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『サマーソルトツキシマユニ』の話。


Unitokagewater

作・ツキシマユニ × ヨシノギタクミ

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それは、水彩画であった。
これは、挑発だ。
先日、ツキシマユニはクレジットカードを紛失し、
大阪の話の長い警察官に届けを書かれているうち終電を逃し、
人生初のネットカフェ始発待ちをしたのだという。
ユニさんはもうずいぶんと前にパソコンが壊れてから、
別に使っていないからいらないやと新調していなかったくらい、
アナログな絵描きなのであるが、
その彼女がネットカフェで朦朧としながら、
「大きな画面で紅いトカゲを見たの」

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『陰陽月蜥蜴巴図 / ツキシマユニ』の話。

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携帯では読んでくれていたらしいのだが、
テレビサイズで見るのが初めてだったのだという。
「すごいきれい」
そして、
「あたしが描いたのに別の絵みたい」
なことに心が揺れたのだという。
うれしいことだ。
そして彼女はメモ帳を持って私に訊いた。
「パソコンの買いかたを教えて」
なんならイチから組もうかと言いかけたが、
彼女が求めているのはそういうことではないのだと気がついた。
翌日、電気屋に直行して、
ユニさんは立派なスペックのマシンを買った。
行動する人である。
安いパーツを探すから待っていろとか言わなくてよかった。
思い立ったときに行動する人を惑わせてはならない。
と、いうわけで。
私はこれからツキシマユニのサイトを立ちあげさせる。
時間はかかっても、デジタルな絵を描かせてみせる。
身近に初心者が現れるって素敵(笑)。
……と、そこまではいいのだけれど。
だから、ユニさんは知っていたのである。
「はい、また描いてきたの」
と私にわたす、私のトカゲ。
それは前回同様、私が手を加えるのだということを。
だとすれば黒い背景に変えるだろうことも。
わかっていたはずなのだ。
なのに水彩画。
まっ白いキャンバスに、淡い水彩絵の具。
挑発だ。挑戦だ。
あごの先をほらほらと中指でくすぐられている状態である。
合作、してみせなさいよということである。
その結果が、これ。
ここまでの話でおわかりだろうが、
もとのユニさんの淡いタッチの作品とは別物です。
どこに落とすか迷いながら、
色味もだいぶんと変えたのでユニさんも怒るかもしれない。
でも、やったよ私は。これでどうだよ。
ツキシマユニ。
新品のモニタの前で。
いまごろ、ふふんと笑っていることだろう。
ああーっ、はいはい。正直なところ、私も、もとの絵のほうが好きだ(笑)。
水彩画は生にかぎる。

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10:24 PM May 14th

ユニさんがやって来て、台所で妻と談笑している。会話に入れないので私は書斎でHaloをする。

twitter / Yoshinogi

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 などとわたしが書斎でつぶやいていたとき、彼女たちがきゃっきゃと話している中心には、ユニさんがカバンにスケッチブックとともに入れて持ち歩いていた数冊の本と、妻が本棚から引っぱり出してきた数冊の本。



 なかでも今回の話題の中心は、こやつ。

diet

 世の常というやつで、女性が集まるとそういう話がはじまって、そのそばにいると、つい口を出したくなるけれど、私の出す口というのは、どうも批判的だと彼女たちには映るらしく。
 ときには、

「あなたみたいにあたしに毎日腕立て腹筋しろって言うんですか!!」

 みたいな、よくわからない逆ギレをされる。
 いや、すればいいじゃない。
 ていうか、わたしが毎日腕立て伏せをしているのは、脳内興奮物質を自家生産するためであって、ダイエットのためなら、同じ部位を鍛えるのは一日おきにしたほうがよいということくらいは知っている。
 肩胛骨開くよりも、エネルギー燃焼させられる筋肉つけたほうが速効じゃない? 一日おきにちょっと限界を越えてみるだけのことだよ。
 で、またキレられるわけである。

「それをしたくないからこういうの読んでんじゃないですか!!」

 んな本をカバンに入れて持ち歩くのを面倒だと思わないなら、ダンベルを足首に着けて生活すればいいのに。カカロットは、そうやってスーパーサイヤ人になっていたように記憶しているが。

 そこでユニさんが、得意顔で言った。

「そんな努力しなくても五分の体操でいいんです」

 無限ループ。
 なるほど、それは聖書で、だからカバンに入れて持ち歩いているわけだね。だったら口は出さない、わたしは他人の信仰には触れない主義である。
 しかしまあ、わたしの宗教的には、

「一日五分、全力腕立て伏せしたら、半年で痩せるどころかバストアップまでできちゃうはず。ゴッチ式こそ最強!!」

 なのだけれども。

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『プロレスの神様』のこと。

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(蛇足になるが、いま、カール・ゴッチが逝ったとき自分の書いた文章を読み返し、わたしの想い出しているセリフが、あまりにもオッド・トーマスの「タイヤの生活」であったことに驚いた。

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「もしタイヤの販売員になれたら、公平な値段で品質のよいタイヤを提供して、人のために役立つ仕事ができるでしょう。ほかに何もしないで、ただタイヤの販売員になって、以前知っていた女性といっしょに小さなアパートメントで暮らせたら、ぼくはそれだけで充分じゃないかと思うんです」


 ディーン・クーンツ 『オッド・トーマスの救済』

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『オッドトーマスの救済』の話。

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 わたしは、そういうシンプルな生き様に、ものすごくあこがれているのかも。カールも、オッド(ディーン)も、シンプルではない、からまった人生を生きているからこそ、ヒトはそうあるべきだと発言しているのであって、それはたえず幻想のなかのものなのかもしれないが)

 そういうことはかしこくも口に出さず、私は純粋な興味から「五分でできる体操でどうやって一冊分の文章が書けるのか」漫画家ってすげえな、と思いつつページを繰っていったのでした。

 だがしかし。
 五分でできる体操、やっぱり最初の数ページで語り終えておりました。後半、ふつうに筋トレじゃないかーっ!! 女の子座りから後ろに倒れるとか、わたしも毎日やっているストレッチが、ふつうにわかりやすく解説。しかし読者たち、後半無視していますよ、かなつ先生っ。ゴッチ式信奉者の目から見ても、かなつ先生のトレーニングは、慣れないと遂行すらむずかしいものが含まれている。そうとう鍛えていないと、まずそんな体勢になることができないはず、という運動がいっぱい書かれている。きれいになるためにはなんでもやると断言して実践するかなつ先生自身の生活と、五分の負荷なし体操でダイエットという本のコンセプトが相容れていない感があるのですが、それをきっちり一冊にして売れるものに仕上げてあるところに、ベテラン漫画屋の職人芸を見たのでした。
 勉強になります。
 なんでも読んでみるもんだね。

 で、妻の揚げた天ぷらを食べ、ユニさんのおみやげのラスク(なんかホワイトチョコレートがたっぷりかかってた。大阪で行列のできる店のらしい。でもラスクって、店で作っているわけではなくて、工場で作ったのをパッケージで並べて売る形態なのに、どうすれば行列ができるのか謎だ。しかし実際に行列ができているというのだから、首をかしげても仕方がない。この世には不思議があるのだと認めざるをえまい)を食べ、私が冷蔵庫から出してきた、人からもらったのだけれど、私には甘すぎるリキュール(月桂冠のプラムワイン)をソーダで割って飲みつつ、終電もなくなったし泊まっていくよね、なんて言ってからさらに数時間。

 いつもの習慣で、BGP(バックグラウンドプロレスリング)としていくつかの大会を流しっぱなしにしていたのだが、ユニさんが、格闘技はよくわからないけど柔道は好き、などということを言いだしたから、録画してあった吉田秀彦格闘家引退試合直前の古賀稔彦との対談を観はじめて。

「古賀さんてこんな軽い人でしたっけ」
「吉田さん、むかしはかっこよかったんですよ」

 などという失礼なことを口にしつつ、寝転がったツキシマユニが、その一時間の対談をBGPに書きあげた新作がこれである。

Unikinokuniya

 とにかく紙があればそこに描く。
 一種、なにかにとりつかれているのかもしれん。

 そんな夜から、いくつかの日常を越え、先日、ツキシマユニは、わたしに言った。 

「カポエイラをはじめたの」

 ……いや、はあ、それはまた、マニアックな競技を。
 ちなみにカポエイラというのは、手首を手錠につながれた奴隷小屋の奴隷たちが、その状態のままで反乱を起こそうと足技を鍛えることにした、という伝説に端を緒す格闘技だが、彼らは反乱を奴隷商人たちに気づかれないよう、みなで集まってダンスを練習するふりで技を鍛えたのだった。そして現代カポエイラは、まさにその端を模すかたちで、音楽にあわせて相手の技をかわすことを主体とする足技格闘技として確立されている。



 多くの流派があるが、共通するのは根底の部分。

 本気で倒すつもりの蹴りを、よけ続ける。

 それが流儀。

 くり出すほうは本気で蹴らないといけない。しかしカポエイラの試合において、技が相手に当たるということは、失敗である。倒してしまったり、音楽にノれなくなってしまうことさえ、ブーイングである。なぜなら、そんなことをすれば脚にも足かせをはめられてしまうからだ。

「このあいだ、朝まで格闘技をいっしょに観て、影響されたのかも」

 そうユニさんは言った。
 ふむ、ほとんど観ていたのはプロレスだけれどね。いかに技を受けずに客を沸かせるかが勝負、というカポエイラは、たしかにショープロレスの王道に通じるものがある。でもだったら、女子プロレスや、女子格闘技の団体だって、一般向けのジムを開いているところは多いのに、なぜにカポエイラ。

「カポエイラって、勝敗があいまいだから」

 そこが良いのだという。
 勝敗がはっきりすると、悔しさで眠れなくなってしまうから、解放を願って舞踏に模した奴隷の特訓に惚れたのだ、と。

 そうですか。
 なにげにプロレスのビデオを流していたら、カポエイラをはじめてしまうって……それでわたしも「カポエイラ」なんてフォルダを作り、ざっと資料を集め出してしまったり。これでいつか、なにかを書いたりも、するだろう。
 ヒトとヒトというのは、なにがどうで、なんなんだか。
 奥が深いものだと、笑ってしまった。
 ぜひとも、来年ぐらいにはローリングソバットの演舞を魅せてもらいたい。なんてプレッシャーをかけると、また違うところに興味がいってしまう可能性があるので、このあたりにしておこう。

 いや、ツキシマユニ。
 行動する人である。

 鳥の絵も紅くしてみた。
 これからも、どうぞよろしく。

Unidove

 作・ツキシマユニ × ヨシノギタクミ 

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 あ。そうだ、話途中になっていた、

「サマーソルトキックってなんで夏塩蹴り?」

 の件だけど。
 調べてみたら、そもそも綴りが

「summer salt」

 ではなくて、

「somer sault」

 であるらしい。
 で、ふつうに辞書を引いたら、そのつづりで「宙返り」と出てる。まったくなにもおもしろくないので、語源をたどっていけば、ラテン語の

「supra saltus」

 が元の形であるらしく、これの意味は「すごく跳ぶ」。で、そこから先は、ラテン語辞書なんてものが手もとにないので、不明。
 けっきょく、なんにもおもしろい話ではなかったよ。
 とにかく、夏にも塩にもまったく関係なく、別の進化を遂げていたならば「スーパーソバット」に進化していたのではないかという感じだが、もしもあなたが「サマーソルトの語源」でググってここに来たのならば、自分でさらに調べてみてください。英語からラテン語にたどりつくあいだにフランス語の

「sombre sault」

 が語源だという記述も見つけたのだけれど、それだとほとんど真逆の「超えて落ちる」というような意味になるというところが不思議だし。まあ、跳んで一回転するキックだったりするのだから、跳んでもいるし落ちてもいるのかも知れないが。どうも、これで確定というところにたどりついていない感があるので、自信なさ気です。中途半端な調べものは豆知識にもなりません。

 そんなわけで、サマーソルトができるユニになって逢える日を、たのしみに待っている。わたしもその蹴りをかわして「Clothes line」をたたき込めるように、日々精進にはげむよ(かつて健介に蹴りをラリアットで迎撃されたときの、ずん様の表情は忘れられないものがある。全身で飛んでくるのを片腕で叩き落とすそれが男の生きる道。というような話は、わかってくださるかただけわかってくださればよし)。

 ではまた。
 次の「とかげ」も、いつまでもまってます。

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