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『カーペットを丸洗いする』のこと。


 今日はおやすみで。
 原稿もあがったところだし、大掃除でもしようかと。
 春だし。
 と、いっても私の部屋はプリントアウトと資料が散乱した状態で、これは片付ける気がないため、リビングなどを。

 はじめてみたら、床。
 淡いブルーのカーペットなんですが、あきらかに一箇所だけが汚れている。
 私が、裸の尻をこすりつけて腹筋などしている場所である。
 世界の王貞治は、一本足打法を完成させるまでに、畳の上で素振りをして貫通させるところまですり切ったらしいが……表面がすり切れた時点で、板を敷くとかなんとか思いつかなかったものだろうかとあきれたことを思い出すが、まじまじとカーペットの汚れを見るに、はだしでスクワットをする私の所作のひとつひとつがその汚れになっていることは間違いなく、せめて夏場くらい、ヨガマットの一枚でも敷いてからやればいいのにと我がことながらに知恵の足りないイキモノだとなげくのであった。

BODYMAKER

 でも、夏は暑く、冬は寒く、それでも吠え、腕がちぎれるまで腕立て伏せするんだというテンションは、そういう「床が汚れるからラグでも一枚敷いてから……」という一瞬で心をくじくものだとワンちゃんもわかっていたのであろう。畳などとりかえればよい。汚れたカーペットは洗えばよいのである。

 というわけで。
 まずは、皮脂汚れに強いと噂される、重曹などを試してみる。水に溶き、タオルに染みこませて、重点的に汚れのひどい部分に叩き込み、しばし放置。白いバスタオルを持ってきて、濡れたところにばっさと広げ、その上で足踏み。

Sodium Bicarbonate

 見る間に、白いバスタオルに茶色い染みが移ってくる。
 十分ほど、うどんの生地でも踏んでいるみたいに、その場駆け足を続け(父がよくうどんを打つひとだったので、幼いころ、ビニール袋に入れた生地をよく踏んだものなのである。ああ美しくも懐かしい我が家の光景)、カーペットの水気がほとんどバスタオルに移ったところで、終了。

 ドライヤーをかけてみた。

 うーむ。
 バスタオルは汚れている。
 ということは汚れが移ってはいるわけだ。
 しかし、見るからに落ちていない。
 この行程をなんども繰り返さなくてはならないのか。
 それは面倒くさい。

 買い替えるか。
 でもさ。
 それは、思い入れのあるカーペットなのだった。
 まだぺーぺーの小売人だったころ、自分で仕入れたモノなのである。けっこう値の張る丸巻きのカーペットだ。仕入れたが何年も売れず、けっきょく我が家にやってきたという不憫なヤツで「ああ、今週も売れないなあ」と何年も見つめ続けた愛着がある。情が移ったという、そういうのこそヒトの愛の一番ぬるっとした部分なのだから、大切にしたい。

 丸巻きというのは、折りたたむことのできない厚みがあるために、筒状に丸めて売るしかないカーペットのこと。
 なのだが……
 ちょっと思いつき、端のほうを折ってみる。

「折れるかも」

 新品では無理でも、使い込まれていくぶんかの柔軟さをもったため、力尽くでなら、折りたためないことはない気がする。
 折りたためば……

「湯船にはいるかも」

 ちなみに6畳敷き。
 ざっと計算してみるに、五回も折れば、我が家の湯船に入る。
 それはすなわち丸洗い。
 洗濯できるということではないのか!!
 そう思い立つと、もうやらずにはいられない。

 折った。
 汚れのひどい部分を一番上に持ってくるために、試行錯誤した。
 汗だくだ。
 途中から裸である。
 休みの日のつねで、宅配便がいくつかとどくことになっているので、いま来るなよと願いながら『青い文学シリーズ』などを観つつ小一時間。

kokoro

 湯船の残り湯に、どぼーん。
 折りたたんだ時点で、腰に気をつかうほどの重量なわけで、これが水を含んだらどんな重さになるのか、そして脱水機にはかけられないから、せめて干せるようになるまで水を切るのに、どんなに踏みつけなければならないか、憂いは山とあるが、もはや家具まで移動させて剥いで折りたたんだそれを、洗わないという選択肢は別の次元に消失していた。

 せっかく水につけたのに、洗剤を入れないのはもったいない。
 重曹も考えたが、すすぐ手間を惜しまねば、やはりエマールであろう。
 水を、カーペットの浸かるぎりぎりまで減らし、ボトル半分ほどを投入。
 風呂場がエマール臭くなる。

emal

 そして踏む。
 踏んで踏んで踏み抜き、テレビの前に戻って『こころ』のラストの血しぶきまで観て、もういちど風呂場に戻り、雄叫びをあげて踏む。

「ぼくは負けたのだっっ!!」

 ともあれ、その後の様子がこれである。

Carpet

 ドブだ。
 重曹であきらめなくてよかった。
 夏を越えたあと、バイクヘルメットの内装をバケツで洗ったときの色である。学校の廊下を拭いたぞうきんを洗った色である。よくもこんなものの上で生活していた。見えないだけで、私はこの汚れの上でぜぇぜぇと息を切らして背筋を鍛えていたわけだ。その私の胸から滴った汗が汚れの大半であるのだから、この茶色いのは私自身の死んだ細胞だと言ってもいいわけだが。

 かわいくはない。
 忌まわしい汚れである。
 流す。
 そしてすすぐ。
 さらに踏む。
 二回すすぎだとボトルの裏には書いてあるが、二回すすいでもまだお湯は濁っている。なにせ折りたたまれたカーペットなのだ。奥の奥まで水が浸透しないのであろう。湯船に水をはること四回目にして、ようやくもういいかというレベルにまで到達(決してすすぎ水は透明ではない。心が折れたともいう)。

 いよいよ、本腰を入れて踏む。
 私がゴーレムを召還できたら、ぎゅうっと絞り上げてもらいたいところだが、残念ながらそんなスキルはもちあわせていないので、ただひたすらに踏む。学生のころからヘビー級を目指すとしきりに口にしていた私ではあるが、いまだにその壁は遠く、間違っても細身ではないが、ボディプレスでリングを壊せるほどの自重はない。
 ともかく数だ。数を踏め。
 刑事か営業の新人を鍛えるようなことを自らに言いきかせつつ、とにかく踏む。しかし、いくら踏んでも、湯船に置いたままでは、最初の数分を過ぎると、いっこうに水が切れる様子がない。折りたたまれた下の部分に水が溜まってしまうのだろう。

 やむをえない。

 これはまったくもって男色ディーノが曙をジャーマンスープレックスするようなものだ。無謀だ。しかし、やらねば永遠に水は切れず、風呂は使えず私はあかぎれ、カーペットはキノコが生えるだろう(余談だが、シイタケの育て方を聞かれたら「お風呂場が最適です」と答えておけば間違いない)。

 気合いを入れる。
 四股を踏む体勢を取り、腰はまっすぐに保つ。どれだけの同僚が、回復不能な椎間板ヘルニアで事務職に移ったか、数え切れないほどだ。先日、幼稚園の先生をしている従妹が、起き上がれないまでになってヘルニアを破裂させる手術を受けた。幼稚園児を抱きかかえるだけで、ヒトの腰は逝ってしまうのだ。水をたっぷり含んだ6畳敷きのカーペットをリフトアップするなど、今後の私の人生さえ左右しかねない。考えなしにものごとをはじめるものではないな、と痛感する。だが自分でまいた種だ。これで逝っても、仕方なし。悔いはない(嘘)。

 やった。
 私はやった。
 折りたたんだカーペットを自分の立つ地面よりも深い湯船から抱き上げ、風呂のヘリにななめに置いてやった。日頃のストレッチの成果である。自分と同程度の体重の相手なら、落とし穴から引き上げられることが証明された。いつか、命がけで助けても良いと思える友があらわれ、そやつが窮地に陥ったときには、迷わず引き上げてやろう。いちどできたことは、もういちどできるはずだ。

 浴槽のヘリに鎮座ましますカーペットからは、いきおいよく水がしたたり続けている。
 このまま、待つとしよう。
 物干しに干せる20キロ程度まで絞れてくれればよいが。
 最悪、このまま一日置いてもよい。
 明日から、晴れが続くという。
  
 晩ご飯はカレーだ。
 ナンを焼く。
 じゃがいもがないので鶏ササミだけのカレーになる。
 買いに行くのは、もう無理だ。

 六畳のカーペットを洗うのは、全身全霊をもっての儀式だった。
 まだ、息が荒い。
 今日はもう、動けない。 
 あしたは全身筋肉痛になる。
 いや、すでにいま、これを書いている腕が、震えてとまらない。

 きびしい闘いだった。
 六畳敷きカーペットの丸洗い。
 推奨しません。 
 どうしてもという方は、まず半年ほど背筋を鍛えることをおすすめします。
 腕よりも、腰よりも、背中。
 実感。

(その後、三時間ほど水がしたたるにまかせて、肩にかつげるようになったところで、外に移動。物干し竿が折れないように、端のほうにかけることに成功。たわんだ物干し竿が断末魔をあげるのが先か、乾くのが先か。これであとは天気予報が当たって晴れつづけるのを願うだけです)

 そんな休日。
 来週は、壁を塗ろうとペンキを買ってある。
 ほどよく汗。
 模様替えは、4月に限る。
 
※追記1

 あれから二日。たたんだまま外に吊し続けたが、やはり内側がどうしても湿っぽい。表面の毛はあらかた乾いているものの、裏地が鬼門。明日の降水確率20パーセントというのも怖いので、室内に取り込み、部屋の中央に置いたテーブルに、裏返してばさりとかけた。このまま放置してみることにする)

※追記2

 そのまた二日後。折り直しては乾かし、裏返しては放置し、絶好の花見日和な快晴陽気をもってしても、部屋に敷き戻すまでに五日かかりました。カーペット丸洗いのさいは、一週間程度はあたたかくて天気の良い日が続く予報のときをみはからって、運も必要。苦労した甲斐あって、汚れがとれたのはもちろん、もともとはこんなだったっけと思うくらい、ふかふか状態に。もっとも、やはり日々の腹筋運動は毛もすり減らせていたらしく、汚れが抜けても、なんか光の加減でその付近だけ色が濃い感じがする。ということで、カーペットの向きを真逆にして敷きなおすことに。アービン・ウェルシュのなにかの小説で、ハウスキーパーのバイトをずるがしこくこなすために悪ガキが、同じことをやっていたのを思い出した。そう、ヒトは、昨日まで汚れていたところが綺麗になっていれば感嘆してしまうのです、その汚れがただ、部屋の別の隅に移っただけだとしても。というわけで、絨毯を丸洗いしようの巻、無事終了です。疲れた。

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クロムハーツ ピアス  クロムハーツ ピアス  2013/10/24 16:51
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