんと来るでしょうが、アメ車で、やたら女性が上になって腰振っているシーンがあるのも、右利きが助手席から手をのばしやすいアメ車の構造による必然。

 さて一方。
 馬車やガス車よりも、自分の足がもっぱら移動手段だった日本。
 日本の着物は、男女とも右前です。
 かつて、中国では左に立つひとのほうが偉いんだというのがあって、それが日本にも流れて「左大臣」と「右大臣」では左のほうが偉いのだけれど、その後、日本独自のルールとして、結婚式で、男性が右に座るようになる。お雛様もそうである(京雛だけは昔ながらの逆)。
 わかりやすい。
 解説するまでもなく、姫を押し倒しやすく、押し倒すと同時に右手を彼女の左生乳房にまですべりこませることが可能で、着物の場合、そのまま腕力で脱がせることまでができる。天皇の立つ位置だとか日の昇る方角だとか風水的なあれこれはまったく無視して、右利きの夫が観客の目から左にあるほうが、いまにもことがはじまりそうでニヤニヤできる、その一点において、ここまでの普及をみせた立ち位置なのである。
 
 で、後付けで自動車がやってきた。
 そんなことをいわれても、いまさら彼女が右に座るとか違和感ありまくりなのである。右利きなのに右の空間がないとか、あまりにも助手席本意なデザインだが、和車はもう、それでいくしかないほどに男が右で固まっていた。
 ちぐはぐなことに、そのころ日本ではすでに着物がすたれはじめ、あろうことかブラチラをこばむかのように外に開いた女性の洋服が普及しはじめる。運転席から見れば、悶々とする光景である。着物なら、すーっと右手を差し入れられるのに。クソボタン文化め。

 で、ホテル代もない若いのが辛抱ならずにひとけのないダムまで車を走らせ押し倒す。
 という文化が、ここに成立する。
 そんなわけで、日本のカーセックスで女性上位というのはあまりメジャーではない。
 かのホラーの生ける伝説、スティーブン・キングの名作で映画化もされた『痩せゆく男』というのがあるが、その冒頭は、助手席の妻が欲情して運転中の夫のジッパーをさげてフェラチオをはじめ、そのせいで集中力を欠いた夫がヴードゥーの魔女を撥ねてしまうシーンだ。それによって呪いがはじまり、夫は痩せつづけるのである。怖い。

THINNER

 だが、あなたが女性(もしくはゲイ)で、右利きで、しかも日常的に日本車に乗っているなら、映画はともかく原作小説の『痩せゆく男』を読んだとき、このシーンは共感しにくいはずだ。右に座る相手には、裏拳で漫才のツッコミは入れやすくても、ジッパーをおろしてフェラなんて、かなりの違和感である。面倒くさいから、そっちから押し倒して欲しいくらいよ、助手席のほうが広いし。

 実際、助手席から右の運転席にアプローチをするなら、右利きの場合、自然と袖を引いて「ねぇ」という問いかけのニュアンスになるものであり、これは日本男性好み萌え文化にも合致する。そのような都合から日本車が右ハンドルになったのは疑問の余地のないところであり、そうなれば、おのずと先の結論に結びつく。

 アメ車であれ和車であれ。
 閉鎖空間でふたりきりのとき、どうするんだエロを。

 この命題がさほど切実でなくなったのなら、もうどうでもいいのである。
 ぶっちゃけ、服もボタンのついていないもう一枚の皮膚のようなぴったりニットのチューブトップとか、そういうのが良い。ブラチラとか、需要自体がすでにないのだ。脱ぎたいなら彼女は勝手に脱ぐだろうし、そもそも脱ぐデートがしたいのに車に乗ってどこか行きましょうとかいうくだりが、近ごろではなくなっているのである。

 ナイフもフォークも、箸も使わない。
 近代化めざましいインドでは左手でケツを拭かなくなったという。しかしカレーはあいかわらず右手だけで食うので、不浄ではないのに使わない左手があまる。そういうわけで、スマートフォンをいじりながら食事をする風景は、いまや世界で常態化。

 だいたい、左手で箸を使ったら肘が当たる兄弟がいないし。
 おひとりさまっ子ならば、むしろ「この子もしかして左利きなんじゃないの天才の脳だわ」という流れであって、矯正するとかしないとかいうことでさえなくなっている。

 そんななか、右手専用マウスが消えていく。
 若者が車に興味を持たなくなったために尖った車をメーカーも出しづらくなり、全車エコカーのラインナップになったのと、同じ流れだ。
 いまどき、右だ左だ、そんな思想でわけることさえ鼻で笑われる。
 みんないっしょで、みんながつかえる。
 それが売れる、という社会。

 そして私は新しいマウスに馴染んでゆく。
 左右対称なことで、握りにくいということはない。そこはそれ、進化である。だれがつかっても心地良い物作りについて、みんなが考えている、よいこな世界なのだ。

Wireless Mouse 5000

 起きた問題はひとつ。エルゴノミクスデザインな右専用5ボタンマウスで右側面についていたボタンは、薬指で押しやすいようにかなり前の位置についていた。それが左右対称になって、左利きのひとが親指で押しやすい位置になっているため、ひどい違和感がある。いまのところ、押したつもりがボタンのないところを、というのが数度に一度あるが、人間工学とは、慣れに負けるもの。そのうち、というほど遠くもないころ、第5ボタンも私の手の一部になっているはずだ。

 右だ左だ考えない人類のために、偉大なるマイクロソフトが送り出した世界標準の左右対称マウス。これを買うにあたって、実際に使っているひとたちの意見をいくつも読んだのだが、日本のまさに車離れ激しいオタク層の強者たちが、正しい使い方を見つけて絶賛していたのは興味深かった。

 左手でも操作できるワイヤレスマウス。
 ということは、電子化したエロマンガとか、アダルトビデオとか、5ボタンで自在に操作しながら、いつもの右手で快適マスターベーション可能。その後、3秒でチンコをしまい、マウスを0.1秒で右手に持ちなおし、仕事に戻れる。

 なるほど。
 こだわりがなくなるというのは、すなわち自由ということ。
 左右のない道具が来たから、両手を使いはじめる。
 人類から利き手がなくなる。
 ビバ・ボーダレス!
 どっちが押し倒しても、押し倒さなくても、いいじゃないか。
 最近の人類が、私はけっこう好きです。

 「平和主義者も使えるひとを殺せない銃」とかもマイクロソフトで出せばいい。
 左手でエロマンガ読むみたいな、思いがけないしあわせな効果が自然発生するかもしれない。


(追陳。『マイクロソフト ワイヤレス ブルートラック マウス Wireless Mouse 5000 クール ブラック MGC-00008』の使用感をググったのに駄文を読まされてしまったあなたへ。私が年代物のマウスを使っていたせいもあるでしょうが、操作感覚の向上はめざましいものがあります。おそらく、悪評のほとんどが、その敏感さゆえにまだ慣れないうちに書かれたものです。慣れ、が人間工学を凌駕するのを肯定してはいけませんが、少なくとも私にとっては、最初に手に取った「おお、あきらかにスムーズ」という感動のほうが勝ちました。BlueTrackテクノロジー、ジーンズの膝の上でさえ正確にポイント操作させてくれます。エネループ使用、一ヶ月ちょい経ちますが、警告皆無。マイクロソフト製ワイヤレスマウスを使い継いでいるのだから、当然そうでなければならないのですが、このマウス、ちゃんと進化していて、前より快適です。小さくなったレシーバーはコードがなく、我が家ではモニタの後ろにUSBハブがあるにもかかわらず、部屋の中ならどこにいても問題なく動作。ボタン位置には慣れる余地はあるものの、上のブログは冗談ではなくて、左右対称でだれでも使えるようにすることで車種も絞られコストが抑えられ尖ってこそいないけれどものすごくエコ、というのは、褒めるべきことだと私は感じます。良いです。迷っているなら買ってください。とオススメする個人意見でございます) 

  

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