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『ブロック塀を殴り壊す』の話。



○9月11日

いよいよ涼しくなってきて、帰ってから小一時間の庭を掘る作業(バイク用ガレージ制作中につき)が習慣づいてきたのだが。暗闇で穴掘っている男の姿に気づいて通行人がひっ、と息を飲むのにこっちが驚いてしまう…

目の前通学路だし、さっさと仕上げないといつか通報されるだろう。それにしても木の根が難敵。よく映画で森で屍体埋めるのにさっさと穴掘っているが、あんなのぜったい嘘。

○10月14日

掘った庭の傾斜に土砂崩れ防止に芝生の種まいて芽が出はじめたところだったのに凄い雨。まだ根が張ってないんだよ、流れちゃわないかなあ。早くやんでほしい…

降りつづいたなあ…もうすぐ朝だ。

○11月1日

引越し後、初の水道検針でメーターが見つからず。思いっきり上に土を盛って芝まで茂らしてしまっていた…検針員のおねえさんと一緒にスコップで掘り返しました。気づかなかったのです。ごめんなさい。

お庭が土だと、よくあるんですよ。このフタ茶色じゃなくて別の派手な色にしたらいいんですけど。と言ってくださったが、いやたぶん目立たせないように気を使ってそういう色なのです。私が愚かなのです。

○11月30日

いよいよブロック塀を壊しはじめるので向かいのおばちゃんにご挨拶。ハンマーでがつがつやる音を御容赦くださいと頭を下げたら「あんたいろいろ器用やなあ、まあがんばり」って言われた。いろいろってなんだろう…

○12月9日

ブロック塀破壊中。駅前で人通りが多いので音も粉塵もひどい電動工具は断念。結果、ハンマーとチスで庭の側から根気作業。ブロックに隠れて私の姿は見えないから、激しい打撃音にみんなキョロキョロしている。

○12月11日

ブロック塀との戦いで右足をぐねる。インドメタシンとロキソニンでなんとか一日のりきったが…紫色。あのブロック野郎、粉になるまでくだいてやる。 


twitter / Yoshinogi

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 というわけで最終戦。
 たかだか10kgの軽量ブロックが、縦に六段横に三列。
 総重量は鉄筋抜きでおよそ180kg。

 去年だったか、GAORAFIGHTING TV サムライで観たグリコのパワープロダクション提供大会で、新日本プロレスの中西学選手がベンチプレス180kgがマックスだった。ちなみにその大会で優勝したのは、全日本の近藤修司で225kg。近藤修司は、ジュニアヘビーの選手である。つまりは、100kgも体重がなくたって、200kgは持ち上がるのだ。

 となれば、私がしようとしているのは、ベンチプレスではなく、たんなる横方向への移動である。180kgごとき、動かせないでどうする。

 とか思って、ふんっ、と力を込めてみたら、持傷の右足甲がまたピキっていった。忘れてた。筋力の問題ではないのだった。私の中足骨はなんどかの骨折によって、強くなるどころか脆弱きわまりないことになっている……紫色のアザになるわ、足全体が腫れるわ。もう何度もやっているので病院にも行かず、ツイッターの通りに痛み止め飲んで、鎮痛剤塗りたくって、それでもあきらかに脚を引きずっていたので職場で迷惑をかけたよごめんなさい。あ、店員さんだ、あの棚のうえの商品、ラダーにのぼってとってくれない? と笑いかけてくださった彼女の顔が「あ」となるのを見るのはつらいものです。

 というわけで。
 これからブロック塀を破壊するあなたに伝えるひとこと。

 おうちゃくしないで割りましょう。

 大阪の商店街を歩いていると、ぜったいに近所に住んでいるのに、ありえない量の荷物を自転車に積んでそのうえ片腕にまでビニール袋を下げ、のろのろと走るとは呼べない速度で進んでいるおばちゃんを見かける。どう考えても、半分の荷物で、すいすいと運転していったん家に帰り、もういちど買い物に行ったほうが早いのに、おばちゃんの頭には一日に買い物は、出かけたら帰ってオシマイのこと、という呪文がかかっているらしい。

 おなじこと。
 ブロック塀は、つなぎ目で簡単に割れます。
 ハンマーとタガネ&チスがあれば、180kgの壁なら三十分もかからない。
 あとは10kgのブロックを十八回、どこかへ運ぶだけです。
 180kgをどうこうしようとか、半分に割って90kgならアルゼンチンバックブリーカーできるかなとか、プロレスファンはなにか自分の限界を試さなくちゃいけない呪文を鼻の奥にかけられているのですが、それは醜くて愚かしいおばちゃんの買い物自転車なのです。
 で、あげく転んでケガをする、と。
 もうほんと、あなたがブロック塀を壊したくてその方法をググってここを訪れたのなら、悪いことはいわないから業者に頼みなさいなんて、そんなことは言いません。ぜひとも近所のホームセンターで、ハンマーやらブルーシートやら買って自力で挑んでみてください。純粋に楽しい作業でもあります。でも、ともかく、180kgとかってアンドレ・ザ・ジャイアントとかビッグ・ショーですから。ああいうのにフライングボディアタックとか受けて、死なないのは受けている選手もファンタジー世界の住人だから。私たちは生きているのです。だから自分の体重の二倍とか受けとめたら、骨がバキるのです。そのことは肝に銘じて。

 映画『告白』で、推定3kgほどの角張ったトロフィーで頭をかち割られる少女という幻想的シーンがありましたが、あれを見たとき私は「女の子はすべすべしていて気持ちのいいものだから殺しちゃダメだよなあ」と思ってしまいました。だったらすべすべしていなくて気持ちが悪ければ殺してもいいのか。私は私自身の基準について深く考えました。観る者にそういうことを考えさせるのは、いい映画です。あのとき、確か、それにしてもそんなトロフィーごときでそこまで流血するかねと大日本プロレスファンのひとりとしての感想も持ったのだけれど、いま思えば、重量よりも角度なんですよね。鋭角なもので殴ればがっつり血を噴くものである。10kgのブロック一個なら、ヒトは殺せます。首の据わっていない赤ちゃんは抱きにくいと言いますが、10kgの米袋が足に落ちても大丈夫だけれど、首の据わりきったブロック野郎が鋭角に攻めてきたら、首だってもげます。

告白

BJW

 ……ふーむ。
 まったくなにを書いているのかわからないことになってしまっているけれど、ともかく、私は後悔しているのです。
 あなたは、やめておきなさい。
 地面に横たわっている180kgでさえ、あなどってはならない。
 ぜったい安全な、小指で勝負できるサイズまでやっつけるべきです。
 空手家とか、よく素手でブロック割っていますけれど。
 軽量ブロックって、そういうものです。
 人間の骨ごときでも割れる。
 まして鉄のタガネやチスなら、瞬時。
 うん。わかっていますよ。
 問題は、目の前に180kgのもの言わぬ自由に戦える敵があるとき、それを持ちあげたい、生身で粉砕してみたいという欲求に、勝てるかどうかなのですけれど。
 自制することをオススメします。
 少なくとも私は、職場では安全靴を履くプロとして、足どうしたのと訊かれても、ブロック塀と戦って負けたなどとは言えませんでした。ちょっと足首グネっちゃって。いやもう平気なんだよ、気づかってくれてありがとう。
 なぜ勝ったところでなにも得られない戦いに挑んで勝手に負け、それ以上訊いてくれるなと唇噛んで涙をのまねばならぬのか。
 アホなことは、やめておくべきです。

 これくらい書けばもういいか。

 私があなたに伝えたい注意点。
 まず、電動工具を使うと、町内一帯が粉塵の白煙に包まれます。洗濯物とか、道行くひとの高そうな上着とか。そんなものを汚した大罪で裁判がしたくないなら、手作業にこだわるべき。ブロック塀のなかには(正しい施工が為されているなら)縦横に鉄筋が走っているはずですが、それらもタガネで叩ききれます。スライドさせる空間の余裕があれば、100均でも売っている金鋸でギコギコやれば五分ほどの仕事です。

 そして、倒したあとも、時間をかけるのをいとわないこと。これくらいの大きさで持ちあげて運べるだろう、という大きさのさらに半分にまで加工しましょう。特に日常的に汗をかきなれているひとこそ、みずから発するアドレナリンに気をつけるべきです。思いのほか、作業は楽しい。で、いつのまにか汗みずくになって、休憩も忘れ(私などの場合は目の前が大通りなので、通行人の目もあるため、なるべく集中的に片付けたいという思いもありました)、気がつけば、うりゃあっ、などと奇声を上げて、自分の頭上にブロックを持ちあげていたりするのです。そして、自分がやれると思っても、腕が重くてパンチが出せない瞬間は突然に予告なくやってくるというのは、ボクシングの試合を観たことのある方ならご存じのことでしょう。
 足の甲の骨が、突如、ぴきっ、ということもあります。
 その骨は、疲労骨折で折れることでもよく知られている。
 ヒトは、踏ん張ったり、行軍したりで、自分の筋力を使って自分の骨にヒビを入れられるのです。
 お気をつけあれ。

 逆に言えば、二十個程度の軽量ブロックで構成されるブロック塀が、手作業で壊して楽しい限界でもある。それ以上になると、倒れた重量で地中のガス管を破裂させる(たいていの住宅の庭にはライフラインが走っているものです)なんてこともありうるし、粉塵は出ないかわりに、ハンマーとチスは、かなりの打撃音を放つ。一週間も続ければ、私の住む街ではだれかがまちがいいなく通報します。ていうか、私は作業二日目で、恐ろしく太った婦人警官さんに、家の前に陣取られメモを取られまくりました。話しかけてはこないのがまた怖い。単純に、だれも通報しなくたって、界隈の派出所に打撃音は聞こえるわけで、この国の優秀なお巡りさんは音の出所をわざわざ見に来るのです。ちなみに私は以前、そのビッグボリュームな婦人警官さんが、信号機に取りつけられている鉄のボックスに耳を当てているのを見たことがあります。いつもと違う音がしたのでしょうか。絶対音感婦警さんなのかもしれません。だれがなんのために駅前の信号機に爆弾を仕掛けるのかはわかりませんが、ブロック塀を殴る音でもちゃんと見に来てくれるということは、ここに駐める私のバイクも彼女に守ってもらえるということだなと安心した次第であります。

 そしてその後のお話ですが。

 その後といっても壁を撤去したその日。
 ぎりぎり午後五時過ぎで市役所に電話したら「じゃ、いまから見に行きます」と言われて、本当に三分で作業服の担当者二人が見に来てくださったのですが。
 家の前に溝がある。
 側溝というやつです。
 これを、バイクが渡れるようにフタしていただけませんか?

「ここが境界線なんですよ」

 と、そのかたの指し示したのは、いま私の倒して片付けたブロック塀の端から、本当に十センチもないところ。そこまでなら市の仕事として溝にフタをするのだけれど、ミンセイ? とそのかたは言っていたんだが「民製」と書くのだろうか。ともかくこのラインからは溝もミンセイのもので、つまりはそういうこと。

「ご自身でがんばってください」

 あーそうですか。
 面倒くせえ。
 げんなりしていたら、そのかたがおっしゃった。

「でも、この工事ひとりでやったんでしょう? キミなら、そっちがよかったかもしれないですよ」

 キミってあなた。
 どうも、作業服を着たひとは、コンクリートと戯れる相手を仲間だと認識するらしい。なんだよ、ここだって市内なのに、市民税払っているのに。引っ越してきたばっかりだけどさ。

「もしもこれが市の溝なら、フタはしますが、この段差だとなにか置かなくちゃならないでしょ。それって、使用料が必要になるんです」

 なに?
 なんというか、税金もらっているのにとかいう視点ではなく、道路も溝も、造って管理しているのはこっちなのだから、使うなら金払えという図式があるのだという。

「ですが、ここならお好きにどうぞ」

 言われてみると、私が自分でやるなら、鉄板置いておしまいとか、そういうつまらないことでは気がすまない。段差プレート加工してなめらかスロープを作るか……市役所が勝手にやれと言ってくれたのだから、これはこれで良かったのかもしれない。

 ありがとうございました、と残業になってしまったはずの市役所の方々に礼を言い、掘られた庭と、なくなった壁と、痛む足と、溝を見る。
 疲れた……
 もう冬だ。
 しかし、次の買い物で、いよいよこの件にはけりがつくだろう。

 という報告の今回でした。
 そんなこんなで、180kg程度のブロック塀を壊すために必要な買い物リスト。

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○材料

石頭ハンマー 1.0kg

hammer

タガネ

hammer

チス

hammer

 これで必要充分。
 もちろん、ブルーシート、革手袋、防護眼鏡などは欲しいところ(私は、ふだんはもう着けなくなった古い眼鏡を破片飛び散る作業のときには着けるようにしています)。
 あと、チスを尖らせるのに、電動ドリルと回転砥石があれば便利。砥石や金ヤスリで、手で研ごうとすると、超合金の超の字の意味を知ります。180kgくらいなら、一気にやっちゃえば、研ぐ必要さえないかもしれませんが、私の場合は、今回撤去した壁には続きの壁があり、そちらは壊さないように最初に丁寧な仕事でハツっていったため、研ぎ道具は必須でした。鉄筋もタガネで切るなら、それはもう手作業で研ぐのは心が折れるほど刃が欠けますから、電動工具はあったほうがいい。

 一家に一台、ドリルです。

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『ドリルは穴を開けるために』の話。

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(↑このときに作ったスロープは、角度がありながら勢いをつけすぎると家につっこむため、低速での厳格な坂道発進を要求され、夜間にはちょっとばかりやりすぎな爆音を発してしまうことが私の繊細な心を悩ませ、けっきょく、ブロック塀を壊してのよりなだらかな駐車スペース作りの今回へと発展したのでした。なので、いまもまだ遠い実家に愛車は眠っている。キャブレターのガソリンが心配になってくる期間になってきました)

 といったあたりで、足も痛むのでさようなら。
 せっかくガレージも完成するのに、シフトチェンジできない足に……これが治るころには正月かなあ。思えば、今年の正月、実家にバイクで帰って凍結カーブですっころんだんだよなあ……

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『折れたペダルの応急処置』の話。

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 思えば、今年、この右足は三回目の引きずっているモード。
 二回目もバイクだった(階段をのぼらせてみたら足が挟まりました)。
 考えてみたら、今年は一年の半分以上、右足をかばって生活していた。
 そしてたぶん、痛むまま年を越す。
 頑丈なブーツでも履けばいいんでしょうけれど。
 私のなかで、アメリカンバイクは素肌に革ジャケットとか、やっぱりそういう乗り物で、身を防護するいかにもバイク乗りな装備とか、イヤ。峰不二子とか林白龍みたいなツナギ着てバイク乗るくらいなら、全裸にヘルメットのほうがマシ。
 安全靴さえ我慢ならない。
 あの、右足の感触こそ、このオートマチック時代に排ガス規制前のミッション車に乗る魂だと……そんなに大げさなことではなく、基本、ちょっと買い物に行くくらいでしか乗らないので、普段着で乗ることを自分に禁じたら、もうバイク乗りそのものをやめそうな気がするからスニーカー乗りなんですけれども。

 来年は、ていねいに生きよう。
 痛む足にインドメタシンを塗り込みながら、ため息つきつつ思う年の瀬です。

Concreteblock

(↑壁の内側から、錆びた鉄筋をタガネで叩き切ったところ。町内がうちふるえるような激音を数十回の果て、ふと抵抗がなくなったあの瞬間の絶頂感に、私はアヘ顔をしていたことでしょう。仕事で、機械を使って鉄筋を切ったことは何度となくあるのですが、ハンマーとタガネでは初めてで……これは格別でした。全力でなにかを終わらせる快感を堪能できます)

ホームセンターのコメリドットコム


 
 

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