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『ノアぷ~(仮)』の話。

 吉秒、帰ってまいりました。
 毎度のことですが決算期のこの締め切り、もう最後のほうはわずかな睡眠時間のなかで数字と文字の悪夢を見るというただつらいだけの日々になっていくのですが、28日はけっきょく徹夜になりそのまま出勤して帰ってきて。眠って。いま起きました。
 いつものことなんですが、私はデスクワークが立て込んでくると休憩には各種プロレス団体のビデオを流して、腕立てと腹筋をするという作業でテンションを維持している。とにかく毎日、家でも会社でもぶっ続けでキーボードを叩いていると、腰と肩のかたまってしまうのが集中力を大きく乱すので、筋トレは必須。かつてオーバーワークで肩と腰を壊して一歩たりとも動けなくなったこともある身としては、二度とあんな事態にならないためならよろこんでエンドレスな腕と腰の屈伸運動中毒者にならせていただきます、という感じ。

 そんなわけで、ひと息ついた、明日はひな祭りの今日。
 前回、続きます、と言ったけれど、その話は今日はまだ触れたくもない悪夢の続きなので、気力が回復したら書く。
 かわりに、またここへ足を運んでくださる方にはまったく興味のない話かもしれないけれど、とてもうれしかったそんな話。
 プロレスの話。
 させてください。
 いや、します。
 こんな春一番の吹き荒れるあたたかな日には、裸の男たちの行く末を考えるに限ります。

 まずは、この話をふまえて。

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『大阪のNOAH中継が最終回だった』の話。

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 そして2009年2月の末。
 日本テレビは、開局翌年から55年間にわたり放送し続けてきた全国ネットのプロレス中継を3月末で打ち切ることを表明。大阪のみならず、全国的にプロレスリングNOAH中継は地上波では観られないことになった。

「時代の変遷とともに(視聴率の)極端な落ち込みもあり、コアなファンに見ていただける有料課金放送に移すことになった」

 ということで、CS「日テレG+(ジータス)」では放送が続けられるが、ぶっちゃけたところ昨年あたりから、G+は大会を生中継ではなく翌日に録画放送するというスタイルを固定化していて、それまで編集されたNOAH中継の放送は毎週月曜日だったのが、日曜日に録画大会があると翌日のこのレギュラー番組放送枠に前日大会の録画中継を持ってくるため、実質的にはNOAHの番組は「同社比大幅減」な状況。なにが「コアなファンに応える」か。ちなみに深夜枠での視聴率2パーセントというのは、たいていの深夜アニメと同レベル。考えるに、視聴率の数字そのものというよりも、スポーツ中継を日テレがやる以上、全力のハイビジョン中継が要求されるこれからの地デジ時代、帳尻が合わないということなのだろうが……

 だったらCSもやめてほしいというのが正直なところである。
 有料といってもいまの時勢、料金的にはネット関連の多チャンネルサービスのほうがずっと安い。しかし日テレが絡んでいると、プロレスも、(私は観ないが)野球も、そちらには流れない。テレビ業界にはネットにコンテンツが流れることへの警戒感がいまだ根強いらしく、地上波を持つテレビ局がからむと、囲い込みが激しくなってしまうのだ。

 力道山が街頭テレビで活躍していたのを継いだ全日本プロレス中継。
 全日本からの大量選手離脱劇のあと、小休止し、悩みに悩んだあげく、離脱した選手たちの旗あげた団体であるプロレスリングNOAHを中継することに決めた日テレ。全日本の側に残ったのは、いまやハッスルの歌うヒト川田利明と、赤鬼・渕正信(色白だから興奮すると肌が桃色になるので(笑)。志村けんの大親友でキティちゃんマニア55歳結婚歴無し)だけだったのだから、中継できるはずもなく、日テレが全日本プロレス株を放出したのも、やむをえなかったことである。
 しかし、旗揚げ当時こそ大入り満員だったNOAH大会も、このところは空席が目立つようになってきた。目に見えてリングサイドの「招待されてやってきました」的なスーツ姿の観客たちが減ったところを見ると、どこぞの企業や団体が、まとめて買い取っていたチケットも売れなくなっているようである。それは裏返せば、ガチで自腹でチケットを買って観に来るファン層というものが、薄っぺらくなっていることの証左でもある。
 あのジャンボ鶴田×三沢。
 あの三沢×川田。
 そしてあの三沢×ビッグ・バン・ベイダー。
 おお。想い出すのは二代目タイガーマスクからマスクを脱ぎジャイアント馬場のあとを継いで社長になったがジャイアント馬場夫人に解任された三沢光晴の試合ばかりだ。
 そしていま三沢ノア社長は。
 太りすぎである(笑)。

「プロレスラーは怪物でなければならない」

 ジャイアント馬場はそう言った。
 四角いプロレスのリングは見せ物小屋であり、レスラーはそこに飼われたモンスター。観客は、鉄柵の外には決して出てこない(たまに出るけど)怪物たちの暴れまわるさまを観に来るのだ。筋肉隆々でなくてもイイ。ただデカいだけ、奇抜なだけ、無謀なだけでもイイ。けれど、大前提として見せ物小屋である以上、クリーチャーはひとめで一般人ではないなにかを背負っていなければならない。
 恐ろしいくらいにイタい。
 だから売り物になる。
 弱いのに大口を叩き続ける、でもイイ。
 ロープを鉄条網にかえて爆破する、でもイイ。
 実生活で荒れ狂い一晩でドンペリ四十本空けましたなんていう伝説を作るのでもイイ。
 たぶん、そういうことを言ったときのジャイアント馬場の脳裏には、蝶のように舞い蜂のように刺す世界の最強ボクシングチャンピオン・モハメド・アリに対し、莫大な借金を負ってまでケンカを売ってみせた新日本プロレスのアントニオ猪木の存在があったと思う。ライバルだけれど、認めていた。バカやってこそ、吠えてこそナンボだという、見せ物小屋の化け物としてのプライドがそこにはあった。
Professional wrestling
 ジャイアント馬場の妻が、ジャイアント馬場を喪って、三沢光晴新社長のはじめた花道の設置やスモークにレーザー光線の演出に、渋い顔をしたのはそういう亡き夫の精神を共有していたからのことだろうと思う。三沢の目指したプロレスのリングでは、プロレスラーはスーパースターであり、奇形ではなかった。他人に好奇の目で見られるために生きている、変なイキモノではない。
 そして全日本プロレスの看板も捨て。
 プロレスリングNOAHの緑のマットでは。
 プロレスラーはイケメンなことを、クールなことを、たんに強いことを誇る、スターの集団になっていった。それはそれで私はいいと思うし、だったらとことんに格好良くいて欲しいと思うのだが。

 かつて四天王と呼ばれた。
 川田利明は、毛利蘭の必殺技としても知られるシャイニングウィザードの創始者・武藤敬司による新生全日本プロレスから離脱。ジャイアント馬場の意志を継ぎ、ハッスルという見せ物小屋で見せ物になる道を選ぶ。
Professional wrestling
 小橋建太は、ケガ続き。ガンにもなった。
Professional wrestlingProfessional wrestling
 三沢光晴は、大スターで大経営者なので忙しくて練習をやめて食べ過ぎた。
Professional wrestling
 田上明は、えーと。メタボリックブームの昨今、いまや一般人でもあんなにきゃしゃなオッサンはいない。ある意味、往年のジャイアント馬場にだれよりも近づいている感があるが、田上の上げたブーツの裏に吸い込まれてくれる、彼を信奉する若手はいない。いまどき真っ赤なショートタイツのプロレスラーのあとを継ぎたいと思う者はいないのだろう。
Professional wrestling
 思えば、三沢光晴時代の全日本プロレスが、とんでもない大成功を収めてしまったがゆえに、プロレスの地上波放送は各選手のファンのため大会をダイジェストで流すようになった。週一で一時間の番組で、三時間に及ぶような大会をまるまる中継していては、年始の大会を消費するころには大晦日になってしまう。いきおい、番組は早口の解説と絶叫とで構成されるようになる。

「そして試合開始四十分が経過したとき……」
「いったー!! 三沢の伝家の宝刀タイガードライバー!!!」

 おしまい。つぎ小橋。
 川田ファンも田上ファンのためにも絶叫して、スタンハンセンの入場シーンで観客たちがウィーって叫んでいるのも入れておかなくてはならない。
 あの時代はそれでよかった。
 だれもが、そこでなにが行われているか知っていたのだから。
 日本のプロレスとはアメリカの相撲だという話は映画『力道山』でも観てもらうとして(余談だが、この感動的な映画をいっしょに観ていた私の妻は、観終わって「けっきょくかわいそうなのはおんなのひとね」という結論に達していた。『ガチ・ボーイ』には素直に泣くのに。いや違う。プロレスとはその両極端で成り立っているからこそ、そこに混沌たる生々しい人間の有様があらわれるコンテンツなのであると私は力説したい。力道山の暴走気味に見える野望あってこそ確立されたのが日本のプロレスであり、その特異なスタート地点があったからこそ、学生プロレスから総合格闘技まで飲み込む、なんであるとは言えない唯一無二の「プロレス」へと進化できたのである)。
Professional wrestlingProfessional wrestling
 日本の相撲とはすなわち様式美をふくめてのスポーツであり、敗戦後の日本において、プロレスが相撲を凌駕するテレビの星となりえたのは、まさしくそこに「外人を打ち倒す日本人」という当時の相撲ではぜったいに実現できない図式が組み上げられたからにほかならない(むろん、現代においてその図式を振り返るとき、力道山が日本人ではなかったという事実が、そう単純ではないドラマを感じさせるところも魅力のひとつとなっているのだが)。
 それは一種の古典芸能である。
 プロレスが演劇の要素を含むことはアメリカンプロレスやハッスルを観れば一目瞭然だが、力道山からジャイアント馬場らに継承された日本のプロレスにおいては、演劇というよりも歌舞伎と同種の芸能だと考えたほうがしっくりくる様式美が必要不可欠なものになっている。ガイジンにカラテチョップ。どんな敵も十六文キックで一撃粉砕。それは三沢時代の全日本プロレスでも変わらなかった。三沢のエルボーであり川田のストレッチプラム、小橋のムーンサルトプレスなどは、格闘技の必殺技というよりも「見得」の一種だととらえたほうが理解しやすいところがある。というか、そう理解しなければならないのだ。その後の日本の格闘技ブーム(それもまたリアル指向のプロレスを追い求めた一派の成し遂げた成果だったのだけれど)で、ガチ方向からプロレスに入ってきた視聴者は、ゆえに混乱してしまう。

 格闘技では一瞬で試合を終わらせる腕ひしぎ十字固めがプロレスでは極まらない。

 そんなのは、歌舞伎座に行って、あの人たちはどうしてあんなしゃべり方をしているのか変な動きだなあ、と意見するのと同じだ。同じなのだけれど、プロレスの場合に面倒なのは、ぱっと見で区別がつかないということである。プロレスはバカでもわかるとよく言われたのは、もはやむかし。私の弟は、ちょうど私のひとまわり下の年齢なのだが、彼は言う。プロレスはよくわからん。

 日本の深夜のテレビ番組が混雑してきて、プロレス中継番組がのきなみ30分になったとき、崩壊がはじまった。昭和の後期にはダイジェスト的放送が定番になっていたテレビ中継だが、それでも全日本プロレスの三冠戦などは、深夜に家族で正座して観た、などというのは笑い話ではなく本当にそこかしこで聞く話だった。大きな試合は、ぜんぶ放送する。本当は、そんなふうに特上級の舞台ばかりを過剰摂取すると、伝統芸能としてもっとも味のある「わびさび」の部分を理解できる観客が育たなくなってしまうのだが、それでもまだ、特上級の試合だけでも、観てはいた。それが30分になる。日本武道館を埋め尽くす観客の前でメインの試合が30分で終わるというようなことのほうが少ないのに、放送時間は正味20分もない。それはすなわち、日本の地上波テレビで観るプロレスがすべてダイジェストになってしまった瞬間だった。

 それは、映像つきのプロレスニュースだ。
 記事がメインで、情報を補完する映像がついている。

「松本幸四郎は昨日、このような見得を決めました」
 そして映像。

 それを観た視聴者は、観客と呼べるものだろうか。
 どんちょうが上がり、役者が登場して静かに歩き回る時間帯の映像は、ニュースにはならないのでカットされる。カットされた場面をすっ飛ばし、三沢のタイガードライバー垂直落下式がきれいに決まって挑戦者の首が変なふうに曲がった場面だけを観て興奮した新規プロレスファンが、会場に行ったら三時間まったりとパイプ椅子に座るのである。メイン戦がはじまるころには寝ているかもしれない。
 そうして30分プロレス番組は、日本のプロレスを変えた。
 いまでは、地上波で流れるプロレスと、CSの生中継のプロレスは、まったくの別物だ。
 そして残念なことに、30分の映像つきプロレスニュースのごとき番組は、プロレスファンでさえ興味をもって観られないものになってしまった。だってネット社会。一週間にいちどの番組ではニュースとして遅すぎるし、遅れて観るのにダイジェストなのである。なにをたのしんでいいのかが、わからない。

 というわけで。
 日テレさんはコアなファンのかたに観ていただけるようにと言いながら放送時間を減らすし、だったらNOAHもフリーエージェント宣言して、日テレほど金積んでくれないにしても、もっとじっくりとファンを育てられる相棒を見つけるべきなのではないだろうかと強く強く思っていたわけですが。

 なんと今朝のニュースを見ていたら。
 55年のプロレステレビ中継に3月末で幕。
 そして4月から。

 サムライTVでのレギュラー中継放送スタート。

 で、なんと地上波まで。

 テレビ大阪でのレギュラー中継放送スタート。

 一般紙の解説でまでふれられた、日本のプロレス中継の伝統が息絶えるという大ニュースでさんざんあおっておいて、実はまったく終わらずに、来月も地上波がある。それも日テレさんにまっさきに切られた、ここ大阪のローカル放送で。さすがテレビ大阪。おいしいところがわかっている(笑)。これはもう間違いなく地上波復活がしばらくプロレスを観ていなかった昭和世代のあいだでニュースになるし、そうすれば戻ってきた年季の入ったプロレスファンの方々が奮起してくれるかもしれない。いやしてほしい。もうそこだけが頼りだ。ぜひとも年金をつぎ込んでサムライTVをもうけさせてやって欲しい。そして地上波テレビ大阪も視聴率に反映するようにリアルタイムで観て、NOAHを、プロレスを救って欲しい。

 プロレスは、格闘技になるか、演劇になるか。
 それが世界のすう勢だが、日本では違う。
 日本のプロレスは「プロレス」というものだ。
 三沢社長には、ぶれずにまい進してもらいたい。
 ニュースを作り、わびさびまで欲するコア層も、ダイジェストで観る一見さんにも、訴求する団体であって欲しい。
 ときまさに小橋建太が戻ってきた。
 戻ってくるのに地上波がなくなったとなげいていた大阪人はいっぱいいるはずだ。
 小橋がいないから観るのを休んでいた層が必ずいる。
 ていうか私のまわりだけでもいっぱいいる。

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『小橋建太という鉄人』の話。

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 これはチャンスだ。
 きっと二度とないほどのチャンスである。
 プロレステレビ中継に幕。
 そのニュースに反応した人が振り返っているうちに。
 ダイジェスト中継の極みを創造して。
 古いファンも新しいファンも取り込んでしまうんだテレビ大阪!! 
 たこるくんにもプロレスやらせようぜ。

 そんな期待でいっぱいです。
 行き詰まったダイジェスト地上波のありかたを、根底から変革してくれることを求める。
 テレビ大阪の地上波NOAH中継。
 タイトルは、

『ノアぷ~』

 という仮称が明かされている。
 なんという大胆な(笑)。
 伝統など屁でもないわウチがプロレス地上波放送を継ぐ。
 その意気込みのあらわれなんですよね?
 ああたのしみだ。

 そして祈るのは、復帰で体重を戻したはいいもののまたしても腎臓の数値が悪いことになっているらしい小橋サマ……06年7月に右腎臓を摘出してから制限していた腎臓に負担のかかるタンパク質の摂取を解禁したとか。おねがいだから。激しいのももちろん期待しているけれど、戦いつづけてこそだよ。あなたがいなかったせいでどれほど経営かたむいたか。このチャンスに激闘よりも、そこに小橋がいるということをアピールしてもらいたいです。

 それにしても、ノアぷ~。
 やるなあ。テレビ大阪。
 日テレも他社との契約よく許したよな……さすがに団体存亡の危機となりうる額の地上波放送権利料を切った手前、独占なんて言い続けられなかったのか。だったら話は戻るが、ぜひCSも売っぱらってくれ。
 ああ、でも日テレを完全に離れると街頭プロレスなくなっちゃうな。
 あれはいい企画だから続けて欲しいんだけれど。
 テレビ大阪で企画してくれないかな。
 梅田の巨大観覧車デスマッチとか。
 スカイビル空中展望台ノーロープマッチとか。
 夢はふくらみます。

 そして三沢は痩せ、田上は太れば言うことないのだが。
 化け物を捨てたなら、意地でも普通のおっさんとはひとめで違うオーラをまとわないと。
 ローカルテレビの地上波ダイジェスト番組は、インパクト勝負だよね。

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