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『嘘を飾る』のこと。


Fc001

作・吉秒匠
タイトルは忘れた。

路上福音伝道師をモチーフにした連作で、
こんなふうな作品をかつて数十作った。
そのうちの何点かが、
いまも私の書斎の壁にある。
シリーズの何点かは売れ、
何点かは人に贈った。
知人に貰われていった子もいる。
だからいま私のまわりに残っているのは、
だれにも愛されなかった残されっ子たち。
上の作品に関しては、
出来うんぬんというよりも、
画像では見えない背景が実物でははっきり読めて、
思いっきりポルノ原稿(もちろん私の手による)。
アクリル絵の具で検閲してあるのだけれど、
残っている文面もひどくアブノーマルなものなので、
人目につくところには飾れないし、
トイレに置くと怖いし(笑)。
そんな理由で残ったんじゃないかなと。
思いながら私はこの子が好きで、
とても目立つモニタの向こうに飾ってある。
……不思議なのだけれど……
数年前に書いた自分の文章を読み返すと、
自分で自分の目を突きたいくらいに、
読んでいるだれかの後頭部をレンチで殴りたいくらいに、
ひどく恥ずかしくて赤面するのだが。
絵や彫刻は平気。
いつかの個展の写真とか、
いっそ美大生だったころ授業で描いた、
聖書を持って猫を抱くポニーテールな自画像さえ、
実家の納戸で見つけてしまっても「良いな」と感じた。
なんなんだろう。
私の文章がいまだ進化しているから過去の拙さが見えるのか。
だとしたら絵画においてはすでに死んだのか。
でも。
壁の子たちを見ていても反省点は山ほど出てくる。
いま生めばもっと深いものができると思う。
けれど、拙さが恥ずかしくはないのである。
なんなんだろう。
たぶんなんだけれど。
きっと絵の具には心がまざるんだと。
言葉にもまざるけれど。
私が恥ずかしいのは昔のラブレターではなく、
小説や戯曲だから……嘘だから。
きっと恥ずかしいのは。
嘘の拙さが見えるからではないかな、と。
心だけでできたものは下手でも愛せるけれど、
嘘は上手くなければ醒めるし、
ことによっては幻滅されるし、
憎まれることさえあるし。
下手な絵が心をなごませることはあるけれど、
下手な文章は時間が無駄になって腹が立つ。
壁の子らを見つめて。
嘘のない絵の具を見つめて。
やっぱり嘘がある緊張感が好きかも、と。
酔う人もいれば憤る人もいる。
だから研ぐ……嘘だからこそ、
「どうしてもっと上手く吐けないの」
怒られることがありうるから。
上手い嘘なら壁に飾ってもいい。
そういえばよく名言とか壁に貼っている人いるね。
書の掛け軸とかもそうかも。
なるほど嘘だから飾るのか。
恋文を額に入れて飾る人を知らないのは、
だれにとっても過去の恋は嘘ではないからか。

なーにが過去の恋は、か(笑)。
今日はエイプリルフールだということで。
起源のよくわからない祭の代表格ですが。
「みんなで嘘を吐こう」
という祭内容からして、哀しい起源に決まっている。
きっとなにかを忘れないように。
逆にいえば、忘れないようにしないと忘れてしまいそうだから、毎年日を決めて。
嘘をつく。
きっと忘れてはいけないことは、なにかの喪失だ。
なんの役にも立たないもので空間を埋めるのがアートだとだれかが言ったが。
意味がないものを飾るからこそ、そこにはなにかの意味があるのだろう。
本来、絵を壁に飾るというのは、実に個人的なこと。
恋文を貼っておくのが、本当はもっともアートなのである。
だれかの忘れものとか。
第2ボタンとか。
指紋のついたグラスとか。
そんなの飾っているのをだれかに見られたら、変態あつかいされるだろうが。
でも、それこそが当人にとっては究極の絵画。
過去の想いは飾り続けると壁の一部へと昇華する。
もう気にしない。
でも忘れない。

なぜそれは売れなかったのかとか。
描いた本人は壁に飾っていつまでも考え続ける(笑)。

Fc002

こんなのも。
テーマは水かな。
そんなものに興味はないのに。
なんかもう雰囲気だけで描いている。
やだね。
気どっていてイヤだ。
いま自分で書いたじゃないか。
嘘がないんだよ。
そもそも身のうちにあるはずの嘘さえ排除して描くから、
こっぱずかしくはないのである。
もっと生々しくあらねばと。
なんかそういうことを思うよ。
自分の恋文が恥ずかしいのは、その気持ちが生々しいからなんです、きっと。
きれいに見せたいと願う、自分の嘘があるからだ。
本音で書いた恋文なんてダメだよ。
自分自身をさらけ出そうと自分自身を見つめたら、
そんなもの、さらせはしないだろう。
想いが強ければ強いほど着飾るものだろうさ。
むかし描いた絵を見ても恥ずかしくないのは、
そこに、たぎる想いがないからだ。
死にかけて、朽ちかけて、そのときに。
振り返って、ひとめ見て。
捨ててくれそんなもの恥ずかしいっ。

そういうのを描いていたいな。
恥知らずに吠え続けて。
カッコつけ続けて。

なんかまだ気どっているな……
自分を語るのはむずかしい。
語るべきではないのでしょう、たぶん。

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