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『ハロウィンの月齢占い』の話。



 なにもない暗闇に浮かんでいる岩のかたまりであって、光を発しているわけでもなく、高らかに歌っているわけでもない。なのに世界中のだれもが月のことを知っているし、生まれたときから地下牢に幽閉されている箱入り娘以外は、実際にその目で見たこともある。

 月に悪感情を抱くことは少ない。

 ヴァンパイア映画では、演出として夜空に煌々と輝く月のカットを入れたりするのが定番だけれど、あれは、月が輝いているからこそ、夜の暗さと孤独が引き立って見えるから、その果てのない底なしの闇宇宙が恐怖を予感させるという効果であり、むしろ闇夜の月は唯一救いのランタンだ。

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『ハロウィンとは?』のこと。

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 ハロウィンです。

 古代ケルトの暦では11月1日が新年。
 その日は、すばらしき陽気な夏の日々の終焉であり、暗黒の冬がはじまるSamhain (サメェン・夏はいっちまった、の意)。 その夜、月さえもない闇の世界と現世がつながり、あらゆる精霊と神が、愚かしき人間の街にさまよいだしてくる。

 だから人間も、精霊のフリをしなければならない。
 シーツをかぶって、ぼくはオバケだと言い張らないとならない。

 しかし、死んでもコスプレなんてしたくないというヒトたちはむかしからいるもので、そういうヒトたちは、すなおに神々に生け贄を捧げたという。

 ああそうだよおれたちは愚かな人間さっ。
 だからこいつを代表で殺すんで、もう一年大目に見てくれよ、神。

 ある種の逆ギレである。

 そこに神と精霊のいるかぎり、引き起こされるのは幸運ばかりとは限らず、願っても願っても、陰と陽は背中あわせ。なにかを得るために、なにかを失わなければならないのは太古の昔から人の知っていたことで、だからこそ。

 先にみずから生け贄を出す。
 百回願えば叶うという儀式なんかもそうだし、好きな相手の名前を絆創膏で隠して10日間剥がさないというたぐいのおまじないも、不便で不潔な真似をしたんだからそれ相応の見返りがあってしかるべき、という発想。

 呪いの儀式は、人に知れてこそ発動するという説がある。
 丑三つ時に、わざわざ光を反射する白い着物を着て、頭にはあかるくロウソクを結わえ、五寸釘でワラ人形をガッツーンガッツーンと神木に打ちつける。翌朝、だれかが、なにが起きていたんだと近づいてみれば、そこにはサエコと名前の書かれた釘刺しのワラ人形。その日のうちに、サエコ自身にもその話は届き……
 まあ、普通の神経の人なら、体調も悪くなる。

 重要なのは、部屋でひとりでサエコ人形に釘を刺したって、そんな呪いは発動しないというところ。言いかえれば、憎きサエコを呪いたい一心で、丑三つ時の儀式を執りおこなった、そのリスクに対するリターンとしてサエコは現実に床に伏すわけである。鬼気迫る気迫で演じないと、釘を打ちつけているさなかに取り押さえられる可能性だって高い。派手に、しかし、なにものも寄せつけがたいほどに負のオーラをもっておこなってこそ、儀式は成功と呼べるのです。

 ハロウィンの生け贄にも、似たところがある。
 祈りと呪いは、それもまた背中合わせ。

 ここまでやったのだから悪い年になるはずがない。

 そう想うために。
 どれだけ大切なものを捨てられるか。
 それが祈り。

 しかし、なにかを捨てるというのは勇気のいるものです。
 それが他者の命だったりすれば、理由も必要になる。

 そうして、ハロウィンに、人々は夜空を見上げるようになった。

 ハロウィンに三日月から上弦の月にいたるころwaxing moonなら、それはとても良い兆し。やってくる年には、満ちていく月のような出来事が起きると考えられる。

 もちろん、ハロウィンが満月ならば天の窓が全開放状態になった狂おしいまでのフィーバーで、精霊たちも浮かれ踊っているから、ここぞとばかりに無茶な願い事をしてみるのもアリ。

 新月は、闇夜。ハロウィンが闇なんて、最悪なように思えるけれど、多くの地域で、それは新たな年に、新たな命が誕生することを指し示すとされる。最悪なことが最初にあったんだから、こここそが無でありゼロであり、見返りとしての誕生がそこから生まれ出るはずだという解釈でもあるのでしょう。

 真に最悪なのは。

 Waning moon……直訳すれば、弱くなっていく月。
 十八夜を越え、下弦の月、そして新月へといたる欠けていく途中。

 そのときこそ、人々は生け贄を捧げ、新年を憂えた。

 で。
 今年のハロウィンが、まさにこれです。
 空を見て!! ああ!!
 闇が来る!! おお!!
 さあ、生け贄をさがそうかっ!!

 ……というわけにもいかないので。
 御守りでも身につけて一年、気をつけましょうか。
 いやいやそんな後ろ向きなことではいけない。
 祈りましょう。

 呪いも祈りも、気の持ちようだし。
 私のことをいちばんよく知っているのは私。
 みずからを欺くまでに信じ込むことでしか、祈りも発動しない。

 闇夜の新月へ向かう年。
 だからこそ、先手を打って、差し出すのです。
 闇だからこそ、光を見誤ることはない。
 さらけだし闇にこそ祈れ。
 手をのばせ。
 その願いへ。 

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 思っていたよりかなりの時間が経過している気がした。日暮れからどのくらいたったのか記憶がない。このあたりはいつも夜になるとこんなに暗いんだっけ? いつもなら、かすかな月明かりが雲のフィルターをぬって林冠のすきまから地上に届いているはず……。
 でも、今晩は違う。夜空は漆黒の闇。月は出ていない。影に姿を隠している。
 新月だ。


 ステファニー メイヤー 『トワイライトII』 

new moon new moon

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 いきおいで書いたけれど、
 しかし今、空を見上げれば豪雨。
 欠けゆく月さえ見えません……
 古代ケルトならもう数時間で新年。普段は実りの雨でも真冬に向かうハロウィンからの時期では意味もなく、こんなの占い的には最凶最悪のはず。

 現代は今日が大晦日でなくて、よかった。

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