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『アキレスと亀』のこと。

 前回の『徒然』を書いていて、また思い出したことがあるんだけれど、あの、北野武監督の『アキレスと亀』さあ。ものすごく賛否両論で、興行的には非常にぱっとしなかったらしく、北野監督自身があれはコケたなあと言っているのをテレビでも何度か聞いたけれど。

 賛否の賛の側にいるヒトっていうのは、私も含め(はい。好きです、この映画)、むしろ、その描いている感じはまだヌルいというか、その感じをわからない人に、いくらわかりやすく説明しても伝わることはないんだから、だったらもっと激しくヒくほどに描いてもいいんじゃないかと、もどかしいくらいで。映画のなかで、マヨネーズかぶって自殺する人がいるけれど、絵画であり演劇とか小説とか、そういうのにどっぷりでやってきた私の半生のなかでも、かなり友人の死亡率は高い。死ぬ気で、とか作家はよく言うが、困ったことに本気でそうなので。なにを追っているのかもわからないまま、でも死ぬ気で追っている。怖いのはぶれること。制御しつつ狂うことができなくなること。見えないものを見ようと、てっとりばやい方向にいくと、そっちは行き止まりだってことが、多いらしいし。そこをゆるめられなくて、壊れた同志が何人もいる。しかし壊れきった彼らを見ると、ゆるむことでショックを吸収し、それにより作り続けられる自分を嫌悪したりもする。映画の中でも、狂ってる、と主人公は言われるけれど、まったくショックを受けたりしない。そんなのわかっているんであって、そんなのいまさらで。こっちはもっと壊れたいんだよ、狂いたいんだよ、ということに狂っているのだからね。

 ね。なに書いてんのか意味不明でしょう(笑)?
 だから、だらだらと語ったりはしないけれども。
 『アキレスと亀』を観たときに、思ったことを想い出したので少し。

 そのラストに出てくる、錆びたコーラの缶。
 ジャスパー・ジョーンズという、フランク・ステラと並んで、私が狂った道に足を突っ込むことになったきっかけのひとりである作家さんの作品を模しているのだけれど。ジョーンズを知っていて、彼の作品にハマったことのある者ならば、なんだかその使い方もやっぱり、それでは知らない人に伝わらないなあ、とあらためて思うことだった。

 とか、そういうことを、吉秒が言っていたと、おぼえていてください。
 そして、とても暇なとき。
 美術館に行ってみて。
 ダダ、とか、ポップ、とかのコーナーで、本物のジャスパー・ジョーンズとかの作品を、意味不明だと思うけれど、五分くらい見つめてみて。

「あたし、こんなとこでなにしてんだろ」

 そう思ったら。
 それこそ美術館に行った意味。
 さっさと帰って自分の日常を大切にすべきです。

 だからさ。
 あの映画観て、意味不明だった人こそ、本当はいちばん監督の伝えたかったことを読みとっているのであって「あたしにはわかんないから」アートの勉強とかはじめないことで、あなたの平穏な日常が守られたわけですよ。

 いや。追うモノがあるというのは幸せです。
 けれど、どう観ても、監督が、それを伝えたかったとは思えないので、やっぱりこの映画の正しい解釈は「あれであの夫婦は幸せなの?」、あたしは絶対、アーティストと名のつく人には近づかないことにする。死んだら顔に絵の具塗られるんだよ? やっぱ平凡なのがいちばんだよ、と、気づかせることにあったのではないかと。
 となると。
 そもそも、これを観た夢見る少女が、他人にこれを勧めるわけはなく、動員数がのびないことは至極当然な帰結のような気もするのですが。
 撮らずにいられなかったんだろうなあ。

 で。
 私もあえて勧めず、こう言いたいのです。

 美術館に行って、本物を見て。
 アートってなんなんだよ? というアート破壊の運動であったダダあたりからちょっと先までの作品は、パロディとか、物語とかでは伝わらない。国立の美術館の、スポットの当てられたガラスケースの中に、錆びたコーラの缶。
 その皮肉はわかるでしょう?
 それは映画でもわかるんだけど。
 本当に。
 実際に。
 美術館に、ゴミが飾ってあるんだ。
 だれが見てもゴミなモノが。
 それはねえ、生の目で、肌で感じないと、伝わらない。
 きれいとか、汚いとか、そういう芸術の根本を無視してる。
 上手いも下手もない。
 だって拾ってきたゴミだもん。
 そこにあった雑貨だもの。
 だけどそういうのが、アートに限らず客商売な創作者のやるべきすべてだと思う。

「こういうのもありじゃない?」

 涼宮ハルヒの憂鬱エンドレスエイトがびっくりするくらい売れていないとか、そういうのも評価するべきだと思うんだよなあ。売れた者こそが、売れないモノを作ってしまうべきだ。そして、あれはコケたねえ、と性懲りもなく笑って欲しい。
 できる北野武が、実によい。
 次はヤクザものだと先日発表されたが、そもそも、それ撮れば絶対に客入るわけだし。
 わかっていながら、追い求める。
 どっかおかしいんだよね、きっと。
 素敵だ。

Kitanoharuhi

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