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『リリスの増殖と孤独』の話。



 昨年暮れのツイッターから転載。

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アマリリスを株別けした。三つだと思っていたら四つに増えていて植木鉢も土も足りなくなったので、とりあえずいちばん小さいのを新聞紙でくるんで眠らせる。あした土買って帰って植えてやるから待て。
Dec 28th, 2009

球根と根っこでプランターがほとんど埋まっていた。鉢底石のかわりに敷いていた発砲スチロールにまで根がびっしり。
Dec 28th, 2009

ほとんど「隙間に土が挟まっている」ほどの状態だったのに、それで今年も咲いたのだからエラいものだ。
Dec 28th, 2009

可愛がらないのが咲かせる秘訣、とか書くと、なんか淫靡。
Dec 28th, 2009

帰宅。アマリリスの鉢別けを続行。夜中に道路脇で植木鉢並べて土いじりすると、ゴミを出しに行く人たちにビクっとされるのだが、これが私の日常では夕刻なのだ。ちなみに昼ご飯はデフォルトで17時である。仕事の日も、そうでない日も。
Dec 29th, 2009

まあ。ふだんからグラサンのアメリカンバイク乗りとして認識されているので、花をいじっているのがいかにもな妻ではなく実は私のほうだというのが、恐ろしいのかもしれないが(笑)。
Dec 29th, 2009

twitter / Yoshinogi

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 妻の実家が花屋なので、家族は年末になるとしめ縄売りの手伝いにかり出され、しかしわたしはわたしで年末も休みのない仕事なため、ひとりで長い夜をすごすことになるのだが。
 この冬には、やっておきたいことがあった。

 我が家のリリスのこと。

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『幽閉のリリス』の話。 

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 プラスチックのポットから巨大鉢に植え替えて十年ほど。
 七年目の春にようやく一輪の花をつけたアマリリスは、その後、咲き乱れるようになった。
 それはもう、激しすぎるくらいに。
 どう見ても、生えるところがなくて曲がった位置から飛びだして親を泣かせる親知らずな歯みたいに、鉢のあちらこちらの不自然な位置から葉がのび茎がのび、窮屈な様子なのだ。

 どうやら、球根そのものが増えているらしい。

 球根植物の増殖は、子供というよりは、クローンである。
 花が枯れたあとにタネもできるので、そこから増えるというのがまっとうな子孫繁栄の方法のはずなのだが、咲き乱れたあとに、球根を太らせるために茎を切られたリリスは、そのタネを蒔くことはできない。

 花を斬られ葉だけになったリリスに水をたっぷりやり、球根を太らせる。
 来年また、茎と花を愛で、斬りとり、種を朽ちさせるために。
 その姿に私がなぐさめられるために。
 幽閉のリリス。

 というのが、数年前のお話でしたが。
 生みかけたタネを何度も斬られているうちに、幽閉のリリスは、ついに自分自身の分身を生みだすことで、牢獄のなかに仲間を、家族を、創りあげたのです。しかし、ひとりではゆったりと暮らせた牢獄も、数人の自分自身と暮らすには狭すぎる。見る間にリリスは、やつれてゆきました。

 まず物理的空間がない。
 そして食事が減り、太陽も遠い。
 自分自身の影に、リリスは痩せていく。

 わたしは。

 えらぶことができる。

 リリスの分身を、リリスと認めるか、どうか。
 アマリリスが花を咲かせたあとにできる種子は、まだ芽をふいていないのだから、それを斬り朽ち果てさせることに痛みは感じない。それはたんなる、タネだ。タネは個人ではない。
 だが、リリスの分身たちは。

 葉をのばしている。
 茎をのばし、花まで咲かせている。
 それは、もう、タネではない。

 とにかく、掘り起こすことにした。
 年の瀬、ひとり。
 リリスを引き抜き、床にひろげる。
 土をはらう。
 その恥ずかしい部分が見えてくる。

 いびつだ。

 中心の大きなリリスに、添うようにふたりのリリス。
 変形し、丸い球根の形さえ成していないが、それでも茎をのばし花を咲かせた。
 手をのばす。
 私のリリスから、リリスの分身たちを引き剥がす。

 みしっ、と音がする。

 つながっている。
 怖いほど、ひとつになっている。
 力尽くに剥いで大丈夫なものなのか。
 けれど、わたしに迷いはない。

 ぱきり、と折って剥がして。
 それでもしも逝くのは、クローンたちだ。
 わたしは、痩せゆくリリスを、ふたたび孤独にしたいのである。
 ああ、そうだとも。
 力尽くでも。

 ぱきり。
 ぱきり。

 剥がした。
 ふたつに思えた分身たちは、剥がしてみればみっつだった。
 ひとつは、ひどく痩せている。
 まだ、茎も出したことのない、幼い丸みだった。

Amaryllis2010a

 そして、しばし考える。
 リリス増殖。
 正直、何鉢も欲しくはないのだった。
 燃やすか。
 それとも、朽ちさせるか。
 思いつつ、見つめて。
 けっきょく、わたしのリリスは陶製の黒い大鉢にのこし、リリスの分身たちを、プラスチックの安価な買い置きの鉢たちへ移すことにした。
 それぞれの部屋をもてば、待たず、分身たちも大輪の花を咲かせることだろう。
 けれど、部屋の大きさは、わたしのリリスがいちばん大きい。
 特製の牢獄。

 そして春。

 わたしのリリスが咲いた。

Amaryllis2010

 分身たちは、育ちこそすれ、いまだ、つぼみ。
 分身たちが咲き誇るころ、わたしのリリスはすでに、わたしに今年もまた、斬り捨てられていることだろう。

 なんらかわらない。
 孤独なリリスを愛でる。
 増えたところで無駄。
 クローンも、やはり、他人。
 個人を個人たらしめるのは、関係性である。
 わたしの目には、たったひとりのリリスが映っている。
 もう、十年になる。

 アマリリスの花は、咲けば三日ともたない。
 すぐにお別れ。
 リリス。
 また来年。

 春が来る。
 土の牢獄の鍵が開く。
 当たり前のように、扉を開ければそこに立っている。
 わたしを、どう見ている、リリス?
 成長はとめられない。
 また、斬る。
 笑顔ではないな。
 ため息をついているかもしれない。
 それでも、なにもかわらない。
 
 リリスが教えてくれたこと。
 くりかえす。
 季節というのは、美しいよな。

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『とかげの月/徒然』 『リリスの増殖と孤独』の話。