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『ウィングス小説大賞で最終選考に残る方法』その2。



 今回はいいサンプルが手に入ったので、それをもとに考えてゆきましょう。
 まず、『幻追い~とかげ~』、『幻追い/リーリー』、『造形師ディクリード・フィニクスのヒーローな休日。』、『幻追い~三結神~』と、二年にわたってすべて最終選考に到達していた『幻追い』シリーズの最新作『幻追い/少年鎖骨電光掲示板』が四次選考で落とされているという事実。私も、同じ世界観で書いた自分の作品の良し悪しくらいは自分で判断できるので言うと『幻追い/少年鎖骨電光掲示板』はこれまでの『幻追い』シリーズよりも意識的に飛び抜けたキャラを登場させまくったことで、なかなかに楽しい作品に仕上がっています。決して過去の四作に劣るものではない。

 となれば、これが落とされた四次選考を通過し、最終選考に至っているもう一作『ゲームの真髄。』の存在が、この結果をもたらしたと考えるのが妥当でしょう。そうこれはウィングス小説大賞選考員の意志。

「こっちの路線のほうがいい」

 ということに他ならないのでは。
 とすれば私に限らず、私の今回の二作品の違いを検討すること、その結果が『ウィングス小説大賞で最終選考に残る方法』と呼べるでしょう。

 まずは、ストーリープロットから見てゆきましょう。

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 電脳情報網(ウェヴ)の中ですべてが手に入るからこそ、情報に置き換えられないものを求める者もいる──それらを幻(マボロシ)と呼び、それを追う者たちのことを幻追い(マボロシ・スカウト)と呼ぶようになった近未来の地上。
 時計を専門に追う幻追いの煉太は、電脳情報網の中で市場的には価値のないアンティークな軍用時計を、手当たり次第に収集している者がいると気づく。
 その時計はすべてまったくの同一タイプで、裏蓋に両界曼陀羅の画が刻まれている──その収集家の先回りをして時計を集めようとする煉太だったが、相手は想像もできないほど高次元な幻追いとしての能力を発揮し、煉太を完膚無きまでの敗北感にさらした。
 だが一方、その相手は煉太のことをさぐりだそうともしていた。
 気づいた煉太は自分から接触をはかり、やがて電脳空間(サイバー・スペース)で彼と出逢う──そこにいた相手は、口で喋るかわりに左の鎖骨に移植したディスプレイで語る、美しい少年だった。
 煉太は、彼からのメッセージに触れる。
 『たすけて』──その言葉に、少年の正体をさぐることを決意した煉太は、情報侵入者(ハッカー)の少女泳姫(ヨンニ)と、その姉の華姫(ホァニ)、さらには人体改造フェチな双子の弟、煉司の協力も得て、現実世界での探索を始めた。
 しかしなぜか、探索を始めた途端に煉太の身には危険が降りかかるようになり──ついに彼の居場所を見つけ、そこに向かった煉太たちの前に現れたのは、武装したテロリストたちだった。
 彼らは思想の礎として、かつて存在した自然保護過激派(エコテロリスト)がシンボルとしていた時計を胸にさげ、地球のために人類を駆逐する活動を行っている。
 時計を殺しの小道具に使う彼らのために、自分よりも能力を持つ幻追いの少年が、時計を追わされている──その事実に怒りをたぎらせ、自制心を無くしてテロリストたちに挑んでゆく、煉太──かすめた銃弾が煉太の右耳を奪った直後、テロリストたちは何者かによって一掃された──煉太の危機を救ったのは、テロリストを追っていた特殊部隊の指揮官である、アイスGと呼ばれる男だった。
 アイスGは、時計を追う煉太をつけねらうテロリストたちを追跡し、そこにたどり着いたのだ。
 彼と彼の部下たちの手により、さらなるテロ行為を目論んでいた巨大な集団が壊滅した。
 そしてあとには、時計をさがす能力はずば抜けているものの、見せ物として人体を改造され、自閉症に陥っている少年が残された。
 閉ざされた心にだれも近づくことはできなかったが、唯一、煉太だけが時計を介して少年に近づくことができた──少年と煉太は友人になり、煉太は彼の回復の手助けをしながら、幻追いとして未熟な自分を鍛えることを思い立つ──新しいともだちが、くじけず前に進む姿に影響されての、決意だった。


吉秒匠 『幻追い/少年鎖骨電光掲示板』あらすじ。

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 ──自分でいうのもなんだが、短中編のプロットではない。同じプロットで書きようによっては千枚くらいいける。大長編向けのプロット。良くいえばハリウッド映画的。悪くいえばハリウッド映画的。今年、オスカーくんを抱けるのは、保守派ユタ州で上映されなかったゲイのカウボーイの話が最有力で、ハリウッド的の最たる巨大なゴリラが人間に恋する話などは候補にも漏れたんだとか。火薬とアクションとコンピュータグラフィクスに審査員も飽きてきたのか。単純なプロットこそ最強の物語だと信じる私ですが、そういうのは眠れない夜に読み捨てられる人生の潤滑油として機能して欲しいものなので、アクション超大作、なんてのが世界的な賞を取ったりするのは好きじゃない。私のウィングスにこだわる理由もそこにあります。女性向けでありながら男性読者もいて、過剰な感動などを求めているのではなく「うん。おもしろかった」という一瞬の悦楽にこそ人生の価値を見いだせる、そういう一話完結型ライトノベルの日本における王道を作ってきたのが、ウィングス小説大賞だと思うから。

 ウィングスでアクションを描きたい。
 泣かないくらいの「感動を与えはしないがなにか感じるものがある」分量で読者の心を揺さぶりたい。
 高級料理がうまいのは当たり前だけれど、自分だけのお気に入りの近所の小さな安い居酒屋も持っておきたい。
 そういう私好みのプロットが、こっち。

 でも、ウィングスは私にそれよりも求めるものがあるらしい。

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 前世紀の中頃に生まれたコンピューターゲームという文化が、やがてスポーツと同じように他人の試合を観戦する観客(ギャラリー)モードを標準装備したとき、プロのプレイヤーという存在が現れた──そんな近未来の地上。
 ゲーム・ランキングの世界に君臨する絶対王者佐々木幸也(ササキコウヤ)に完膚無きまでに叩きのめされ、夢も自信も失ったゲーマー夏容(シアロン)は、業界から足を洗うことを決意していた。
 だが、一通のメールからあなたのファンだという少年、リーシャと出逢うことになる。
 実はリーシャはゲーム会社の社長を父に持ち、夏容に伝えたいことがあるのだと告げた。
 佐々木はゲームを売るために、ねつ造された王者だとリーシャは言い、蒼いカプセルを取り出した──これを飲めば夏容も強くなれる──クラムと呼ばれるその薬は、ゲーム世界での反応速度を速めるかわりに、現実では人間に触れられなくなるというものだった。
 絶望の淵にいた夏容は、迷いなくクラムの力を借り、翌日から連戦連勝を続ける。
 父親の会社からクラムを盗んできたリーシャは帰る場所がなく、自らの窮地を劇的に変え救ったリーシャのことを、崇拝の念さえ込めて天使だと呼ぶ、夏容もまた彼を手放したくはないと思い始めていた。
 二人は求め合い、当初は満たされた関係を送る──だが、徐々にゲーマーとしての仕事の量を増やす夏容は、クラムを飲み続けざるをえなくなり、その副作用によって、やがて二人は一日のうち一瞬も触れあえなくなってしまう──互いに、苛立ちがつのってゆく。
 夏容は勝ち続けることで佐々木との対戦が実現するものだと信じていた──しかし絶対王者は現れず、クラムの作用による圧倒的な強さによって夏容自身が絶対王者と呼ばれるようになるまでのぼりつめるが、夏容自身の心はまったく満たされないままだった。
 ある朝、夏容は、まったくリーシャに触れずに闘うことだけを考えている自分に気づき、クラムを飲むことをやめようと決意した。
 だが、そのとき二人の暮らす部屋に押し入ってきた男が、リーシャを連れ去った──リーシャの父親が差し向けた追手だ。
 そして、その事件の中で、夏容は気づいてしまう──佐々木の現れなかったわけ──リーシャが自分を勝たせるためにクラムを盗み出すまでしたわけ──それは、自身が認める相手である夏容を、クラムの力で倒して王者と呼ばれることに、我慢できなくなった佐々木がリーシャだと考えれば説明できる、と。
 時が経ち──夏容は、FFという名の新たなキャラクターとなって、クラムを使わずに絶対王者佐々木の挑戦者となるレベルまで駆け上がっていた──闘いの舞台で、夏容は一粒だけ取っておいたクラムを飲んだ。
 対等の条件の中で、夏容は佐々木に──リーシャにゲームの楽しさを説き、彼に出逢えた喜びを語り──抱きしめる
 世界中の観客が、彼らを祝福する。


吉秒匠 『ゲームの真髄。』あらすじ。

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 ──同じ新書館から出ているディアプラスという雑誌も読まれている方には確認してもらえると思いますが、吉秒匠『ゲームの真髄。』という作品名は、ちょっと前のディアプラス主催の小説賞で選外になっています。「ボーイズラブ要素が薄い」とのことで、選考にも参加させてもらえなかった作品です。むろん、タイトルは同じですが、ディアプラスとウィングスでは規定枚数が違うので、大幅な改稿と加筆がほどこされてはいます。が、ストーリープロットは同一。『幻追い/少年鎖骨電光掲示板』とは対照的に、キャラクターはステレオタイプにしてありますし、主人公とヒロインしか出てきません。もともとが恋愛小説として書いているのだから、当然といえば当然のことなのですが。

 造語が多いために、少しとっつきは悪いかもしれませんが、とくに女性ファンの皆さんには楽しんでいただけるのではないでしょうか──というのは、1990年、サイバーパンクの第二世代と呼ばれるリサ・メイスンの長編『アラクネ』を日本語訳した小川隆さんが、訳者あとがきで書いた言葉。『ゲームの真髄。』に出てくる電脳空間と人間の精神とを近づける薬品「クラム」が、歴史上最初に登場するのはこの作品です(名作です。ただし、クラムを飲むと現実世界で神経過敏になりすぎて恋人に触れられなくなる、というのは吉秒設定。アンドロイドとかサイバースペースなんていう過去の偉人が作った造語が今では日常会話でも使われるのに対し、素晴らしい作品の中に生み出されたクラムという単語は古本屋の奥で黴びていきそうだったので使ってみた。なので、私のあらすじのようなロマンス的なものをこの作品に求めると肩すかしを食います。『アラクネ』は新人女性弁護士カーリーが幻想的なテレ空間で自分を模索するお話)。

 前世紀の中頃に生まれたコンピューターゲームという文化が、やがてスポーツと同じように他人の試合を観戦する観客(ギャラリー)モードを標準装備したとき。
 という近未来は「今」のことです。
 観客(ギャラリー)モードを標準装備したゲームが続々と発売されているXbox360は、ゲームがオリンピック競技になる日も近いと思わせてくれる。少なくとも、あるレベルを超えた人と人のゲーム対戦は、マイナーなオリンピック競技よりも、見るものを惹きつけます(実際に、2000年から各国政府の公式支援によって開催されているWorld Cyber Gamesという年一回のゲームの世界大会は今年も開催される。この大会、昨年は『DOA Ultimate』部門で日本代表が優勝しています)。

 おそらく『3』では観客(ギャラリー)モードが実装されるだろう『Halo』シリーズの最新作『Halo2』(初代Xbox用ソフトですが、Xbox360でプレイできます)が『ゲームの真髄。』の根底にあることは『Halo2』でネット対戦を経験したことのある人なら、プロットを読んだだけでぴんと来るでしょう。

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 実際に、改造したデータで不正をはたらく者がいる。メーカーはそれを排除し、公正な対戦環境を守ろうとする。遺伝子ドーピングが現実の脅威となっているオリンピックのドーピング問題と、その現象はなにも変わらない。『ゲームの真髄。』は、己のすべてを競技での勝利にかけることで、崩壊していく論理や理性といったもの、その瀬戸際で踏みとどまることのできたものが勝者なのかそれとも……といった展開で繰り広げられるラヴストーリーです。

 ここまで読めばあきらかなことに、要は、BL小説を書くときにすべての作家が「恋ってどう生まれるんだろう」ということに悩むのではなく「作品の舞台をどこにしてどういった設定のキャラたちに恋させよう」ということに悩む、その過程で、私は私の得意分野である電脳空間とゲームの話に絡めたというだけのこと。ストーリーの根幹は、ライダーキックで怪人は倒されるの法則に従って、恋人たちは結ばれる。そこにつきる。

 つまりは、ウィングス小説大賞の望むものはライダーキックなのか。
 でも平成仮面ライダーシリーズのヒットはライダーキックを捨てたことでこそ生まれたのではないのか、ウィングスも今そういう時期に来ているのではないかと思って私はプロットをひねくり回していたのだけれど、そんなことは求められていないのか。

 (雑談になりますが、はじまったばかりの新番組『仮面ライダーカブト』では、ライダーキックが復活しています。『555』の流れをくむ近未来メカニカルライダー系マスクドライダーシステム装着型の仮面ライダー。すべてを変えた『響鬼』は非常に興味深く見たのですが、やはり定番化は難しいようです。おやくそく最強。でも、試してみたからこそ、心意気新たに王道に戻ることができたという部分もあるはず。それはそれとして『カブト』公式サイトの「天道語録」読んでみてくださいよ。今度のライダーのなかのヒト、なかなかキャラ設定が冒険しています。大衆に受け入れられるのかどうなのか、今年も仮面ライダーから目が離せません。バイク乗りなのにゲタ愛用者って……)

 愛してる、ぼくも、めでたしめでたし。
 舞台はちょっと変わっていましたね、いい物語だった。
 それでいいのか。
 それがええのか、ええのんか。
 ──つづく。



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